※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

(ユニゾン、か……)

心の中で呟く騎士

それは最後の選択肢の一つ――

烈火の将のみならず古代ベルカの騎士の切り札ともいうべき
融合デバイスとの文字通りの「融合」
それによって自身の限界以上の出力、付属能力を備える
オーバードライブに匹敵するブーストモードである

だがブーストと銘打つ以上、当然、通常運用よりも燃料消費はかさむ……

高町なのはやフェイトのような自己ブーストに比べればマシだが
それでもオーバードライブ級の出力を叩き出すその行使は使用制限が極めて激しいのは言うまでもなかった

近くに母艦があり、味方のバックアップがあって
初めてその使用に躊躇いなく踏み切れる

それをほぼ望めぬ状況で、今後何があるか分からない現状――

ここで切って良い札であるのか…?
先に自分で言ったが――焦ってチャージしてしまって倒しきれなかったら?

自身に今、切れる手札を心中で整理していく将
先も言ったが……戦術を間違えるわけにはいかない

これほどにシビアな、ギリギリの戦いにおいて少しでも余剰があれば後が続かず
不足があったならそこでゲームオーバー……

あの男を相手にする以上、今後もミリ単位での攻防を余儀なくされる事だろう


そう、、ここまでの対峙
未だ自分には切り札があり、それを抜く機会を計っている状態だ

だがこの槍兵もまた、、
恐らくは最後の牙を抜いていないのだとしたら、、?


もはや笑えない話だが―――
この今までの死闘が、、まだほんの小手調べ
上の階段に駆け上がるためのステップでしか無いという事になるのだ


(、、、、つ、……!)

全身から響く痛みという名のシグナルがガンガンと脳を刺激すると共に
アギトの小言ももっともだな……、と苦笑する将

小手調べの時点でここまでの損傷を受けているのだ
いわば上の階段を上がる助走の時点で盛大に転ばされ、負傷したようなもの
心配するな、などと言ったはいいが、我ながら説得力がまるでなかった

―――言われなくとも分かっている…

この局面
このまま漠然と打ち合っていて事態が好転するとは思えない

今の手札で戦うのはそろそろ限界だ、、
敵の侵攻に対して自陣まで押し切られてしまう前にこちらも次の札を切っていかねば――
そうでなければ相手の戦力に拮抗できない

だが、、

(未だ、奴の戦力の底が見えん……)

実力者同士の戦いにおいてジョーカーを早々に切るという事はマラソンにおける早期スパートに等しい
完全な博打、後先考えぬ運任せ、失敗すればオケラ――
そんなギャンブルを早々にするわけにはいかない


顔半分を朱に染める対面の男
その表情は未だ変わらぬ壮絶な悪鬼の笑みを称えている

今にも飛び掛ってくるだろう、それを前にしてシグナムも一瞬も気は抜けない
無駄なアクションすら迂闊に取れない状況だ

(先ほどはシュランゲフォルムによる奇襲の一撃を「上々の成果」などと評したが…)

初めに課したハードルと比べると
随分とその高さも下がったものだと思わずにはいられない剣士

何せ、こちらが何発も食らう事を前提で打ち込む渾身の一発は――
それで勝負を決めてしまう一撃、という前提だった筈だ
故に自身、身を切らせながらに相手の懐に侵入を繰り返していたというのに、、

それが直撃でないとはいえ頭部への一撃――
手応えからいって間違いなく頭蓋に達したと思われる傷を負わせた
自身もダメージで朦朧としていたが、確かに――仕留めた!と思った 

――それほどの会心を感じたというのに…

だのに男の体は揺るがない
その槍は未だ変わらず淀みなく自分の方を向いていて
スタート地点と何ら変わらぬ状況が目の前にある


どうする、、?

このまま、ジリ貧を続けるか
それともユニゾンで一気に勝負を決めるか

場を一転させる何かを掴まねば、、このまま競り負けてしまう

試行錯誤するシグナム

目の前、紅い槍との対峙がいよいよ持って熱を帯びてきた、、


(くそ……)

無策で迎え撃つしかないのか…?

鞘と剣の二刀を携える騎士が内心で舌打ちする


その時――


(シグナムッ!!!)


先ほどのアギトに続き脳内に――

その身の無事を心配して止まなかった
あの戦友の声が響いた


――――――

(テスタロッサか……!)

