――― 誰が一番強いのか? ―――

あらゆる次元から人材を募る時空管理局はその都度、優秀な魔導士を数多く排出してきた。
その中にはもはや伝説的な逸話を持つ輩も少なからずいる。 例えばあの三提督のように。
そんな武装隊の面々の間でしばしば話題に上がるのがズバリ、これである。

下世話なランク付けだとは思うが、彼らが腕を頼りに職務を全うする人種である事を考えれば
興味の矛先がそこに向かうのも仕方の無い事かも知れない。
事に最近では、ニアSクラスを出来得る限り集めて結成された八神はやて率いる機動6課。
彼女達は後にも先にも「これ以上はない」と言われるほどのドリームチームと言われ
局全域に近年稀に見るほどの話題を提供する事になったという。
スバル達、新人が口に出して盛り上がっていた話題は、実は局中で口に上がっていた話題でもあったのだ。

そんな中、やはり皆の口から最も多く名前が上がったのが―――その名にしおうエースオブエース・高町なのは。

生い立ちと人気と実力。 教導官として幅広く活躍する彼女ゆえ、ファンが多いというのもある。
数々のドラマティックな逸話を持ち、やや童顔でありながらも凛々しさを称えたルックス。
そして達成してきた任務の数、困難さ。 戦技披露会での圧倒的な強さ。 おまけに年若い女性魔導士だ。
これだけの要素を持っているのだから注目されない方がおかしい。
教導隊全ての総称とされていた「エースオブエース」を己が代名詞としてしまうほどに、なのはは今や万人に認められる存在となった。

だが――――そうしたある種、祭り上げられたエ-スオブエースの威名と並行するかのように
機動6課において高町なのはよりも強いのでは?と囁かれる存在があった。

「なのはさんも強えけど、俺はシグナム姉さんが負けるとこなんて想像出来ねえなぁ」

これはとある陸曹の言葉である。 
そう、6課内においては烈火の将シグナムこそが実力は上ではないかという見方も数多くあった。
彼女はなのはとは対照的な古代ベルカ式の使い手。
その質実剛健の働きぶりは見るものを唸らせるほど凄まじいものであるが、裏腹に過度に名声が先立ってしまう事はほとんどない。
恐らくそれは夜天の主の僕としての分を弁え、決して表に出たり目立つ事を良しとしない性格故か。
また脛に傷持つ彼女の経歴が、なのはとは違い、局全体がプロパガンダとして使用するのを躊躇う空気もあったからであろう。

だがそれでも彼女の圧倒的な強さは隠しようがない。
以前、行われた戦技披露会においてのエースオブエースとの「血戦」は語り草である。
修羅さながらの潰し合い。 魔力ダメージによる攻防などという事実は衝撃だけで砕けるBJによってすっかり忘れ去られ
吐血しながらも相手の肉を、骨を砕かんと激突する両者の形相は殺し合いでは?疑うほどのもの。
見物人の顔面を蒼白に染め上げるに十分な死闘が繰り広げられる事、数十分。
闘いが終わり、使い込まれたボロ雑巾のようになった両者が笑いながら引き上げていったその後
会場は恐怖と驚愕を称えた沈黙に包まれ、生唾を飲み込む音すらしなかったという。

今となっては微笑ましい、それは昔の物語。 
なつかしくも儚い彼女達の黄金時代である。


閑話休題―――そして、舞台は現代へ。


――――――

剣を持つのは高町なのはをも追い詰める力を持った烈将。
かつてない最強の敵を前に、その眠れる力を解放する。

今はもう呼ばれなくなって久しい―――かつて次元を恐れさせた一騎当千ヴォルケンリッター。
一騎打ちなら負けは無しとまで言われた最強の剣士……あの烈火の将が炎を纏いて顕現したのだ。

現世でも逢世でもない隔世で、彼女は誰にも見せる事のなかった本当の力を解放する。
空からの圧倒的な火力で焼き尽くす「空爆」と呼ばれる殲滅戦。 本来の航空機動隊の戦い方がこれである。
敵を寄せ付けぬ圧倒的なパワー、スピード、防御力。
ミッドチルダの犯罪者達を震え上がらせ、抵抗は無意味とまで悟らせる管理局武装隊のその力。
トップクラスの騎士の手による凄まじい轟音と爆風を伴った攻撃が、竜の尾が蜘蛛の子を蹴散らすかのような光景と共になお続く。

「ぶ、ぁ………あぶねッ!」

相手もまた凡庸とは程遠い、星の記憶に刻まれた英霊。
苛烈な将の攻撃を紙一重、皮一枚で残して見せるが……それでも、もはや時間の問題だろう。
魔導士フェイトテスタロッサハラオウンの完璧なフォローの存在が彼らの反撃の可能性を余さず潰しているからだ。
雌雄一対の役割を微塵の狂いもなく果たすライトニング隊にはもう一寸の隙も無く
勝ちの目が無いサーヴァント達はまさに王手飛車角取りをかけられた状態だ。

