218 :Fateはやてルート80:2008/07/07(月) 06:32:00 ID:8tWlriDU
暗い森の奥にそれはそびえ立つ。この国のものとは明らかに異質な様式で築かれた石造りの城。
城が城ならばその主人もまた、この国の住人とは姿形を異にしている。
正確に言えば彼女はこの国の血が混じっている。けれど連綿と続く北の一族の思いの強さか、血の濃さ故か彼女には
父の面影というものはあまり見受けられなかった。
代わりに母と瓜二つの銀髪と赤い瞳を持つ少女は今、不機嫌な態度を
隠そうともせず不満を口にし命令する。

「あんなのに私のバーサーカーが負けるっていうの?どきなさい」
「あれはダメ。行くのよくない」

巨大な武器を片手に白衣のメイドは体を張ってイリヤスフィール行く手を遮る。
淡々とした口調でありながらも意志は堅いのか主人の言葉に対しても頑として動こうとはしない。
そこをどけとばかりに赤い目が赤い目を睨み付ける。
幼い眼差しと感情が読み取りにくい瞳がぶつかること数十秒。
ぐぐっと片方は力むも、もう片方は涼しい顔。
この行為の無意味さを察し主人は――折れた。

「……我慢してあげるのは今夜だけなんだから…」

ぷいときびすを返すと本人としては足を踏み鳴らしてずがすかと寝所へと帰っていく。
主人の姿が見えなくなって尚、メイド、リーゼリットは城の正面玄関に表情を変えずにそのまま立ち尽くしていた。
ただ、一度リーゼリットは背後を伺う。固く閉じられた扉の向こうには
確かに主人に害を成す者の気配が感じられた。


衛宮邸
土蔵はランサーの一撃により半壊したが、シグナムらの魔法により復旧がなされていた。
土蔵に足を踏み入れんとする身になってその効力に改めて感心する。
外部は元より内部も修復がなされていた。
過去、シグナムらがベルカ式魔法と称するものを士郎は学ぼうかと考えたが、
教育を担当したヴィータが才能無しと匙を投げそれっきりとなった。
ただ、思念通話だけは成功させ、ちっちゃな教官を喜ばすことだけはできたのだが。
いつもの定位置へ座し、日課へと没入する。
衛宮士郎はやはり、衛宮切嗣に教わった魔術こそが武器、と心に刻みながら。


219 :Fateはやてルート81:2008/07/07(月) 06:34:26 ID:8tWlriDU
午前二時を回る頃、衛宮邸の廊下を忍び足で進む赤い髪。
彼女が狙っているのはとある部屋で今頃寝ているであろう獣の家族。
昼間のことで少~しばかり聞きたいことができた彼女は深夜にデバイスを片手にお話をしようと考えたわけだ。
故意か偶然かはともかく着替えを見られ、ついでにバラされたことで
ちょこっと長話でもしたくなったようだった。

