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「どうしてこうなった? 何の因果律で―――」
「わかっていると思うけど、選んだのは誠君よ…それが、『その時間』の純情だったとしても、結果的に、あなたは裏切ったことになる」
「…わかってはいるよ」
 それでも、だ。
 なんだか理不尽じゃないか? 俺は一途なほうだと思っている。好きという感情は大切だと思うし、思春期にありがちな暴走に走ることもなく――こなたさんとも、FATEでキスをしなかった。
 それなのに、なんでだ?

 どうしてこうなった?

 これじゃまるで、nice boat.の誠みたいじゃ―――。

「まずいことになったわ」
 そう話しかけたのは、永森さん。4月1日。桜も、満開の準備を始めるころだ。ちょうどこなたさん達と別行動で一人のときだった。ステージの倒壊を防いで、無事学園祭を迎えられた。あれ以来時間のループをすることはない。少しづつでも、前へと進んでいる。
「それってどういう意味。まさか、時間がまた俺達に立ちふさがってきたとか?」
「…そうね、そうといえば、そう」
「よくわからないよ」
 永森さんはいつもこんな調子だ。自己完結していて、神秘めいている。その言葉の本質を知ることは難しい。
「時間の抵抗――というと正しいかしら。ほら、前に誠君に言わなかったかしら。学園祭の後、すべてを忘れるって」
「確かに、永森さんはそう言ったね―――え?」
 ここで、俺の直感が自分の言葉が欺瞞に満ちていることに対し、警鐘を鳴らしている。
 おかしいと思う。
 どうして、永森さんはそのことを知っている? というか、そもそもどうして忘れていないんだ? ひとつの結論として睡眠をとることによって忘れていくというものを、学園祭のとき出した。事実あの時、一番記憶がぼんやりしていたのはつかささんだった。
 メモを取るという案もあった。しかし、記憶そのものが消えてしまったら、単なる夢物語でしかないだろう。今、自分の日記に「剣と魔法の世界に住んでいた」という記述があったとしても、きっと「頭が可笑しい」とか「冗談で書いた」としか思えないに違いない。

 それなのに、なぜ覚えている? 俺が覚えているのは、まだ完全には忘れていないにしろ――どうして永森さんが? あの時の永森さんは、少なくても俺の記憶では別の誰かが乗り移った姿だ。記憶は共有していないはず。
「…どうして、時間のことを知っている、かしら?」
 俺の沈黙の意味を理解したかのように永森さんは聞いてくる。俺は無言の回答をした。
「それこそが、時間の抵抗――あるいは時間軸の混交」
「よくわからないけど、つまり、消えるはずの記憶が消えなかったとか?」
「9割近くはあたりね。そんな単純なものではないけど、理解できる範疇では、それが懸命」
 永森さんは、何かを考えるような、あるいは哀れむ様なしぐさを見せる。その真意はあいかわらず掴めない。
「でもそれっていい事じゃない? 今まで過ごしてきたこと、ぜんぶ、覚えていられるんだから。時間が抵抗できなかったということだと思うんだけど」
「本当に、そう思う?」
 微笑を含んでいった。永森さんは続ける。
「『ぜんぶ』覚えていられたとしたら、いい事かしら」
「…」
 ここで俺の第六感が鋭く閃く。その意味するところは――つまり、ぜんぶ覚えているということは…
「誠君、何人の女の子に手をだしたの? そろそろあなたの記憶にもよみがえってくるころかしら。あの時…そう、学園祭の出し物が終わったあと――」
「わ、わあああああああああああああああああああ」
 言われなくても理解した。反射的に大声を出し、言葉として認識することを避けた。

 それって、つまり…
 えーと…
 こなたさん。つかささん。かがみさん。そして、みゆきさん。
 4人とキスしました。そして誰よりも大切な人といいました。
 すべての人に、その時の記憶がよみがえったとしたら…?

「大丈夫よ、それはないわ」
「え…?」
 永森さんは無表情で続ける。「繰り返す時間のすべての記憶を思い出すわけではないわ」
「じゃあ…!」
 自分でもぱっと明るくなる。冗談じゃない! こなたさん達にもこの記憶が蘇ったら、謝るどころじゃない。いやほんと。
「残念だけど、期待させるようなことではないわ」
「回りくどいよ、結局どういう意味なの、永森さん」
「あくまでも時間の抵抗だから、例えば私が三年の陵桜学園に編入したという記憶は、おそらく私と誠君。それにあの4人を除いて覚えている人はいないわね。あなた達は――私も、だけど――元凶だから、記憶を改変することに失敗したみたいだけど」
「つまり、状況はまったく変わらないと?」
 すでに引きつった笑顔だ。頼むから、頼むから否定してください永森さん!
「ええ、おそらく完全に思い出しているでしょうね。それで大幅に時間がずれるわけではないから」
 ぎゃふんっ
「ほら、あのドタドタと駆け寄る音。
 悪いけど、私は失礼するわ。私のためにも…誠君が新たに話をややこしくしないためにも。
 友達――其の呼び方が正しいかわからないけど――として、応援は、する、かも」

