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第十一話「機動六課のある休日・・・の少し前から」
機動六課模擬演習場
時刻は丁度午後3時。
本来ならばこの時間帯には誰も居ない筈の演習場。
だが、今は廃墟が再現されたフィールドが展開され、周りには幾つもの爆発音が響き渡る。
そしてまるで一陣の疾風のように地面を駆け抜ける一人の少女、両儀式。
死神の眼を持ち、太極を二分するという意味の名を持つ時空漂流者。
正式な管理局の職員ではない式はスバル達フォワードメンバーがデスクワークをしている時間帯を自主練に当てている。
本格的にデバイスを使えるようになってからは日課になっていることだ。
一通りのメニューを終えた式は一旦フィールドの外へ出て休憩を取り始める。
その姿には疲れを感じさせる振る舞いは無く、このまま直ぐにでも再開できると言った感じだ。
「まだまだだな・・・」
先ほどの自身の訓練を移したモニターを見ながら、式は軽く舌打ちをしていた。
デバイスを手にしてからすでに一ヶ月、未だに魔法を使った戦闘が満足のいく仕上がりにならないことに軽く苛立ちを覚えていた。
確かに初期の頃に比べたら魔法の質や習得した数、それを組み込んだ戦闘方法は周りから見れば異常と言って良い速さで上達している。
なのはやフェイトが驚くほどのスピードでだ。
式も頭では充分な能力に達しているとは分かっているのだが、どうしても納得ができなかった。
「Is not there a way to be eager from a master,
training of a while ago even if a felt rest hurries?」
(マスター、先程の訓練から焦っているように感じられます。
あまり急いでも仕方ありませんよ?)
「なんだ・・・?
お前にはオレが焦っているように見えたのか?」
「yes」
「・・・・・・そうかもな。
もしかしたらオレは焦っているのかもしれない・・・」
静かに呟きながら式は空を見上げる。
自分が焦っている・・・・・・その原因を探ろうと一人で模索していたが、結局は何も分からなかった。
「式~~」
自分の名を呼ぶ声と、頬に突然感じた冷たい感触に思わず振り返る。
そこには飲み物の缶を持ちながら、屈託の無い笑顔を浮かべるスバルが立っていた。
隣には軽い笑みを浮かべてティアナもいる。
あの模擬戦の一件があってから既に二週間。
式とティアナは少しずつではあるがお互いに信頼関係を築き始めていた。
「お疲れ様式。
良かったら飲む?」
「ああ、悪いな」
スバルから缶を受け取り、蓋を開け一口飲む。
スバルとティアナも持っていた缶の蓋を開けグビグビと飲み始めた。
「ふはぁ~~!
やっぱり仕事を終えたいっぱいは格別だね~」
「なに親父臭いこと言ってんのよ。
だいたい仕事の大半は私が手伝ってること、アンタ分かってんの?」
「あぅ・・。
だってデスクワーク苦手なんだもん・・・」
「苦手じゃ済まないのよ!
アンタのお陰で私の量が倍に増えるんだからね!」
そんな漫才が隣で繰り広げられており、その光景を見ながら式は軽く呆れていた。
「全く・・・あ、そう言えば式。
自主練の後でで良いからオフィスに来てくれって部隊長が言ってたわよ?」
「はやての奴がか?