―――残り10minute

決定的優位の元に、彼女達は最後の攻防の火蓋を切って落としたのである。


――――――

??? ―――

かつてミッドチルダを恐怖で震撼させた聖王の揺り篭が、決して余人の踏み込む事のない次元の狭間にて、その巨大な全身を横たえていた。
といってもそれは本来の10%の性能も持ち得ないレプリカであったのだが……
形だけは大層なハリボテを本拠とする者たちは、強大なロストロギアの力によって開催された祭を取り仕切る実行委員でもある。
同時に祭会場にばら撒かれた無数の宝を、あわよくば拾い集めようと目論む浅ましくも悲しい敗残者たち。

しかしてその巣窟において場違いな男が一人、モニター越しに映る戦いを興味無さげに見つめていた。
黒衣のカソックに身を包んだ四肢をソファに横たえ、我ながら良い身分になったものだと皮肉げに哂う男。
その表情にはまともな人間らしい感情が宿っているかも疑わしい。

「剣の英霊……あいつ苦しそうだったな…」

変わってぽつりと漏れた言葉は、神父の脇に侍っていた少女のものである。
先の邂逅で出会った騎士王の安否を気遣うこの少女は戦闘機人のナンバー5・チンク。
スカリエッティが生み出せし姉妹の5女にして、異邦の客人の世話係としてこの男に付き従う羽目になった今回一番の被害者である。
狂気とやらが生み出したにしてはあまりにも愛くるしい愛玩人形の如き相貌。 人好きのする性格。
嫌な任務でも腐らず、へこたれずに健気にこなす姿は愛らしいの一言では到底片付かない。

「彼女はどうすれば私を受け入れてくれるのだろうか? そもそも、あいつは大丈夫なのか? 神父」

「私に答えられるわけもなかろう。
 怪しげな茶番の舞台に強引極まりない方法でサーヴァントを顕現させたのはお前達だ」

「確かに……あの方法については未だ不明な点が多い。 一刻も早い掌握が必要なのだが…」

「そも拾った宝に名前を書いて己が物とする……それは紛う事なき盗人の所業だ。
 仮にも私は神の代行者でな。 不心得者に口徳を授けるというのも職業柄、抵抗がある。」

「……神父の仕える神様は一宿一晩の恩というものを教えてはくれなかったのか?」

流石にムッとして床に伏せたまま反論するチンク。
その銀の長髪を称えた頭に―――目の前の皿に盛られた内包物を無言でぶちまける神父……否、人でなし。

「えっ………??」

何が起こったのか分からずに間の抜けた声をあげてフリーズした少女が――

「、ッッッッあっづォォォォーーーーーーー!!?」

直後、怪鳥音じみた悲鳴を応接室に木霊させる。
ぐつぐつに煮立った餡かけが頭頂部を犯し、後頭部を経てスーツの間から背中に進入。
火を司る料理と言われる中華の熱さを文字通り体感した少女が悶絶して転げ回る。

「な、何てことをするんだっ!?」

「一宿一晩が聞いて呆れる。 未だ私はまともな飯の類を口にしていないわけだが?
 客人に生ゴミを食わせる輩が恩義などとよく口に出来た……そんな事であの剣の英霊を手なづけられるものか」

銀髪を振り乱して床をのたうち回ると、その頭からゴロゴロと転がるゴムのような物体があった。
それは彼女が「豚のカクニ」と称して神父に出した、セイバーとの友情の証……もとい、滋養豚の残骸だった。

「な、なまっ!? そんな食べもしないで!」

「生憎、セイバーのように昏倒させられる気はない。 全く世話係などとよく言えたな。
 優秀な機械人形と嘯いてはいるが貴様、その実何も出来んのではあるまいな?」

「失礼な……妹やゼストの世話は全部、私が担当したのだぞ!
 料理は初めてだから勝手が分からないが個体の洗浄などは大得意だ……!」

「―――ならば洗浄して貰おうか―――」

「へ……?」

憤然と神父と相対していた少女がカエルの詰まったような声を出した。
その前で……おもむろに上着を脱ぎ出す神の御使い言峰綺礼――――


――――――

業に入らば郷に従え、とは現地のニンゲンのコトワザだ。
ならば嗜み物も舞台に合わせるのが粋であろう。
男の手に持っているのはサロン・ブランド・ブランブリュット。
10年で僅か3回しか造られない幻のシャンパーニュである。
そんな貴重な葡萄酒を片手に神父と語り合おうと部屋を訪れたのは
言峰綺礼とは対照的な出で立ちの白衣の男、天才科学者ジェイルスカリエッティ。