沈着な騎士の声がわずかに半トーン上がる


(繋がった……よかった、、アギトから先ほど通信を受けて…)

(そうか、、)


どちらともなく漏れたその吐息は
友の無事をに対し、心の底からの安寧を感じさせるものだった

(無事だったようだな……心配したぞ)

(ええ、貴方も…)

通信越しからであるが、互いの安否を確かめられた事で
重くのしかかっていた不安と重圧から一気に解放された二人

(本当に良かったです、、アギトの様子からもっと酷い状況を想定していましたから…)

(それは私が負けそうになっている、という意味か?)

(あ……いえ、、そういう事では、、)

焦るフェイトの声

相変わらず不意の発言にアタフタとするその様子は肉眼で見えなくとも可愛らしいものだった

(いや、いい…)

少し、苦笑交じりに答える将

(あながち否定は出来ん)

(………っ)


フェイトが息を呑む

この騎士をしてこの台詞――

半分、固くなった声で返ってきた言葉…

自身もあの壮絶な戦闘力を持った女性の魔の手から逃れ、九死に一生を拾ってきた身だ
こちらも状況は、本当に切羽詰っているであろう事を想像するに容易い状況だった

(………苦戦しているんですね、、)

(そうだ、、悪いがあまり悠長に話をしていられん
 到底、話しながら交戦出来る相手ではないのでな)


切羽詰った状況、、
だが――このまま切るわけにはいかない

伝えなければいけない事――そして作戦があった

(時間がありません……! 聞いてくれませんか?)

執務官の口調がにわかに早口になる

(間もなくフルスピードでそちらを通過します! ――――敵を引き連れて)

(!)

この短い時間で、その心中に抱いた図式を残さず……
否、せめて7割は騎士に伝えなくてはならない

間髪入れずにシグナムのデバイスにデータが送られてくる

(………)

(………)

互いに交戦中の身である

幸か不幸かシグナムは対峙中
フェイトは離脱中という幸運が重なり
こうして通信を続けられている、、

場合によっては血路を開かねばならない事も視野に入れていたフェイト
そこは彼女にとって僥倖以外の何物でもないが
かといって、それに気を裂き過ぎると絶死の一撃が飛んでくる

目の前の、そして後方の相手に微塵も悟らせないよう
目線すら動かさずに、二人はその情報を交換し合う

(、、、、、、正直、良い機会だ……実はこちらも手詰まりでな
 そろそろ場を動かす何かが欲しいと思っていた)

(タイミングはもう間もなく、、手短に説明します
 まず、――の地点から飛び出して、、貴方は私に対して背を、――)

(―――、そうなると位置取りがかなりシビアだ、上手く行くか分からんぞ
 相手が相手だ……こちらの誘導に乗ってくれる可能性も低い)

(それはこちらも同じです……でも強引にでも合わせて――
 上手く行けば、、一気に相手を制圧出来るかも知れない)

一見、自信無さ気に聞こえる彼女の語尾はしかし長年、共に戦った騎士には分かる

彼女は多くの部下を率いての作戦行動を強いられる執務官だ
可能性の低いミッションをおいそれと提示する筈がない

(分かった、、お前が隊長だ……従おう
 今、奴の位置を送る――時間は、、あと10秒03、02、、)


敵があの得体の知れない怪物達である以上

どんなに練った作戦でも――
絶妙のコンビネーションでも――

安パイなどという事はあり得ない

そして失敗して最悪の展開になった時は――もはや戻しは効かない
逃げる事も出来ずに、自分もパートナーも殺されるだろう

二人の間に糟かに緊張が走るが…

(…………)

(…………フ、、)

沈黙の中にも感情は灯る

無言のフェイトにその勇気を認め、シグナムが微笑を返す


要は―――

(私たち次第という事だ……成功するか否かは、な)

(その通りです)


至極、当然の結論に至るライトニングの隊長と副隊長


――暗雲差し込める二人の状況に、、一筋の光明が差そうとしている


そう、、

暗雲を切り裂くモノ――それは雷光


ライトニングの名を関する部隊の最強コンビが今、、
サーヴァントに対する反撃の牙を虎視眈々と磨いていたのだった


――――――

激流のような空間は決して止まらず、収まらず――

火山の噴火の如き激しさの様相を呈していた
騎士と槍兵の戦いにおいて……生じた小休止は10秒足らず、、

その沈黙と拮抗は互いに少なからず思慮する所があったのだろう
負ったダメージが肉体に無理やりにでも一時静止を要求したのかも知れない

それが果して戦局に、そして両者にどう作用するのか――

ことに将……氷を思わせる冷淡な相貌の下に抱く思案
果たして秒の単位で張り巡らせた策が
この凄まじき戦技を持つ男を相手に通用するのか、、?