いったいオレに何の用なんだか・・・」
缶に残っている中身を一気に飲み干しながら、式は怪訝そうな顔で言った。
「わざわざ呼び出すようなことなんだから、結構大切な用なんじゃないの?」
「それかお説教かもしれないね~」
「「お前・アンタじゃないんだから違うだろ・わね」」
「あぅ・・・。
二人同じに言わなくても・・・」
ツンデレ二人によるダブルツッコミに思わずガックリと肩を落とすスバル。
まぁ、お気の毒とし言い様が無い。
「まぁ、とりあえずこの後にでもはやての所に言ってくるさ」
「それが良いわね。
それじゃあ私達は着替えて訓練の準備でもするわ。
スバル行くわよ」
「了解~~。
また後でね式~~」
「あぁ、後でね」
部隊長オフィス
軽くシャワーを浴びて汗を流した後、いつもの蒼い着物に着替えた式ははやての元に訪れていた。
別にそのまま直接行っても良かったのだが、大量の汗でベタベタのままでは流石に気持ち悪かった。
ドアを開けて中に入ると3人の人影があった。
目の前のデスクに座っているはやてとその隣でフヨフヨと浮いているリィン。
もう一人はソファーにすわりながらjコーヒーを飲んでいるフェイトだ。
「なんだ、フェイトも来てたのか。
お前もはやてに呼ばれてたのか?」
「ううん、ちょっと別の用事で来てたんだ」
フェイトがにこやかに話す。
式がフェイトの正面に座ったのを確認すると、はやては早速本題に入った。
「それで今日はわざわざここに来てもらった用件やけど・・・。実は式に魔導師ランクの試験を受けてもらいからなんや」
リィンが危なげに運んできたお茶を受け取りながら、式は聞きなれない単語に眉を潜めた。
「魔導師ランクの試験・・・・・・って何なんだ?」
「まぁ、簡単に言えば魔導師としての実力がどのくらいのレベルに達しているかを確かめるためのテストやね。
式もデバイスや魔法を使用した戦闘に慣れてきたやし、力を試すには丁度良いと思ったんよ。
それにこの先いろいろな任務をする上では、式のパロメーターを他の部隊に渡すことんもあるから必要な物やしね。
ついでに式が受けるのはA+ランクの試験や」
はやてがデスクのキーボードを操作すると、目の前に概要を記したモニターが現れ式はそれを興味深げに読んでいた。
「だけどはやて、この前なのはと話し合ったときはAA+の試験を受けさせるって言ってなかった?」
フェイトが首を傾げながら質問すると、はやては苦笑いしながら答えた。
「最初は私もそうするつもりやったけど・・・。
ほら、部隊が所有することのできる魔導師ランクって民間人にも適用されるやろ?
それを考慮するのをすっかり忘れてたんや・・・」
「あぁ、なるほど・・・。
確かに式がAA+受けて合格したら上から色々と文句を言われるもんね」
「そうゆうことやね。
只でさえうちの部隊はツッコミ所が満載やからなぁ~・・・」
はやてが突っ伏しながら愚痴る。
その姿を見てフェイトは苦笑していた。
「まぁ、とりあえず受けてみようと思ったらいつでも言ってな?
手配すれば一週間ぐらいで直ぐにできるやしね」
「あぁ、取り敢えずそうする。
それではやて・・・隠してるのかどうかは知らないけど、これとは別にもう一つ用件があるんじゃないのか?
まさかこれを話す為だけに呼んだわけじゃないだろ?
フェイトが来ているのがその証拠だしな。
差し当たり・・・オレがこっちに来た原因が分かった、ってとこか?」
お茶を啜りながら話す式を唖然とした目でみる二人。
「ふふふ、流石に式にはかなわないね」
「全くやで。
こうもあっさりバレちゃどうにもならんで」
お互いに顔を見合わせながら苦笑する二人。
それを見て式は心外とばかりにそっぽを向いた。
「それじゃあ早速話しに入るけど、まずはこちらの世界に飛ばされた原因を説明するね」
フェイトが何枚かの資料をとりだしながら、説明をはじめる。
「まずは式がミッドチルダに一番最初に転移してきた場所・・・。
首都クラナガンB-23の路地裏を調べてみたんだけど、そこには微かな量だけど魔力反応が計測されたんだ。
それを本部の方で分析してもらったら、私となのはが以前に関わった事があるロストロギアと同じ波長の魔力だった。
それがこれ・・・」
そう言って目の前のモニターに映し出されたのは、蒼く輝く一つの宝石。
フェイトがその映像を見て軽く表情を曇らせるのを式は見逃さなかった。
「これは・・・ジュエルシードってやつだな?」
式が画面を見つめながら静かに呟く。
以前に軽く呼んだロストロギア関係の資料にそのナがあったのを覚えていたからだ。
「そう、手に入れた者の願いを叶えると言う力を持つロストロギア、ジュエルシード・・・。
今回式がこちらの世界に来た原因はこれだと私は考えてるの」
その言葉を聞いて、式は一つの疑問が浮かびあがった。
「だけどおかしくないか?
