863 :聖王一味、地球へいく:2008/05/27(火) 01:40:47 ID:kXOqvVrq
なんか書けたのを投下します。

「ジャックされていた次元航行艦、撃沈確認。脱出する機影―――ありません」

その声が艦内に響くとクラウディア艦内は安堵と達成感による歓声に包まれる。

十数隻にも及ぶ時空管理局次元航行艦隊に追い詰められた逃亡者の船は
数度に渡る停船命令を黙殺し、ついには艦隊主砲の一斉射によって宇宙の藻屑と化した。

艦長席でその消え去りゆく艦影を眺めながらクロノ・ハラオウンは嘆息する。

「…終わったのか」

ゆりかごと呼ばれた古代の戦船による絶望的な一撃、そしてその後の軌道上での熾烈な艦隊戦により
ミッドは未曾有の惨禍を被り、多くの人間が命を散らした。
その中には彼にとって認めるのが辛い、名も少なからず存在した。

……それから一年、ゆりかご陥落後、各地へ逃亡していた
スカリエッティ一味の最後の一人を殺し
形は最良ではなくとも
今こうして一連の事件は一つの解決を見た――かに見えた。

「いや、まだだ、あの女の能力がある。映像に映らないなら生体反応も含めて索敵を続けろ」

クロノの一声に艦内に緊張感が戻る。

「しかし、宇宙空間ですよ?」
「あの女にはあの娘もついているんだ。あの娘は何をしでかすかわからないぞ。
目の前の星に逃げ込まれると厄介なことになる、急ぐんだ」

副官の言葉に顔も向けずに淡々と命令を下す。

(それにしても、決着の場がこの星の側なるとはな。第97管理外世界―地球…か)

クロノはこの星出身だった懐かしい顔ぶれを思いだし、自嘲的に笑った。


「きょ、今日という日はやるのよ。だって私は冬木の虎、今宵、この竹刀は血に飢えておる!」
「大河、久し振りに手合わせをしませんか?」
「きゃあああーーー!!?」
「ど、どうしたんです!?大河」

背後から現れたセイバーに大河は悲鳴をあげる。

「セイバーちゃんはダメよぉ。まるで人外だし。私はこの悪魔っ子二号を今日こそ抹殺するの」

大河が竹刀で指した先には関心なさそうに茶をすするカレン・オルテンシアの姿。

「ずず、衛宮士郎、この騒がしい珍獣はなんとかならないのですか?
飼い主としての見識を疑うところですね」

しれっと涼しい顔からは想像しずらい毒に苦笑いというか顔をひきつらせる士郎。
この面子で住むようになって幾日がたっただろうか。
連日、家のあちこちで起きるささいな衝突に正義の味方の心は磨耗し始めていた。


864 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01:42:59 ID:SSAKpBeH
契約・魔法生物関係はルールブレイカー。
使用魔法にはゲイ・ジャルグが天敵だな。

そして支援


865 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01:45:46 ID:kXOqvVrq
その夜、空に光が溢れ異様な空気を現出していた。

「セイバー、どう思う?テレビでも原因は不明って言ってるけど」
「私にも、わかりません。が、悪い予感がします、気をつけてください。
そういえばバゼットはどうしていますか?」
「バイト疲れが出たのかもう寝てるわ」
「この事態に寝ているとは、弛みすぎだ」

空の異変は国の異変。古き星読みを知るセイバーは今起きていることを
相当深刻に受け止めていた。優れた戦士だと思っていたバゼットに失望を禁じ得ない。
その言葉は重く王の威厳を備えていた。その言葉を聞いた凛はただ一言。

「セイバー、ほっぺにクリーム付いてるわよ…」



866 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01:46:47 ID:kXOqvVrq
衛宮士郎は鍛錬を怠らない。投影魔術こそが本領と知ってからは
投影こそがこの土蔵で衛宮士郎が行う魔術。

「――――投影、開始」

その始まりの呪文を紡ぐ。だが、足りない、近頃は足りない。
あるいは、足りている。


「カレン、士郎はまた?」
「ええ、あの、匂いが立ち込めそうな土蔵で1人、行為に没頭しているわ」
「あんた…そういう言い方いい加減やめなさいよ…」


「――――基本骨子、想定」

そう、想定は済んでいる、あの男は妄想の中で勝てと言ったか、
激しい衝撃と裂ける爆音とを連れて
土蔵の天井を突き破り何かが落下して来た。
それは士郎の前に立つ。

「おおおお!?」
「こ、ここは地球?」

それは声を発する。弱々しい衰弱した声は若い少女のものだった。
濃紺のスーツに身を包み、輝く金髪の髪、左右違う瞳が印象的な少女。

「あ、うん。地球だ」
「よかっ…た…」

士郎の気の抜けた答えを聞くと緊張が解けたのか足から力が抜け士郎へと倒れ掛かる。

「お、おい!?」

体を預けてくる相手を受け止めた。そうしてどうするか思案していると当然家人がやってくる。

「士郎!大丈夫!?投影が失敗でもした!?」
「衛宮士郎、生きてますか?」
「ああ、それより…」
「…あんた…まさか、その子」
「まさに駄犬…」

士郎を見た家人の反応は冷たかった…


867 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01:49:27 ID:kXOqvVrq
士郎に対する誤解はすぐに解けた。何故なら、士郎に抱きしめられている少女の他に
血だらけになりながら凛達を品定めするような視線で見ている女がいたから。
両手に五歳程に見える眠った少年を大事そうに抱えながら。