だがしかし、彼が客間の前まで来た瞬間―――

「うわああああああああああんッッ!!!」

目の前の鉄扉がバタァン!と凄まじい音を放ち、内側から脱兎の如く逃げ出す影一つ。
人外の脚力を発揮し、トップスピードに乗ってあっという間に見えなくなった―――
その後姿と、なびく銀髪だけが辛うじて博士の視界に残る事となった。

「ふうむ………………取り込み中だったかね?」

「そうでもない。 少し考え事がしたかったのでな……小娘には出て行って貰った。」

ほどなくお前が来たので何の意味も成さなかったが、と付け加えた神父。
鍛え抜かれた強靭な上半身を再びカソックで隠す仕草の何と絵になる事だろう。

「それは済まない事をしたねぇ。私はてっきりキミが……」

「私が何だ?」

「キミが我が娘に情欲を催してくれたのではないかと淡い期待を抱いたのだが。」

随分と歪な「淡い」もあったもんである。

「しかし姉妹の中でも随一の気骨を持つチンクがあんな声を発して逃げ惑うとは……
 滅多に無い反応が見れて僥倖の極みだよ。 キミは彼女をどう思う? 綺礼。」

どう思うと言われても返す言葉が無い。
生憎、幼女を私物化して侍らせるという好事家にとっては狂喜乱舞するようなシチュエーションも
人が幸せだと思う事にとんと無頓着な言峰綺礼には猫に小判である。

「もしかしたらキミを強く意識しているのかも知れないねぇ。 これが噂に聞く思春期というやつか……」

「気持ちの悪い事を言うな。」

「いやいや実に興味深い。 私は残念ながらニンゲンというものが今一、理解出来ない。
 あの娘たちは悲しいかな外界から閉ざされた純正培養の中で育ってきた。
 だから今までは戦闘機人の<人>の部分を学習させるに至らなかったわけだが…」

芝居がかった大仰な仕草でいつもの演説を始める白衣の科学者。

「ニンゲン……それもキミほどの強力な毒を持った個体は実に珍しい! その毒は娘たちにも何らかの影響を与えてくれるらしいねぇ! 
 ああ……それは実に喜ばしい事だ……最悪の生きた見本としてキミは極めて良い教材になれるだろうよ! 
 いっそ義理の娘としてキミにチンクを預けてしまおうか! そう! 大事だからこそキミに預けたい!
 私が求めてやまぬ生命の揺らぎ……ッ、ことにキミは他人を揺さぶる事にかけては絶品だ! 
 ふふふ、つくづくキミに目をつけた私の目に狂いはなかったといえるだろう。 ああ言えるとも!」

「お前だけには言われたくないと憤慨すれば良いのか私は? 否定はせんが――」

狂乱の白とは対照的な黒が気の無い返事を帰す。 相変わらず人を食った、どこまでが冗談か分からぬ男だった。
ある意味、娘の成長を憂い喜ぶ父親に見えない事もないが(それはもう慈愛に満ちた好意的な解釈をもって)まあ何にせよ、だ。
生まれ故郷を遠く離れた地に、既に死した身を叩き起こされて、まずさせられる事が家族ゴッコだというのだから良い迷惑である。
ことにあの小娘の銀髪を見ていると、どうにも琴線に触れる。
どうやら自分の種から生成されたらしい娘も銀の長髪だと聞いたが、ソレと被って居心地が悪いとでも言うのだろうか?

(ふ……馬鹿な。 そんな殊勝な心の持ち主でもあるまい……私は。)

本来、持ちえぬ記憶を持った偽りの自分。
歪なイレモノに感情というデータのみを書き換えられた偽りのコトミネキレイは、ただ溜息をつくのみ。
かつて世界の毒として生を受けたこの身は、もはやあの世界に戻る事も影響を及ぼす事もない。
今回、自分は何の当事者でもない。 この茶番劇において狂言回し以外の役割を担う事もないだろう。

以前のような悪意と狂気に満ちた行動力は既に枯れ、暢気に晩酌などを嗜んでいるその目下。
かつての自分の使い走りが悪戦苦闘している様を精気の抜けた双眸にて見下ろすのみ。

(―――それにしてもランサーよ。)

自身と同様の哀れな姿にも気づかず、令呪による縛りから解放されて全力で駆ける男の姿が瞳に映る。

(そんなザマでも思うままに飛び跳ねられるのが嬉しいのか……)

まるで首輪を外されてはしゃぎ回る犬ッコロだと、にべのない感想を抱くのも忘れない。

冬木の地で凌ぎを削ったサーヴァント達が今、再び蟲毒の檻にて踊り狂う。
だが聖杯に変わり、英霊召還の無理を押し通すオーバーテクノロジーのシステムはそのまま彼らを好き勝手に弄ぶ傲慢な縛鎖に他ならない。
戯れに戯れを塗り込んだ無礼に過ぎる仕様。 彼らはもはやギルガメッシュの言った通りの紛い物の人形だった。
ランサー。 ライダー。 そして、セイバー。 正視出来ぬほどに歪になってしまった地球の神秘、幻想の具現たち。
何も知らずに舞い狂う彼らも、いずれはその袋小路の運命に絶望するのだろう。 ………無表情の男の口元が微かに歪む。

