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「お前がユーノスクライアか」 視界が回復する。顔を上げればユーノの前方に一人の男が立っていた。 外套から何から、全てが黒で覆われている。その顔には深い皺が刻まれているが、それは歳月を経たからではなく深い苦悩によるものだ。 その中で、眼だけがぎらぎらと鋭く光っている。それはまるで真理を求める哲学者のようだ、とユーノはぼんやりと思った。 男を認識するまでは気配すら感じなかったというのに、一度認識すれば息が苦しくなるほどの重圧を放つ。そんな奇妙な存在だった。 「傷が深い。このまま放置しておけば半日と持たぬだろう」 それは、困る。 ユーノはこの地に散らばったロストロギアを回収しなければならない。自分から志願しておいてロクに任務もこなせず死亡、では笑い話にすらならない。 なんとしても、どんな手段を講じてでもジュエルシードを回収し、封印を施さなければ―――― 「助けてほしいか」 再び重い声が聞こえる。相手を圧倒するだけかと思われたその言葉は、しかしこの上なく欲しかった一言でもある 現地での協力者。今のユーノにはそれが必要不可欠だった。 当然危険を伴う仕事だ。命の保証もできない。だが、この男ならあるいは、とそう直感した。 そして、その催眠じみた問いに、ユーノは知らず頷いていた。 「承諾した。その願い、叶えよう」 男は無造作にユーノを拾い上げ、そのまま彼を外套の中へしまいこもうとする。 だがその前に―――彼は一つだけ問うた。 「あなたは、何ですか?」 その質問に、男はつまらなさげに答えた。 「魔術師――――荒耶宗蓮」 言葉は神託のように、重く路地裏に響き渡った。

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