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「ねーねー、年末の予定とかどうなってる?」
ぼーっとしてたら、こなたさんに声をかけられた。
「んー、いや、特に決まってないんだけど」
「大晦日なんかどうかなぁ?できれば一緒にいたいんだけどさ」
大晦日、一番せわしないときというのが引っかかるが、「一緒にいたい」という言葉にぐらっときた。
なんだろう。どうしようかと迷ってしまい、口をついて出た言葉が。
「うん……とりあえず考えておくよ」
「よっしゃー!じゃ本決まりになったら連絡してねー」
そういって彼女は教室を出て行った。
この時生返事さえしなければ。

その後も。
「先輩、年末の予定どうなってるっすか?」
「できれば、大晦日あたりあいてればイイデスネー」
ひよりちゃんとパティが一緒になって予定を聞いてきたと思ったら、
「せんぱーい、年末暇してませーん?」
こうさんも声をかけてくる。
何なんだろう。その時はまだ頭に疑問符が付いたままだったのだが。

「何難しい顔してるのぉ?」
つかささんが俺の顔を見てきょとんとしながら声をかけた。相当難しい顔をしていたようだ。
「何かあったんですか?」
「まぁ、どうせろくな事じゃないだろうけどね」
みゆきさんとかがみさんも会話に混じる。
「うん、実はね……」
かくかくしかじかと話すと、3人の顔は一変した。つかささんは何かを思い出したようにおびえ始め、みゆきさんは呆れ混じりにため息を一つ。そしてかがみさんは俺に顔を近づけこう言った。
「それ、絶対に断っときなさいよ。でないとろくな目に遭わないから」
かなり凄みのある、そして重みのある言い方だった。
「それってあそこのことだよね、あそこ行くと大変だよね、ふぇぇぇ」
「泉さん、受験生なのに大丈夫なのでしょうか……」
何かえらいことに巻き込まれたようだ。

夜になって。
どうした物かと悩んだあげく、とりあえず電話をすることにした。
『ふぁぁい、泉ですけどー』
「あー、俺。実は年末のことなんだけど」
『え?本決まりになったの?』
「いや、予定がダブりそうで。ひよりちゃんとかからも誘いがあって」
『あははは、なーんだ、ひよりんたちも同じ考えかー。だったらそれは私が調整するしもーまんたい』
いや、もーまんたい言われても困るんですが。
『とりあえずできる限り予定あけといてねー』
ぷつっ。つーっつーっつーっ。
ちゃんと断れなかった。俺って意志が弱すぎ。
すると携帯にメールが。永森さんからだった。

『こうの奴、あなたにも頼んだようだけど、断った方がいいわよ』

ほんとどうしたもんだろう。
そして大晦日--。
本当に断っておけば、と後悔していた。
何でおれはこの大行列に紙袋持って並んでいるのだろうと。
朝早く駅に行ってみれば、俺に頼んできた4人とこうさんに連行されてきた様子の永森さんが待っていた。
そして一行はそのままお台場……を通り過ぎ人混みの渦と化した臨海の某所に来ていたのである。
そう、話には聞いていたが、これがコミケとか言うものらしい。
「いやー、かがみとかに頼んでたんだけど受験だからねー、でもやっぱり年に2回のお祭りだしさー」
「さすが先輩、人生棒にふる気まんまんっすねー」
「やだなぁひよりん、そこまで捨てる気はないよー。いざとなったら追い込みかけるしー」
「でもひよりんのチケット手に入れて、先輩も悪どいっすねー」
「人聞きの悪いこと言わないでよー八坂さんー、チケットと引き替えにパティと一緒にコスして売り子もするし、
人手も調達してきたし」
「デモ、目をつけたのはみんなオナジね、コナタ」
そう。俺を呼んだのはサークル出展の荷物運びと同人誌を買うための人員用だったのだ。なんてことだ。
早く気づけよ俺。
「ま、適度に流れに乗るしかないわね、こうなんかいつもこんな感じだし」
あきれ顔で永森さんはつぶやいた。

それからというもの、寒い中にもかかわらず、4人は疲れも見せず、いやむしろ時間が経つにつれ、テンションが
異様に高まっていた。永森さんは相変わらず淡々としている。そして俺はといえば、時おり交代しながらあちこち
かけずり回っていたが、やはり慣れない環境、そしてものすごい人混みのせいでくたくたになっていた。
そして終わりも近づきぼーっと見てると。
なんとなくだが、こなたさんも、ひよりちゃんも、パティも、こうさんも、学校で見せるときとは違った、いい笑顔を
しているように見えた。こういう時の表情もかわいいかもなぁ、と思える。
「ほんと水を得た魚よね」
永森さんがつぶやく。
「こうとはつきあい長いからわかるけど、やっぱり趣味が絡むと生き生きとしてるもの」
本当に今の彼女たちはそういう状況だった。
その後、体力を使い果たしたせいか、覚えていない。
かろうじてへとへとになって晩飯に年越し蕎麦を食べてそのまま爆睡したのを覚えているぐらいだろうか。
気づくとすでに新年の昼間だった。

新学期になって、一連のことを話したら、かがみさんはあきれ顔で、
「ほんと断っときゃよかったのに」
ときつい一言。まさに痛感。
しかしその後の言葉を聞いて唖然とした。
こなたさんはあのあと新年になって親子一緒にかがみさんつかささんの家の神社に初詣に行ったそうだ。
そのことを聞いただけでまた疲れが出てきそうになった。