「せめてそれまでは足掻いて欲しいものだな。
 ことにランサー……せっかく私の手綱から逃れたのだ。
 ろくに観客を笑わせぬうちに退場する道化もなかろうよ」

含んだ笑いと共にかつての自分のサーヴァントに彼なりのエールを送る神父。

その相貌が矯笑に騒ぐスカリエッティの視界の外で暗く――――どこまでも暗く淀み沈むのであった。


――――――

果たして槍兵にとっては全く嬉しくない人物からの応援が届いたか否か―――
推し量れるほどに男は今、生易しい状況に置かれてはいなかった。

何せ怒れる火竜の蹂躙がすぐそこにある。
轟炎の剣士と炎の剣精のデバイス。
JS事件における最終決戦で初めてその身を同化させたシグナムとアギトが叩き出した破壊力は
恐らくは全リミッターを解除したなのはと同等以上という壮絶にして余りある数値を叩き出した。
この世にパワーバランスを司る何かが働いているのだとしたら、二者を引き合わせてしまったのは明らかに彼らの職務怠慢だろう。

まるで竜種そのもの――それは正しく人ではない、大空に駆ける飛竜だ。
轟々と燃え盛る炎を纏い、生物の頂点に立つ最強の亜種。
竜の威厳と変わらぬそれを以って、剣士は二体のサーヴァントを蹴散らし続ける。

「………」

「ランサー?」

加えて電撃使いの雷のダメージは体の外側でなく芯に残り、直撃すれば骨も残らぬ剣閃烈火が頭上スレスレを通り過ぎるのも幾度目の事か。
このままでは丸焼けになるか塩漬けになるか……勝機はおろか生還すら絶望的な状況だ。
そんな明らかな劣勢において、普段は騒がしい槍のサーヴァントが沈黙している。
訝しむ騎兵。 敗色濃厚で意気消沈するとは情けないと皮肉の一つも投げてやるべく、その相貌を覗き見る。
果たしてその横顔は―――

「竜殺しか……………こりゃいい。 喰いでがありそうだ」

―――憎たらしいほどに、いつも通りの男の顔であった。

「命脈尽きてなお巨頭に挑む機会を与えてくれた古今東西の戦の神に感謝するぜ。
 アレは俺の相手だ……お前にゃ渡さねえよ。」

ここに来てまだ一騎打ちにこだわっていたりする槍兵。
仮にこの地で討ち果たされても本望という意思さえ感じ取れる。
流石は戦バカ……否、戦ヲタク。 とても並の神経では理解できない。

(どうしたものか…)

当然、対面のライダーの思考は対照的だ。 彼女はここで果てる気などはない。
戦いに結果以外の意味など求める性分ではないし、この槍兵と一緒に討ち果たされる義理も無い。
狂人に付き合って枕を並べて討ち死になど笑い草も良いところだ。
唯一心残りなのは頭上、あの炎の騎士の遥か後方でこちらを見下ろす黒衣の魔導士。
もはや到底あれに手が届く状況ではないのだが……それにしても口惜しい。

(ペガサス――)

―――は、駄目だ。
神殿を破られた影響で自身の体内に残る魔力がほとんどない。
弾奏に残った最後の一発は周囲全てが敵である乱戦ではとても使えない。

(何とか再び彼女らを引き剥がせれば、また話は違ってくるのですが……)

あの美しい獲物を取り逃がすのは癪だ……
しかしいよいよとなれば隣の男を盾にしてでも撤退を決め込むしかないだろう。

既に佳境に入ったこの戦い。

四つの思考が乱れ飛ぶ中―――

Last assault 開始後2分 ―――

時限を現す時計の針が五分の一ほど進んだ事を場に示していた。


――――――

ラストアサルト――最後の急襲作戦は既に発動した。

<よっしゃあ絶好調! シンクロもばっちりだぜ!>

「……」

もはや後戻りは出来ない。 オーバードライブの安全弁を開けてしまった今となってはやり直しも効かない。
その攻勢の第一波を思う存分、サーヴァントを追い散らす事で果たしたシグナムとアギト。
10分20分と暴れまわったように感じた彼女らが、改めて要した時間は2分にも満たず。

<こちとら力が有り余ってるんだ! 見てろ……一泡も二泡も吹かせてやるぜ!>

「調子に乗るなアギト。」

(わ、分かってらぁ…)

圧倒的優位にて序盤を折り返すユニゾンシグナム。
しかし遠巻きから見てなお、相手の動きにも目の内に宿った闘志にも衰えはない。
果たしてこのまま決めさせてくれのか? 騎士の心胆には未だ暗雲が立ち込めていた。

