「アフリカ独立SS」(2008/09/22 (月) 20:26:12) の最新版変更点
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ところでレイヴンおよびリンクス諸兄
前スレあたりでほざいたORCAEND後のアフリカ独立SSのプロローグ的な物ができたんだが、投下してもよいものだろうか
正直あちこち説明不足ではあるのだが……
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/07/27(日) 02:26:04.53 ID:CEi6f0eG0
ORCA戦争。
あるいはクローズ・プラン。
それが、汚染された大地を棄て、空に逃げた人々を地上へ叩き落とした一連の戦争の呼称である。
七月十三日。
この日付は今後、多くの人々にとって最も忌まわしき日として記憶され続けることとなるだろう。
そう、“多くの人々”にとっては。
管理者たる企業達は言う。
『この戦争で我々は重大な傷を負った。 しかし、我々人類の可能性は無限である――そう、あの宇宙のように!』
クレイドルという揺り籠から引きずり落とされ、安寧と希望を求めていた人々は、そんな企業の夢物語のような言葉を、そのまま人類の力の象徴として受け入れた。
企業達もまた、“自分たちと同じように”深い傷を負いながら、人類を導くために新たな道を切り開いて見せてくれたのだ、と。
――だが、現実は違う。
ある密約。
企業とORCA旅団との間で結ばれた、力なき者達を切り捨てる、冷酷にして非道なる口裏合わせ。
――企業はORCAを黙認する。
――代償として、ORCAは『企業首脳』の身の安全を保障する。
企業は、自らが揺り籠に飼っていた人々と己らの命を天秤にかけ、結局、自らの保身を優先して、人々を切り捨てたのだった。
ある者は言う。
『企業という管理者があればこそ、人類は生き延びることができる』
『ならば企業は、たとえどれだけの犠牲を払おうとも、人類を導くために常に生き延びる道を選ばねばならぬ』
それが企業の責務であり、企業はその責務のために涙を飲んで犠牲を受け入れたのだ、と。
しかし、そうだろうか?
企業はその犠牲を受け入れなければ、ORCAを止められなかったのか?
そもそもORCAはなぜあのような蜂起を行ったのか。
企業は黙して語らない。
何も教えようとはしない。
知らせず、教えず、ただ宇宙という新たなフロンティアへの夢と希望だけを煽り立て、人々を己の望む方向へ導いている。
果たしてそれが、本当に人類にとって正しい道なのか。
それを考えることすら、今の人類には許されていないのだ――。
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/07/27(日) 02:26:44.64 ID:CEi6f0eG0
「――入るぞ」
不意にドアの向こうから聞き慣れた声がし、顔を上げる。
「……フランソワか、どうした?」
「ああ、お前以外の連中の準備が整ったんで、さっさとその重い腰を上げさせようと思ってな」
日に焼けた肌に映える金髪を後ろで束ね、左目を眼帯で覆った女傑――フランソワ・ネリスは、そう言って口の端を歪めた。
言われて手元の時計を見れば、自分が皆に成すべき仕事を指示してからかなりの時間が経っている。
おそらく、あとは自分が号令を下せば、いつでも出撃できる状態が出来ているのだろう。
――思案が過ぎたか、私としたことが。
らしくない長考を自嘲する。
自分達の行動が実を成すか否かの瀬戸際に立たされ、無意識のうちに不安を感じていたのかもしれない。
「これは失礼した、私もすぐに準備しよう」
「ああ、頼むよ。 連中、そろそろ我慢の限界だからな」
それは恐ろしい、と大仰に肩をすくめて見せながら席を立つ。
そう、もう限界なのだ。
仲間の我慢がではない、我々と企業との対立が、だ。
企業は我々を徹底的に潰すつもりでいる、いや、潰さなければならない。
企業からすれば、独立――それも、如何なる企業の後見もない独立など、認めるわけにはいかないのだ。
それを認めてしまえば、企業がその統治の下で作り上げてきたさまざまな矛盾に対する不満が爆発する。
そうなってしまえば、企業は宇宙どころか、自分達の優越的地位すら失うことが目に見えている。
だからこそ――企業は我々に最後通牒を突きつけ、我々は自らの意志を完遂するために、それを蹴った。
故に、限界。
我々も企業も一歩も引けぬ、全面戦争への臨界点。
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/07/27(日) 02:27:12.30 ID:CEi6f0eG0
「――スペクター」
不意に名を呼ばれ、振り返る。
その視線の先にあるフランソワの表情は――私の眼に狂いがなければ――不安と疑念に揺れていた。
「私たちがこれから為すことは」
名を呼びながら、決して私に目を合わせようとはしないまま、告解をするかのように、フランソワは呟く。
「本当に――正しいことなのだろうか?」
それは、口にしてはならぬ問い。
だが、彼女がそれを口にしてしまったことは責められない。
それほどに――私達の行動は危うく、そして、矛盾に満ちていた。
「……もちろんだ」
その危険と矛盾をこれ以上なく知りながら、あえて私はそれを否定する。
何故ならば、ああ何故ならば何故ならば。
「そうでなくては――我々の声に応じて立ち上がり、無念を残して死んだ人々に、何と言い訳をすればよいのだ」
そう、我々は既にして、自分達が嫌悪し拒絶した、企業と同じ業と矛盾を孕んでしまっているのだから。
「そうか……そうだな」
私の取り繕ったような答えを受けて、それでもフランソワはどこか救われたような表情(かお)をした。
彼女が、自分達が既に抱えてしまっている矛盾と危うさに気づいているかどうか――それは、私の関知しうることではない。
「そうだとも、フランソワ。 我々の戦いは――」
多くの不安と、幽かな希望。
それでもここまでたどり着いた我々が、常に旗頭に立てた言葉を、重ねて言う。
「――全ては、アフリカの大地の為に」
その言葉の持つ意味と重みを、もう一度この胸に刻み込み。
私は、向かうべき戦場へと歩み出した。
――ORCA戦争から数年。
アフリカの大地は、地球上で唯一最大の戦場と化していた。
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/07/27(日) 02:28:00.99 ID:CEi6f0eG0
以上、投下終了
……3レスで収まるとかSSと名乗るのもおこがましかったな……お目汚し失礼
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