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第珀章「孤独」

製作:touhoudaisuki8488

制作日:2015/05/25 分類:短編小説

※ある意味物語になってるので本題は蛍光ペンで塗りつぶされてると思っていたのか?


 痛みには慣れているつもりだった。傷つけられたって傷を抉られても、決して死ぬことはないなんて事は解りきっていたから。

でもね。時折不安になるんだ。まぁ…何と言えばええんやろうな。

一人でいるときとか、雨の降る冷たい大地に手を置いて一人黙り、座り込んでいるときとか…

不安になるんだ。絶対、もうそんなことは有り得ないって解っていてもだ。

━━━━うちはこのまま消え去るように死んじゃうんじゃないか、という不安…

身体を傷つけられたら痛い。痛いのは慣れていても…

精神を押し殺され、心を踏み躙られ、心を傷つけられた。心の痛みには慣れることができないんだ…

…うちの柄じゃない?そんなことはわかっているよ。うち自身が一番解っているよ。でも事実だ。

うちは━━

……あれ?なんでうち、あなたにこんなこと話しているんやっけ?

 

頭が揺さぶられる痛み。

がらがらと枯れた声しか出ない喉。

息苦しい。暑苦しい。怖い。落ち着かない。

部屋の窓辺に敷かれたふとんの上で、うちはうつぶせになりながら

うち━━━藤原妹紅にして光内蛍は一言、誰かに向けているわけでもなく、がらがらで別人のような声で呟いた。

「…風邪か」

げほ、げほ、ごほ、と何度も咳が出る。あぁー、だりゅぅー、だの言いながら左足を毛布の上に置き、毛布に入っている右足をぐいっと持ち上げ、左足に掛け丸くなり、うちの高温に耐えられる特殊な素材の使われた体温計を脇に挟む。

少しすると、ピピピ、ピピピと電子音が伝わる。脇を開けて体温計を取った。

「…39.1か。参ったな」

数千年生きてきた中で、自分の身体に関する大抵のことは手を取るようにわかる。

原因は明確だ。あの輝夜のせいだ。「こんなにもどしゃぶりの雨水の中で、あなたは炎を使えるのかしら?」とか言ってた。もちろん、体内から放出する不死鳥の炎は雨など敵ではないのだが、私の身体は雨に浸り、気がつけば身体はびしょ濡れだ。戦いの中で疲れてしまったうちは、その場で倒れ込み、意識を失った。

風邪なんて生きてきた中で何回と起こしてきてるから風邪を引いたことには何も言わない。

しかし、その原因が輝夜であるというのが、うちの怒りを増大させてくれる。

愛と勇気だけが友達だと?…違う。憤怒と暴力だけが友達だ。

「う…カっとなると頭に痛みが。偏頭痛は辛い…熱があるから尚更…」

レウスのことを考えると、レウスと話がしたくなった。枕元にちゃんとレウスが眠っている勾玉があった。ザー、ザー、と轟音を立ててまで激しく降る雨のなかを一人で飛行なんてするわけないだろう。

そう考え、勾玉に触れるが応答しなかった。

「…留守か。きっとセティかポモナだな。やれやれ、寝込んでいるとはいえど、大切な私の守護龍だぞ」

そうブツブツ言いながら心を鎮ませることに成功し、寝返りを打った。治ったら、お仕置き天国でミンチにしてやる。セティも一緒にだ。と、そう心に決意した。

「風邪引いたの…けほ、久しぶりや」

蓬莱の薬を口にして不老不死になったからとがいっても病気にはかかる。違いは免疫力が並大抵ではないことか。だから滅多に病気にはかからないんだよ。風邪をひいたのは…確か今からざっと300年前くらいだったか。と、考えていると再び激しい倦怠感に襲われる。

「…うにゅぅ。あかん、今は寝よう。うん」

こんな状況で何かをするわけにもいかない。今うちにできることは早く治すことだ。そう判断したうちは少しでも体温を上げるため、布団に潜り込んだ。暗くて暑苦しいが、布団に潜り込むのも久しぶりだった。外の世界(並行世界)での自宅以外では、まずこんなことはしないからな。早く治せば早く輝夜を殴ることができる。━━━逆に早くしないと輝夜に何と言われてからかわれるのか、想像するだけでも腹が立つ。