回避の一点張りを決め込む二対を相手にどうしてもクリーンヒットを奪えない。
一撃でもまともに当たればそれで終了だというのに……
凄まじい火力に追い立てられ、一方的に削られて、ほどなく動けなくなるとしても
今は頭を伏せ、あるか無いかの一瞬のチャンスを待ち続けているようにも見える敵。
凄まじい胆力だ。 それだけで驚嘆に値する所業であるが……

(感心している場合ではないな……終盤の一手を誤れば詰まされるのは我らだ)

苛烈に、そしてあくまで冷静に二体を追い立てるシグナム。
その懐から鞭のようにしなる火竜の尻尾を再び眼前に叩きつけ―――

また一つ、巨大なクレ-ターを場に刻む。


――――――

シグナムが振り被った炎尾の業火を掻い潜る英霊二体。
相手にセイバー並の剣速がなかった事がせめてもの救いであるが、それも不幸中の幸いに過ぎない。

加えて高速で飛来するフェイトが巨大なザンバーを構えて彼らを強襲。
後方支援に徹するかと思いきや、隙を見せれば一足で踏み込んでくる……それがこの魔導士の恐ろしいところだ。
ソニックインパクトのトップスピードは英霊を凌ぎ、到底カウンターを合わせるどころではない。
戦闘機によるぶちかましを髣髴とさせる当たりでランサー、ライダーを吹き飛ばす。
再び散り散りにされる蒼と紫。 

そして尻餅をついたライダーの腕に―――将の蛇腹剣が巻きつく。
ジュウ、という肉を焦がす音と匂い。 諸共に凄まじい牽引力が騎兵の身体を引き摺り始める。
そのままライダーを引き回し、先ほどの返礼とばかりに力任せに叩きつけようとするシグナム。

「むう……!」

だが騎兵とてそう簡単に力負けはしない。
彼女が四肢を……否、捕られられた右腕以外の三肢をフル稼働。
片腕両足の指を地面に食い込ませて場に踏み止まる。
ガクン、という凄まじい抵抗を受け、驚くべき手応えに将が息を呑む。
灼熱の蛇腹剣に二の腕を締められているのだ。
だのに食い込む刃を意にも介さず、女怪は右手で剣を掴みながら騎士と互角の力比べに挑んでいる!

「ふッ――!」

「こいつッ! つくづく…」

<どっかおかしいんじゃ無いのか、あの女ッ!?>

ルーみたいな顔しやがって!と悪態をつく妖精を尻目にシグナムの脳裏に過ぎるは
地球において最もポピュラーな昆虫――甲虫最強の一本角のアレであった。
木や地面から引き離される際、そうはさせじと四肢を踏ん張り、驚くべき抵抗を見せる彼らを彷彿とさせる光景だ。

<何の! ぶっこ抜いちまえッ!!>

「言われるまでもない!」

更なる出力を発揮する空の騎士。 女怪の地を食む片手両足がミシミシと悲鳴をあげ、爪にビシリとひびが入る。
それでも大地に根差した大木のように動かない痩身。
怒れる竜と、その尾を掴んだ魔性の怪物――幻種同士の剛力比べが始まった。


――――――

(……シグナムっ!)

止まらぬ連携が――止まった! 否、力づくで止めたライダー。

魔導士に焦燥が浮かぶ。 途切れたコンビネーションの隙を見逃す相手ではない。
防戦一転、ランサーが一気呵成に反撃に出る。
10を超える射撃魔法を残らず撃ち落とし、男はあっという間にフェイトに肉薄。

「世間様に迷惑ばかりかけて来た怪物が、たまには人の役に立つじゃねえか!
 そのまま一時でいいから抑えとけ! すぐに―――終わるからよ」

豪壮無纏に槍を回転させてフェイトの体に照準をピタリと合わせる男。
凛とした佇まいに淀み無い殺気。 対面するフェイトの心胆に氷柱が打ち込まれる。
何度相対してもゾクっと総身を貫かれるような感覚にまるで生きた心地がしない。

無数の矢を再び装填し、槍兵に突撃を敢行するフェイト。
肌にジャストフィットしたボディスーツにスパッツ。
露になった肩から二の腕、太股の辺りまでしか覆っていない下半身。
奇しくも男のそれに勝るほどの超軽装は、あの騎兵を凌ぐ疾走を見せた彼女の決戦モードだ。

「嬢ちゃん。 こうなった以上、主義も主張も関係ねえ……悪いが一気に叩き潰させてもらうぜ!」

「やれるものならやってみろ…!」

先ほど後れを取ったランサーに再度、臆せず斬り込む魔導士。 その顔に気後れなどは微塵も無い。
二撃三撃と打ち込みながら先の二の轍を踏まぬように軌道修正。
スピードと引き換えに失った各種ステータスは決して馬鹿に出来ず
四者の中ではっきりと自分が一番、体力、耐久力では劣っている事を自覚しているフェイト。
故に速度よりも馬力とタフネスがものを言うこうした乱戦下では、間違いなく自分が一番撃墜される可能性が高い。
少しでも気を抜けばバッサリとやられる。