確か九つのジュエルシードはP・T事件・・・だったか?
そのときに消失。
残りの12個も、管理局が封印して今は管理してるんだろ?
なら、オレをこっちに飛ばしたのはその消失した物って事になるぞ?」
「別におかしな事じゃないんだ。
資料には消失したって書いてあるけど、実際は次元震に巻き込まれた、って言ったほうが良いから。
だから次元をさまよっていたジュエルシードが、何らかの形で式の世界にたどり着いて力を発動したと言う可能性は充分に高いんだ」
「なるほど・・・。
ところで肝心の発動した原因はわかっていないのか?」
その言葉を聞くとフェイトは微かに表情を曇らせながら、説明を続けた。
「ごめん、そこまでは調べられなかったんだ・・・。
何しろ他の世界での発動だから原因は様々だし、実物を見つけて調べてみないとどうにもならないんだ・・・」
その答えを聞いて内心ため息をついていた。
原因が少しでも解明されて、元の世界に帰れる確立が高くなるのを望んでいたからだ。
飛ばされてきたあの日、はやてにはあんなこと言ったもののやはり自分の居場所に帰れないと宣告されたのには多少のショックを受けていたのだ。
だから、今回のフェイトの報告には少しばかりの期待を感じずにはいられなかった。
その気持ちを感じ取ったのかフェイトの中では罪悪感が渦巻いていた。
「まぁ、ウジウジしても何も始まらへん。
まだ完全に希望がないわけじゃあらへんし、もし帰れなかったとしても私の部隊で一生面倒みてあげるから心配せんでええよ?」
はやてが暗くなった空気を明るくさせようと、笑いながら若干の本音を含んだ冗談を言う。
フェイトh有人の気遣いをありがたく思いながら、式は多少の呆れを感じながら苦笑していた。
その後一通りの試験の概要をはやてから聞いた式は訓練に参加する為に演習場に戻っていった。
「ところではやて、これからのことはどう考えてるの?」
三人だけになった部隊長オフィス。
コーヒーを飲みながらフェイトは今まで感じていた疑問を口にした。
「これからの事って言うと?」
「式のことだよ」
その言葉を聞いてはやてはフェイトが何を言いたいか理解できた。
これからのこと・・・それはこの機動六課の実働期間中に式の世界を発見できなかった時の為のことだ。
「私はなフェイトちゃん・・・。
式にはいざと言う時には管理局本部に入局してもらった方がええと考えてる」
はやての考えにフェイトは同意であるように頷いた。
管理局に入局することは本人にも自分達にもメリットがあると思ったからだ。
そこら辺の一般企業に就職するよりは式の能力を生かすことができるし・・・まぁぶっちゃけクロノやリンディ提督頼りになるのだが元の世界の探索を打ち切られる可能性が低くなることもある。
それに式ならばななのはやフェイトのようにエースと呼ばれる魔導師になるだけの素質を秘めている。
それは本局にとってもメリットがあるし、そういう人材を自分やゲンヤなどの知り合いの部隊に配属する事が容易になるのは本人もは悪いがチャンスとし言いようが無い。
「私もはやてと同じ意見だよ。
だけど・・・できればそうゆうことにはなって欲しくないよね・・・」
「確かにね・・・。
私やなのはちゃんも式と同じように何も知らないまま、この世界と関わりを持ってしまった。
けれど、それはちゃんと帰るべき場所や仲間が居たからここまでこれたんや。
だけど、式にはそれがない・・・・。
そんなの・・・悲しすぎるやんか・・・、私だったら絶対に耐えられない・・・」
