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「第5話 -始まり-」(2006/03/17 (金) 21:12:43) の最新版変更点
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「AIパターンオールG、チップ正常認識。」
「ベースロジック確認OKです。」
「メインシステム起動、スタンバイ入ります!」
試合直前、最後の最後のチェックが終る。あとは自分を信じて結果を待つだけだ。
『これより、ボトムリーグシングルマッチを行います。
グリッド1、チーム「イリオモテ」、AC「ホルスグラウンド」!
グリッド2、チーム「ヌガルムポート」、AC「ブラストロン」!』
そして戦いは観客のいない静かな場所で始まる。
『REDYE・GO!!』
アナウンスが入ると同時に両ACが同時に動く。こっちは後ろ飛びあがり、あっちはすぐさまグレネードを発射を発射。
「戦闘システム起動、問題ありません!イルスさん、今日こそ勝ちますよね!?」
隣でサポートの一人が僕へ聞いた。僕は力強く答えた。
「うん、僕も皆もこの日のためにがんばったんだ。今日は…絶対に勝てる!」
開幕と同時に放った相手ACのグレネード。それを僕のACはジャンプして避ける。そのまま障害物になる市街ビルの後ろに隠れた。
…相手の武装は前回とほとんど変わらないみたいだ。武器腕デュアルグレネードに、両肩グレネード。他には重コアのENEOか。
前回僕と戦ったときに楽勝だったのをいいことに、ほとんど変化がないみたいだ。
モニタをコクピットモードにし、僕のACが見ている映像から判断した。
試合中、アーキテクトは特に何もしない。しないというより「できない」。
一部、“ネイキッド”とかって言われているプログラムを使い、遠隔操作でu-ACをマニュアル操作で動かすアーキテクトもいるが、濃密に錬られたAIと人間の限界では、どちらが優勢かは目に見えているので、それを使うアーキテクトはあまりいないのが現実である。
とにかく、遠隔操作を使う以外では、アーキテクトは基本的に試合の流れを「見守るだけ」である。
ただし、モニタからは様々な情報が流れてくる。例えばロック精度が正常か、機体温度やENは大丈夫かなど。
この試合の中ではそれは大した影響はない。だが、これらの情報は次の対戦で役に立つ。
テストマッチの中でのデータと、実際のリーグでのデータは、やはり誤差がでる。
アーキテクトは、今目の前にある戦いに目を向けながらも、同時に次の戦いへも目を向けなければならないのだ。
相手との距離が離れたところで、僕のACはミサイルをロック、空へと発射した。
上空に上がったミサイルは、地上へ狙いをつけたハヤブサの如く、獲物である敵タンクACへと殺到する。
回避行動をとろうとしているのか、タンクACはノロノロと移動を始めた。
だが、ミサイルが待ってくれるはずもなく、まだ障害物の近くにすらいない動きの遅いACへ着弾。
一気に敵ACのAPが減っていくと同時に、機体温度が急上昇していく。
『まもなく、30秒を経過!』
アナウンスが試合開始から30秒経ったこと告げる。
――これなら1分以内に撃破もできるかもしれないな。
僕は既に勝利をほぼ確信していた。
この30秒間にこっちは飛ぶ、ミサイル撃つ、命中を繰り返す。
それに引き換え、敵ACは回避行動、避けきれず被弾、グレネード発射、障害物が邪魔をする、を繰り返していた。
強固なタンクACだが、ここまで一方的に痛めつけられるとさすがにつらいだろう。
『グリッド2、残りAP50%。』
『グリッド2、機体温度が上昇している!』
『まもなく、1分を経過!』
アナウンスが何かを告げるたびに、敵ACの装甲が剥がれていく。
さすがに1分以内は無理だったが、完全に流れはこっちにあった。
飛び回って相手から距離を離し、ミサイルとスナイパーライフルを当てていく。それと同時に、飛び跳ねることによって敵ACの二次ロックを誤魔化して被弾率を下げ、同時に障害物に足を止められにくくなる。