考えている暇などない。
あっという間に景色が流れ、色々なものを追いてきぼりにする両者の交錯は既に始まっている。
当然のようにレッドゾーンを超えてアクセルを開けなければならないこの現状。
絞り潰されそうな心臓の動悸を無視して押さえ付け、執務官はサーヴァントと交戦する。
男の四方を撹乱しながら一瞬でランサーの後方に回り込み、彼女はノーモ-ションで肩口に鎌を振り下す。

「潔さは買う……だが甘えッ! 打ち込む気まで消せれば完璧だったがなっ!」

負傷した目を突いた死角からの一撃を事もあろうに眼で追いもせず、後ろ向きのままに上段で受けるランサー。
こんなのは時代劇でしか見たことがない……研ぎ澄まされた心眼、相手の行動に対する読み。
やはりこの男――最上級の達人だ!

しかしこれで終わりではない! 途端、ランサーの前方よりフェイトの雷の矢が飛来する!
男の後方に回り込む前に既に撃ち放ったプラズマランサーだ。
自身の放った弾丸すらをも追い越す速度を持つフェイトだからこそ可能な全方位移動攻撃の真髄。
上方の鎌を受けて晒した男の胴に、このままでは矢が突き刺さるは必定。
無防備な胸と腹部に襲い掛かる鋭い先端が勢い良く飛び荒び、ランサーの目前に迫る。

「おらあああっ!!」

「うっ!??」

しかし槍と鍔迫り合っていたフェイトがバルディッシュごと前方に引き摺られる。
男が受けた鎌ごと強引にフェイトを引っこ抜き、背負い投げの要領でぶん投げたのだ。
視界ごと天地が引っくり返り、軽々と投げ放たれるフェイトの痩身。
前方に投げ放たれた先には自身の放ったプラズマランサーが今なお飛び向かってくる。
このままでは墓穴―――己の放った矢に全身を串刺しにされてしまう!

「何…!?」

だがそこで驚愕したのはランサーだった。
指向性を持った魔法の矢……それがフェイトのプラズマランサー。
コンマの速さで揺れ動く戦況に際し、フェイトの戦術思考は聊かの遅れもなく追随し、修正を開始。
衝突する筈だった彼女と無数の雷は、矢の方がまるで意思を持ったように彼女の体を回避し
歪な鋭角軌道でフェイトの体を避けて、その全てが再びランサーに降り注ぐ。

「野郎っ! 器用な真似しやがる!」

自由になった両手で扇風機のように魔槍を回転させて矢を弾き散らすランサー。
だが最中、敵の様相を見据えて再び舌打ちをする。
投げられ、地面と平行に滑空しながら魔導士は手の平をこちらへとかざしていた。
背中と頭を地面に擦るような低空飛行で、逆さまの姿勢のままに打ち放つフェイト18番の砲撃――サンダースマッシャーだ!

「うおおっ!?」

槍で弾き返すには大きすぎる大砲を、なりふり構わず地を転がって回避する槍兵。
すぐ横を黄金の射線が通り過ぎる。
地面を転がり、すぐさま立ち構える槍兵と、こちらも地を滑って投げの勢いを殺し、迎え撃つように立ち上がるフェイト。

「役不足だ、なんて二度は言わせないぞ!」

普段は優しくておとなしい性格の彼女だが、突き付けられた屈辱を跳ね除けられないような弱虫では断じてない。
その顔、その目には先ほどの槍兵の言葉……「相手にならない」と断ぜられた事に対する反骨心がありありと浮かぶ。

「いやいや不足どころか実際、大したタマだぜ…」

通常、あれもこれもと手を出せばどっちつかずの中途半端な代物にしかならないが
あの娘は全範囲、全方位において全ての距離を高い水準でモノにしている。
正直一番嫌なタイプであり、その技量――評価しないわけにはいかない。

(あっちは何時まで持つか……つうか何で宝具を使わねえんだ、あの馬鹿)

凌ぎを削るライダーとシグナムの方をチラっと見る男。
立ち塞がる美貌の少女。 英霊とはいえ、これを一息に飲み込む事は至難だ。
ただの人間がサーヴァントに比肩するだけの天才的なセンスを発揮するなどという事が本当にあるのか?

