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「デュミナス、デュミナス…しゃいにんぐすとりーむ!!」(2007/07/16 (月) 12:45:02) の最新版変更点
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まぼろしがみえる。
狂っている。
この狂った世界を見るわたしもかなり狂っているのだろう。
狂っている。
格納庫の隅には介護用テクポッドの上に寝て、泣いているオペレータ。
狂っている。
眩しい一つ目をしきりに動かし、ただ与えられた仕事をこなすテクポッド
狂っている。
目玉を眼窩から半ば飛びださせながらも、作業を続ける整備員。
……狂っている。
だが、そんな事にもわたしは何も思わない、思えない。 感 じ な い 。
この渇き逝く世界で。わたしが何を得。何ができるのか。
それが解るまで。
~@:考えて?感じて?いったい其れは何になるんだ!?~
これは夢。
足が地面から浮いている。
何時寝たのかが分かってる。
きっとわたしの身体はいまベッドの上にいるのだろう。
そしてわたしの前には、
やわらかな笑みをたたえた少年が立ち、私に問う。
「あなたはこの後、どうする気ですか」
彼は訊く。だが、この質問に答えられない。わたしは意味が分からない。
「あなたはこの後、どうする気ですか」
これで数えて798回目の質問。
これは夢なのだが。これは夢で無くなっていて。あれ……?これは夢。現実?さあ、……。
夢と現実が入り混じったこの空間には、わたしことデュミナスと、少年の、二人で成り立っていた。
しかしこれは夢なのであった。朝日が見えた。わたしは覚醒した。
・・・
朝。冷たい空気が開け放たれた窓からわたしの肌を貫いた。昨日の夜は暑かったが、流石にまだ朝は寒い。
わたしは風邪を引くといけないので窓を閉め、寝間着を脱ぐ。
少し大きいワイシャツと履きなれたジーンズを穿く。
昨夜、つけっぱなしにしていたラジオからは雑音が聞こえていた。
またやられたようだ。誰に。……所属不明の……破壊ACにだ。
――――破壊AC―――――
その名のとおりAC。破壊を齎すもの。
目的はわからない。
ただその力を振るい、町などを壊し、去っていく。
それは我々を脅かす存在。
―――説明終了――
電波塔が壊されたのだろうか?……いや放送局かもしれない。
だがそんな事は知らない。訳の分からない事には首を突っ込まない方がいい。
そう、わたしは肝に銘じていた。
だが、最後にはわたしはこの世界の根本へ首如きでは済まされず、
身体全体、否、機体ごと突入する事となるのは今は知る由も無い。
早々と朝食を済ませる。わたしは車に乗る。そして目的地を打ち込む。
車は走り出し、私を送り届ける事になる。
愛機バミューダの待つ格納庫へ。
任務だ。
わたしは僚機としてレイヴンにつくのだ。
道。トンネル。トンネル。道。道。トンネル。
幾つものトンネルと道を駆け抜ける車。
何故こんなにトンネルが多いか、わたしにはわからない。壁がある世界。産まれた時からこうだった。
多分、その時は誰も知らなかったと思う。
そこが、レイヤードと言う地下世界だということに。
車外をのぞくともくもくと煙が上がっているのが見える。
折れた電波塔が燃えていた。
その煙は限りある空の向こうへ消えていった。
格納庫はもうすぐだった。
格納庫ではグローバルコーテックスの整備員が数人で大きな作業用の機械を動かしていた。
人間はあまり居なかった。代わりの作業用のテクポッドが大急ぎで駆け回る。
「おお……デュミナス」
走り寄って来るオペレータのレイン。
わたしの手を握り、泣く。膝が崩れる。立つ気が無い。
整備員たちはその光景を無視し、無機質なテクポッドと共に作業を続ける。
「デュミナス……レイヴン、おう、ああ、ああ。」
レインはくるってしまった。
彼女はあの光景を見たのだ。きっと……この前の作戦中に。
・・・