「そ~っといくかそ~っとな」
「ヴィータか」

部屋の前まで来たところで男は筒抜けとばかりにヴィータを部屋に招き入れる。

「…ちぇ、気づかれてたか」
「お前に明日のことで話があったところだ」
「話?」


ヴィータがザフィーラを訪ねたのは士郎が鍛錬を終え床に就こうとした時間とほぼ同時期であった。

「ん?なんか騒がしいな。ザフィーラの部屋のほうか」

士郎が足をむけると一つ大きな音がし、そしてすぐに静かになった。

「おいっ!どうかしたかザフィーラ!?」

部屋まで駆け、襖を開けると士郎の目の前に飛び込んできたのは
人型に戻っていたザフィーラがヴィータの口を塞ぎ組敷いているという図だった。

「じ、じろ…う゛」

じたばたと口を塞ぐ屈強な腕をどかそうと服の乱れも気にせず抵抗するも
ヴィータの細腕ではびくともせずかえってよりがちりと押さえ込まれる。

「ザ、ザフィーラ!?な、何してるんだ?」

士郎は混乱のために襖を掴んだまま二人を凝視してしまう。

「士郎…言っておくがここは私の部屋だ。私がこの状況を望んで作ったわけではない、ということを理解してくれ…」

というザフィーラだが顔にはらしくない焦りの表情が見てとれた。

「な、なら、ヴィータを離せって…」
「それは…できない…」
「しっ!しろぉ!聞いてっ!!む、ぐぅ…」

ザフィーラが士郎の方を向き僅かに拘束が弱まった隙を狙うがすぐに封じられる。

「話しても…無駄だな。ヴィータは借りていく」

ヴィータを羽交い締めにしたまま、ザフィーラは庭へ、敷地外へと消えた。
室内には冬の冷たい風とグラーフアイゼン、呆然とした士郎だけが残された。


220 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/07(月) 06:34:40 ID:dxV7YSVB
早起きはするものだ、支援


221 :Fateはやてルート82:2008/07/07(月) 06:41:27 ID:8tWlriDU
「シャマル!ヴィータと念話が通じないんだ!」

士郎がシャマル始め、酒を飲んでいたシグナム、セイバーを見つけ
状況を説明すると

「あはは、士郎君、大丈夫よ。二人ともあなたより随分長生きしている大人なんですもの~」
「マスター、私ならヴィータにそちらの方も教えられますが?」
「セイバー今日はお前の凄さ改めて発見した気がするよ」
「いや、まぁみんながそういうなら…」
「それより!マスター、美味しい食事の代わりに!これを!」
「酒!?」
「セイバーの感謝の気持ちだ。受け取れ」

酔っ払いシグナム、セイバーに引かれシャマルに飲まされるという、苦境に士郎は追い込まれた。


時は少し巻き戻り、穂群原学園職員室にて藤村大河は学園の生徒で
最近体調不良となった者の容態についての報告書を作成していた。
先に葛城教諭も帰宅し職員室には大河一人となった。
広い部屋の中、パソコンに向かう姿勢は真剣といってよい。
昼の会議によれば冬木市で起きている原因不明の体調不良者続出事件は
学園の生徒にも少なくない該当者を出しているらしく
部活動の休止も検討するという内容であった。
C組にも該当者はおり、8クラスある二学年を合わせるだけでも二桁に届きかねない。
そんな作業に身が入るのも当然といえた。

「はぁ、なんなのかしらね~これは。犯人がいたら私が捕まえてやるのになぁ」

椅子に背をもたれ両手を上へ伸ばし伸びをする。

「勇ましいもんだね。僕の担任は」

大河が声の方へ向くと弓道部副部長の間桐慎二が普段着のまま、
職員室の入り口に背をもたれ皮肉気な視線を投げ掛けていた。

「あら、間桐君、どうしたの?」
「別に、学生が職員室来るくらい普通だろ?」
「んーでも用がないと駄目よー」

大河の言葉に慎二は目を上へ泳がせたが決まったのかすぐ大河に向き直った。

「要件ね。あるよ藤村に頼もうかと思ってたことがさ」
「間桐君が私に頼みごとなんて珍しいわね。言ってみて」

ニヤリと慎二は笑うと職員室へ足を踏み入れる。

「僕の進路指導でもしてもらおうか」

2月3日はこうして過ぎていった。




514 :Fateはやてルート83:2008/07/13(日) 11:32:15 ID:Qz8qpW4I
衛宮邸はやての部屋

「ザフィーラがヴィータをなぁ。なんもない気がするけど確認しとくわ」
「俺からだと聞きにくいからはやてから頼む。
あと遠坂の方は話し合いでいくけど問題ないな?」
「そやね。遠坂さんと話してつけてやり合わずに
できたらそれが一番や。…にしても、士郎、なんか臭うんやけど?」
「…五時まであの飲んだくれ共に捕まってた…」
「は、はぁ…それはまぁ、おつかれや。けど、どうしたもんやろな。
そんな酒臭ーな状況で登校させる訳には副会長としてあかんし」