「何にせよ、信条の違い―――覆すには刃で証明するしかないもんなぁ。
 もう止めろとは言わねえよ……俺の理屈、否定出来るものならやってみやがれっ!」

吼えるランサー。 空気がビリビリと震える。

Last assault 開始後3分 ―――

例え刹那の出来事だったとしても刃で語り合えるのならば―――男にとってその時間はかけがえの無い宝だ。
再び槍を唸らせ踏み込むランサー。 

フェイトも意を決したように、相手の突撃に合わせて低空飛行。
地面スレスレを潜りながら槍兵の足元をサイスで狙う。
決して正面からはぶつからない。 この男とまともに切り結んだら潰されるだけだ。
上空三方向から牽制の矢を降らせ、敵の攻め手を殺ぐ魔導士。
男が射撃を弾いた一瞬の間でフェイトはミドルレンジにまで後退。
三日月の刃――中距離射出魔法ハーケンセイバーを飛ばす。

(これは多分、避けられる……けどっ!)

それを追いかけるように飛翔する黒衣。 腰の燕尾が突風ではためく。
美しいムーンサルトの機動を描き、常に男の死角へ死角へと回り込むフェイト。
その逃げていく金の髪をどこまでも執拗に追いかけるランサー。 赤き魔槍の連突も激烈さを増す。

(さすが……なら、これで!)

空中で回転し、遠心力でデバイスをアッパースイング気味にランサーに叩き付ける。
それはサイスの時には感じなかった凄まじい重さを持つ戦斧の一撃だ。

「む……!?」

間を詰めようとした男が重い一撃で後方に半歩下がる。
状況に応じて変化する武器が攻防においてこれほどに有効に作用するとは――
彼女の機動力も相まって、まるで別の武器を持った何人もの敵を相手にするようだ。
当然、持ち主にピーキーな技量を要求するマルチウェポンはフェイトを主とするならば何の不足もない性能を発揮する。

「ロックオン……バルディッシュ!!」

間髪入れずに大砲の砲身を相手に向けるフェイト。
男に命中させるのは困難だろう。 しかし―――その背後!

「!! おいライダー! 避けられるなら避けな!」

「――――、!」

男が、炎の騎士と力比べをしていたライダーに向けて叫ぶ。

「サンダースマッシャー!!」

と同時に放たれたサンダースマッシャー。
同時ロックオンによる砲撃が同一軸線上に並んだサーヴァント二人を薙ぎ払う。
一人は中空。 一人は必死に身をよじり、金の濁流から命辛々身をかわす。
必殺の雷撃が薙いだ刻印を大地に刻み付けるその矢先――

「おおおおっ!!」

支えを失い宙に浮いたライダーを、捕らえた右手ごとシグナムが振り回す。
その肉体が数回転ほど宙を彷徨い―――勢い良く地面に叩き付けられる!
ゴシャァッッ、と鈍い音が辺りに木霊し、地面をバウンドして滑るその体。
衝撃に声の無い苦悶を漏らすライダー。 紫の髪が泥に塗れ、無様に這ったその横で――

「おかえり。」

「…………」

槍のサーヴァントがばつの悪そうな顔で佇んでいた。

「……成果は無しですか? 口だけ男」

「俺もなまったのかね……いや、あの嬢ちゃん、マジで強えんだよ」

窮地を脱する千載一遇のチャンスだったにも関わらず、それを生かせず再び合流した事に対する苦笑いが双方に浮かぶ。
ゴール直前で振り出しに戻る双六のやるせなさを存分に感じ取れる瞬間だ。

「どうにもならんか……いよいよ持ってジリ貧だな」

槍兵がいちかばちかの覚悟を決め、騎兵が何とか窮地を脱出しようと画策し――

Last assault 4分経過 ―――

追い詰められているのはサーヴァント。
しかして背水の陣を敷き、じりじりと相手を攻め立てながら「時限付き」の攻勢を消化していく魔導士と騎士。
焼け付く体内を推しての戦いはなお続く。

彼女らに残された時間はあと6分足らず。
それまでに―――それまでに敵を沈黙させねば……


――――――

「提案があります」

「あとにしろ。」

言うまでもなくチーム戦では個々の能力よりもパートナーとの相性が重要となってくる。
故に思う―――やはりというか予想通りというか、つくづく相性が悪すぎる。

敵同士とはいえ、火急の事態で共闘を余儀なくされるケースは決して少なくはない。
先ほどまで本気で殺し合っていた者同士が新たな敵に対して見事な連携を見せて戦う。
戦場においてそういった光景は珍しくはない。

しかしながら二人は思う。
こいつとは……どんなに戦いを通じても―――駄目だろうな、と……

「提案があります」

「うるせえな! 今忙しいんだよ! さっさと言え!」

「では言います。これでは埒があかない。
 死ぬほど嫌ですが貴方に私と協力する権利を与えましょう。
 何とかして彼女らを分断し、一対一へと持っていく手助けをしなさい。」