「喉渇いたな…おーい。セティ。けほ、水をくれぇ」

部屋にうちのがらがら声が流れるが、誰からも返答もなく、シーンと、静まっている。

「…うわぁーん。孤独や」

…あれ?いつぶりや。うちがこうして孤独になったのは。不老不死になってからだと、800年ぶりかな。そんな感情をぽつりと呟いてからしばらく、むにゃむにゃとした中に意識が落ちた。

 

 

 

「……んー…う、にゅぅ?」

しゅんしゅん、という蒸気の音、カチャカチャ、という金属音で目が覚めた。一瞬泥棒かと疑ったが、自分の家であることを思い出すと疑いは自然になくなった。

知らぬ間に額にはピタっとヒエーぴたシートが貼られていた。傍らには「( 0w0)ノポキャリスウェット」と、レウスが描かれているガラスのコップが置かれていた。

━━━こんな事をするのは。

セティと思ったが、今日は平日。いない時があると知るとコップの横にあったスマートフォンを手に取り、時間を確認した。現在の時刻は16:54となっていた。うちの住むここ「グランドマスターズ総合本部」では、食事は18時に大食堂で全員で食べることになっている。セティはいつもその少し前に戻ってくるので、セティではないと断定し、スマートフォンを閉じると、後ろ蒸気の音がした場所から

「ふぇー!溢れた!み、水ぅぅぅぅぅ!」

と、聞き慣れた女性の声がした。あぁー。と、誰だかわかったうちは、ゆっくりと身体を起こし、布団を出て、少し歩いて蒸気の音のする部屋の障子を、そっと開いて覗き見た。

「おはよー、でもまだ寝てなきゃあかんよ」

あざとく私を見つけたそいつは、粥をおたまで掻き混ぜながら、そんなことを言った。

「…うるさいなぁ。寝過ぎも身体に悪いんだよ。てかいつ来んだよ。この変態紅茶巫女が。またお金集りに来のか?」

非応なしに上昇する体温と、そのせいで赤くなった顔を隠しつつ、つい暴言を吐いてしまった。

「今はそれどころやないやろ?まぁ、元気そうやし、起きたんならえっか。ほいこれ」

そんなうちの言葉を軽くなしながら、彼女はうちに体温計を渡した。なんの変哲もないただの体温計。どこにでも売っていそうな、普通の体温計だ。

「…おい…これドクターストアで売ってる体温計だろ…。これでうちの高温測ったら…けほ、熱暴走すっぞ?」

「おふとぅん焦げてないから大丈夫やろ?それに妖術なんやろ?無意識に発動するもんちゃうやろ」

「…いま、まぁ、そうなんやけど…」

不承不承、体温計を口にくわえる━━と、これでええんやっけ、という疑問が浮かぶ。なにせうちの専用の体温計は脇で挟む体温計だからだ。

「にゃあ。ほれ、ほうでいいんふぁ?」

体温計をくわえながらだったので、呪文みたいな言葉になったが、どうやら伝わったらしく

「せやで~。舌の下やで」

と返してきた。よくわかったな、我の呪文が。と我ながら感心すると思っていたのか?した。

「お粥できたら持っていくから、オフトゥンで横になっててええよー」

「いや…椅子で待ってる…」

軽く?応え、うちは椅子に腰を下ろす。まだ頭がボーッっとするが、誰かに食べさせてもらわないと食べれないほど苦しいわけではなかった。

口先で体温計をレロレロレロレロ(ry上下させながら、改めて彼女を見る。彼女はお盆にお粥を入れ、レンゲを載せている。続けて、買ってきたと思われるコンビニのビニール袋から、梅干と鰹節を取り出すと、ひょいとこちらに視線を向けた。