不安や緊張はあっただろう
この相手の力を直に感じた自分だからこそ、、
それは余計に彼女のそれを煽り立てる


それでも―――

水面に映る月の如く――

平常心を微塵も崩さずに行動を開始するのが彼女――烈火の将=シグナムだった

手に持つ二刀、剣と鞘
数多の敵を打ち倒し、また己が身を守ってきた彼女の半身を再びランサーに向けて構える

右手に煌びやかな光と紅蓮の炎を内包する刀身――
眼前の男の喉元に向けて真っ直ぐに片手正眼にて敵の戦意に呼応する

左手に純白の輝き放つ重厚な鞘――
クナイの様に逆手に持ち、胴の下の懐に構え
あらゆる猛攻を打ち払う鉄壁の城門の如き様相を以って佇む

攻防一体の出で立ち

本来ならば一刀のオーソドックスな騎士剣こそが彼女の本流であるが
この二刀もまた何と堂に入っている事か…


それに対して本来ならば疾風怒濤――
戦場では常に一番槍を勤めてきたこの男

そこに敵があれば是も非もなく飛びかかっていく槍兵が、、


ここに至っては、、攻め込まない

否、攻め込めない?

普段の彼からはあり得ぬほどに慎重な様相を呈するランサー

頭部破損――
かの半生においても数えるほども負った事の無い傷を
よりによって宝具に合わせられてつけられた
頭をスイカのように輪切りにされかけた記憶が聊かながらも効いているのであろうか?

ともあれ騎士の剣の予想外の変化―――

それを警戒するランサーがこの数瞬のみ「見」の姿勢を見せる

先ほど男は確かに決めにいった

「必殺」を抜き放ち、、そして結果があれだった――

ならば再度、軽々しく抜き放つ事はしない
失敗したからもう一度、、そんな短絡思考でホイホイと抜くような安い槍ではないのだ


サーヴァントの宝具発動に生ずる時間は

個体差はあれどだいたい一秒か二秒とも言われている

たかが一秒、されど一秒…

もし、モーションを盗まれているのだとしたら――
敵が虎視眈々とソレを狙っているのだとしたら――

何せ、この切り札を抜き放つ瞬間を切って落とす事が

英霊と呼ばれる者を打倒するに最も適した戦術である
ならば迂闊に発動体制に入った時点で、それを再び狙い撃ちにされる可能性を、、
ここに来て男は捨てきれない

故にランサーの見

その切り札はなりを潜め、、
再び「死棘」が解き放たれる事はなかった

そんな男を前にして摺り足でゆっくりと――体をサイドへと運ぶシグナム


「―――――、?」

怪訝な顔をするランサー

未だ数秒も経過していない睨み合いであるが、そこに違和感を感じる男――

竦んでいる、、?
弱気になっている、、?

そんなわけはない
この女はそのような惰弱なタマではない


だが、故におかしい…


――― 重心を後方に置いたその構え ―――


今の今に至るまで、こちらの攻撃を弾いて

一撃による逆転を狙う彼女の戦闘スタイルは
終始、前足に体重を乗せた前屈姿勢であった筈

この女剣士の本質は不動の受けから一転しての飛翔、強襲


つまり行動の起点はあの騎士王に似ていて
自分から下がったり足を使うタイプでは断じてない

そう、それにしては…後傾姿勢に今のサイドステップ、
まるで自分と距離を取ろうとしているかのような――

「…………」

男の煌々と光る紅い瞳が射抜くようにシグナムの肢体を凝視する

(全く……生きた心地がせんな、、)

その些かの仕掛けも見逃さない魔犬の双眸に晒され
全身の毛穴が開き、彼女の体からまるでサウナに叩き込まれたかのような発汗が止まらない

(だが――――もう少しだ……)

この男を100%コントロール出来るはずが無いと思っていたが
今の今まではどんな作用が働いたのか、、何とか拮抗を保てている

それだけの事が――しかしこの化け物相手には何という僥倖か

出来るだけ完璧に近い形を以ってあの隊長を迎えたい
あの金色の魔道士の副官として、キッチリと仕事をする
それが今の自分の立ち位置に他ならない

その時まで――

もうすぐ―――


もうすぐだ―――!