それはそれは三人に飲まされ続けた士郎の表情はやや青く、酒臭い
はやては半ば本気でどうしようかと思案し始める。

「だからって一人では行かせないからな。昨日言った通りだ」

布団から上半身起こした状態のはやての両肩をずいっと乗り出し掴んだ。

「酒臭…」
「悪かったな。はやてこそ学校行ける体調なのかよ」

酒の臭いに顔をしかめたはやては士郎の言葉に一転顔を緩める。

「なんとかなるやろ。今はそれなりにええ調子や。
夢見はあんまよーなかったけど」
「夢?何の夢だ?」
「んーそやなぁ。士郎の知らない切嗣の夢。
私の好きやない切嗣や、あれは」
「いつも、それがどういう切嗣だったのかはぐらかされて聞かせてもらってないんだけどな」

憮然とする士郎にはやては笑う。

「大好きな切嗣の一面を知りたいのはわかるけど残念、これは私と切嗣の秘密や」
「ちぇ、いつも通りかよ」
「まぁ、この一件が終わったら教えてあげてもええかな」
「聖杯戦争がか?」
「そうや。あ、と。もう、こんな時間。そろそろ朝食の支度せんと。
着替えるから外で待っとるかしといて」

けれど士郎は動かない。

「…士郎?え~と流石にこのまま着替えるんは恥ずかしいんやけど…」
「今の話約束だからな」
「切嗣の話?」
「ああ、あと、手、出せって。いきなり倒れられたら困るし、
はやての体調は理解しておきたい」

伸ばされた手をはやては控えめに笑いながらとった。

「ん、ありがとな。切嗣の話も確かに約束された」


515 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 11:32:15 ID:uMWvVKkh
おk


516 :Fateはやてルート84:2008/07/13(日) 11:35:17 ID:Qz8qpW4I
士郎がはやてを引っぱりあげると士郎の足元がふらつき一定しない。

「え?ちょっ?士郎!?」
「あ…れ?」

早朝の室内に二人の影は布団へと倒れ込む。士郎は下にはやては上に。

「…ザフィーラとヴィータがこんな状態やったと…随分酔っとるわけやな」

はやては酒の臭いの染み込んだ士郎の上着に頭を置いてふぅと呟く。

「い、いや、酔ってないぞ」
「意地張らんでええよ。酔っ払いはそういうんや。
こんなんじゃ午前中の登校は無理やと思うよ」
「だ、だめだ!午前中にでも話つけて夜は別の敵を捜す予定―」
「気持ちは分かるんやけど、そんな姿を大河に見せたら…私は知らへん…」

はやては憐れみを込めた視線で見下ろす。

「ぐ、ぐぅ。藤ねぇにさえバレなければ…」
「それでも柳洞君がおるよ。彼を失望させてもいいんかなぁ?」
「…それは別に」
「……お二人とも仲が良いのは結構だと思いますけど朝から
布団の上でじゃれあうのはどうかと思います。藤村先生も柳洞先輩も今の様子を見たら
竹刀が飛び出したり、失望したりとしちゃうかもしれませんよ?」

と、第三者の声を士郎、はやては目を丸くして見上げた。

「い、いやぁこれは事故というか士郎のせい


517 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 11:37:38 ID:Qz8qpW4I
というか、つまりは誤解というわけや桜ちゃん」
「そうですか?はやて先輩は気持ちよさそうに先輩の胸に顔うずめてましたし、
先輩は先輩ではやて先輩の背に腕回してますし、誤解ですか?」
「そうだぞ桜。はやては今、足悪いし支えないと危ないだろ?」
「…先輩がそういうならいいですけど…あと、あのですね。私の後ろにいる飢えた人達を
なんとかするのに協力してくれませんか?」

桜がため息をついた背後には壁を背に腕組みをしたシグナムと
泰然と仁王立ちしたセイバーが鋭い視線を桜に送っていた。

「桜、その言い方関心しないな。まるで私達が食事をせかしているようじゃないか?」
「ち、違いますか?」
「桜、私達は定時の朝食を求めているだけです。
今日はすでに予定時刻を回っている。これは良くない傾向だ」

二人の剣幕と桜の苦笑いを見ながら、士郎とはやては笑いあう。
そんな風景から2月4日は始まった。


518 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 11:39:24 ID:xLC4ctWe
きたー、支援