「!?」

見ていたことが知られると恥ずかしいので、咄嗟に目を逸らす。机に目を落とすうちに、彼女の声が聞こえてきた。

「梅干…食べられなかったっけ?」

顔をあげて再び彼女の方に目をやると、ちょっと寂しげな顔をしていた。

「いや、梅干は食べられる…安心して」

お粥に梅干を入れたことがないだけであって、梅干が食べられないわけではない。

「ほーい。もー少しで出来るんやけど。まだ帰ってこないんかなぁ」

「…ん?お前以外にも誰か来る…ケホ、か?」

少しづつ身体が熱くなっていくのがわかる。でも、そんなことより彼女の発言に耳を傾けた。

「うん!もう少しで来ると思うんやけど」

と、話していると、サーッと障子が開く音がした。

「ふぃー。ただいまー。おっ?起きてたか」

と、びしょ濡れの金髪美少女が目に映った。

「ちょっとー!びしょ濡れやない!これで頭拭きなさい。可愛い妹が風邪ひいたらうち泣くで」

彼女は妹にタオルを渡していた。彼女が目を逸らしているうちに白い蒸気が勢いを増した。

━━ちょっとカット(キング!クリムゾンッ!!

少し遅れて、手元にレウスの鱗柄が描かれたレンゲが置かれ、私は視線を上げた。

「おねーちゃんー。もー体温計はええやろー」

「っ!?」

あ、ありのまま起こったことを話すぜ!いま、うちはレンゲが置かれたのでこれからおかゆが置かれる!ようやく食べることができる!と思ったんだ。そして目線をあげたら彼女の顔が目の前にあったんだ!…な、何を言っているのかわからねぇと思うが、うちも何があったかわからねぇ。瞬間移動とか、THE・Worldとか、そんなちゃちなもんじゃ断じてねぇ!もっと酷い巫女の片鱗を味わったぜ…。

生きているもの、驚きが限界突破すると、声がでないらしい。うちの口先から体温計を外す、彼女の顔がすぐ目の前にあったときのうちがそうやから。

「えー、まだ38.1かぁ…まだちょっち高くない?って、おねーちゃんどーしたの?」

「ふぁ、っつ、ざ、どぅぇいとぅ、とぅどぇぇぇぃ!?」

今一度体温を測ったら、2~3度は間違えなく上がっているだろう。

慌てるうちを見て、すこし不審がったような顔をしてから

「…んー」

こつん、と

額を、うちの額に当てた。

「!?…どぅ、ゆー…チルノ……?」

突然の出来事に頭が回らなく、意味不明な発言をするうちを尻目に、彼女は「ちょっち上がったんやない?大丈夫?」などとほざいている。

あ。

やぴゃい。

頭がくらくらする。

/(^o^)\ナンテコッタイ。

熱暴走を起こしたのは。

体温計じゃなくて、うちだったのか…!そ、そーだったのかー!

「………!」

ちらり、と目に入ったのは、服の間からみえる二つの大きな皮膚の双連山…じゃない!びちゃびちゃ濡れた薄での服が透け、小さな突起物が…でもない!ほかほかと湯気をあげているお粥。うちはそれを見るやいなや、レンゲを右手に取り、うちの右腕がこの状況を打破するには食べるしかないと判断したのか荒ぶりだし、猛スピードで口に頬張る

「がふっがふっふぁっがっあ…げほっげほっ!」

…が、急いで食べ過ぎたせいか、熱い粥が器官に入ってしまい、おもわずむせ返してしまう。

「あぁ、もう急いで食べるからだよー!水飲んでみず!」

彼女が水を入れていると、うちの右側から

「げっほ!うぐっ!あちちちちちちちちちあーーじゃーーーーー!」

と、妹の猫舌に熱いココアが刺激になってしまったらしい。

「もー!タイミングを考えてよー!」

「……っん……んにゅ…」

出された水を言われるがまま、コップの水を飲み干す。本当に節介な女だ。

「……あー、助かった…」

「あーー…もうちょっと早くお湯からあげていれば…!」

うちも妹も落ち着き、ようやく一息付く。

「あっ、ご飯粒ついてるよ」

「ふぇ?あ、悪い」

眼前には、ニコっと微笑む彼女の顔があった。…あ。まずい。墓穴を掘ってしまった…

「ほーい。取れたよーって、顔さっきより赤くない?熱上がってるんじゃ…」

「あ、あーー、いや、それは、なない」

喉から声を搾り出すように出すうちと、心配そうな視線でさらにこちらをみつめてくる彼女。

その顔を見ていると、なんだかいたたまれなくなってしまう。

おもわずうちは、椅子から立ち上がった。勢いよく立ち上がったため、座っていた椅子は、ガタン、と大きな音を立てて倒れた。

「えっと……キチクリはいれてないはずやけど…」

「お前は」

心配そうな彼女のその言葉を遮り、うちは彼女に聞いた。

「何でうちのためにここまでしてくれるんだ。…うちが、どんな人間なのか、知らないわけじゃないやろ」

 

