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「クレスト第三技術開発部門」(2008/12/27 (土) 17:58:53) の最新版変更点
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あるときは様々な研究を重ね、火薬が爆散する音に酔いしれ、
またあるときはより効率的なACの運用法を考える。
全ては効率の良いものを重視し、とにかく機動力を削がない処理のため。
我がクレストは、そんな弾薬費より効率を重視するレイヴンの味方である。
「さて、ミラージュに拿捕されてしまった職員がいたようだが、
彼は無事脱出できたのだろうか。誰か、報告を頼む」
クレスト第三技術開発部門所長、通称「炸薬」が難しい顔で問いかける。
「工作員として潜り込んでいた者は、
ミラージュのMTを奪って逃走。途中にミラージュの追っ手に追いつかれたようですが、
直接契約をしたレイヴンのお陰で、なんとか命を落さずにすんだようです」
炸薬の秘書が報告書を片手に喋る。
ほう、と炸薬は関心した表情をみせた。
さすが根回しはしっかりとしてある。安心した。
しかし、スパイに抜擢された男が見当たらない。不可解である。
2「・・ちなみに、命からがら逃げ延びた工作員ですが」
ぺらぺらと報告書をめくりながら情報を確認する秘書。
「どうやら、助けてもらったレイヴンに恋煩いをしてしまったそうで、
今日はこれないだそうです」
「ああぁほぉかぁあ!」
思わず声が裏返ってしまった。マイクがあったら破壊できんばかりの声量である。
ごほん、と咳払いをして場の空気に仕切りなおしをかける炸薬。
「まあ、いい。とりあえず、奪取したデータをもとに、
新たなパーツ案について論議しようじゃないか」
おい、と秘書に指示をだす。
中央スクリーンに映し出される、ミラージュの開発模様。
どうやら新たな試みを施したマシンガンのようだ。
「で、このパーツに関して、レイヴン達の反響は」
「最低、の一言です」
そうだろうと思った。最近、ミラージュ開発部門に就任した鏡野は、
おかしなロマンと妙な性癖をもっていたはずだ。
あいつが関わってからというもの、
ミラージュの兵器にはなんとも言えない癖がついた気がする。
3「・・ふむ。エネルギーマシンガンか。だが、やはり我が社のシルフィーと比べても、
機動性確保もできぬし、やはりマシンガンは実弾に限るな」
どうやら、データは全く参考にならなかったようである。
「ふむ、こうしてミラージュが開発に関わったものは、
性能バランスは確かに良いものが多い。
しかし、いかんせん稼動に要するエネルギー量が気になるところだ。
これを改善したフレームパーツについて、今回は考えてみよう」
鏡野と違い、炸薬は効率を求める。さすがに段取りも効率的であった。
------
研究室に集まった総勢6名の工兵。
それぞれが席につき、中央のスクリーンを見つめる。
「それでは始めようか。まず、基準とするのは、我が社が誇る万能パーツ。
CR-LH69S、これを元に改良を加えていこうと思う。
それぞれ何か意見があるならば、考えを言ってみて欲しい」
秘書がパーツデータや、他社の製品と比べた表の記載された用紙を配る。
4一人の工兵が立ち上がり、データ表片手に声をあげた。
「CR-LH69Sについては、かなりのバランスを誇っていると自負しております。
しかし、初期生産されたこれらは、
レイヴン独自のカスタマイズが出来ない仕様になっております。
デビューしたてのレイヴンは気にならないでしょうが、
さすがにこれではせっかく基本性能を高めたLH69Sが不憫というものです」
工兵の一人が席につく。
確かにもっともな意見だが、これについては、
すでに生産ラインにチューンナップ出来るようにしろとお達しがいっている。
まあ、工兵にまでこれらの情報が伝わらないのも無理はないが。
「次は、私ですね。
ミラージュの製品を見る限り、かなり防御面のバランスが重視されています。
我がクレストは、どちらかと言えば局地戦にやや重きがおかれている。
そこで、高次元でレベルのとれた脚部の開発が宜しいのではないかと」
「ほほう、それは良いかもしれない。ほかに、何かないかね」
炸薬が辺りを見回す。すると、どうにも挙動不審な研究員が一人いた。
5
髪はぼさぼさで、何故だか知らないが白衣にサングラスと怪しげである。
「そこのキミ、何か言いたげだな。いってみろ」
「は、はい。やはり、せ、性能面を重視することも重要ではありますが、
こ、こ。ここは一つ、ビジュアル面のことも考えてみるのは如何でしょう」
女研究員がオドオドした様子で、わたわたと答える。
こんな奴、いたっけか。
「なるほど、確かに。LH73SSAのように、何かにつけて特化したり、
それなりの能力をもたせると、どうにも不恰好になりがちだな。検討しよう」
その後、いろいろと意見は出たものの、目ぼしいものは特に無かった。
「宜しい、ではまとめよう。
