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新都に着いた士郎達の中に藤村大河の姿はなかった。
彼女はバスを途中で降り、士郎達と別れた。
それは彼女が社会人であり、責任ある立場の教師であるため。
休日ではあるが穂群原学園は教師を集め会議を開く…
大河は突然掛かってきた電話に出、切った後、そう、士郎達に説明した。

「じゃあ、私の分まで楽しんできて。あ、柳洞君そんな顔しちゃ、駄ー目。
今日のことは、生徒であるあなたには、関係ないことなのよ。
生徒会長だからって休日は学生らしく遊ばないと、いい大人になれないわ」

その言葉を一成らに向け柔らかな笑顔で告げた藤村大河は、優しくも芯の強い
大人の女性だった。

「藤ねぇ……」
「士郎が沈んじゃみんな楽しめないじゃないの。ほーら、元気だしなさいって。
わくわくざぶーんは逃げないし、いつでもみんなで来れるわ。
お姉ちゃんはシグナムにはできない大人の責任を果たしてくるねー」

大河はバスを降りると自分が今まで乗っていたバスを手を振り見送った。


士郎には懸念があった。大河が呼ばれる事態とは
始まりを告げた聖杯戦争の余波ではないかと。
自分が襲われたように誰かが犠牲となり屍を晒すこととなったのだとしたら、
自分はこんなところで……

と、気づくとしかめっ面の士郎の顔のすぐ下に、
満面過ぎる笑みを浮かべたはやての顔があった。

「なんだよ」
「なんやろな」

黙して、そのまま視線を合わす2人。
一秒経過―、五秒経過―、十秒経過―――
ジ―――――っという擬音が聞こえてきそうな根比べに音をあげ、
先に目を逸らしたのは士郎だった。

「―――ああ、わかったって。今は忘れれろっていうんだろ」

観念したのか天を仰ぎ見、ため息をつく士郎。
それに満足したのか、はやては小さく頷く。

士郎の降参と共に沈んだ空気はいくらか晴れた。

「あの2人は随分と息が合っている。これを東洋風に言うと
以心伝心となるのですね、ええと一成?」

セイバーは隣にいた、士郎とはやての友人だという一成に声をかけた

「うむ、まぁそうなるのであろう。それにしても、セイバー殿は博識であるな。
正直驚かされる」
「姉からの受け売りですので大したことではありません」

そんな和やかな会話を続ける中、一成の目の前の少女に対する評価は
高いものになっていった。
一目見たときには清楚さと気品を感じさせる佇まいに感心し、
今、士郎とはやての関係への洞察力と知性、また、自分を飾らない奥ゆかしさ。
とても素晴らしい女性ではないかと考えるに至っていた。
ただ、シャマルの妹と聞いて若干近寄らないようにしようとも。

そして、今、冬木市で注目度の高い娯楽施設、全天候型ウォーターレジャーランド、
わくわくざぶーんが、その威容を8人の前に遺憾なく誇っていた。

下着、水着これらのレディース関連の店に入ることは、擦れていない
少年にとって一種、罰ゲームのようなものと言ってよい。
その空間に漂う空気。
または、そこに存在すること自体を否定してくるような、女性店員の目。
この事実にさえ心臓は早鐘を打ち、止まらないというのに、
目の前で繰り広げられる光景は柳洞一成の脳のキャパシティを大きく越えようとしていた。
優秀な彼の頭脳ではあるが、この手のものについては非常に小さい別腹なのである。

「どう?今度のセイバーちゃんは髪の色と水着の色の対比を考えて見たんだけど」

試着室が再び開かれると、そこには顔を恥じらいに染め、
所在なさ気に両手を腿のあたりで組んだ、セイバー・ヴォルケンが佇んでいた。
目のやり場に困るように、
あちらへこちらへと目を泳がせているが、
目のやり場に困るというのはむしろ男性陣の方である。
皆の前で柔肌を露わにする少女は黒いビキニという出で立ちで、
慎ましくも完璧なバランスを見せるプロポーションにより
周囲に感嘆の溜め息をつかせていた。

「ほら、一成君はどう、思う?かわいくないかしら」

突然、水を向けられた一成の心臓はそれこそ破裂しかねない。

「な、なな……何故、俺に振るのですか?
ここは、衛宮に振るのが筋ではないでしょうか?」
「だって、さっき私の妹と仲良く話してたじゃない?
私の目は誤魔化せないわ」