519 :Fateはやてルート85:2008/07/13(日) 11:39:53 ID:Qz8qpW4I
少し遅れはしたが、いつものような和やかな食事、
のように見えるも、仕事が忙しいのか藤村大河の姿は食卓にはなく、
二人ほど普段の様子とは違う者、一人は酔いつぶれ、顔色がひどいことになってる金髪のお姉さん。
もう一人は食が進まないのか箸をじっと見つめたままの小学六年生。

「ヴィータ、悩みがあるなら私に言ってな、そんな顔しとったら聞いてって言っとるようなもんや」
「はやて…」

一度はやてを見るもすぐ顔を俯けてしまうヴィータ。
はやては次いでシグナムの後ろに丸まっているザフィーラを見やる。
はやての視線に気づいたザフィーラはゆっくり顔を逸らし寝た振りを決め込んだ。

「ふふ、挑戦的やな…ザフィーラ」

はやてが唇の端を吊り上げ妖しく笑う。どうしてくれようかと黒い腹が蠢き始めた頃。

「はやてちゃ~ん」
「わっ!?わ!?なんやシャマル!」

はやての後ろから抱きついてきたのはまったく覇気がないダルダルな様子の金髪。

「どうしたらいいかしら~今日はグループの偉い人が来るのにこのまま
会社に行ったら怒られるわ~」
「……それは流石に自業自得や…私にはどうにも…」
「いやぁ見捨てないで~」

むせび泣くシャマルは縋るようにはやての体に手を伸ばす。

「シャマル!どこ触って!?」
「はやてちゃんが助けてくれるまで弄るのを止めないわ~」
「…ちょ!…待ってな!だ、駄目やって!!」

One moment, please.

「シャマルさん…凄い…」
「桜、ここは感心するところではありません。
朝からこのように乱れているなど言語道断!士郎からも家主として
一言あるべきです!」
「あ、ああ。シャマル、まだ朝だぞ…」

シャマルを正視できない士郎の声は弱々しい。無論、士郎もこの程度で止まるほど、
酔った金髪が生易しい相手でないことは承知している。
ここで士郎が頼りにするのは一人のみ。

(シャマル、主への非礼はその程度にするのだな。
酒に負けるなど湖の騎士の名が泣くぞ。そんな様子では
お前は今日は外れた方がいい。我らのみでやろう)

ザフィーラの一言によって衛宮家の乱れはピタリと止んだ。


520 :Fateはやてルート86:2008/07/13(日) 11:42:40 ID:Qz8qpW4I
「え、えらい目にあった…」

浴室から出てきたはやては朝からすでに半ばグロッキー状態であった。

「はやて…」
「お、ヴィータ。話してくれる気になったん?」

はやての前には髪の色と同じ色をしたランドセルを背負ったヴィータがやはり俯きながら立っていた。

「ヴィータがそんな顔しとると私も辛いんよ。
頼りにならんかもしれんけど話してくれんか?」

目線の高さを合わせ問い掛けるとヴィータの目には迷いの色が浮かぶ。

「はやては…あたし達にとってすごく大切だ…だから、ごめん…」
「ちょ…ヴィータ!?」

その言葉だけを最後にヴィータは反転するとはやての元から逃げるように駆け出す。

「ヴィータ…」

ヴィータの尋常でない様子に何か嫌な予感が胸を満たしていくのを
はやてはじわり感じ始めていた。


「なんで俺だけ行けないんだ!?」

居間に響く家主の叫びは満場一致で却下されていた。

「シグナムだってあれだけ飲んだじゃないか」
「それはな、長年の修練の結果の差だ。もう体のどこにも酒は残っていない。
多少残念ではあるが。
足元がふらつき、動きが緩慢とは、士郎、お前はまだまだだな」
「…シャマルは会社行くんだろ?」
「は~い、行きます、行きますよぉ」
「…これが行けて俺が行けないのは納得がいかない」

テーブルにべたっとしているシャマルに視線が集まり場には沈黙が舞い降りる。

「…これはこれで一応社会人としての責任があるんだろう…」
「シグナムが言っても説得力がないぞ」
「ほっとけ、私は弓道部に桜と顔を出すが士郎は午後からでも来ればいいだろう」
「はやてはどうするんだよ?」
「私は一人でもええんやけどザフィーラが付いてきてくれるそうや」
「へーやっぱりザフィーラは賢いんですね。ご主人様の体調が分かるのかな。
よしよし、私の家に来てくれたら四六時中離さないんだけどなぁ。
そうだ、ザフィーラに子供ができたら私にくれませんか?」