はやてがもし自分が同じ立場だったらという想像をしながら話す。
フェイトも同じ気持ちだった。
「そんな事にならないためにも私達が頑張らなきゃね」
「そうやね・・・。
それが・・・この世界に巻き込んでしまった私達の責任や」
第十一話「機動六課のある休日・・・の少し前から」
機動六課模擬演習場
時刻は丁度午後3時。
本来ならばこの時間帯には誰も居ない筈の演習場。
だが、今は廃墟が再現されたフィールドが展開され、周りには幾つもの爆発音が響き渡る。
そしてまるで一陣の疾風のように地面を駆け抜ける一人の少女、両儀式。
死神の眼を持ち、太極を二分するという意味の名を持つ時空漂流者。
正式な管理局の職員ではない式はスバル達フォワードメンバーがデスクワークをしている時間帯を自主練に当てている。
本格的にデバイスを使えるようになってからは日課になっていることだ。
一通りのメニューを終えた式は一旦フィールドの外へ出て休憩を取り始める。
その姿には疲れを感じさせる振る舞いは無く、このまま直ぐにでも再開できると言った感じだ。
「まだまだだな・・・」
先ほどの自身の訓練を移したモニターを見ながら、式は軽く舌打ちをしていた。
デバイスを手にしてからすでに一ヶ月、未だに魔法を使った戦闘が満足のいく仕上がりにならないことに軽く苛立ちを覚えていた。
確かに初期の頃に比べたら魔法の質や習得した数、それを組み込んだ戦闘方法は周りから見れば異常と言って良い速さで上達している。
なのはやフェイトが驚くほどのスピードでだ。
式も頭では充分な能力に達しているとは分かっているのだが、どうしても納得ができなかった。
「Is not there a way to be eager from a master,
training of a while ago even if a felt rest hurries?」
(マスター、先程の訓練から焦っているように感じられます。
あまり急いでも仕方ありませんよ?)
「なんだ・・・?
お前にはオレが焦っているように見えたのか?」
「yes」
「・・・・・・そうかもな。
もしかしたらオレは焦っているのかもしれない・・・」
静かに呟きながら式は空を見上げる。
自分が焦っている・・・・・・その原因を探ろうと一人で模索していたが、結局は何も分からなかった。
「式~~」
自分の名を呼ぶ声と、頬に突然感じた冷たい感触に思わず振り返る。
そこには飲み物の缶を持ちながら、屈託の無い笑顔を浮かべるスバルが立っていた。
隣には軽い笑みを浮かべてティアナもいる。
あの模擬戦の一件があってから既に二週間。
式とティアナは少しずつではあるがお互いに信頼関係を築き始めていた。
「お疲れ様式。
良かったら飲む?」
「ああ、悪いな」
スバルから缶を受け取り、蓋を開け一口飲む。
スバルとティアナも持っていた缶の蓋を開けグビグビと飲み始めた。
「ふはぁ~~!
やっぱり仕事を終えたいっぱいは格別だね~」
「なに親父臭いこと言ってんのよ。
だいたい仕事の大半は私が手伝ってること、アンタ分かってんの?」
「あぅ・・。
だってデスクワーク苦手なんだもん・・・」
「苦手じゃ済まないのよ!
アンタのお陰で私の量が倍に増えるんだからね!」
そんな漫才が隣で繰り広げられており、その光景を見ながら式は軽く呆れていた。
「全く・・・あ、そう言えば式。
自主練の後でで良いからオフィスに来てくれって部隊長が言ってたわよ?」
「はやての奴がか?