 そうして始まった。
 俺の、修羅としての道が…

「なに、これ…」
 まざまざと、不意に蘇った記憶。それはあまりにも鮮明で、生々しい。誠君の息遣いが、まるで目にしたように、いや今まさに体験したかのように感じる。
 桜樹の木の下で、交わした言葉と、交わした気持ち。交わった唇――私、誠君に攻略されてた?
 某ゲームで、いくつかは忘れたけど、自分から伝説の樹の下で告白できるバージョンがある。好感度最低のまま目当ての子に告白してみると、それはそれは酷い罵詈雑言を浴びせられるものだけど…ってそんなことはいいか。

「な、なによこれ!?」
 ま、誠君と、キ、キスなんて!? そんなことしたはずがない! したはずがない!はず!…だと、思う。そう、よね?
 でも、私の中で再生されるのは、かっこいい誠君が「私のすべてを好き」といってくれて、私がそんな誠君に体を預けて――暖かい誠君の優しさを感じて…。
 と、とにかく! もしそうなら、責任はとってもらうんだからね!

「えー、なあに、これ?」
 私、泣いちゃって、誠君に迷惑かけて…。でも、誠君は、どじな私を選んでくれて…。
 …勘違いして、でも、誠君はね、暖かくて、いつも助けてくれて。
 でもこれ、なんだろう? 私の記憶?

「なんでしょう…これは」
 私と誠さんが、その――だめです、恥ずかしくてこれ以上はっ!
 あの時、泉さんと誠さんは、キスをしませんでした。いえ、その、私がライトを落としたわけですが…だって、やっぱり、誠さんと泉さんがキスするところなんて、嫌ですから。
 そうして、あの樹の下で交わした約束…誠さんは、少し意地悪ですけど、でもやはり私は…

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「さて誠君、ど~いうことか、説明してもらおうかしら?」
「ちょ、かがみさん、目がこわいって、指ボキボキならさないで! ああ、そんなぶっそうなものを手にはめないで!」
「ほんとだよ誠君~、私だって、怒るよ?」
 ああ、普段見ないつかささんの真剣な顔。怒らない人が怒るとすごく怖いよ…
「私を怒らせると、格ゲーで覚えた天翔乱姫をお見舞いするよ!」
「そのわざって、ほとんど騎乗――ひでぶっ!?」
 かがみさんの鉄拳が、今まさに放たれた。か、顔は反則です…
 こなたさんは、冗談抜きで危険だ。そりゃまあ、天翔はちょっと体験してみたいけど、そのためだけに7時のニュースに名前が載るのはごめんだ。
「まあみなさん、落ち着いてください」
「み、みゆきさんは、俺の味方だ!」
「そうですね」
 …あれ?
 くくく黒いオーラがでていませんかみゆき様。なんかこう、邪神が舞い降りたような…
「…誠君? ど う い う こ と か 説明してもらいましょうか?」
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
 俺は黄色い髪の男がラグビー部を目にしたときのように引きつっている。こ、こわい、怖すぎるよみゆきさん…そりゃ原作ではwikipediaどころか高良みゆきの消失として事件になりそうなくらいの存在感だけど、今纏っているオーラは、あきらかゲージ3を超えてるって!

「不肖わたくし、誠心誠意ご説明させていただきます!」
 たとえ理解してもらえないとしても。
 今はそれしかない。
 いやほんと、命かかってます。

「はあ? 時間の混交による平行世界、時間の記憶の共有?」
「は、はい、その通りでございますかがみ様! わたくし、嘘なんて、これっぽっちも申しておりません!」
「うっさい、かがみ様って呼ぶな!」
「ひ、ひいい」
「もう少し、わかりやすく言いなさいよ」
「つまり、タイムリープもので、普通なら記憶が消去されるところが、誤って消去されず、同じ時間帯に起きた複数の記憶が継承されているということ?」
「こなたさん鋭い!」
「まあ、ギャルゲーは一方で攻略しておきながら、次始めるときは別のヒロインに手をだすわけだしね…今の誠君みたいに?」
「ぎくう!」
「しかし、にわかには信じられませんね」
 鬼神モードから解除されたみゆきさんが冷静に答える。
「それにしたって、誠君、あんたがひどい女ったらしであることには変わらないけどね」
「いえ、一応すくなくても『ひとつの平行時間』ではわたくし、一途を通していたつもりですが…」
「全てで通しなさいよ!」
「はいっ、申し訳ありませんでした!」




