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#1 カーン! と甲高い音が邸宅の庭に響き渡る 設置された特設リング上、ぶつかり合う力と技 「さぁ始まりました、実況は私、時空管理局執務官補佐シャリオ・フィニーノ、 解説は魔術協会ノーリッジ学生寮受付オクタヴィア・レイランドさんでお送りいたします」 ノリノリな先輩を横目で見ながら現実逃避していたティアナ・ランスターは、 空を見上げてため息をつきながら思った ―――なんでこんなことになったんだっけ? ロストロギア捜索をしてたはずよねぇ―――などと現実逃避していたら、 目の前のテーブルにティーセットが用意されていた ありがたくいただきながらその原因に視線を戻す あいつもあいつでノリノリなのよねぇ……と、リング上の友人の様子に再度ため息を付く 事の始まりは数日前に遡る 地球で発見された虚数空間に消えたはずのロストロギア『ジュエルシード』 その回収任務で現地に降り立ってから数日、 其れらしい反応に、ティアナはとある邸宅を訪れた 知らずに持っているならまだましだが、危険な思想を持って実用しようとしている場合、 果たして実力行使に出ていいものか 現状自衛はともかく現地人への実力行使は認められていない、 そんなことにならないに越したことは無いが、 今回は相手が極めて利己的な思想を持っている可能性がある為、 穏便に済まないことは十二分に考えられるのである 「確かに其れらしい物を先日購入いたしましたわ」 当主だと言うティアナと同年代と思しき少女は幸い物分りが良い人物だったらしく、 交渉そのものはさほど難航することは無く、 やや肩透かしを喰らったような感じを受けたティアナだったが問題はその後に起きた 「金銭の問題ではありませんわ―――えぇ、ありませんとも」 そう言って、言い値で買い取るというティアナの申し出を断った彼女が出した条件 それは――― #2 「うわぁ、こっちの文字はミッドっぽいなぁ」 「スバル、キョロキョロしない! まったく、どこの田舎者よ」 は~い、なんて元気良く返事しているが到底分かっているとは思いがたい ロストロギア『ジュエルシード』の取引において先方が要求したのは金銭ではなく、 なんと当人いわく異文化交流―――ミッドチルダの格闘家との真剣勝負であった この一件に対し、ティアナは魔術協会側の担当者へ相談し、 しかる後、偶然休暇で手の空いていた友人を呼び出したのであった ちなみに、協会側の担当者の返答はと言うと 「良いからやっちゃって、 そっちが良いなら息の根止めて良いから」 と言うものであった 仮にも公的機関である管理局員を捕まえて殺人教唆と言うのもどうかと思うが、 魔術師的にはOKらしい 曰く、「魔術師同士の戦いとは命のかかった真剣勝負で当然」だそうだが、 単に場のノリで言ってるようにしか聞こえなかったのは彼女の気のせいではあるまい ―――で、 屋敷について程なく、執事に連れられて庭へ向かった彼女たちが見たのは、 どこからどう見ても見間違えようの無いプロレスのリングであった 「ようこそエーデルフェルト邸へ、 手袋を受け取る準備はお済かしら?」 パラソルの下にテーブルとティーセット辺りを思い浮かべそうな庭に、 威風堂々と鎮座するプロレスリング、 そしてそのコーナーで丸椅子に腕を組んで座っているドレス姿のお嬢様こと、 エーデルフェルト家当主ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト ―――シュールを通り越して笑うしかない光景である しかも、どうやらそのままやるつもりでいるらしい ますます持って正気を疑う有様である 「あ~……スバル、いける?」 「うん、OK」 相手と反対のコーナーに立ち、調子を確かめるように靴でマットを叩く相方に問う、 こちらは流石にそれなりに動きやすい格好である 「前置きは必要ありませんわね、 それでははじめましょうか」 そう言うと、やおら袖に手をかけ力任せに引き千切る 一瞬面食らったティアナだったが、 袖の肩口にマジックテープが施されているのを見せられては呆れるしかなかった 莫迦だこの人――― しかも袖は外すのにスカートは脱がないらしい、 そっちの方が動きの邪魔になるのではなかろうか? 本人的には淑女としてそのようなはしたない行為は出来ないからなのだそうだが ティアナからすればこう言わざるを得ない つまり―――淑女って、何? 全員のヴォルテージが上がっていく中、 唯一人空気を読み違えた常識人は立ち尽くす以外の術を持たないのだった #3 「―――それで、件の物は回収できた訳?」 「はい……」 その夜、セーフハウスを訪れた遠坂凛に尋ねられ、ティアナは頷いた バックドロップを倒立で破る、正面からのストレートを飛びつき十字で捕まえる 背負い投げをローリングクラッチホールドで返されたときはどうしようかと思ったが、 リング中央で大の字を書いて横たわるスバルに対し、 わざわざコーナーポストによじ登ってパフォーマンスを決めてから フライングボディープレスに行く辺り徹底している スバルの方もスバルの方で途中あたりから 「コツが分かってきた」 などと言い出し大振りで派手な技を多用したりと“プロレス”に乗っていたようで (フライングボディープレスを受けたときも態々リング中央で大の字になるように 互いに組み合いながら無言で申し合わせていたらしい) 日ごろ見られないながらも実にらしいオーバーリアクションで相手していた 「なかなか良い“文化交流”になりましたわ」 と別れ際、実に清々しい笑顔で語るルヴィアにどう言う返事を返せばいいか全くもって ティアナが困ったことを追記しておく 「まぁ確かに良い“文化交流”になったのかもね」 仕事の都合があるので帰るというスバルを見送って、 ティアナの話にふむ、と凛は頷いた 「アレのどの辺が“文化交流”だったのか私には分かりかねますが……」 「プロレスについてはあのトンデモの趣味だから忘れていいわ、 私が言ってるのはさっきの子―――躯、普通じゃなかったでしょ?」 