「は、――」

その沈黙が
男の笑みと共、、、、


―― 灼熱の空気へと変わる ――


「ッ……!!!」

息を呑む剣士

相変わらずの、吸い込む空気にすら浸透してくる高濃度の殺気
いい加減、少しは慎ましやかに隠せ!、と罵声を浴びせたくなるほどだ
息を吸っただけで肺がひりつく錯覚さえ感じてしまう

怨、、、と呻きを上げたかのような紅き闘気を放つは

彼の持つ因果逆転の魔槍

ニィ、と歪にゆがむ口元
その蒼い肢体が、

「お休みはもういいだろ、――――行くぜ……」

再び低く沈み込む

自らの頭部の傷を手で勢い良く拭うと
再びびちゃり、と足元のアスファルトに血痕が飛び散る

負傷による戦力の低下などまるで意に介さぬ風の槍兵

苛烈な戦士の食らい合い、、、
熱を帯びるのは――あっという間だった

静から動へと互いの思考が切り替わってしまえば
もはや絶対零度の寒波をもってしてもその場を冷やす事は適わない

(駄目か……せめてもう少し、、)

その熱砂の渦中に身を投じる事は簡単だ


だが今は、――

「ぬううッッッッ!!!」

相手の動きだけでも止めようと、騎士がその場で
体中から炎はためく魔力を噴き出して威嚇する

まるで孔雀が己が羽を広げて捕食者を怯ませるように――

攻防一体の構えに加えて凄まじき魔力の放出
一級の戦士といえど、この炎の城塞を相手に無策で突っ込んでこれるものなどそうはいない


(まだ動くな……その時まで、、)

――ついには1秒を切った


だがその威嚇は――男に対しては、逆効果

猛り狂う猛犬に生半可な威嚇など、長髪と変わらない
剥き出しの牙を前に餌を放り込んでやったようなものだ


(く、、、)

唇を噛むシグナム

その目の前
顔半分を鮮血に染めた男がゆらりと動く

自分に向けられた槍の穂先が揺れ――
あの恐るべき千の軍を思わせる槍撃の侵攻が再度開始されるのだ

今までは何とか防いできたが、あれだけの猛攻……
消耗した体でこの先、急所に一撃も貰わずにやり過ごす事など不可能だ


「――レヴァンティン、、」

食んだ両足が地面に亀裂を作り
そのくるぶし周りのアスファルトが高熱で溶け始める

烈火の将の背水の気迫…
一種の覚悟を決めてその腰を落とし、鬼人の如き様相を以て男に対峙する

もはや数瞬後に始まるであろう二人の修羅の滅ぼし合いは、、、、、


――― ジャスト、、0 ―――


幸か不幸か、

戦場を真っ二つに引き裂く雷光によって――


今まさに中段される事になる


――――――

決死の覚悟で揺らめく魔槍に立ちはだかるシグナム


後方には――森

再び始まる槍と剣の破壊の奔流を前に大気が、木々が、山が
戦慄のあまりに凝固し、鳴動を開始する、、

双方、またはそのどちらかが踏み込めば
または振り上げれば、、

それが開始の合図だ――

もはや何人も止められない…
そんな領域に突入していく戦場を、、、


―――今、雷光が切り裂いた


その場に飛び込んできたのは金色の天使

シグナムの後方に座す森林のその奥から爆風じみた突風と共に
雷を纏う翼が舞い上がり、騎士の薄紅のポニーテールを跳ね上げたのだ


(間に合ったか……!)

シグナム、目線は正面――槍兵から一時も話さないままに、、
その後ろ髪に感じた戦友のマニューバによる心地よい風を以て――
ミッションが正しく開始された事を知る

上空へと舞い上がった女神はその黒衣と白きマントをはためかせ、

「撃ち尽くせ、、、ファイアッッ!!!」

号令の元、己が周囲に展開している全てのフォトンスフィアの解放を命ずる


瞬間―――

そのフィールドは稲妻降り注ぐ雷帝の庭と化した


雷の雨はまるで神が罪深き人間に下した天罰そのもの

一帯にプラズマを生じさせながらアスファルトを焼き尽くすは
ライトニング1・フェイトテスタロッサの得意技である雷撃魔法だ

そして、、

「サンダァァ、、、、スマッシャァァーーーッッ!!!」

その止めというべき豪雷の鉄槌を今、
フィールドの中央に打ち放っていたのだ


――――――