「ラストジナイーダ」(2013/07/26 (金) 01:45:32) の最新版変更点
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ラストジナイーダ
インターネサインとパルヴァライザーの破壊。
それが人類存続の命綱だそうだ。
その両方を同時に破壊しなければ人類に未来はない、ジャック・Oはそう語った。
そしてそれが可能なのは現状、私"ジナイーダ"と素性不明のレイヴンの2人だけ。
素性不明のレイヴンは性別すらわからないが、便宜上"彼"と呼ぼう。
ジャック・Oは私にパルヴァライザーの破壊、彼にインターネサインの破壊を依頼したようだ。
私も彼も、この激動の24時間を生き延びた実力だ。そう簡単には死なないだろう。
つまりお互いに目標を達成した直後に会えるだろう。
そう考えると私は心が躍った。
彼は中立の立場で対AC戦闘を繰り返し生き延びている、私と似たような境遇だ。
今までに何度か彼と戦おうとしたことがあるが、いずれも決着がつく前に中断を余儀なくされた。
消化不良だった。
次に会えるのはいつか、と考えると落ち着かなかった。
だがこの依頼を果たせば彼と戦える。
それはこの依頼を請けるには十分な理由だった。
私はジャック・Oの指示通りの経路でインターネサインへと向かうエレベーターに乗り込んだ。
エレベーター内に存在するのはブースターを換装したファシネイターと、コンテナが1つ。
コンテナの中には予備の武装が入っている。
戦闘能力の高いパルヴァライザーと戦ったあとに彼と戦うのだ。
何が起こるかわからないのは彼も承知済みだろう。
そこに戦いを挑んで弾切れでは格好がつかない。
機体の修理はできないがせめて武器だけでも万全の状態で挑みたい。
だから予備の武装を用意した。
エレベーターが止まり、ドアが開く。
そこではジャック・Oの機体"フォックスアイ"がパルヴァライザーと戦闘をしていた。
見たところフォックスアイは大破寸前、パルヴァライザーは中破程度といったところか。
だが大破寸前のフォックスアイは必死の抵抗を試みるも撃破されてしまった。
これで残るレイヴンは私と彼だけとなったわけだ。
自分が非常に危険な状況にあるにもかかわらず、思わず口元が緩む。インターネサインとパルヴァライザーさえ破壊すれば私と彼の戦いを邪魔するものは誰もいない。
早く、早く彼に会いたい。
私は胸の高ぶりを押さえきれない。
早くパルヴァライザーを破壊して彼のところに行きたい。
しかしこのパルヴァライザーは機動性が高く、なかなか捕捉ができない。
ファシネイターに積んであるマイクロミサイルを時間をかけて落ち着いて使えば確実に撃破できるだろうが・・・
私は一刻も早く彼に会いたかった。
だから内装関係のリミッターを全てはずし、ファシネイターの機動性を大幅に向上させる。
「ぐっ・・・」
規格外の速度に耐えれず、思わず嗚咽が漏れる。
パイロット保全のために設定されたリミッターを解除したのだ。
そんな状態で体が長時間耐えられるわけがないが、この速度さえあれば確実にパルヴァライザーを撃破できる。
そして彼に会える、ならこれぐらい耐えてみせよう。
パルヴァライザーを撃破した。
ジャック・Oが中破状態まで追い込んでくれていたおかげで、ファシネイターの目立ったダメージはコア損傷だけだ。
私自身の体は規格外の負荷のせいでかなり消耗していたが、まだ戦える。
装備していた武装を全てパージし、用意していた武装に換装する。
右腕にハンドレールガンPYTHON、左腕にマシンガンNIX、左格納にリボルバーハンドガン。
右肩にマイクロミサイルKINNARA、左肩にパルスキャノンLAMIA2、エクステンションに連動マイクロミサイルFUNI。
普段使っている武装よりも瞬間火力を重視した武装だ。
何としても彼に勝ちたい、そんな思いでこの武装を選んだ。
換装終了後、下層部へ降下。
最下層には目標を達成して立ち尽くす彼の機体がいた。
VRシミュレータの"カスケード・レインジ"とほぼ同じ構成。
見たところ機体損傷はなく、機体の状態は私のファシネイターとほぼ互角か。
いや、内装リミッターを解除してある分、私のほうが有利か・・・
決着がつくまで、私の体が持つのであれば。
「私たちの存在、それが何を意味するのか、これでわかる気がする・・・」
彼の機体に通信を入れる。返事はない。
「最後に生き残った、その時・・・!」
そう言って私は、彼の機体にハンドレールガンを撃ち込む。
彼はそれを被弾寸前で回避し、戦闘は避けられないとわかったのか、即座に応戦してきた。
私はマイクロミサイルを散布して彼の行動を阻害しつつ、パルスキャノンとマシンガンで一気にAPを削り取る。
同時に彼もマルチミサイルとロケットを併用して私の行動に隙を作らせながら、ハンドレールガンを狙ってくる。
お互いに何度も被弾を繰り返し部位破損が多発するが、機体の瞬間火力では私のほうが上、ダメージレースは私の有利だ。
マシンガンを撃ち切るころには彼の機体の右腕部は破損し、武装は左腕のブレードと両肩武装を残すのみとなった。
左腕のブレードが脅威だが、彼の両肩武装の弾数は恐らく少ない。距離を維持できれば問題ないはずだ。
私は左腕のマシンガンをパージして格納のハンドガンに切り替えながら、戦況を分析する。
(勝てる!)