いったいオレに何の用なんだか・・・」
缶に残っている中身を一気に飲み干しながら、式は怪訝そうな顔で言った。
「わざわざ呼び出すようなことなんだから、結構大切な用なんじゃないの?」
「それかお説教かもしれないね~」
「「お前・アンタじゃないんだから違うだろ・わね」」
「あぅ・・・。
二人同じに言わなくても・・・」
ツンデレ二人によるダブルツッコミに思わずガックリと肩を落とすスバル。
まぁ、お気の毒とし言い様が無い。
「まぁ、とりあえずこの後にでもはやての所に言ってくるさ」
「それが良いわね。
それじゃあ私達は着替えて訓練の準備でもするわ。
スバル行くわよ」
「了解~~。
また後でね式~~」
「あぁ、後でね」
部隊長オフィス
軽くシャワーを浴びて汗を流した後、いつもの蒼い着物に着替えた式ははやての元に訪れていた。
別にそのまま直接行っても良かったのだが、大量の汗でベタベタのままでは流石に気持ち悪かった。
ドアを開けて中に入ると3人の人影があった。
目の前のデスクに座っているはやてとその隣でフヨフヨと浮いているリィン。
もう一人はソファーにすわりながらjコーヒーを飲んでいるフェイトだ。
「なんだ、フェイトも来てたのか。
お前もはやてに呼ばれてたのか?」
「ううん、ちょっと別の用事で来てたんだ」
フェイトがにこやかに話す。
式がフェイトの正面に座ったのを確認すると、はやては早速本題に入った。
「それで今日はわざわざここに来てもらった用件やけど・・・。実は式に魔導師ランクの試験を受けてもらいからなんや」
リィンが危なげに運んできたお茶を受け取りながら、式は聞きなれない単語に眉を潜めた。
「魔導師ランクの試験・・・・・・って何なんだ?」
「まぁ、簡単に言えば魔導師としての実力がどのくらいのレベルに達しているかを確かめるためのテストやね。
式もデバイスや魔法を使用した戦闘に慣れてきたやし、力を試すには丁度良いと思ったんよ。
それにこの先いろいろな任務をする上では、式のパロメーターを他の部隊に渡すことんもあるから必要な物やしね。
ついでに式が受けるのはA+ランクの試験や」
はやてがデスクのキーボードを操作すると、目の前に概要を記したモニターが現れ式はそれを興味深げに読んでいた。
「だけどはやて、この前なのはと話し合ったときはAA+の試験を受けさせるって言ってなかった?」
フェイトが首を傾げながら質問すると、はやては苦笑いしながら答えた。
「最初は私もそうするつもりやったけど・・・。
ほら、部隊が所有することのできる魔導師ランクって民間人にも適用されるやろ?
それを考慮するのをすっかり忘れてたんや・・・」
「あぁ、なるほど・・・。
確かに式がAA+受けて合格したら上から色々と文句を言われるもんね」
「そうゆうことやね。
只でさえうちの部隊はツッコミ所が満載やからなぁ~・・・」
はやてが突っ伏しながら愚痴る。
その姿を見てフェイトは苦笑していた。
「まぁ、とりあえず受けてみようと思ったらいつでも言ってな?
手配すれば一週間ぐらいで直ぐにできるやしね」
「あぁ、取り敢えずそうする。
それではやて・・・隠してるのかどうかは知らないけど、これとは別にもう一つ用件があるんじゃないのか?
まさかこれを話す為だけに呼んだわけじゃないだろ?
フェイトが来ているのがその証拠だしな。
差し当たり・・・オレがこっちに来た原因が分かった、ってとこか?」
お茶を啜りながら話す式を唖然とした目でみる二人。
「ふふふ、流石に式にはかなわないね」
「全くやで。
こうもあっさりバレちゃどうにもならんで」
お互いに顔を見合わせながら苦笑する二人。
それを見て式は心外とばかりにそっぽを向いた。
「それじゃあ早速話しに入るけど、まずはこちらの世界に飛ばされた原因を説明するね」
フェイトが何枚かの資料をとりだしながら、説明をはじめる。
「まずは式がミッドチルダに一番最初に転移してきた場所・・・。
首都クラナガンB-23の路地裏を調べてみたんだけど、そこには微かな量だけど魔力反応が計測されたんだ。
それを本部の方で分析してもらったら、私となのはが以前に関わった事があるロストロギアと同じ波長の魔力だった。
それがこれ・・・」
そう言って目の前のモニターに映し出されたのは、蒼く輝く一つの宝石。
フェイトがその映像を見て軽く表情を曇らせるのを式は見逃さなかった。
「これは・・・ジュエルシードってやつだな?」
式が画面を見つめながら静かに呟く。
以前に軽く呼んだロストロギア関係の資料にそのナがあったのを覚えていたからだ。
「そう、手に入れた者の願いを叶えると言う力を持つロストロギア、ジュエルシード・・・。
今回式がこちらの世界に来た原因はこれだと私は考えてるの」
その言葉を聞いて、式は一つの疑問が浮かびあがった。
「だけどおかしくないか?