「あっ…ぐぅ…」

少女同様濃紺のスーツを纏った長髪の女は苦しそうに膝をつく。

「ちょっと、あなた酷い怪我じゃない!」

凛の指摘通り女は少年を抱えた手の周囲を除いて全身大小様々な破片が突き刺さっていた。
凛が駆け寄ろうとすると、どこにそんな力があったのか
膝立ちの姿勢から瞬時に体を起こし後方へ飛び距離を置く。
けれどその程度の負荷にもすでに耐えられない体だったのか
次の瞬間、大量の吐血と同時に両足が壊れた。
文字通り機械的に壊れた。
土蔵の底に体が投げ出される。

「がっ……」
「カレン、この子任せた!」

士郎は気を失っている子をカレンに預けると女に駆け寄った。

「大丈夫か、あんた?遠坂、なんとかならないか?」
「ごめん、今宝石持ってきてないわ」

士郎達が自分を助けようとしていると理解した女は…笑った。

「あっはは、まさかこの私を助けようなんてお馬鹿さんが…いるなんてねぇ。
本当にこの世は…馬鹿…ばっか…りだわぁ」

笑った。涙を流して。

「でも…ん、残念…時間切れ…私は死ぬ…わ…ごめんな…さい…ねぇ」

出血は止まらない。何かの放電も止まらない。

「あんた…」
「…最…後に頼ま…れてく…れるか…し…ら?」
「その子のことだろ」

女が死に際して未だ大事そうに抱く子。頼みとすればそれしかない。
その子は女の腕の中安らかな呼吸をしていた。

「ふふ…ふ、か…わいい…わ…ドク…タ」

士郎がその子を受け取ると女は役目は終わったとばかりに静かに息を引き取った。


その日、衛宮士郎一児の父になる…かもしれない。


868 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01:51:29 ID:kXOqvVrq
終わります。短くてすいません。


869 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 02:00:39 ID:VF5aPSpg
クアットロの子引き取るんかい


870 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 02:02:12 ID:W7VIKdyX
>>864
この2つの宝具を心眼で士郎が使いこなしたら、
魔導師(ミッド式)or使い魔に対して完璧反則だな・・・

支援です


871 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 05:47:42 ID:kXOqvVrq
一部抜けてたんで再投下失礼します。

衛宮士郎は鍛錬を怠らない。投影魔術こそが本領と知ってからは
投影こそがこの土蔵で衛宮士郎が行う魔術。

「――――投影、開始」

その始まりの呪文を紡ぐ。だが、足りない、近頃は足りない。
あるいは、足りている。


「カレン、士郎はまた?」
「ええ、あの、匂いが立ち込めそうな土蔵で1人、行為に没頭しているわ」
「あんた…そういう言い方いい加減やめなさいよ…」


「――――基本骨子、想定」

そう、想定は済んでいる、あの男は妄想の中で勝てと言ったか、
今の生活において妄想せずに済む日などない。
ならば、こと妄想に関して衛宮士郎が負けるなんてことは有り得ない。

「――――仮定完りょ…って俺は何を…」

自分が成そうとしていたことに恐怖する。

「疲れて…いるのか?」

そんな士郎の声に呼応するかのように激しい衝撃と裂ける爆音とを連れて
土蔵の天井を突き破り何かが落下して来た。
それは士郎の前に立つ。

「おおおお!?」
「こ、ここは地球?」

それは声を発する。弱々しい衰弱した声は若い少女のものだった。
濃紺のスーツに身を包み、輝く金髪の髪、左右違う瞳が印象的な少女。

「あ、うん。地球だ」
「よかっ…た…」

士郎の気の抜けた答えを聞くと緊張が解けたのか足から力が抜け士郎へと倒れ掛かる。

「お、おい!?」

体を預けてくる相手を受け止めた。そうしてどうするか思案していると当然家人がやってくる。

「士郎!大丈夫!?投影が失敗でもした!?」
「衛宮士郎、生きてますか?」
「ああ、それより…」
「…あんた…まさか、その子」
「まさに駄犬…」

士郎を見た家人の反応は冷たかった…


872 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 07:12:38 ID:fw/kuh0I
>>871
投下乙でしたー
脳裏に『スカリエッティ育成ゲーム“Professor Maker”(略してプロメ)』なんて語が浮かんだのは秘密だ

>>870
その幻想は世に出さない方がよさそうな気がする……気のせいかしら

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最終更新:2008年05月29日 01:57