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レイヤードは人類を縛り付ける、鳥篭のようなものだった。ある時、鳥篭はたった一人のレイヴンの手によって破壊され、
そこに住まうほとんどの人が地上に解き放たれた。しかし、またも人類はサイレントラインという、
見えない領域に閉じ込められることとなる。その見えない領域を作り出していた衛星砲を破壊したのも、レイヴンであった。
かくして人類を縛り付けていた二つの足かせは取り除かれ、企業達はまるで篭から解き放たれた鳥たちのように、
その生活範囲を広げていった。しかし、生活範囲とは名ばかりの……戦場であった。
コーテックス管轄の宇宙開発基地の打ち上げ台に、一機のスペースシャトルが頭上の夜空を睨むように待機していた。
その機体へと向かうフライトタラップを、二つの人影が上っていく。一人はビジリアングリーンに黄色の模様、
もう一人は黒に黄色の模様が入ったパイロットスーツを着ていた。どちらもレイヴンであった。
ビジリアンのパイロットスーツの方は、容姿端麗で方まで届く銀髪が夜風になびいている。一見2、30の男に見えるが、
彼はもうかれこれ100年生きていた。片目を隠すほどまでに伸びた黒髪が印象的な黒いパイロットスーツの男の方も、同様だった。
二人がシャトルへとたどり着くと、入り口にスーツ姿のコーテックスの係員と作業員数人が待ち受けていた。スーツの男は、
契約内容の確認に訪れたようだった。手に持っていた書類を二人に対して見せてサインをさせると、用が済んだかのようにタラップを降りていった。
「ご武運を」
数人の作業員の言葉に軽く手で会釈すると、そのまま乗り込んだ。その後、重々しく分厚い扉が閉められた。無人操縦なのでコックピットにパイロットの姿は無かった。
二人は席にたどり着くと、座るのに手こずりながらも、その身体をシートに沈めた。ビジリアンのパイロットスーツの男が、傍らのコンソールパネルを叩いた。
画面に表示されたのは機外と機内のカメラの映像だった。いくつか切り替えると、シャトル後部のカーゴ内の様子を映し出した。
そこに鎮座する二機のAC──ムゲンとアルカディアは頭をたれて、主の搭乗を待っているようだった。ビジリアンのパイロットスーツの男は、
画面を消して前を見据えた。
「メビウスリング、身体の方は大丈夫なのか」
並列した隣の席に座っていた黒いパイロットスーツの男、エースが聞いた。メビウスリングは軽く目をそちらに向けると、「あぁ」とそっけなく応じた。
その肌は透き通るような白色で、お世辞にも健康層には見えなかった。エースはそれ以上何も言わず、前を見据えた。前方の窓越しに、夜空が見える。
「もう、手遅れかもしれないな」
メビウスリングがポツリと呟いた。その目はエース同様、窓の外の夜空を見ている。
「……ジノーヴィーのことか」
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