 しばらくすれば、激情も収まる。
 次にすべきことは、事態の収束。

「まあ、とにかくにしても」
 こなたさんがやれやれといった風に呟く。
「責任は、誠君に取ってもらおうか」
「どういう意味よ、こなた」
 かがみさんが怒り収まらず、といった声で聞く。
「うんにゃ、だって、かがみだって誠君のこと好きなんでしょ?」
「う、それは…そりゃあ、誠君と、付き合ってたわけだし、その、さ…」
「いいねえそのデレ具合、やっぱりかがみんを嫁にしたいな~」
「ばかっ、何言ってるのよ!」
 かがみさんは真っ赤になりながら、否定する。記憶にある限り、かがみさんはいつもこんな感じだ。
「まあ、そうはいっても、私も誠君と付き合っていたわけだしなあ~~、いくらかがみといっても、そう簡単には譲れないよ」
 私の貞操――とまではいわないにしろ、奪ったわけだからね、とこなたさんは付け加えた。
「わ、私だって、誠君のこと、大好きだもん!」
 控えめにつかささんが主張する。こなたさんは、つかさもさすがに譲れないか、と呟いた。同時に「もちろんみゆきさんもだろうな~」と言った。
「そうですね…私も、ちょっと、諦め切れません」
「というわけだよ誠君」
 全員の意見を聞いてから、こなたさんは俺に向かって話しかける。
「ということ、とおっしゃりますと?」
 俺はいまだに敬語モードである…命が欲しいです。
「つまりね、ぶっちゃけ誰がすきなのか、誠君に決めてもらおうと」
「え、ええええ?」
 つまりそれって、修羅場からまったく変わってないと?

「まあ、それしかないわね」
 かがみさんが同調する。
「それに私だってつかさやかがみ、みゆきさんと争いたくないし」
「うん、私も、それは嫌。みんなと友達でいられなくなるのは、嫌だよ」
 つかささんが消え入りそうな声で続く。
「賢明な判断ですね」
「ルールは簡単。誠君が私達の中から1人を選ぶ。他の三人は潔く諦める。それでおk?」
「まあ、そうしかないか」
「わかったよ~」
「了解です」
「ち・な・み・に」
 こなたさんは俺に振り向き「四人とも好きです、なんていったら許さないからね?」と釘を刺した。かがみさんもそんときは、これで…と指にはめたものをきらりと見せる。
「さあ、誠君、決めて」
「いや、その、お昼のメニューを選ぶようなノリで決められるようなもんじゃないと思うんだけど」
「それはそうだけど、もとはといえばあんたのせいでしょ」
「確かに…」
 四人の中から一人を選ぶ。それも俺が。なんという損な役回り――まあ、当たり前といえば当たり前かもしれない。
 でも、本当にどうすればいいんだろう。
「少しくらい考えさせてよ」
「じゃあ五分ほど時間をあげるよ。あなたはまだ、五分ほど残している。その意味がわかる?」
「わかるとかわかるじゃなくてさ…」
 そういって俺はこなたさん達に背を向けた。

 こなたさんは、あれでいて結構優しい。攻略とか、ギャルゲーとか、あれゲーとか、理解の範疇を超えたものもあるけれど、それでも弁当を作ってくれたり、趣味が合うということは便利だ。
 かがみさんは、少し怖い。怖いけど…俺のことをよく考えていてくれる。態度はつんけんながら、かわいいところも多いし、胸も――いや、なんでもないです。心の中で考えていることとはいえ、すごく怖い。
 つかささんは、ちょっと抜けているところがあるけれど、とても女の子らしいと思う。料理はとてもおいしいし、そうした天然なところが好きだ。
 みゆきさんは何よりも胸が――だから自重しろ俺。つかささんと同じく天然なところがあるけれど、成績優秀、何事にも卒なくこなすみゆきさんは、むしろ高嶺の花というぐらいだろう。

 その中から一人を選べと?




