噴流 煙についての補足SSを書かさせていただきます。
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魔人噴流 煙は、ニコチン中毒魔人である。とにかく、何時如何なるときも煙草を咥えていないと、その時間を正気のまま過ごせない。
たとえ、それが彼の通う高校の中でも例外ではない。
噴流 煙は希望崎学園に通う一男子生徒である。学年は2年生。帰宅部。
「友」といえる人間は未だつくれていないが、それなりの交流を持ちそれなりの学園生活を楽しんでいる。
噴流は、入学する前に学園側に1つ嘘をついた。それは、彼の能力『らき☆すと』が、「常時喫煙を行っていなければ周囲の人間に猛毒ヘドロを振りまいて自身が死ぬ」という制約を持つ代物だということ。
こうすることで、噴流はたとえ授業中だろうが昼休み中だろうが校長先生のお話中であろうが常に喫煙を許されることになった。
だからといって噴流は、他の生徒や教員たちに迷惑をかけるような喫煙は決してしなかった。
自身が1人だけになれる昼休みや放課後、プライベート以外は専ら電子タバコを用いることで周囲の人間の健康への配慮を怠らない。
自分が消費した煙草の吸い殻は全て、ベルトで腰に巻き付けることができるポット型携帯灰皿に入れて自宅に持ち帰るようにしている。
彼はニコチン中毒のどうしようもない魔人だが、自他共に対する喫煙による弊害は許さなかった。そして――――
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――――噴流にとって煙草と喫煙は、「人生を彩ってくれる趣味」である。
タバコを吸いながら迎える朝は最高だ。朝明けの神々しさとタバコの刺激が心身を奮わせてくれる。
タバコを吸いながら食べる朝食は最高だ。タバコを吸いながら行く通学路は最高だ。
タバコを吸いながら受ける授業は、元々勉学が苦手な自分でもやりがいがあるように思えてしまう。
タバコを吸いながらやる体育は少しキツいが楽しいもんだ。
タバコを吸いながら食べる弁当は最高だ。学園の噴水広場がいつもの休憩場所。
タバコを吸いながら見る他の生徒の食事風景は最高だ。カップルが一緒に弁当を食べているのを見ると、思わず茶々を入れてしまう。
タバコを吸いながら見る屋上からの放課後の学園の風景は最高だ。色んな生徒が部活に励んだり、友人と話しながら帰ったりする平和な時間を楽しめる。
夕日を浴びながら吸うタバコも格別だ。
タバコを吸いながら行く帰路は最高だ。タバコを吸いながら食べる夕飯は最高だ。
特にラーメンがタバコと合うんだな。タバコ吸って飯食いながら見るテレビや漫画も乙なモンだ。
タバコを吸いながらやるタバコ作りは最高だ。
自分の煙草を嗜む舌が如何に肥えているかっていうのを、買ってくれた人間に楽しませる形でわかることができる。
それを想像すれば作業が捗るってもんだ。
水タバコを吸いながら入る風呂は最高だ。風呂上がりの一服も最高だ。
タバコを吸いながら飲む寝る前のホットミルクは最高だ。
ヤニの刺激がミルクでマイルドになり、体の芯までふやかしてくれる。
タバコの火がちゃんと消えているか確認してから、寝る。
夢の中でも吸えるよう、タバコを一本咥えてから眠る。
明日とタバコを一緒に楽しむ。そんな未来を、また待つ。
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――――オレが見る夢は、専ら現実の暮らし、特に学園でのソレそのものだ。
現在のオレの生活の大部分が、一学生としてのものだからかな。将来次第では内容もまた変わるのかな。
どちらにせよ、悪い夢じゃねえ。見るモノは現実とそう変わんないけど、それでいいんだ。
楽しいからな。学園の色んな奴らがダチや恋人同士と楽しく、笑い合っているとこをタバコをふかしながら眺める。最高だぜ。
夢ん中じゃあ、それがタバコの煙に乗りながら見えるのさ。ファンタスティックだぜ。
タバコはやっぱいいな。
悲しい時も、むなしい時も、辛い時も、絶対に心を折れないようにしてくれる。ちょうどいい能天気にさせてくれる。
楽しい時をさらに楽しく感じさせてくれる。他人と世間を見る目を変えてくれる。時間の流れを穏やかにしてくれる。
現実を明るいモノにしてくれるんだ。身体を害して寿命を縮めてる場合じゃねえし、迷惑をかけるモンでもねえ。オレのような人間の人生を、カラフルにさせてくれるんだ。
――――だから生き残んなきゃダメなんだよ。ま、死なない程度になやられるのもアリちゃあアリなんだけどな。
特別な夢を見たいヤツがいるなら手を貸すのもいい。俺なんかが役立つかどうかわかんねぇけど。
どっちにしろ、悪夢に唸らされながれてでも帰らせてもらうぜ。