剥き出しの感情  あまりにも飾らぬ、偽らぬ
その餓鬼のような妄執を前に 黄金の殲滅者が顔をしかめる
あまりの汚らわしさに 無言で 一つの言葉も交わす事なく

目の前の無礼者を消し去ろうと 虚空に向けて指を鳴らす

空間を跨いで出現する 20を超える 殺戮の宝具
その 鈍色の紅い王気に満ちた 王とその財宝を前に――

男は両手を広げ、無防備に近づいていく
嬌笑を称えたその顔 ギラついた瞳の奥には何の恐れもなく 
その歩には微塵の躊躇いもない

「博士っっ!!!」

彼の娘の一人が叫ぶ

「ふ、ふ、、ふははは……素晴らしい! 素晴らしいぞ!! 英雄王ギルガメッシュ」

英雄王の、男の死を宣告する その指がピタリと止まる
未だかつて、自分を前にこのような視線を向けてきたものはいない
皆 恐れ、敬い、強大なる自分に平伏するが常の彼である

絶対者たる自分に、敵意を向けてきた相手がいなかったわけではない
しかし、そんなモノがこの世から消滅するのに 一刻ほどの時を要さなかった

「一つ、聞かせてはくれまいか?」
「許す 申してみよ」

「英雄王よ! 私は欲しい……全てが! この無限の欲望を満たす世界が欲しい!!
 故にキミに問いたい! 世界の全てを手に入れた気分とは、どのようなものかね!?」

自らの夢を――世界を―― アンリミテッドデザイア・ジェイルスカリエッティの欲望は
次元を跨いでなお増殖し、そして今まさに<英霊>という存在をも欲していた
そして今、彼の目の前には その最古にして最強の研究対象が――

「どうという事はない」
「ほう?」

張り付いた笑みをそのままに 首をかしげるスカリエッティ

「歓喜は?」
「無い」

「愉悦は?」
「無い」

「重圧は?」
「くどい」

興味は失せた――
時間を無駄にした、という表情をありありに、ギルガメッシュは男の言を切り捨てる

「よく聞け駄犬  この我自ら手を伸ばさずとも、天と地が生まれし時より
 世界はすべからく我のものである  既に手にあるものを愛でるならともかく… 
 感慨を抱く阿呆はおるまい?」

数秒ほど 間を置いて 「ああ…なるほど」 と表情を崩す天才科学者
そのザラついた欲望を、目の前の英霊に惜しげもなく叩きつける

「欲しい……ギルガメッシュ キミが欲しい、なぁ」

数多の世界を残さず食いつくさんとする狂気の簒奪者と
数多の世界の上に君臨する事を許された絶対の支配者

その欲望と自我が交錯
その想念のあまりの凄まじさに空間がぐにゃりと歪む

「許せ―――」

何と、謝罪の言葉を口にする英雄王

「貴様のような痴れ者は、疾く断罪を下すのが世の理であったのだが…… 
 その在り様は無礼を通り越して清々しかったのでな 
 ついぞ裁定が遅れた」

もはやこの紅い瞳に 処断するモノ 以外の物は移っていない

「待たせたな この我が手ずから裁きを下そう。 
 分不相応の者が王の眼前を汚した者の末路は――」

そして、その<執行>を下す指が止まる事は、二度とないだろう

「――串刺しの刑と相場が決まっておろう?」

スカリエッティの最高傑作 ナンバーズが迎撃のシフトを取る
各々が一つの機能に特化した性能を持つが故に
終結した彼女らを相手にすれば、英霊とて無事にはすまい

しかし、スカリエッティの右腕にしてもう一つの頭脳 
参謀ウーノは唇を引き結ぶ

(全68パターンのシミュレーションを想定した結果、我々の勝率は……
 分かっているなトーレ……もしもの時、、博士だけは無事に)  

(了解した)

悲壮な決意を胸に秘め 絶望的な作戦を敢行する戦闘機人たち

「さあ、塵も残さぬ! そのみすぼらしい木偶人形と共に
 存在ごと、この世界から去ぬがよい」

「ふはははは……ふはははははははははははははは!!!!」

王の指が振り下ろされ 
狂気の科学者がいっそう大きな嬌笑を上げたのを合図に
場は地獄の戦場と化していた


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最終更新:2008年05月10日 12:46