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「ブリテンの危機なのです、士郎」
「は――――?」



 Sword&Sword



 アーサー王。
 かつてのブリテンにあったというログレス王国。
 その国の王であったという伝説的な人物だ。
 鉄床に刺さった聖剣を抜いて王位に選ばれ、円卓の騎士と言われた配下と共に戰い、大ブリテンを統一したという。
 伝説は幾つもあって、どれが正確な真実を伝えているものと判ずるべきかは難しいが、その悲劇ともいうべき最期は共通している。
 不義の子であるモードレットの胸を自らの手で名槍ロンにて貫き、しかしその時に負った深手によって彼もまた命を失う。
 彼の持っていた聖剣エクスカリバーは、忠実なる騎士ベディヴィエールの手によって湖の貴婦人たちに返された。
 そしてまた、彼の遺体も湖の貴婦人たちの手によって遥かなるアヴァロンに運ばれていったとも伝えられる。

 伝説は最後にこう締めくくられている。

「過去の王にして未来の王 アーサー
 彼はいつかブリテンに危機が訪れし時
 遥かなるアヴァロンでの眠りより醒め、
 我らの前に帰還するであろう」



 ☆ ☆ ☆



「……士郎は心配性すぎます」
 セイバーは、言った。
 拗ねたような、というか拗ねた口ぶりだ。彼女は普段はもっと抑制のきいた口調で話しているのだが、今回はよほど腹に据えかねたらしい。
「まあまあ、結局許してくれたんですから」
 彼女の隣りに立ち、ギルガメッシュはそう宥める。その表情は苦笑している風である。
「あなたとアーチャーと一緒にという条件付きですけどね」
「はは……」
 普段の大人の姿ならまた違うのだろうが、今の少年バージョンの彼としては「触らぬ神に祟りなし」という他はない状態だ。
 軽く息を吐きつつ、教会の前に用意したパジェロミニへと眼をやる。
 今回の遠征に際して用意した車だ。本来はもっといいものが用意できたのだが、外車だの高級車は華美に過ぎるというアーチャーとセイバーの意見もあって、なんとなく会社で余っていたこの車にしたとのことである。
 セイバーは「こじんまりとしてなかなかよいですね」と言ったが、その実、車のことなどどうでもいいようだった。
 肝心なのは彼女が望む場所にいけるかどうかであって、そのために騎乗する車の種類を問うつもりはなかった。
 これが例えば彼女が生前にいた時代であるというのなら、戦場へと駆けつけるのに豪奢に騎馬を飾ることをしただろう。王たる者はそれなりの格を以て挑むのが戦さの習いであるからだ。
 しかし今、ここではそのようなことにこだわる必要はない。
 それは、このたびの戦いが彼女にとってさほど重要ではない――ということを意味していない。
 むしろある意味で彼女、アルトリア・ペンドラゴンにとって、それは生前の戦場以上に熱く血を滾らせる状態なのだった。