確か九つのジュエルシードはP・T事件・・・だったか?
そのときに消失。
残りの12個も、管理局が封印して今は管理してるんだろ?
なら、オレをこっちに飛ばしたのはその消失した物って事になるぞ?」
「別におかしな事じゃないんだ。
資料には消失したって書いてあるけど、実際は次元震に巻き込まれた、って言ったほうが良いから。
だから次元をさまよっていたジュエルシードが、何らかの形で式の世界にたどり着いて力を発動したと言う可能性は充分に高いんだ」
「なるほど・・・。
ところで肝心の発動した原因はわかっていないのか?」
その言葉を聞くとフェイトは微かに表情を曇らせながら、説明を続けた。
「ごめん、そこまでは調べられなかったんだ・・・。
何しろ他の世界での発動だから原因は様々だし、実物を見つけて調べてみないとどうにもならないんだ・・・」
その答えを聞いて内心ため息をついていた。
原因が少しでも解明されて、元の世界に帰れる確立が高くなるのを望んでいたからだ。
飛ばされてきたあの日、はやてにはあんなこと言ったもののやはり自分の居場所に帰れないと宣告されたのには多少のショックを受けていたのだ。
だから、今回のフェイトの報告には少しばかりの期待を感じずにはいられなかった。
その気持ちを感じ取ったのかフェイトの中では罪悪感が渦巻いていた。
「まぁ、ウジウジしても何も始まらへん。
まだ完全に希望がないわけじゃあらへんし、もし帰れなかったとしても私の部隊で一生面倒みてあげるから心配せんでええよ?」
はやてが暗くなった空気を明るくさせようと、笑いながら若干の本音を含んだ冗談を言う。
フェイトh有人の気遣いをありがたく思いながら、式は多少の呆れを感じながら苦笑していた。
その後一通りの試験の概要をはやてから聞いた式は訓練に参加する為に演習場に戻っていった。
「ところではやて、これからのことはどう考えてるの?」
三人だけになった部隊長オフィス。
コーヒーを飲みながらフェイトは今まで感じていた疑問を口にした。
「これからの事って言うと?」
「式のことだよ」
その言葉を聞いてはやてはフェイトが何を言いたいか理解できた。
これからのこと・・・それはこの機動六課の実働期間中に式の世界を発見できなかった時の為のことだ。
「私はなフェイトちゃん・・・。
式にはいざと言う時には管理局本部に入局してもらった方がええと考えてる」
はやての考えにフェイトは同意であるように頷いた。
管理局に入局することは本人にも自分達にもメリットがあると思ったからだ。
そこら辺の一般企業に就職するよりは式の能力を生かすことができるし・・・まぁぶっちゃけクロノやリンディ提督頼りになるのだが元の世界の探索を打ち切られる可能性が低くなることもある。
それに式ならばななのはやフェイトのようにエースと呼ばれる魔導師になるだけの素質を秘めている。
それは本局にとってもメリットがあるし、そういう人材を自分やゲンヤなどの知り合いの部隊に配属する事が容易になるのは本人もは悪いがチャンスとし言いようが無い。
「私もはやてと同じ意見だよ。
だけど・・・できればそうゆうことにはなって欲しくないよね・・・」
「確かにね・・・。
私やなのはちゃんも式と同じように何も知らないまま、この世界と関わりを持ってしまった。
けれど、それはちゃんと帰るべき場所や仲間が居たからここまでこれたんや。
だけど、式にはそれがない・・・・。
そんなの・・・悲しすぎるやんか・・・、私だったら絶対に耐えられない・・・」
はやてがもし自分が同じ立場だったらという想像をしながら話す。
フェイトも同じ気持ちだった。
「そんな事にならないためにも私達が頑張らなきゃね」
「そうやね・・・。
それが・・・この世界に巻き込んでしまった私達の責任や」
模擬演習場
部隊長オフィスから戻り、式はそのまま午後の訓練に参加しようと演習場に戻ってきていた。
が、そこには何時ものようになのはの姿は無く、代わりにフォワードメンバーが自主練をしていた。
話を聞くと、どうやらヴィータと共に地上部隊の教習に行ってるらしかった。
「それで、部隊長からの話しって何だったの式?」
「別にたした用事じゃなかった。
何か魔導師ランクの試験の説明と受けるかどうかを聞かれただけだったし」
式はフェイトからの話しを省きながらあらかた聞かせる。
ここで先程の話しを聞かせればスバル達がいらぬ心配をやお節介をかくのが目に見えているからだ。
「凄いじゃないですか式さん!