「ほい、五分たったよ。それでは審判の時間が始まるよ――っ!」
「それで誠君、誰を選ぶわけ?」
「どきどきするよ~」
「何が起ころうとも、悔いを残さないようにしましょうね」
「「「「それで、誰なの?」」」」

「俺の選んだ人は…」
「「「「選んだ人は?」」」」
「―――ごめんっ!」

「やっぱり俺には決められないよ! でもこれで決めるってやっぱり思うんだ。
確かに『平衡する時間の俺は』一人の女性を愛していたけど、それは俺でいて俺じゃないと思う。
そしてこなたさん達に申し訳ないよ。彼女は欲しい、欲しいけどこんな形で手に入れるなんて間違ってると思う」
「……最初に私がいったこと、覚えてる?」
 こなたさんが無表情に言った。その言葉怒りに満ちているわけではなく、芝居かかったような棒読み。真意を探ることはできないけど、今いえることはこれしかない。
「わかってる。それでも、答えは変わらない。煮るなり焼くなり好きにしてくれ。俺が最低なことはわかっているし、覚悟はしているよ。
 学校中に噂を流しても構わないし、直接――できれば死なない程度に――気の済むまで殴ってくれ」
「本気、なんだね…」
 つかささんが同情の入った声で言う。
「さあ、好きなだけ処罰を与えてくれ!」

 並行する時間。イレギュラーの時間。その中で起きていたこと、俺が起こしたことは、例え無自覚であったとしても事実だ。誰に責任があるかといったら、俺だ。
 あの五分の間に良心の呵責を痛いほどに感じた。俺はそれほど無神経ではない。四人の女性を、親友を傷つけた。それは事実だ。
 だからどんな処遇も甘んじて受けいれる。

 そう思った。そうして目を閉じる。目を開けて静観していられるほど、勇気はなかった。
 沈黙が、時間を支配した。話すきっかけを、その場の空気は与えてくれない。ねっとりとした、時間。





「ぷ…あはは、あはははは!」
 その空気は、不思議なほど意外な哄笑で破られた。その声に驚いて目を開けてみると、笑っていた。こなたさんだけでなく、みんなが。
「もうだめ、もう堪えられないっ!」
 そういったのはかがみさん。
 どうなっていますか?、これ。
 これは、最後のお願いです。どうかこの謎を解いてください――じゃなくて!
「どういう…こと?」
「ごめんね、誠君」
 笑いを堪えながらつかささんが言った。
 なになに、どっきりですか? いやでも、あれは本物の記憶だ。こなたさん達もあの時の記憶を共有している。つまり―――つまり、どういうこと?
「説明しよう!」
 一番大笑いしていたこなたさんが言った。
「ごめんね~誠君。
 まず最初に、今日が何日かわかる?」
「今日って…」
 携帯を取り出し、日付を見る。「四月一日だけど―――って四月一日」、思わず復唱する。
「そう嘘をついていい日」
「え、ええええええ?」
 本日三度目の絶叫。
「いやいやいくらエイプリルフールだからって! てゆーかこの記憶は事実でしょ! つまり、つまりどういう意味なの!?」

 こなたさん達が大爆笑している。その声に悪意はない。
 今日がエイプリルフールで、嘘をついてもいい日であることはわかる。
 でも、どういうこと?




「私から説明するわ」
「な、永森さん。元凶はお前か!」
 俺の背後から、永森さんが現れた。
「…勘違いしないで。時間の影響…それは、事実。今起きていることも事実。まあ、元凶でないにしろ、一旦は担っている、かもしれないけど」
「単刀直入に言ってよ」
「そうね…まず私が言ったこと。それは嘘をついていないわ。つまり、事実――エイプリルフールって、めんどくさいわね――であり、時間の介入が生じた。それも事実よ」
「じゃあ、何がどうなって、こうなってるのさ!」
「永森さんは悪くないわ。悪いのは、こなたよ」、笑いが収まったかがみさんが言った。。
「とりあえず、説明するわね。『時間の抵抗』が生じ、薄れかかっていた記憶、むしろ完全に消失された記憶が蘇ってきた。それは、分かる…?」
「うん、永森さんはそういった」
「そう。ここで、私は嘘をついた。いえ、嘘というよりかは意図的に情報の隠蔽をした。これが、特異よ。この状況を生んだ、元凶」
「それって永森さんが元凶なんじゃ――」
「そう思うなら、そうでもいい。それで、あなたが気になることはない? 質問したいこと、答えてあげる。ひとつでしょ、誠君が、知りたいこと」
 選択肢。
 1:情報の隠蔽とはなにか
 2:永森さんのスリーサイズ
 3:ヤマトラマン補正が入ってませんか?
「――情報の隠蔽、それはなに」
「その時間の抵抗は、限定的。永続的なものではない。これが、答えよ」
「もう少し詳しく」
「仕方ないわね…たしか記憶が復活はした。しかしそれは、一時的なものであるということよ。時間のイタズラ…というと綺麗かしら。
 こうした記憶は、今日のうちに消えうせるわ。あなたの黒歴史も…」
「つまりね」
 こなたさんが続きを引き継いだ。
「今日限りの修羅場ということだよ。エイプリルフールだけに。いやー、時間もおもしろいことをするね~」

――つまり、わたくしは皆に騙されていたと?