「オマエな……脳みそ湧いてんのか? 第一、協力などせんでも……うおっとぉ!」

頭上を通り過ぎていく火竜の尾を屈んで交わす二人。
背中の肉が焼け焦げて削れる。 それだけでも人間ならば致命傷だ。

「協力などせんでも、お前がどっか行きゃ済む話じゃねえのか?」

「済みませんよ。 フェイトの射撃は明らかに私と貴方を離脱させまいと放たれています。
 どうやら向こうは我々が敵同士だと気づいているようですね。
 袋の鼠は一緒に叩く――彼女らは実によく分かっている。」

「感心してる場合か阿呆! 敵の思惑が分かっていながら、こっちは足を引っ張り合って何も出来ねえ!
 これじゃネズミ以下だぜ俺たちは!」

「このままでは二人揃ってここで倒されますね。
 サーヴァントが文字通り雁首を揃えて敗北……初戦敗退の不名誉と相成って後世に恥を残す事に。」

流石にそいつはいただけない……彼らには一様に誇りがある。
召還された自分が「取るに足らないサーヴァントだった」などという不名誉は彼らにとっては耐え難く
そんな無様な結果を残したくないという感情は全サーヴァント共通の本能のようなものだ。

「一回だ……一回だけ協力してやる」

「決まりですね。 私はフェイトの相手をします……文句は無いでしょう?」

「好きにしな。 こちらも好都合だ」

鉄の結束を見せるライトニングの二人に対して、今にも止めを刺されそうになり
ようやく精一杯の譲歩を見せた両者にインスタントな絆が芽生える。

「おらっ! 今だ!」

相変わらず間断なく降らせられる剣撃の雨あられ。
触れれば即、体のどこかを持っていかれる苛烈な攻撃を掻い潜り
その中の一撃を選んでまずはライダーがアクションを起こす。
シグナムの横薙ぎを避け損ない、紫の肢体が無様にきりもみ状に吹き飛ばされた。
騎士の剛剣がついに強敵の片翼をなぎ払っていたのだ。

「―――、」

否、そう見せかけて自分で飛んだ!
重爆撃のような衝撃に逆らわず、身を預けるように宙に浮いたライダー。
その彼女に向かって槍の男が駆ける!

「おっしゃ! 飛ぉべぇぇッッ!!!!!」

一足飛びで騎兵に肉迫する蒼い肢体。
上空、騎士と魔導士の顔色が変わる。
今までとは違う動き、違うリズム。 何より互いに敬遠し合っていた相手が初めて呼吸を合わせたのだ。

無様に飛ばされた筈のライダーがそれを見越したかのように反応。
自在に空中で姿勢を変え、駆けつける槍兵に両足を向ける。
そしてランサーの飛び蹴りが突き出したライダーの足に炸裂!
ライダーの身体がピストンで打ち出された弾丸のように暴発じみた速度で――打ち出されたっ!

「なっ!?」

爆発的な加速で射出された騎兵の髪が尾を引いて、流れ星のような軌跡を描く。
フェイトをも遥かに超えた速度にて、一瞬で相手の間合いを犯したライダーが獲物に組み付かんと迫る。
ニ敵を射抜く見事な軌道。 流石は投擲自慢の槍兵の射出と言わざるを得ない。
強力なサーヴァント達が初めてチームとして機能した結果だ!
改めて空の敵を射殺そうと放たれたあれこそ本当の紫電の煌き。
ライトニングの二人をして、相手の即興のコンビネーションは計算していなかった。
いなかったが故に―――回避が間に合わない!

「ぐ、あっ!?」

<シグナム…!? うわぁ!??>

薄紫の髪をはためかせて空を切り裂く騎兵ミサイルがまずはシグナムに追突し、あっさりと吹き飛ばす。
高熱で形成される四枚の羽の一枚を難なくぶち砕かれ、バランスを崩して墜落する将。
必死でリカバーするが意識を持っていかれるほどの衝撃は彼女に瞬時の戦前復帰を許さない。

そしてシグナムを抜いた騎兵が真に狙うは――――

「貴方ですよ。 フェイトッ!!」

―――後方の司令塔フェイトテスタロッサハラオウンに他ならない!

敵のまさかのアクションに圧倒的に反応が遅れたのはフェイトも同じ。
直上へ回避しようとした魔導士が、あっ!?と息を呑んだ時には―――
あの禍々しい縛鎖が自らの足首を捕らえた後だったのだ!

ジャラリ、と右足に生じた感覚はまるで忌わしき毒蜘蛛の糸が足首に巻きついているかのよう。
罠にかかった猫の如く、ほとんど反射的に空中に舞い上がるフェイト。

(ここで撃墜されたら全てが台無しになる…!)

バックアップを失った前衛では、あの速い相手を時間内に仕留められる確率は五分以下に落ち込んでしまう。

Last assault 5分経過 ―――

魔導士がライダーを振り剥がすべく、最大全速にて―――雲を突き抜け離陸した。

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最終更新:2010年08月02日 12:51