一瞬、静寂。その静寂を打ち壊すように血の様に紅い破壊ACがアスファルトを蹴り、
粉砕されたビルをスラスターの炎で焼き、そこいらいったいを破壊し尽くした。
濁った大気は熱いイオンと、焼け焦げた肉の匂いで充満した。。
生き残り、餓えた人々は死んだ同胞を食べた。旨そうに。
狂った。狂った。発狂。
狂いは連鎖する。延々と廻る。
その狂気はウィルスで感染する。
その狂った光景を、見、精神が焼き切れた者に感染する。
・・・
ウィルスがすぐに発症するとは限らない。ショックが必要だ。ならば……きっと、あの電波塔のせいだろう。
レインは泣き崩れ、膝を折り、果ては床に我が身を委ねた。目は虚無。もう彼女にはわたしが誰かもわからないだろう。
次第に泣くことにも疲れ、いひひぃい、と奇妙な笑いのみを漏らすようになった。
わたしは狂った彼女をテクポッドに預け、バミューダの元へ急ぐ。
その途中、誰かに目が合う。
見覚えのある透き通った肌。薄い唇。
あの夢。今もはっきりと思い出せる夢。
その中の少年が、私に向かって、笑った。折れた百合のように儚かった。その後本当に折れた。畳まれた。小さくなった。四角くなった。
わたしは瞬きをした。次には彼は消えていた。
毎回のように現れ笑っていく彼は誰なのだろう。それはまだわからなかった。
……何時もその笑みはわたしの歩調を狂わせる。
・・・
雨が降る。それは豪雨。その雨はわたしを吊るした輸送機に打ち付けられる。
だが鋼鉄で出来た輸送ヘリはその様なもので、落とされるものではない。
そのまま突き進む。進む、進む。そして、静止。
レイヴンの乗ったACガンザリックに付けられた金具が音を立て外れる。続けて、わたしのバミューダ。
その真横をトループ1(三機の戦闘機)が通り過ぎる。そして、わたしの目の前で、爆散。
残骸は地に降る。
落ちた音は聞こえない。
音はガンザリックが大地を踏み抜く音と制御ブースタの轟音でかき消された。
続いてバミューダも降り立った。スラスターを噴かして姿勢を立て直す。その後、ジグザグにACを追従。
『レイヴン。敵の進攻は予想以上に早い。充分ちゅう……うああああああああああ!!」
退避中であった輸送機が無数の鋼鉄の弾丸によって貫かれた。
爆音に貫かれた豪雨はその爆発を中心として球状に広がった。
だがその音ももうわたしの耳には入ってこない。
わたしは任務の事しか考えない。
もうわたしを止められるものは誰もいない。
右手にガトリングガンを構えた蒼い破壊ACが2、3、4、5。全部で五体。
そのACたちを囲んでさながら壁のような役割を果している破壊MTがそれぞれの前に立ち先行する。
こいつ等を全部始末しなくてはならないのだ。
わたしは中央マルチスクリーンをタッチし、戦闘モードを起動する。
果たして、我が愛機バミューダは死の海域へと変貌す。領域に入った獲物は逃さない。
《 バッテリーから、メインジェネレータからの直接供給へ切り替え……切り替え完了。 》
《 火器管制回路のリミッターを完全解除……全兵装への電力供給がスタートします。 》
《 メインシステム……システム、オールグリーン。 》
《 メインシステム、戦闘モード起動します。 》
・・・
戦闘記録.
作 戦 名:密林地域絶対防衛戦
成 否:成功
被 害:戦闘機×3、中型輸送機×1、MTガルバリー×1
被害総額:500000C
備 考:
被害は多大. だが作戦は成功した.
レイヴンは意識不明.
戦闘機、輸送機のパイロットは死亡を確認.
MTパイロットについては死体が発見されていない. 捜索は続行される予定.
なお研究用に回収されるはずだった撃破した敵機動兵器は十機だったが、回収に成功したのは九機.
破壊MT×5、破壊AC×4.
破壊AC一機が見つからなくなった. 川底に沈んでいるのではないかという見解が強い.
これの捜索もMTパイロットの捜索と並行して行う予定.
none
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