「第一話<Fate/Stay night =Boundless Mirage Destruction=01」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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胸に宿るは不屈の決意
I despaired for tragedy
決意は揺らがず 決意は折れず
I hate tears, I hate wrong.
我が身は決意を弾丸と成す銃。 敵を穿つ魔弾の射手
Barrel is my anger. Bullet is my sorrow
この腕より逃れ得る物など一切無く
I save them all
この腕が掴み得る物など一切無く
I slaughter them all
この腕に残る物など一切無い
I lose them all
故に、我が腕は
Craves with my heart
届かぬ、彼方の蜃気楼へ手を伸ばす―――
Yet I will to that―――”Boundless Mirage Destruction”
私―――遠坂凛は夢を見る。
それはそう、目に見えない回路が、私という回路に繋がって情報を流し込んでくるかのように。
自分の目で、他人の視点を借りているような、そんな不思議な感覚。
その夢の中で、私は他人の思い出を垣間見た。
それは、そいつを形作るもの。
それは、そいつが至った道程。
それは―――もはや取り返しのつかない、決定事項。
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そいつは、どうやら私達で言うところの警察と司法組織がまぜこぜになったような仕事をしていた。
自らの手で犯罪者を取り締まり、自らの手でその犯罪者を裁く。
正直、よくそんな組織が存在したもんだと思う。
大体、行政と司法が一箇所に集中するなんて、権力の暴走を招きかねない。
私の知ってる常識に当てはめれば、なんてデタラメな組織、そう思う。
だが、それゆえに。
そいつは、真摯にその仕事に当たっていた。
そいつの仕事は、控え目に言っても楽なモノだとはいえなかった。
時には、自らの道を塞ぐ圧倒的な権力と相対し。
時には、巧妙に隠された真相を暴くべく推理を働かせ。
時には、その手にした武器で相手を討ち。
自らの持つ権力の重さを理解し。
自らの負う責務の重さを理解し。
自らが、その職務の模範たれというように。
それはどこまでも真っ直ぐで、見ていて気の毒になるほどだ。
けれど、そいつはそれこそが自分の道なのだと、その身にかかる重圧をまるで感じていないかのように振舞っていた。
正直、そこまで自分の仕事に誇りを持てることを羨ましくさえ思う。
だから、そいつの仕事はけっして無駄ではなかった。
そいつが苦しんだ分だけ、悩んだ分だけ、傷ついた分だけ。
必ずそいつはたくさんの人を救えていたんだから。
でも、それが本当にそいつにとっての幸せだったんだろうか?
そいつが、他人を救えば救うだけ、人は多くをそいつに求めた。
そいつは、その度に多くのものを背負わされた。
そいつは、その度に多くの敵と戦った。
そして、その度にそれを乗り越えた。
だが、そこを乗り越えれば、また多くのものがそいつに圧し掛かる。
それはまるで、そいつを縊り付ける奴隷の鎖のよう。
けれど、そいつは負けなかった。
それは、もう単なる意地といってもよかっだろう。
だってそう、そいつを支えているのはそいつの力だけではなかったから。
道は違えども、同じ空の下で戦っている、親友が居たから。
厳しくも、けっしてそいつを見捨てなかった、恩師が居たから。
もう居ない、自分の立脚点を作ってくれた、兄弟がいたから。
自分が負けてしまえば、その全てが無意味な物になってしまう。
だから、そいつは負けるわけにはいかなかったのだ。
―――でも。
私には、その絆すら、そいつが「背負わされてしまった」重石に思えてならなかった―――
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「あー……」
目を覚まして、まず最初に長いため息をつく。
夢見が悪いって言うか、なんていうか。
「……これ、あれよね。多分、あいつの記憶だわ」
そう呟きながら、髪をくしゃくしゃと掻きながら再びため息。
私のサーヴァントである、アーチャー。
召喚時のミスだかなんだかで、記憶が混乱してるって言ってたけど……
おそらく、契約者としてマスターの私がその記憶を受け取ってしまったというところだろう。
「ま……。マスターとサーヴァントは繋がってるから、そのうち記憶の均一化が始まるとは思うけど」
体を起こし、一度伸びをする。
意識を向けると、どうやらアーチャーもこちらの目覚めに気づき、周囲の警戒を終えて戻ってくるところのようだ。
アーチャー。弓兵のサーヴァント。
名前も分からない、亜麻色の髪をした、理知的で、なんというか大人な女性っぽい感じの英霊。
「……いつも落ち着いて余裕がある奴だ、って思ってたけど。あいつはあいつで結構大変だったのね」
はぁ、と再びため息。
「……よそ。あんまり感情移入するのも心の贅肉だわ」
頭を振って、無駄な考えを振り払おうとする。
……けれど。
―何もない、地平まで何もないまっさらな大地―
―その地平の彼方にゆらゆらとゆれる蜃気楼―
―そして、その蜃気楼にむかって、いつまでも走り続けるアーチャーの姿―
……私の脳裏には、夢の最後に見えたそんな光景だけが、酷く印象に残っていた。