不老不死。

時を飛び越えながら生き

時代を追い越しても死ねない。

神の頭を上から踏み潰す。

道理や常識を覆す。

歴史に弾かれた特異点。

 

「お前がこんなことをしなくても、うちは死なない…死ねない。でも、お前は違うだろ」

人は「老いる」

彼女も「老いる」

妹も「老いる」

人は「死ぬ」

彼女も「死ぬ」

妹も「死ぬ」

私を知ったら

私と関わったら

━━ダメだ。

「風邪が映ったら大変や、さっさと帰れ!」

うちの目から、自然と涙がこぼれていた。彼女の右肩を強く握りしめていた。

痛いのかどうかもわからないが、彼女は言った。

「嫌だ」

そう言って彼女は笑った。

「そうだぜ」

妹までも笑っていた。

「うちが風邪引くより、おねーちゃんが風邪で苦しんでる方が、よっぽど辛いから!」

 

うちと関わった人間は

 

 

 

…死んでいった。

残ったのはあのニートだけだ。

「私と関わった人は!皆、皆死んでいく!お父様も!お母様も!兄弟姉妹も、その子もあの子もそこの子も!」

泣き崩れるうちを、彼女は優しく抱いてくれた。

「それでもうちは、おねーちゃんと一緒にいる時間が幸せやから」

「……」

「おねーちゃんには苦しいかもしれへん。でも、うちの命は短い。永遠じゃない。時間に限りっちゅーもんがある。でも、人間は幸せな時間ほど、過ごしたいものはないの。その、幸せな時間をくれるおねーちゃんのこと、うち、大好きやから」

 

うちは決めていたのに…「人を覚えない、人を好きにならない」と…

けれど、その決意は、あの時。

『さぁ行こう。運命の歯車が回り出す!覚悟はいいか!』

炎ゆらめく雨の下でこう話したとき。

崩れたのかもしれへんな。

 

━━━━14000年後━━━━

「一つ聞きたいのだけれど」

「なんだよ」

「なぜその子は、蓬莱の薬を飲まなかったの?もし飲んでたら、今も貴女と幸せにやっていたでしょうに」

「…そりゃぁ、私だって飲んで欲しかったけどな。ただあの子は別の種類の不老不死だったからね…拒絶反応のこともあって、飲まなかったんだろうさ」

「悲しいものね。現実って、その子の妹さんはどうなったの?」

「過去に大きな戦争があってな。…そのときに、とある神様に殺されたよ」

「…そう。でも、その子が貴女のこと好きって言ってたんだったら、無視してでも飲めばよかったのに…」

「バーカ。あいつが飲まないって言ったんだから、私は何もいわねーよ」

「飲まないって?…どうしてその子は飲まなかったの?」

「『うちは妹紅みたいに強くないからね』だと」

「ふぅん」

「…ところで、輝夜」

「解ってるわよ。御生憎、今日はそんな気分じゃないの。今の貴女の話、いい酒の材料になりそうだから。もう帰って酒盛りにするわ」

「…そっか」

「じゃぁ、また殺し合いしましょ?」

後ろを向き、歩きさっていく輝夜の姿をみた私は、なぜか

「なぁ」

呼び止めた。まぁ、話したいことがあったから。呼び止めたんだ。

「なによ?」

「不老不死って…なんなんだろうな…」

その時、私は━━━━泣いていた。

 

『ねぇ、おねーちゃん』

「なんだ?」

『うちにはもう時間があんまりないけど…ごめんね』

「まぁいいよ。楽しかった」

『短い分』

「あぁ」

『また一緒に冒険しよー!』

「それも、悪くない」

『次は、どんな風に過ごそうかなぁ!楽しみだなー!』

「濃くすればいいんだよ」

「二人の時間を」

『二人の時間を』

ひと粒の大きな雫が、墓石に落ち、それから小さな雫が次々と…

この呟きは、彼女に届いているのだろうか。

「ありがとうな…

 

 

 

 

 

 

 

愛香━━━━」

 

FIN