いきなりA+ランクの試験を受けることができるなんて!」
「確かにそうですよね。
普通なら最高でもBランク試験からしか受けられないはずですからね」
「だけど式の魔力や実力を考えれば妥当な措置じゃない?
なのはさんやフェイトさんも特例でAAAランクの試験を受けていたんだしさ」
「確かにスバルの言うとおりよね。
こっちの世界に来て直ぐの戦闘やこの前の任務では結構な結果をだしてるし」
などと話題の本人をそっちのけで話すフォワードメンバー。
このままでは延々と話しが続きそうなので、式は一旦ストップかけ自主練と促す。
「それで式は今日の自主練はどうするの?
試験に向けてのやつでもやるの?」
「どうだろうな・・・。
この一ヶ月の間に基本的なことをなのはやフェイトに叩き込んでもらったから、取り敢えずはそれを踏まえた上で鍛錬をするつもりだ」
「ならさ式、砲撃系統の魔法でも練習しない?
今まで一回もやんなかったしさ」
スバルがそう提案すると式は少し考え始めた。
確かにこれまでは基本的なことを詰め込むのを中心に鍛錬をしてきたから砲撃系は一度もやらなかった。
自分の戦闘スタイルの件や余計な事を詰め込んで変な癖をつけたくなかったからだ。
だが、今はそれをできる程の知識や能力、余裕もある。
別に過信をして言っているわけではない。
そうゆうことも必要だと思ってるし、戦闘で行き詰まっている今なら何かしらのヒントを得られると思ったからだ。
「そうだな、この際だから砲撃もやってみるか。
多分この先あまり必要無いと思うけど、一応な。
オレも少し試してみたいことがあるし」
「さっすが式!
ティアより話しが分かる~~」
スバルがしまった、と言った表情を浮かべるが時既に遅しだ。
ティアナがクロスミラージュでの早撃ちのごとくの勢いでスバルに文句を浴びせる。
それをエリオの仲裁で一旦中断した後、式は砲撃魔法の練習を始めた。
流石に初日から上手くはいかなかったがだいたいの感じを掴む事ができ、あっと言う間に午後の時間を過ぎて行った。
翌日
午前中の訓練を何事も無く終えたフォワードメンバー+遊撃部隊の式は急に休暇なった午後の準備をしていた。
休暇になった理由は扱く簡単でいわゆる労いというやつだ。
今まで頑張ってきた、これからも頑張って欲しいという願いを込めたなのは達からのささやかなご褒美なのだ。
スバルとティアナは早速私服に着替えてクラナガンに遊びに行く準備を、エリオをキャロも二人そろっていわゆるデートと言うやつだ。
式の方はまだどうやって過ごすか考えておらず、取り敢えず昼食を取ろうとなのは達と共に食堂に来ていた。
[以上、芸能ニュースでした。
続いては政治経済・・・]
お昼のニュースが流れる中、なのは達は楽しくおしゃべりしながらお昼を食べていた。
式の方はシグナムの隣に座り、お互いに気が合うのか戦闘についての話しをしながら食事をとっている。
[昨日、ミッドチルダ管理局地上本部において来年度の予算会議が行われました。
当日は首都防衛隊代表、レジアス・ゲイズ中将による管理局の防衛思想に関しての表明も行われました・・・]
レジアスの名前が出た途端会話は一旦止み、式以外の一行の視線はモニターに向けられる。
それにつられて式も画面の方に顔を向けると丁度映像が切り替わり、管理局の高官と思われる男の演説が始まった。
その男は首都防衛隊代表、事実上の地上本部トップ、レジアス・ゲイズであった。