まず、高次元でバランスの取れているものだが、実現は難しいだろう。
そこで、運用のしやすさに重きを置いてみようと思う。
ある程度の防御力をもたせ、重量もLH69Sより軽量化する。
さらに、逆間接並の扱いやすさを目指し、極限までエネルギー消費量を押さえ込む。
こうすることによって、負担も減り、ブースタの運用も楽になるだろう」
秘書、工兵一同、うんうんと頷いている。
どうやら概要はしっかりと把握してもらえたようだ。うれしいことだ。
しかし、やはり女研究員などいたかどうかが思い出せなかった。
「それでは諸君、開発に取り掛かろう。宜しく頼むぞ」
そうして、意気揚々と工兵達は工場へ戻っていった。
-------
「なるほど。これは確かに、形状にも凝っているな」
ヴィジュアル面を重視するということで、工兵も形状に苦労したらしい。
LH69Sはどうにも寸胴なイメージがあるため、フレームは軽量級を元にし、
そこに装甲を足していくことで、中量脚部としたそうだ。
細身を元にしたとはいえ、なかなかの見た目である。
うんうん、と爽快な気分に浸っているところに、
秘書が何とも言えない表情で声をかける。
「炸薬所長。どうやら、工作員が潜り込んでいたようです」
「なんだと」
まさかの報告に思わず非効率的な大声をあげてしまう。
ここで騒ぐのはまずい、実にうまくない。
「して、工作員は何をしでかしたのだ」
「それがその、いきなり『クレストはクレストらしく、角ばってろよおお!』
と叫びだして、装甲版の形状をより鋭利に角ばらせていきました」
「は、はあ?」
正直、ある意味文字通り工作員すぎて、図工の時間と間違えてる気がする。
秘書も表情が妙に複雑そうだと思ったら、こういうことであったのか。
装甲版の装着が開始される。工兵は図面を直接みたわけでなく、
くみ上げるだけなので何の違和感もなさそうだ。
「・・なんか、思った以上にカッコウいいな。これ」
「ええ、確かに・・。これでよかったんでしょうか」
なんとも複雑なまま気持ちのまま、新たな脚部が完成したのだった。
------
クレスト本社を背にし、にししと笑みを浮かべる女。
堂々と正面玄関からの退場をしたため、警備員も全く警戒しなかった。
「ふふふ、炸薬よ。ロマンは大切だよ、ロマンはね。
そう、効率的なのはいいけどね、フレームは形状が命。
そこに命をかけずして、何が開発者か!」
サングラスを外し、ボサボサの髪を整え、にやりとクレスト本社ビルに笑いかける。
ここでもまた、鏡野は余計なことをして喜んでいるのだった。
彼女がCR-LH89Fの形状向上に貢献したことは、誰も知らない。
終
あるときは様々な研究を重ね、火薬が爆散する音に酔いしれ、
またあるときはより効率的なACの運用法を考える。
全ては効率の良いものを重視し、とにかく機動力を削がない処理のため。
我がクレストは、そんな弾薬費より効率を重視するレイヴンの味方である。
「さて、ミラージュに拿捕されてしまった職員がいたようだが、
彼は無事脱出できたのだろうか。誰か、報告を頼む」
クレスト第三技術開発部門所長、通称「炸薬」が難しい顔で問いかける。
「工作員として潜り込んでいた者は、
ミラージュのMTを奪って逃走。途中にミラージュの追っ手に追いつかれたようですが、
直接契約をしたレイヴンのお陰で、なんとか命を落さずにすんだようです」
炸薬の秘書が報告書を片手に喋る。
ほう、と炸薬は関心した表情をみせた。
さすが根回しはしっかりとしてある。安心した。
しかし、スパイに抜擢された男が見当たらない。不可解である。
「・・ちなみに、命からがら逃げ延びた工作員ですが」
ぺらぺらと報告書をめくりながら情報を確認する秘書。
「どうやら、助けてもらったレイヴンに恋煩いをしてしまったそうで、
今日はこれないだそうです」
「ああぁほぉかぁあ!」
思わず声が裏返ってしまった。マイクがあったら破壊できんばかりの声量である。
ごほん、と咳払いをして場の空気に仕切りなおしをかける炸薬。
「まあ、いい。とりあえず、奪取したデータをもとに、
新たなパーツ案について論議しようじゃないか」
おい、と秘書に指示をだす。
中央スクリーンに映し出される、ミラージュの開発模様。
どうやら新たな試みを施したマシンガンのようだ。
「で、このパーツに関して、レイヴン達の反響は」
「最低、の一言です」
そうだろうと思った。最近、ミラージュ開発部門に就任した鏡野は、
おかしなロマンと妙な性癖をもっていたはずだ。
あいつが関わってからというもの、
ミラージュの兵器にはなんとも言えない癖がついた気がする。
「・・ふむ。エネルギーマシンガンか。だが、やはり我が社のシルフと比べても、
機動性確保もできぬし、やはりマシンガンは実弾に限るな」
どうやら、データは全く参考にならなかったようである。
「ふむ、こうしてミラージュが開発に関わったものは、
性能バランスは確かに良いものが多い。
しかし、いかんせん稼動に要するエネルギー量が気になるところだ。