「クソッ!なんで攻撃があたらない!!前回は惨めなくらい速攻で撃破されたクセによぉ!!」
ヌガルムポートのアーキテクトは焦っていた。
前回は文字通り楽勝だった。正面に強いタンクで正面から攻めようとしたら、相手から正面に突っ込んできた。
結果、あまりに早い決着、おかげで彼は頭の中で浮かれていた。自分の組み立てたAC、AIが完膚なまでに相手を打ちのめした、と。
自分に酔った彼は、ACアセンブリはおろか、AIにもほとんど手を加えなかった。
高火力、高防御力でゴリ押しすれば勝てる、そしていずれはA級ライセンスも夢ではない。
しかし現実はそうもいかなかった。あるのは、その「楽勝」だった相手に、今は自分が一方的にやられているという事実。
「…あぁぁぁぁまずい……一度勝っている相手に、こんな無様な負け方は…」
アーキテクトは頭を抱えた。そして半泣きで大声で喚き散らし始めた。
「俺の…オーナーは…無様な負けが…嫌いだ…こんな、あぁぁあぁあ俺は消されちまう!!!」
そんな彼を、チーム・ヌガルムポートの整備員達は、嫌な顔をしながら遠巻きに見ることしかできなかった。
『グリッド2、残りAP10%!グリッド1、相手をまったく寄せ付けない!!』
ついに敵ACのあちこちから煙と火花を吐き出すころ。
「イルスさん、なんか…拍子抜けするほど、あっけなく終わりそうですね。」
「そうみたい…だね。これまでの被弾がEOのエネルギー弾が3回だけだしね。この前の対戦のときのまったく逆の戦法。退いて退いて撃ち込む。」
相手の機体は、機体の制御がおかしくなったのか、あるいは移動制御にキャパティシィを振り分けてなかったのか、障害物に引っかかって飛んだり跳ねたりを繰り返していた。
さっきから攻撃すらしていない。たまに発射したかと思うと、ビルに当ててその爆風で自分の熱をあげていた。
まるで、まるるで相手にてが出せなくて、大声で撒き散らしているみたいだった。
そして、最後のミサイルが命中し、遂に黒煙を噴いて敵ACが活動を停止する。
抜けるような青空に黒煙がよく映える。
『グリッド2、行動不能。グリッド1の勝利です!』
よしっ、とおもわず僕はグッと握りこぶし」を作る。後ろでは整備員が「やったやった!」と騒いでいた。
久しぶりの勝利だ。この調子で次も勝ち進み、そしてBリーグ制覇だ。
「イルスさん、やりましたね!いやぁ久しぶりの勝利でうれしくてうれしくて…」
…とりあえず、今日は久しぶりの勝利に浮かれるとしようか。
僕はひとまず、大喜びで今にも踊り出しそうな半泣き整備員達と一緒に勝利を喜ぶことにしよう。
――次の日…
「何々…“ボトムリーグ所属のアーキテクト、謎の死。酔っ払って海に転落死か?”」
ガレージで新聞~技術が発達した今でも紙媒体は人気である~を見ていた僕は、そんな記事を見つけた。
「事故死したのは、ボトムリーグのあるアーキテクトで、同チームのその日の午後に試合があり敗北を決したときからすでに半錯乱状態であったという、か。」
どっかで聞いたような話だが、まあどうせただの事故だろう。
と、そこに整備員が部屋に入ってきた。
「イルスさん、ACが帰ってきましたよ。」
「あぁ、ありがとう、すぐ行きます。」
椅子から立ち上がり、新聞を畳んで座っていた椅子に放り投げる。そして僕はガレージへ向かった。
「おー戻ってきたかーおかえり~!」
なんとなくACに向かって「おかえり」を言ってしまう。なにしろ昨日僕たちを勝利へと導いてくれたのだ、丁重にお出迎えをしてあげたかったのだ。
見た目にも、ほとんど機体にダメージは受けていなかった。EOを数発もらっただけで、装甲に少し焦げ目が付いただけだった。
貧乏アーキテクトにとっては十分すぎる戦果だ。
とりあえず、武装解除させフレームの修理をするように指示していた。そこに…
「やあ、イルス君。」
意外な人物がガレージに現る。
その人物は――
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