ザフィーラの頭を撫でながら桜は閃いたとばかりに表情を明るくする。

「あ、ああ別にいいけど…なぁ?はやて」
「そ、そやな」


521 :Fateはやてルート87:2008/07/13(日) 11:45:25 ID:Qz8qpW4I
(シャマルに何言ったか知らないけど流石だなザフィーラ。
あと、はやては頼んだぞ。俺も午後から行くから)
(任せておけ…)

短い念話を終えると家に残る者、出て行く者は順次、玄関で挨拶を交わし別れる。
家に残ったのは士郎、そしてセイバー。

「セイバーはどうするんだ?」

はやて、ザフィーラを送り出し後ろに立っているセイバーに振りかえる。

「寝ます」

何の躊躇もなく告げられた言葉に士郎は言葉を失うが彼女が
昨夜碌に寝ていないことを思い出した。

「酒飲んでて寝てなかったもんな。ゆっくり休んでくれ。
ただし、酒飲むのもほどほどにしとけよ」
「一つ確認しておきますがわたしは本来寝る必要はありません」
「え?」
「つまり―――」

士郎はセイバーより自分がどれだけ未熟かを懇々と聞かされてしまった。

「…わかった…俺が悪かった、好きなだけ寝てくれ…」
「いえ、マスターは午後から学校へ行くのですね」
「そうだけど?」
「ならば私も同行します」
「えっ?まてよ。生徒しか入れない所なんだぞ。学校は」
「シグナムが入れているのです。現役の学徒であるマスターならば
私が侵入する手段くらい簡単に思いつくに違いない」

期待と信頼の眼差しに士郎は固まる。

「考えるって、俺が?」
「ええ、お願いします。マスター」
「…少し時間をくれ。セイバーが寝てる間に考えとくから…」
「はい」

士郎の返事を聞いたセイバーは会釈をすると玄関を後にした。

「…あんな頼み聞くなんてやっぱりまだ酔ってるのか、俺…」

士郎は頭を掻きながら水でも飲もうかと居間に向かった。


ザフィーラは校内までは来れず最後の難関たる階段は一人で登り切らなくてはならなかった。
その二年の階まで登る際に後ろから声がかかる。

「よぉタヌキ 今日は一人かよ珍しいじゃん」
「慎二か、おはよ」

普通の足取りで登ってくる男はすぐにはやてに並んだ。

「ん、お前体調悪いのかよ。トロすぎじゃない?そのペース」
「私かて体調悪い日くらいあるんや」
「ふーんタヌキも女だって言いたいわけ?」
「ちゃう、単純に体調が悪いだけや」
「バカだろお前、そんな日は休むんだよ」



522 :Fateはやてルート88:2008/07/13(日) 11:48:16 ID:Qz8qpW4I
「今日はそういう訳にはいかへんのや」
「さては衛宮絡み?お前も物好きだよね。肩貸せよ」
「慎二?」
「弱ってるタヌキ叩いても面白くないんだよ。食べれるならまだしも
食べれないんじゃあトドメさしてもつまらないだろ?」
「は?訳わからんよ」

はやての頭には疑問符が浮かぶ。

「腹が黒すぎて食べれたもんじゃないってことだよ。もしかして自覚症状なし?
それってかなりやばいよお前」
「…うるさいワカメやな」
「誰がワカメだ!!」
「まぁええ、肩貸してくれるんやろ?」
「誰が!僕はワカメじゃあない!」

激昂した慎二にはやてはニヤリと笑う。

「間桐君、私、体調がすぐれません。すみませんが
肩をかしてもらえませんか?」
「お、ま…その声…また使い…」
「間桐君は普通の人とは違って紳士だと思ってます。
…遠坂からの不躾なお願いではありますが」

だんだんと慎二の顔には悦の色が変わっていく。

「…しょうがないな。今回だけだからな」
「おおきに~」

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最終更新:2008年07月13日 16:31