年上の女性、戸籍上、衛宮士郎の継母となっている衛宮シャマルに
見透かされたような笑みで告げられ一成の脳は停止した。

「あれは士郎とはやてのことを一成に尋ねただけで一成は私に対して
特別な感情など抱いていないはずです。余計な勘ぐりは一成に失礼でしょう。
そ、それよりシャマルこの水着で構いませんから早く脱がしてください!」

その言葉に士郎、一成はセイバーの肌を凝視せざる得ない。
が、次の瞬間シャマルの手により試着室のカーテンはサッと閉められる。
自然、2人は落胆し肩を落とした。
その互いの様子に感づいた2人、鼻付き合わせる。

(え、衛宮…何故、俺を誘ったのだ。シャマル殿のせいで心臓が保たんではないか)
(…理由は一成が感じている通り…だ。一成ならこのくらい屁でもないって、思ってた…
悪い、俺のせいだ…)
(ま、まぁ悪いことばかりではないのであるが…)
(?)

男性陣が互いを慰め合っている時、試着室で新たな動きが…

「な、何をするんです!?シャマル!!あ…そこは…」

反応するのが男の性…

「おい、男性陣、落ち着けよ。みっともねぇぞ」
「いや、男なら突撃してみたらどうだ?シャマルのことだ。
本当にマズいことをしてるのかもしれんぞ?
セイバーを助けられて、その上いいものが見れるなら願ったりだろう」

鞭と飴…ヴィータの鞭にへこむがシグナムの飴で取り戻す…
士郎、一成は色々参ってきていた。
そんな2人に

「「だ、だめや!(です!)」」

待ったをかけるのはこの2人。。
試着室の前に立ちふさがる、はやて、桜。

「はやて、何故止めるのだ?そうか、嫉妬か。まだまだ、可愛いところがあるのだな」
「な!?シ、シグナム?」

外では、主ではなくはやてと呼ぶようにしていたシグナムだが、
ここまで挑戦的な言葉を向けてきたことがあっただろうか。

「し、知らん。せやけど、わ、私はここ動かんよ!」
「私もです!」

はやて、桜の視線をいくらか多めに受けた士郎は、だんだんと居たたまれなくなり店を逃げるように出て行く。

「お、おい衛宮…」
「あ、あたしもついてく。待て、士郎」

ついてくと言ったヴィータが士郎に次いで店を去ると、はやての視線はシグナムに向けられた。

「シグナム…今日は強気やね…」

はやての困惑と迷いの視線に対し、シグナムは悠然と立っている。

「正直、今日の私は穏やかではないです。
飯の恨みというのを覚えておくといいですね、はやて」

ツンとしたシグナムにはやては後ずさりする。
と、後ろからも。

「今朝、シグナムさんのご飯が煮干しだけだったのは、
はやて先輩の仕業だったんですか。
私なら色々爆発させちゃうところです。
お腹が減りすぎるとはやて先輩を食べちゃったりするかもしれません」

ニコリと笑う後輩はあんまり笑えない。
なんか雰囲気的に。

「さ、一成、眼前の壁は、最早はやて一枚、桜の豊満な壁に比べればなんと薄っぺらなことか。
男なら乗り越えるんだな」
「シグナム(怒)…」

はやて達の間抜けな会話は一成に冷静さを戻す猶予を与えた。

「どうにかしていた。女子の着替えに踏み込みなど考えることではなかった」

眼鏡に手をやり落ち着けとばかりに瞼を閉じる一成。
しかし新たに一成を追い落とすようにカーテンは再び開かれた。

わくわくざぶーんの中は広い。そんな中を手持ち無沙汰でぶらぶらと歩く士郎とヴィータ。

「なんだ行きたいとことこねぇのか?士郎」
「ヴィータこそ。俺は逃げ出してきただけだし」
「あたしだってあのアホっぽい空気が嫌だっただけだ。
お前がしっかりしていればシャマルだってあんな調子には乗らないのによ」
「俺にせいか?それにヴィータのが付き合い長いだろ?」
「あたし達が今ほど感情持って生きたことはなかったんだってことは
話したことがあったよな」
「ああ」
「シャマルなんて特に機械がかってて冷酷だった。
そんな自分らしか知らねぇから今のあたしらはお前達の影響なんだ。
あたしは今のシグナム、シャマル、ザフィーラのことが好きだ。
だから…お前やはやて、大河には、感謝してる…」
「そうか…けど俺達の方こそ、ありがとな、ヴィータ。
4人が来てくれたから、あの頃も寂しさを感じなかった」