そう内心確信したとき、私の機体に強い衝撃が走り、操縦に違和感を感じる。
[脚部破損]
頭部COMが即座に状態を知らせてくる。
(脚部破損だと!?このままでは・・・)
一番まずいところをやられた。
彼はロケットを正確にファシネイターの脚部に撃ち込んだのだろう、機動力を低下させるために。
さすがはこの激動の24時間を生き延びた実力だ。
だが感心している場合ではない。この状況をどう打開するかが問題だ。
私は少しだけ考えたあと、脚部破損の穴埋めにファシネイターの両肩武装とエクステンションをパージし、迎撃に備える。
気休め程度の機動性向上だったが、内装系リミッター解除のおかげで平常時よりはパージの恩恵を享受できる。
「げふっ・・・!?」
だが長時間の規格外負荷に体か耐えられなくなった私は、吐血してしまった。
吐血を引き金に、頭痛や吐き気がこみ上げてくる。
呼吸が荒く、焦点が定まらない。
とてもACを操作するようなコンディションではない。
「はぁはぁはぁ・・・」
それでも私はおぼつかない手つきでファシネイターの操縦を続けながら、呼吸を整える。
焦点が定まらないまま霞む視界の中に彼のACを捉えると、彼も私と同じく両肩武装をパージしている。
降参の意思表示ではなく、一気に決着をつけるつもりなのだろう。
ブレードのみの状態で一気に距離を詰めてくるのが見えた瞬間、私はハンドレールガンのトリガーを引きながら後退する。
ハンドレールガンが発射される寸前に、彼のブレードによって右腕ごと破壊されるが、ファシネイターの損害はそれだけだった。
「まだだ、まだやれる・・・!」
私は至近距離まで迫った彼の機体に向け、リボルバーハンドガンをゼロ距離から連射しながらさらに後退。
この距離では回避ができるはずもなく、強力な弾丸が彼のACの頭部を弾き飛ばす。
だがそれだけで彼がひるむはずもなく、再び距離を詰めてブレードを振ってくる。
その切っ先はファシネイターのコアを引き裂き、ファシネイターは操作不能に陥る。
私の負けだ。
「私はただひたすらに、強くあろうとした・・・」
薄れ行く意識の中、私は彼に通信を入れる。
「そこに私が生きる理由があると信じていた・・・」
「・・・」
彼は何も言わない。
「やっと追い続けたものに、手が届いた気がする・・・」
私の追い続けていたもの、それは私自身もわからない。
だが今の私はかつてないほどの満足感に浸っていた。
「レイヴン・・・その称号は、お前にこそ相応しい。」
私がそう言い終わるのが先か後かファシネイターが爆発し、私はシートから投げ出され、機体外に放り出される。
ほんの僅かな時間不思議な浮遊感に体が包まれた後、私は地面に叩きつけられた。
ージナイーダ、死亡。ー
~Fin~
所要時間
未完成品を数ヶ月空きで発見して完成させたから、総時間はわからない。
最後に手をつけた「カスケvsファシネ」の場面が2時間ぐらいかな?
解説とか
ラストジナイーダ視点でSSが書いてみたかった。
「ラスジナのファシネイターが超性能なのはリミッター解除状態」という脳内設定を発展。
Q.LR主の機体がなんでカスケ?
A.ハンドレールガンが欠陥だけど、一般的にわかりやすい機体だし、オリジナルで出すの面倒だし。
戦闘描写が苦手だけど、書いてて楽しいです。
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