「このおっさんまだこんな事言ってるのか・・・」
一通りの演説の内容を聞いてから、ヴィータは眉を潜めながら口を開いた。
「なぁ、シグナム。
このおっさんは誰なんだ?」
食後のお茶をゆっくりと飲んでいた式がモニターを見ながら質問をした。
「レジアス・ゲイズ中将、先程も紹介していたが首都防衛隊の代表をしている人物だ。
古くからの武闘派で演説をしていた通り、地上の武力強化を訴えている。
豪快な政治手腕や黒い噂が多々流れていて、それを非難する者もいるが、多くの実績を残しているのも事実だ。
その為最高評議会からの信頼も厚いのだ」
「ふーん・・・なるほどね・・・。
確かに演説の内容も豪快だな。
武力強化しただけで一ヶ月に35%の犯罪低下を実現する・・・なんて言ってるぐらいだからな」
茶を啜りながら毒舌を吐く式に一同は苦笑していた。
「あ、ミゼット提督」
「ミゼット婆ちゃん?」
レジアス中将の後ろに座っている人物を見てなのはとヴィータが呟く。
ミゼット・クローベル、ラルゴ・キース、レオーネフィルス。
管理局の中では伝説の三提督と呼ばれている人物達だ。
「キール元帥やフィルス相談役もいるんだね」
「伝説の三提督揃い踏みやね」
フェイトとはやてもモニターの人物達に気付いて呟く。
「伝説の三提督ね・・・そんな偉い奴には見えないけどな。
どう見ても気の良い老人だ」
「だろ?
いつ見ても普通の老人会だ」
「駄目だよ二人とも?
偉大な方達なんだから」
フェイトが軽く注意しながら食事を口に運ぶ。
「うん、管理局の惣明期から今の形を整えた功労者さん達だもんね」
なのはが説明をするが、当の式は興味無しと言った雰囲気で茶のお代わりをしている。
その態度に多少ムッするなのはを見てフェイトとシグナムは苦笑していた。
食事を終えた式は午後の時間をスバル達と共にクラナガンに遊びに行くことに決めた。
と言っても、部屋で横になりながら考えていた時スバルに「今日は折角の休みだからパァ~とやろう!」と半ば無理やり引っ張り出されたのだ。
「全く・・・その強引さはどうにかした方が良いと心から思うぞスバル・・・」
ヴァイスと知り合いの整備員に移動する為のバイクを借りに格納庫に来ていた三人。
そこでは笑顔を浮かべながらせっせとティアナの後ろに乗り始めるスバルを見ながら式は今までの中で盛大なため息を吐いていた。
「諦めなさい式・・・。
あいつの諦めの悪さと強引さは最悪の部類にはいるから」
「お前の言う通りだな・・・。
それに純粋であるがゆえに質が悪い」
二人そろってため息を吐く。
それに気付いていないのか相変わらずの笑顔を浮かべながらスバルがこちら呼んでいる。
それを軽く一瞥し、苦笑しながらバイクに乗り込む。
隊舎前まで移動すると見送りに来ていたなのはの姿があった。
「あれ、式も一緒にお出かけなんだ。
珍しいね」
「半ば無理矢理みたいなものなんだけどな・・・。
まぁ、たまにこうゆうのも良いさ」
肩を竦めながら答える式を見てなのはは微笑を浮かべていた。
「お土産に美味しいクッキーか何か買ってきますね」
「うん、気持ちは嬉しいけど気にしなくて良いから。
今日は三人でゆっくりと楽しんでおいでね?」
スバルの申し出をやんわりと断るなのは。
その言葉を聞いた後、三人が乗ったバイクはクラナガンに向けて移動を開始した。
だがこの時は・・・まだ何も知らなかった・・・。
この平和な時間が静かに終わりへと近づいていくことに・・・。