「姉弟の絆」(2008/08/12 (火) 01:12:30) の最新版変更点
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姉弟で傭兵業に身を置くレイヴンは実はそんなに珍しいことでもない
生き残るためには僚機との連携が取れるかどうかにかかってくるこの時代
姉弟である私たちは誰よりも確かな連携でミッションを成功させてきた
ある程度資金に余裕が出てきてからはお互いに機体に趣向を凝らすようになってきた
弟は四脚タイプのAC、私は軽量ニ脚のACに、そしてお互いが姉弟たる証のパルスライフルを片手に
機体に特徴が出てきてお互いの役割も明確になってきた。今まで以上の連携も取れる、そう弟も喜んでいた
「スクリー、大口の依頼が来てるわよ」
通信端末に依頼が来ている。
「どんなのー、労力とつりあわない報酬じゃ嫌だぜー」
ソファに寝転びなら弟は内容を聞いてくる
スピーカーの音量を上げて音声が聞こえるようにしてやる
依頼者 :ユニオン
作戦領域 :クレスト中央データバンク
敵戦力 :近接戦闘用MT、逆脚MT、浮遊型戦闘メカ
作戦目標 :動力設備の破壊、敵警備部隊の全滅
「・・報酬51000C!」
いまだかつて無かった大型の依頼に私達は驚いた
複数のレイヴンが参加するらしい。中にはAランクレイヴンのロイヤルミストもいる
「あの男が出撃するなら俺ら大した仕事しなくてもよさそうだな」
私はその依頼を受けることにした。
「ちょっと、なんで弟と別行動なの?」
ブリーフィングで提示された作戦内容に不満の声を漏らす
「MT相手にACを2機同じ箇所に置くのは上策ではない」
「大丈夫だよ姉さん、いざとなったら俺が助けに行くから」
子どものような目をしながら弟が笑って言ってくれた。確かに弟の方が腕がいい。その弟が言うんだから反対する理由もなくなってしまった。
―戦闘システム起動―
警備部隊は実際のところ大したことはなかった
浮遊メカをパルスで落としMTを光波ブレードで刻んで行った
近接MTのような上位クラスのMTが未だに出現していないのが幸いだ
おかげで弾の消費も少ないまま順調にエリアを制圧していった
「カイザー S11クリア」
さすがにA-3だけあってロイヤルミストの制圧速度はかなりの物だった
ロイヤルミストともう一人、あまり聞かない名前の新参のレイヴンが殆どのエリアを制圧している
「くそっ!機体中破!早く来てくれ!」
聞きなれた声を通信機が吼える
機体・・中破・・・?
「スクリィー!!今どこなの!?私が、お姉ちゃんがすぐ行くから!」
「エ、S-32・・」
すぐにマップを開き位置を確認する。ここからだとかなりの距離がある
私は今の持ち場を離れてS-32まで急行する。
「パトリオットどこへ行くんだ!任務放棄か!」
報酬なんていらない。私には弟が必要なんだから
「スクリィ、スクリィイ!!」
目の前に立ったMTはブレード光波で両断していった。パルスライフルを乱射し邪魔な物は排除していった
そんな時に
―ピッピッピッピッ―
エネルギー強制充填、チャージングのアラートがコクピットに鳴り響く
「う・・あ・・・」
ブーストもウンともすんとも言わない。ブレードに光がともらない。目の前の薄いフェンスを壊すことが出来ない
「うわぁああああああああああ!!!」
獣のような叫びを上げた。大いに取り乱した私に通信士が
「落ち着けパトリオット、スクリーミングアニマルの近くにもレイヴンがいる」
「ふ・・はぁ・・」
どうやら多大な戦果を上げているあの新入りが近くにいるらしい
あれだけの実力があるレイヴンが近くにいるなら大丈夫よね
少し落ち着きを取り戻した私はENが回復するのを待った
通信機にノイズが入る直後に通信がはいる
「もう、もたない・・」
ノイズが大きくなり、最後に「姉さん」と呼ぶのが聞こえた
現実が目の前に立ちふさがった
近くレイヴンがいたんじゃないの?ねぇ?なんで?
ミッションが終了した後に通信士に問い詰めた
「彼が部屋に到着するのとほぼ同時だった・・・」
惜しい男を亡くした そう言った
本当に間に合わなかったのだろうか、行き場を失った気持ちを抱え数日が過ぎる
クレストから依頼が来た。施設に入ったACを排除して欲しいそうだ
私はそのACを見て、依頼内容は一切読まずに依頼を受けた
弟の仇をうつんだ・・・
ダクトに侵入したアイツはもう中ほどまでに進行している
あと1分も経たずに遭遇するだろう。操縦桿を握る手に力が篭る
電磁波が少しずつ機体を蝕んでいくがそんなことはどうでもいい
ダクトの上方からACが降ってくる。私はパルスライフルをエネルギーの持つ限り連射する
奴のACの装甲をパルスの熱が焦がしてゆき着実にダメージを重ねていく
だが敵もあの時の私の様に被弾に構うことなく自由落下してくる。そして落下速度を乗せてブレードを振り下ろす
パルスライフルを持った右腕が肩口から切断される。私もブレードで応戦しようとした
奴が落下中に展開していたと思われるオーバードブーストの出力をそのまま体当たりに使ってきた
私の機体は巨大な振動と共に吹き飛び、私の意識はそこで途絶えた。
次に目覚めた時は医務室だった
あのまま私は気絶してクレストの人間に救助されたらしい。
当然任務は失敗し、機体は再起不能になっていた。
そして私の体も、電磁波の影響を受けすぎていてもう二度と傭兵家業には戻れないそうだ
だけど私はあの時アイツが、あの人が「すまなかった」そう言ったのが確かに聞いた
(本当は分かっていたんだ。あの人が弟のために全力で進行スピードを速めたのだって知っていた。それを私は・・・)
涙をこらえていると傍らに小さい袋を見つけた。
中にはキーホルダーが入っていた
「パルス・・ライフル・・?」
型番の違う二つのパルスライフルのキーホルダー。誰が送ってきたかはすぐに見当がついた
こらえていた涙がついに零れ出した
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