 ことは三日前に遡る。


「イングランド代表とフランス代表の試合か……」
 彼女のマスターで冬木市在住の魔術師である衛宮士郎は、自らのサーヴァントから事情を聞きだし、眉をひそめた。
「そうです。これまでの戦いでイングランドは満身創痍。そして対するフランスは未だ十全たる陣容を保っています」
「うーん………」
「GKも前回のレッドカードによって、今は第四キーパーに」
「あれは、仕方なかったよなあ」
「ええ。しかし彼の果敢なプレイによってチームはあの時に失点を免れた」
「勝ち点はとれなかったけどな」
「ですから、このたびの試合は重要になるのです」
 ……だいたい、ここまでのやりとりを聞けば解るだろが、この二人の言っている試合というのはサッカーのことである。
 サッカー、あるいはフットボール――それは世界的な人気を誇る競技である。
 聖杯戦争のために古代より現代の日本に顕現したセイバーであるが、ご多分に漏れずというべきなのか、世界中の多くの人間のようにこのスポーツに夢中になった。はまったというべきか。
 女子でありながらもその身体能力とカリスマにまかせて少年サッカーの草試合に出場し、遊び、ついには彼らを率いるチームまで作ってしまったほどだ。
 当然のように、やる方だけではなくて観戦する方にも熱心なものである。近隣でサッカーの試合があると聞けばできるだけ脚を伸ばし、テレビ放映されるとなると画面の前に張り付き、試合の動画をみるためにwebのやり方まで覚えた。
 特に、国際試合……彼女の祖国であるイングランドの試合については、傍で見ていても怖くなるほどに集中していた。
 士郎はこれらのセイバーの行動に関して、師匠である凛に相談したことがある。いくらなんでも、これは異常なのではあるまいか。
「確かに、少し常軌を逸した風に見えなくもないけど」
 凛は弟子の相談に少し考えながらもそう答え。
「多分、聖杯戦争の影響が残っているのね」
「なんだそれ」
「聖杯戦争中はサーヴァントたちはそれぞれ敵愾心を抱くようになっているのよ。システム的に。だけどこんな形で聖杯戦争が終わって……敵がいるのに、戦ってはいけない状態は、彼女たちにとってかなり不自然なのね」
「ああ、わきあがってくる闘争心みたいなのを発散させているわけか。あれは」
「多分ね。そういう風に考えといた方が幸せだわ」
「……ただ単純にサッカーが大好きなだけって可能性もあるのか」
 その方がありそうだなあ、と士郎は思った。他の英霊たちの行動も思い返してみるが。
 読書三昧のライダー、宗一郎ラブで耳をぴこぴこ動かすキャスター、バイトをめまぐるしくやっているランサー、風流なアサシン。アングラーでキャッホーなアーチャー……。
「いや、やはりみんなそれでおかしくなっているんだ。きっと。多分。絶対」
「私がいっといてあれだけど、そんな確信に至るようなはっきりとした話じゃないのよ」
「いや、間違いない。遠坂の言うとおりのはずだ。そうでなければ」
「そうでなければ?」
「…………いや、とにかく、そんな感じでみんな気を紛らわせるために何かいろいろとやっていて、セイバーの場合はそれがサッカーだったというわけだな」
「まあ、そういうことなんじゃない?」
 なんだかなげやりに、凛はそう言った。
 いずれ慣れるだろうとも付け加えたが。
 そんなやりとりをしたのが一ヶ月ほど前で、今に至ってもセイバーの熱意は冷める予兆をまるで感じさせなかった。むしろ最大限にまで高まりつつある。
