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「もしNX主人公が強化人間だったら」(2009/05/17 (日) 18:44:55) の最新版変更点
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''もしNX主人公が強化人間だったら''
それは貧しい家庭だった。
父はガラの悪い取り立て達に無理矢理連れ出され、それから帰ってこない。
今年高校に入る娘の学費どころか生活費までままならない。
母は、苦渋の決断をした。
そして、部屋にいた娘を呼び出す………
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とある孤児院。
ここに、一人の子供がいた。
その子供は、笑ったことがなかった。
愛を受けることなくその子供は育っていった。
そして、その子供の身体には無数の傷跡があった。
足には広い火傷の跡、背中には鋭利な物で抉られたような跡
他の子供たちは、誰一人として『彼』に近付こうとはしなかった。
集団で風呂に入る時ほど、『彼』が苦痛だった時間はない。
職員達も、どこか妙な目をして自分の事を見ていた。
ここの孤児院では一定以上の年齢になると、引き取り手を探し養子として貰われていくという制度があった。
しかし、『彼』には誰も近寄ってはこなかった。
堪りかねた『彼』は、職員達に詰め寄る。
何故自分だけなのか、と。
職員は、悩みに悩んだ挙げ句、彼に告げた。
そしてその晩、
浴場で手首を十数カ所切り、ぐったりとしている『彼』が発見された。
自分が『売られた』女から生まれたこと。
自分を孕んだせいでノイローゼになり、出産後は常時自分を虐めていたこと。
警察に見つかるまで、『彼』は3か月間ずっと虐められていたこと。
……そして、保護されここに移されたこと…
……ああ、なるほど。
自分は、悪魔。
自分は、いらない存在。
自分は、外道。
自分は、生まれながらにして地獄逝き。
なんだ………そういうことだったのか。
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『彼』は生きていた。
医師によれば、あと数十分遅れていたら危なかったそうだ。
『彼』は、自分を見つけたくれた管理人を強く恨んだ。
どうして助ける。
何故自分を見つけた。
ベッドの上で、『彼』は葛藤する。
もう少しで輸血が終わる。窓の外は真っ暗で何も見えない。
『彼』は、この静寂に耐えかねテレビをつけた。そこには。
鋼鉄の巨大な人形が、光のつるぎをぶつけあっていた。
大量のミサイルが描く幻想的な白煙の芸術。
肩の大砲から轟音とともに撃ちだされる高熱の太陽。
青白くまばゆい光のラインが交差する。そして。
画面に大きく『WINNER』の文字が出る。
勝利した巨人は、観客達の方へ向かって巨大なレーザーガンを持った手を上げる。
観客は熱狂し、ますますヒートアップしてゆく。
……すごい。
『彼』は素直にそう思った。
自分もあんなふうにできたら。
今までバカにしてきたヤツらなんか屁でもない。
…ふと、孤児院での『自分』を振り返ってみた。
特に目立たない存在。
勉強が出来るわけでもなく、運動神経も最低、周りの人間ともあまり喋らない、 いてもいなくても何とも思われないくだらない人間だ。
いや、人並ならまだいい。
何の取り柄もなく、むしろほとんどが人間として下のレベルだったんじゃないのか。
笑えてくる……最悪の生物じゃないか
そして、この試合の解説者の発言が『彼』の運命を大きく変えることとなった。
解説1「うーむ、やはり彼に勝つには強化人間にでもならなければ無理なんでしょうかねぇ」
解説2「冗談じゃないですよ 脳弄くって内臓も骨格も血液も、全部人工のモノにするなんてどうかと小一時間(ry」
『彼』の中で何かが動いた。
強化人間。
忌み嫌われる存在ではあるがその身体能力、頭脳の計算力は常人を大きく上回る。
…丁度いいじゃないか
しょっぱなから嫌われてるなら
こんな身体なんか……
…そうだ、やってしまおう
『彼』は少々乱暴に点滴の針を抜き、まだ少しぐらつく足に喝を入れ、ベッドを抜けだした。
見つからないよう、トイレの方向にある裏口から外へ抜けだす。
『彼』は、生まれて初めて開放された気分になった。大声で叫びたくなったが、それを抑える。
しかしその顔には抑えきれない笑みを浮かべて、『彼』は駆け出した。
闇の中『彼』は走る。この時間帯なら人もいない。できるだけ近くの『変われる場所』に行かなきゃ。
『彼』は考えた。走りながら考えた。
この近くに…クレストの大きい施設があったはずなんだ…
ふと『彼』は孤児院の図書室にあった新聞で読んだニュースを思い出した。
『非道! キサラギに続きクレストが人体実験か』
という内容のものだった。
クレストか。生体技術ではキサラギの方が歴史が長いらしいけど。
クレストだと……何か不安だな。
しかし、『彼』はそこで思いとどまった。
再び、『彼』は葛藤を始める。
今更なにを考えている。 一度死に損なった身体じゃないか
…でもそれじゃただの無駄死にだ
…じゃあせめて人様の役に立ってから死ね
…あぁ、それでいいかも。
そうだ…クレストでいいじゃないか。
もし失敗して自分が死んでも、その失敗が今後の実験に役立って、手術の成功率が上がるかもしれないじゃないか。
決めた。
俺は変わる。
そして、レイヴンになる。
今まで自分を見下してきた奴等を恐れさせ、見下し、恐怖を与えてやるんだ。
生まれつきの外道にとって、これほどすばらしい道はないじゃないか。
「俺はもう、還らない」
『彼』の言葉は、闇の中へコンクリートの地面を叩く足音と共に、消えていった。
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数年後。
『彼』はペイロードシティ屋上にいた。
出撃前までは降っていなかった雨が降りはじめていた。
自機の頭部カメラで、雨の降る赤い空を見上げた。
空の『赤』が蠢き落ちてくる。
こちらを飲み込もうと迫りくる。
右腕のHiレーザーライフルは、残り10発わずか。
7発同時発射ミサイルは、あと3回分。
APは、50%を切っている。
『彼』は誰にともなく言った。
「小さな存在だな、俺も」
彼は飛び立つ。
それは勝ち目のない無謀な戦いへの挑戦か、
あるいは地獄への旅立ちか。
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