「でもなんで永森さん、教えてくれなかったの」
「先にこの事実を泉さん達に伝えたわ。そうしたら『おもしろいから、誠君に黙っておいてくれ』って。私としてはどっちでもよかったけど、こうも一緒にいて、こうが乗り気だったから、まあそれでもいっかって」
「ぜんぜんそれでも良くないよ――つまり、こなたさん達は、全部演技だと?」
「そのとおりなのだよ。劇の練習も思わずところで役に立つものだね。みゆきさんは天才だから心配していなかったけど、つかさはボロをだしそうで心配だったな」
「お姉ちゃんと、少し練習してみたの」
「…」

 皆さん。
 純情な少年を甚振って楽しいですか?
 でも、それでも、事実は変わらない。

 俺は、唖然とした驚きとともに、いまだ消えていない罪悪感を感じた。そうだとしても、多股をかけられていたと知ったとき、どんな感情なんだろう。恋敵は、親友。
「――気にしないでいいわ」
 かがみさんが言った。
「そりゃあ、さっきは芝居の都合上ああいったけど――あなたは悪くはないわ。誠君が素敵なことは、あの時痛いほど感じたから」
「かがみさん…」
「誠君はその場その場で賢明な判断をしている。少しはショックだったけど、誠君は、悪くないわ」
「おうおうかがみさんや。どんなときでも萌えさせてくれますね~」
「煩い! あんたが言い出したせいでややこしくなったんでしょ」
「まあ、誠君と痛みわけということで、それで許してあげるよ」
「こなたさん、それでいいの」
「私も基本的にはかがみと同意見だしね。誠君の最後の決断、へたれ主人公のわりには上出来だったし」
「すっごく大変だったんだよ~、ああいった表情だすの」と、つかささんが続く。
「あの樹の下で交わした約束。誠さんの言葉。それが偽りだとは、私も思えませんから」
 ごめん。それと、ありがとう。





「ところでさ誠君。さっきはああいったけど、実際のところ、誰が一番好きなわけ?」
 こなたさんが思い出したように言った。
「いやだから、決められないって」
 さっきから誠君もいってるでしょ、とかがみさんが同調する。「それは事実だけどさ――ぶっちゃけ、女としてみたとき優先順位はあるんでしょ? 友達としてはともかく」
 それにさ、とこなたさんが付け加える。
「かがみだって誠君が誰が一番好きか、気にならない? かがみだって誠君のこと好きでしょ」
「う…それは、確かに…どうせ忘れるんだから、聞いてみたいかもしれないけどさ」
「でしょ! つかさやみゆきさんもそう思わない?」
「怖いけど、知りたいかも~」
「そうですね。四人の中から選ぶとき、誰を選ぶのかは少しだけ気になりますね」
「いやでも、もし時間が戻らなかったら? また時間のイタズラが起きたら! そう思うよね、永森さん?」
 永森さんは、ええ、といってくれるはず。いってくれるはずです永森さん。
「それはないわね。今回の事態は例外中の例外。二度と起きないわ。桜が満開になったことと、私や誠君、泉さん達がここで出会ったこと。その外諸々の偶然が、奇跡レベルで交わったせいだから。
 もう一人の私が残してくれた記憶と参照しても、二度と起き得ないわね」
「さ、左様でございますか…」
 苦笑いと、冷や汗をかいた。
「「「「さあ、答えて!!!」」」」
 修羅場は継続でした。

「そうそう」
 こなたさんが、ぐっと指先を立てて「誠氏ね」と素敵なほど笑顔で言った。
「それ、どういう意味よ」と、かがみさんが言う。「いや~誠君じゃないんだけど、誠君宛にね。これは必要でしょ」とこなたさんが言った。
 正直、意味はわからなかった。





「だけど先に一言だけ、言わせてくれ」
 逃げられないとわかり、自嘲気味に呟く。
「いくらエイプリルフールだからって、ついていい嘘と、ついてはいけない嘘があるのですよ――っ!」

 …誰を選んだかって?
 それは、もちろん――。