顔を引きつらせたティアナを手で制して話を続ける凛 「見るものが見ればこのぐらいは気づくのよ、 人造生命の鋳造なんてこっちでだって昔からある訳だし」 戦闘機人と人間の区別は一見して付きにくい、 その存在を知っていて眼球の機械じみた動きに気づいて漸く、と言った所である 物の数分、会話らしい会話も無く外見だけで見抜けるものなのだろうか? それとも、それが出来るから一流ということか そこへ、戸口をノックする音がした 外出していたシャーリーが戻ってきたのだろう 「はい、開いてますよ――― って、フェイトさん」 「うん、お待たせティアナ」 迎えに出ると、シャーリーと一緒に金髪の女性が立っていた ティアナとシャーリーの直属の上司、 フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官である 「それで『ジュエルシード』の出所は分かった?」 「物の回収は進んでますが、そっちの方はあんまり……」 「そうか、仕方ないね」 個人的な事情があるためか、ティアナの返答にあからさまに落胆の色を示す、 心なしか、ティアナの目から見てあせっているように見えなくも無い 「お土産兼、なのはからの差し入れがあるから、 お茶にしながら今後の打ち合わせをしようか」 「差し入れ―――翠屋のケーキですか、 いいですね、丁度魔術協会の担当者の方も此方に来られていますし」 さっきまでスバルも居ましたけどと、言いながら凛にフェイトを引き合わせる、 その凛はというと、ソファーに座ってフェイトを観察し、 ふむふむと頷いた 「―――フェイト・テスタロッサ・ハラオウン……ねぇ、 名前をつけた人間が酔狂だったとしか思えないわね」 「そう言う事は陰口でもあんまり言われたこと無いですね」 「そりゃそうよ、 大体本人が聞いてたら陰口にならないじゃない」 打ち合わせと言うより唯のティータイムといった感じで フェイトの反応にやや呆れた様にそう返す ちなみに凛が素なのはここ数日のうちにシャーリーに素顔を見抜かれたのと、 ルヴィアの件を相談した際、うっかり地を出してしまい、以後開き直ったからである 「テスタロッサと言えば――― 地球に親戚が居たりする、貴女?」 「いえ、養母と義兄の家族は居ますけど 実母の親戚は―――」 凛の何気ない問いかけに、声を震わせながら答える 「そう、 私が通ってる日本の学校によく似た生徒が居るんだけど、 苗字も同じだし―――偶然にしては出来すぎ……」 「その生徒の名前は!?」 凛の話を皆まで聞かず、掴みかからんばかりの勢いでフェイトは彼女に問いかけた、 思わぬところから、フェイトの求めていたものが転がり出た瞬間だった 「なんて言ったかしらね――― ……アリス―――じゃなくてラテン語の方の確か―――」 「アリシア――― アリシア・テスタロッサ」 「そうそう」 頷く凛の目が少し鋭くなる、ふん、鼻を鳴らした凛はつまりそう言う事かと呟いた 「シャーリー、日本行きの手続きをとって、 それと―――」 「はい、分かっています」 皆まで聞かずともと空間モニターを開き何かを始めるシャーリー、 その手がふと、新たな情報の前に止まった 「フェイトさん、 ―――以前から調査対象だった研究機関のスタッフが、 この世界へ渡航した後消息を絶っているそうです」 「何時から?」 フェイトの本業は違法な生命操作研究の調査である この時期に容疑のかかった研究機関がこの世界に来た上、消息を立った…… 「その子、何か過去にあった?」 あること自体は確信しつつ凛が問う 「アリシア自身は何も、ただ―――」 「親が違法研究―――いえ、死者蘇生を試みた、 その過程で生み出されたのが貴女だってところかしら」 凛の見立てにフェイト達に戦慄が走った フェイトと凛が出会ってからまだそれほど時間がたった訳でも、 何かフェイトに異常な部位があったわけでもない にも拘らず、フェイトを人造生命だと看破して見せた手腕はもはや驚愕では済まない 「外から“魔力を視る”とやっぱり人とヒトガタの間には顕著な差があるのよ、 私が見た限りでその誤差を感じられたのが貴女の方だった、それだけよ」 それで生まれの貴賎につながるモノでも無いけどね、と言いながら立ち上がる 「自分の庭で騒がれるのは気分のいいものじゃないわね、 乗りかかった船だし、知り合いにその子を確保させておくわ」 「でも、相手が魔導師だとしたその人が危険なんじゃ」 今回のようなスポーツ格闘の類ならともかく、 一般人であるなら魔導師が実力行使に出た場合危険である それとも、その人物も魔術師なのだろうか? 「一般人じゃないわよもちろん、 まぁ、魔術師としてはへっぽこもいいところだけど」 反応に困る人物評である、本当に大丈夫だろうか 「仮に何かあっても大丈夫でしょ、あいつなら なにせ―――」 正義の味方だから、と彼女は大真面目にそんな言葉を口にした

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