素直な感謝の気持ちにヴィータは笑う。

「お互い様ってわけだ。信じてるぜ士郎。
勝って、みんなでずっっと暮らそうな!」

年相応な無邪気な表情をするヴィータは愛らしく思え、士郎は頬を緩め頷く。
が、あ、という呟きとともにヴィータは視線を厳しくすると士郎を見上げた。

「士郎、はやてはお前のなんだ?」

それは、ヴィータが5年間大事に思っていた2人のことでの気掛かり。

「これはお前ら次第のことだからずっと聞かなかった。
あたしがどうこう言う話じゃねぇしな。
けどよ、今回のはでかい戦いだ、あたしは最後までお前らと一緒にいられないかもしれないからな。
だから、安心させてくれよ。あたしがいなくなってもみんなは大丈夫だってさ」

真っ直ぐに士郎を見上げる視線に士郎は答えを口にする。

「はやては、さ。親父に託され、俺が最初に救えた人だ。
親父との約束を嘘にしない為に俺ははやてを守る。
もちろん、ヴィータだって、家の誰みんなも、冬木の人達も、救ってみせる。
それが親父との約束だから―――がっ!?」

士郎の顎にアッパーがやんわり決まる。
アッパーを決めたの足元の子はひっ常ーに不機嫌そうな顔になっていた。

「誰が誰を守るって?あたしに一発でも入れられるようになってから言おうな?
そういうことは。
お前は自分達だけ生き残れるよう努力してらゃいいんだよ。
お前らを守るためにいるのがあたしたち、ヴォルケンリッターだ」
「い、痛てぇ…」

顎をさする士郎。

「で、さ。はやてはお前が一番に守りたい人!それでいいんだな!」

ヴィータの声にはどこか悲壮感が漂っていた。
2人の沈黙の間に、寄せる人工の波は静かに響く。

「―――ああ、ヴィータに代わってでもヴィータの安息の場所、はやてのことは俺が、守るよ」

ヴィータがはやてによく懐いているのは士郎とてよく理解していたから。

「あ、ええと、なんかいまいちすっきりしねぇ答えだけど、士郎らしいってことで
まぁ、いいか。約束だからな」

2人はそれで良しとした。


(士郎…今のところ敵になるような脅威を周囲には感じないようだ)
「!!ザフィーラか。わかった、ありがとな」

士郎達とザフィーラは入り口にて分かれていた。

「士郎、ザフィーラか?」
「ああ。周囲を警戒してくれてる」
(ザフィーラ、あたしも手伝おうか?)
(ん、ヴィータと2人か。…不要だ、それにお前はそんなことを言っていいのか?)
(どういうことだよ?)
(このプールに来ることを楽しみにしていただろう?
主に水着を買ってもらって以来、毎日、一度は鏡の前で着て
ニヤニヤしていたではないか)

へぇと微笑む士郎と顔から火がでる思いのヴィータ。

「て、てめっ!見てたのかよ!」
(そういうことだ。お前は主達と楽しめ)

それきりヴィータがいくら悪態をついてもザフィーラからの反応はなかった。

「そろそろ、みんなのとこに戻るか」
「ザフィーラの奴、帰ったら乗り回してやるぅ!」

士郎にとってザフィーラは藤ねぇ、シャマルと同様頼りになる家族。

(親父とも兄とも違う…叔父さんってとこか)

隣でいつまでも騒がしいヴィータを余所に士郎はザフィーラの心遣いに感謝した。


「なんだって?本気かよ?僕の誘いを断るなんて。
あん?なんだ、その態度。お前従業員としての教育受けてんの?
僕の連れがお前のことカッコイいって言うからせっかく誘ってやったのに。
死んだ方がいいんじゃない?生きる価値ないよ、お前。
何て名前?黒野?おい、黒野」

士郎は友人が従業員に絡んでいるのを偶然見つけた。


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