「祖国の危機なのです。士郎」
 セイバーは静かに、しかし力強く断言した。
 より正しくは祖国を同じくするチームの危機であるのだが、そこらをつっこむ気力は士郎にはなかった。
「……セイバーが、この試合に並々ならぬ入れ込みようなのはわかった」
「はい。さすがはマスター」
 笑顔が眩しかった。
 そもそもからして、応援に駆けつけたところでどうにもなる訳でもないだろうに……という言葉を士郎は飲み込んだ。
 彼女だって、自分が試合にでられるわけでもなく、試合会場に駆けつけたところで何かの役に立つなどということはない――くらいのことは解っているだろう。
「しかしな、その試合を直接観戦するために遠征するとなると……」
 ぶっちゃけると、予算がない。
 いや、衛宮家が貧乏というわけではなかった。むしろ養父である切嗣の残した遺産やら、彼自身がバイトでため込んできた金が結構な額で通帳には入っている。
 とはいえ、それらに気軽に手を着けるつもりは彼にはなかったし、そうすべきものでもないとも思っていた。
 近頃急激に増えた家族のために諸経費がかさんでいるところでもある。セイバーが熱中しているのならばなるべく手助けしてあげたいとは思っているのだが……。
「国際試合が日本国内ってのはありがたいけど、それでも遠すぎる。どう考えても日帰りで戻るには相当な強行軍にならざるを得ないしなあ……」 
 となると、宿泊するしかないように思えた。
「士郎。私はサーヴァントです。少々無茶な日程だろうと、そう簡単にばてたりはしません」
「そうなんだろうけど……セイバーを一人で、市内ならまだしも、これだけ離れた場所に行かせるというのはなあ」
 もとより、最優のサーヴァントであるセイバーをどうにかできる存在がそこらにごろごろと転がっているとも思っていない。
 ただ、ほっておいたらどんなことが起きるのか。
 セイバーは基本的に常識人であるし、他の英霊たちに比べてもそんな問題を起こしそうにないように思える。しかし、英雄だ。英雄とは治にいて乱を求める。いや、もっといえば乱に呼ばれる存在だ。
 当人にその気がなかろうと、ほっといたらどんなやっかいごとに巻き込まれているか、しれたものではない。
 できうるのならば、自分も側にいて彼女を助けてあげたい……と、どちらがマスターなのかも解らないようなことを士郎は考えていたのだが、検討すればするごとに状況は芳しくないということが判明していくのだった。
 予算もそうだが。
「だめだ……やっぱり、この日程だと柳洞寺でのバイトとかちあってしまう」
「やはり――」
 セイバーもあらかじめ聞いてはいた。
 柳洞寺で週末に泊まり込みにとあるスポーツチームがくるというので、その宿泊の食事の手伝いを士郎が一部請け負うということがかなり以前から決まっていたのだ。
 セイバーが一人でいける、と主張していたことにはそのことも事情として大きい。勿論、試合のために遠征、帰還などは一人でもできるのだという自負もあるのだが。
「あらかじめ決まっていたことを反故にするわけにもいかないでしょう。私一人ならば試合に観戦したその脚で当日に帰ることもできます。ですから士郎もそう心配せず、」
「こうなったら、仕方ない……」
 セイバーが小さく胸を張りつつ主張しているのを横目に流し、士郎はなにやら覚悟を決めたようだった。
「――士郎?」
「ここはやはり、保護者を頼もう」