これを改善したフレームパーツについて、今回は考えてみよう」
鏡野と違い、炸薬は効率を求める。さすがに段取りも効率的であった。
------
研究室に集まった総勢6名の工兵。
それぞれが席につき、中央のスクリーンを見つめる。
「それでは始めようか。まず、基準とするのは、我が社が誇る万能パーツ。
CR-LH69S、これを元に改良を加えていこうと思う。
それぞれ何か意見があるならば、考えを言ってみて欲しい」
秘書がパーツデータや、他社の製品と比べた表の記載された用紙を配る。
一人の工兵が立ち上がり、データ表片手に声をあげた。
「CR-LH69Sについては、かなりのバランスを誇っていると自負しております。
しかし、初期生産されたこれらは、
レイヴン独自のカスタマイズが出来ない仕様になっております。
デビューしたてのレイヴンは気にならないでしょうが、
さすがにこれではせっかく基本性能を高めたLH69Sが不憫というものです」
工兵の一人が席につく。
確かにもっともな意見だが、これについては、
すでに生産ラインにチューンナップ出来るようにしろとお達しがいっている。
まあ、工兵にまでこれらの情報が伝わらないのも無理はないが。
「次は、私ですね。
ミラージュの製品を見る限り、かなり防御面のバランスが重視されています。
我がクレストは、どちらかと言えば局地戦にやや重きがおかれている。
そこで、高次元でレベルのとれた脚部の開発が宜しいのではないかと」
「ほほう、それは良いかもしれない。ほかに、何かないかね」
炸薬が辺りを見回す。すると、どうにも挙動不審な研究員が一人いた。
髪はぼさぼさで、何故だか知らないが白衣にサングラスと怪しげである。
「そこのキミ、何か言いたげだな。いってみろ」
「は、はい。やはり、せ、性能面を重視することも重要ではありますが、
こ、こ。ここは一つ、ビジュアル面のことも考えてみるのは如何でしょう」
女研究員がオドオドした様子で、わたわたと答える。
こんな奴、いたっけか。
「なるほど、確かに。LH73SSAのように、何かにつけて特化したり、
それなりの能力をもたせると、どうにも不恰好になりがちだな。検討しよう」
その後、いろいろと意見は出たものの、目ぼしいものは特に無かった。
「宜しい、ではまとめよう。
まず、高次元でバランスの取れているものだが、実現は難しいだろう。
そこで、運用のしやすさに重きを置いてみようと思う。
ある程度の防御力をもたせ、重量もLH69Sより軽量化する。
さらに、逆間接並の扱いやすさを目指し、極限までエネルギー消費量を押さえ込む。
こうすることによって、負担も減り、ブースタの運用も楽になるだろう」
秘書、工兵一同、うんうんと頷いている。
どうやら概要はしっかりと把握してもらえたようだ。うれしいことだ。
しかし、やはり女研究員などいたかどうかが思い出せなかった。
「それでは諸君、開発に取り掛かろう。宜しく頼むぞ」
そうして、意気揚々と工兵達は工場へ戻っていった。
-------
「なるほど。これは確かに、形状にも凝っているな」
ヴィジュアル面を重視するということで、工兵も形状に苦労したらしい。
LH69Sはどうにも寸胴なイメージがあるため、フレームは軽量級を元にし、
そこに装甲を足していくことで、中量脚部としたそうだ。
細身を元にしたとはいえ、なかなかの見た目である。
うんうん、と爽快な気分に浸っているところに、
秘書が何とも言えない表情で声をかける。
「炸薬所長。どうやら、工作員が潜り込んでいたようです」
「なんだと」
まさかの報告に思わず非効率的な大声をあげてしまう。
ここで騒ぐのはまずい、実にうまくない。
「して、工作員は何をしでかしたのだ」
「それがその、いきなり『クレストはクレストらしく、角ばってろよおお!』
と叫びだして、装甲版の形状をより鋭利に角ばらせていきました」
「は、はあ?」
正直、ある意味文字通り工作員すぎて、図工の時間と間違えてる気がする。
秘書も表情が妙に複雑そうだと思ったら、こういうことであったのか。
装甲版の装着が開始される。工兵は図面を直接みたわけでなく、
くみ上げるだけなので何の違和感もなさそうだ。
「・・なんか、思った以上にカッコウいいな。これ」
「ええ、確かに・・。これでよかったんでしょうか」
なんとも複雑なまま気持ちのまま、新たな脚部が完成したのだった。
------
クレスト本社を背にし、にししと笑みを浮かべる女。
堂々と正面玄関からの退場をしたため、警備員も全く警戒しなかった。
「ふふふ、炸薬よ。ロマンは大切だよ、ロマンはね。
そう、効率的なのはいいけどね、フレームは形状が命。
そこに命をかけずして、何が開発者か!」
サングラスを外し、ボサボサの髪を整え、にやりとクレスト本社ビルに笑いかける。
ここでもまた、鏡野は余計なことをして喜んでいるのだった。
彼女がCR-LH89Fの形状向上に貢献したことは、誰も知らない。
終
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