 それが、三日前のことである。


「私も、あなたたちが信用できないというわけではないのです」
 セイバーは助手席でお菓子の袋に手を入れながら、いう。
「むしろ、今の冬木において、あなたたち以上に頼りになる存在というのも皆無でしょう。士郎は私にとって最高のマスターですし、凛はすばらしい魔術師だ。それでもやはり、能力においてあなたたちは彼らに優る」
「そういっていただけるのは、うれしいですね」
 後部座席で、ギルが答えた。
「凛はともかく、あの未熟者に優るのは当然のことだがね」
 運転席でアーチャーがいう。
 待ち合わせ時間ぎりぎりにやってきた彼は、わびにと自ら運転手を勝手でたのだが、そのハンドル操作は手慣れたものであった。騎乗スキルはないはずだったが、さすがにこの時代出身の英霊だけはある。
「しかし、それと信頼とは別の話だ」
「まあ、セイバーさんのいわんとすることも解りますよ」
 あ、お茶もどうぞとセイバーに紙コップを渡すギル。ありがとうございます、と受け取るセイバー。
「僕達なんかじゃなくて、マスターのお兄さんと一緒にきたかったってことですよね」
「…………やはり、貴方は苦手だ。英雄王」
 にぱっと笑いつつ、少年英雄王はセイバーの視線を受け止めた。といってもさほど鋭いものでもない。お見通しですよね、と言わんばかりの何処か諦観と親愛を滲ませたものだった。決して大きくなった彼に向けるようなことはない。
「そして、そのお兄さんに信用されてないというのが嫌なんですね」
「有り体に言えば、そうです」
「この件に関しては、私もあの衛宮士郎のとった手段は最良と認めるべきだと思うがね」
 運転席のアーチャーが口を挟む。
「アーチャー、貴方は……」
 セイバーは何かいいかけたが、やがて口を一度閉ざしてから。
「どういう風な生き方をすれば、あの士郎が貴方のようになってしまうというのか……」
 嘆くように、言った。
 やれやれと運転しながらも器用に肩をすくめて見せたアーチャー。
 そして。
「本当、わかりませんよねー」
 と、にこにこ笑いながら答える少年英雄王。
(貴方がいうと……)
(お前がいうな……)
 剣士と弓兵のサーヴァントは、期せずして同様のことを思った。
 ……そんなやりとりをしているうちに、いつの間にか車内の空気は和んでいた。
 彼らとて聖杯戦争では敵対することを義務づけられているとはいえ、元々仲が悪いわけではない。
 弓の英霊二人は属性的に真贋と相反するといえばするのだが、いちいち車内で対立するような大人げないことはしない。赤い方は苦労人であり、金髪の方は子供の時には他人を大切にするよい子ちゃんなのだ。
 剣の英霊ともそうである。
 なんだかんだと彼らはお菓子を食べつつ、お茶を飲みつつ、景色を眺めつつ、楽しんでいた。
「……ですから、元々サッカーという競技は遡れば遠く古代中国で兵士を育成するための競技であったともいい、それがローマを通じて私の時代にはブリテンに伝えられていたのです」
「………そんな話は聞いたことがないぞ」
「しかし事実です。事実ですから仕方がありません。私の頃の伝説では、ブリテンに伝えたのはかのネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスの命によるのだとか」
「…………………ほう」
「私とよく似た容姿だったようですよ。肖像画が残っていましたが、確かによく似ていた。おかげで私は彼の生まれ変わりという伝承ができたほどです」
「…………………どこまでその話は大きくなるのだ!?」
「原型は僕の時代にはありましたよ」
「ほう」
「というか僕が作りました」
「――――なんですって!?」
「元々、フンババの首を切り落とし、暇つぶしにエルキドゥと蹴りながらレバノンからウルクまで歩いたのが最初なんですよ」
「森の神の首になんてことするんだ!?」
 ……とまあ、そんな感じに世界のスポーツ、知られざる伝播史と発祥をはなしたりしつつ、車は会場へと向かうのだった。
 ほとんど休憩なし、ぶっ続けての強行軍だが、なんら問題はない。
 何せ彼らはサーヴァントである。
 子供に見えて英雄王も、だ。
 途中でトイレの休憩によったのが四カ所くらい、という程度で彼らは向かう。
 そして、あと半時間というでアーチャーが聞いた。
「ところでセイバー、君は向こうで待ち合わせしているといってたな」
「はい。それがどうしましたか?」
「詳細は聞いてなかったが、その相手はもちろん魔術師のような裏の世界の人間ではあるまいな」
「ええ。過去のことはわかりかねますが、今のあの方たちからは、そのような匂いを感じません」
 彼女らしからぬ、何処か含んだ言い方だった。
 アーチャーは「ふむ」と微かに眉をひそめたが、特にそのことについてはなにもいわず。
「まあ、楽しむがいい。君のマスターもあれだけ女たちを侍らせているのだからな。サーヴァントの浮気にも寛容だろう」
「な――!? あなたはなんてことをいうのですアーチャー!それは士郎のみならずあの方たちにとっても侮辱だ!」
 即刻訂正なさい、という前に、少年英雄王が「嫉妬は見苦しいですよ」と口を挟んだ。
「なにをいうか英雄王!?」
「アーチャーさんは、自分の知らない相手にセイバーさんが親愛を向けられているのがいやなんですよ」
「戯れ言を………」
 その後に何か言い継ごうとした彼は、しかしバックミラーごしにニヨニヨとしてしる騎士王と英雄王の顔を見て、唇の端をひきつらせた。
「ふっ。士郎はああ見えてもなにげに独占欲が強い人でしたね」
「普段の正義の味方行動で誤魔化されますけど、なにげに独占欲強いですよね」
「君たち……だから、私はあの未熟者と違ってだなあ……」
「そう心配せずとも。今日会う方々は、私がコーチをしているサッカーチームが遠征した時にお世話になった人たちです。やはりチームを率いておられましたが、なかなかの采配で私のチームを苦しめました」
 その試合の後に色々と話をし、意気投合したのだという。
「それから週末の一時間は、よく彼らとのSkypeを楽しませていただいてます」
「……………そうか」
 アーチャーはそう答えたが、内心でどういうことを考えたのかは誰にもわからない。
 ちなみに、彼らにとって大切な友人であり、マスターである遠坂凛は、ネットの類はほとんど使えない。ツイッターを日記か何かと想ってたくらいの情弱だ。彼女がセイバーがSkypeを楽しんでいるという話を聞いたら、果たしてどういうことを言い出すものか……。
 そして、そんなことを言っている内に競技場についたのだった。



 ☆ ☆ ☆



「さて、私は車をおいてこよう」
 アーチャーはセイバーと英雄王を競技場の入り口近くに降ろすと、何処かもよりの駐車場を求めて離れていく。
「僕はお菓子とか買ってきますよ」
「あ、それなら私も」
「セイバーさんは、待ち合わせの人がいるんでしょう?」
「そうですが」
「入れ違いになっては大変ですからね。僕たち同士ならすぐに居場所は解りますし。解らなかったら、宝具を使ってでも探せばいいでしょう」
「……では、そうさせていただきます。あなたに感謝を」
 そういうと、英雄王はニパッと笑って返し、すたすたと立ち去ってしまった。
 その後ろ姿をしばらく追っていたセイバーであったが、やがて思い出したように踵を返すと、周囲を見渡す。
 サッカーの国際試合であるだけに、多くの人たちがいる。
 いわゆるフーリガンといわれるような外国人の応援団たちから、日本のサッカーファンも当然のことながらかなりの数がいた。
(心地良い空気ですね)
 何処かぴりぴりとしていつつも、何かが始まろうとすることに対する期待……このまま負けてしまうのではないかという心配、焦燥……かつて彼女がフットボールを楽しんでいた時とあまり変わらない。懐かしい空気でもあった。
「ところで、彼らと待ち合わせている場所は――」
 呟き、しかし足を止めた。
「!………ッ」
 そして無言で駆け出し、人の波の中、ぽつんと五メートルほどの空白地のような円にたどり着くと、迷いなく鎧を呼び出して武装し、空から落ちてきた白い塊を受け止めた。
「――大丈夫ですか?」
「!? え? あれ……あなた、は……?」
 白いコートを羽織った、黒いインナースーツ、金髪で赤い瞳の少女は、セイバーの腕の中で朦朧とした意識のままに目を瞬かせ、呻くように呟いた。
「一体――」
 セイバーは言葉を途中で切った。
 気づいた時には、周囲から人の姿が全くなくなっている。
 空間の色調も変わっていた。
 まるで色の違う夜に紛れ込んだかのような――
「……結界?」
 腕の中の少女がそう漏らすと、セイバーは目を細め、しかし次の瞬間には顔をある一点に向けていた。
 こつり、と足音がした。
 ついさっきまで、誰もいなかった場所に、その少女はいた。
 まるで、ふうわりと空から降り立ったかのような。
 黒い――
「強力なイレギュラーの介入ですね」
 落ち着いた――というよりも、冷たいというべきような、声。
 どうしたものでしょう、との言葉が微かに空気を震わせて伝わってくる。
 だが、セイバーは少女の言っていることを吟味しているような心の余裕はなかった。
 十二、三歳ほどのその少女は――

「なの、は……?」

 彼女の知己である高町士郎の娘、なのはによく似た顔をしていたのだ。





 つづく。