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あれから一週間が過ぎていた・・・・

正直、もう一回皆と一緒に劇をやりたかった。

残り短い陵桜での生活の思い出をもっと残したいからである。

・・・今思えば、何故こんな時期に転校などしてきたのだろう?

そんな事を考えながら、俺は校庭の木の下で読書をしている。

俺にしては珍しく普通の本を読んでいた。

先日、みゆきさんが勧めてくれた本なのだが実におもしろい。

『パラレルワールド』という題名の本で、結構難しい事が書いてある

小説というより、論説文に近い。

龍次「パラレルワールドか・・・」

そう呟いて、色々な例を考えてみた。

・・・・もしかしたら、俺の居ない陵桜学園の文化祭では劇ではなく、ダンスをやっていただろう・・・それも一年三年で。

龍次「・・・アホか俺は?」

もっとまともな事を考えよう。

・・・・きっと、もうひとつの世界では桜藤際の時にUFOが陵桜に墜落したのだろう。

そして、無限に時間のループを・・・・

龍次「・・・もうやめよう。これ以上考えたら本当の馬鹿になる」

そう言って立ち上がった時だった。

ゴン!!

何かにぶつかった・・・いや、誰かにぶつかった。

つかさ「うう~、痛い・・・」

それは、俺の彼女であるつかささんだった。

転校した時に、初めて会話した人でもある。

それは数日間前の事だったのだが、俺達は付き合っている。

龍次「ご、ごめん!!大丈夫!?」

自分で言っておきながら思うのだが、大丈夫なはずが無い。

結構、凄い音がしたし・・・

つかさ「う、うん・・大丈夫」

そんな涙目で言われても説得力が無いですよ、つかささん。

龍次「大丈夫じゃないよ!タンコブが出来てるじゃないか」

つかさ「で、でも本当に大丈夫だし、それに悪いのは私だし」

俺は少しため息をついた。

つかささんは俺に心配を掛けたくないのだろう。
だけど、俺がそれを放っておける筈がなかった。

龍次「つかささん・・・俺達恋人同士でしょ?本当の事を言って欲しいな・・・」

つかさ「・・少し痛いかも」

龍次「じゃあ、ちょっとだけじっとしていて」

そう言って、俺はポケットから薬を出した。

俺は普段から薬や絆創膏を持ち歩いている。

理由は特に無い。

強いて言うならば、つかささんが少しドジだからである。

しかし、いくらドジだからと言っても、そんなにしょっちゅう怪我してる訳でもない。

単に俺が心配性なだけである。

恥ずかしい言い方をすれば、俺がそれほどつかささんを大事に思っているということだ。

俺は蓋を開け、薬指に液状の薬を付けて、つかささんの額に塗ってあげた。

つかさ「あ、ありがとう」

下を向きながら、涙目で赤くなるつかささんは可愛かった。

俺は手を動かしながらつかささんに話しかけた。

龍次「・・・もしかして、もう自習時間が終わりそうなの?」

つかさ「うん、あと十分で終わるよ」

俺は、授業を抜け出して読書をしているわけではない。

自習時間だから、教室を抜け出して木の下で読書をしているのだ

自習時間なので教室はうるさい。

だから、多少寒いけど外で本を読んでいたのだ。

おそらく、もうすぐ自習時間が終わるのであろう。

つかささんはそれを教えに来てくれたのかもしれない・・・

龍次「・・・でも、なんで声を掛けなかったの?そうすればぶつからなかったのに」

つかさ「えーと・・それは・・」

・・・何か視線が泳いでる。

恐らくこっちに気づかれない様に近づいて、びっくりさせようとでもしたんだろう。

それで失敗して衝突か・・・

実につかささんらしい。

「キーン、コーン」

どうやら自習時間が終わったようだ。

つかさ「チャ、チャイムが鳴ったから早く教室に行こう。次の授業の担任は黒井先生だし遅れたら大変だよ」

確かに遅れたら死亡フラグが立つ・・・遅れる訳には行かない。

それをわざわざ伝えに来てくれたのだ。

問い詰めるのはやめといてあげよう。

俺はつかささんと一緒に教室へ戻った。

 

「キーンコーン」

ふう・・・やっと昼飯か。

俺は机に肘を置き、頬杖をしながら計画を立て始めた。

(しかし、どういう風に誘えばよいのだろう・・・)

『お詫びがしたいから どっかに寄ってかない?』

と言ったところで、

『別にいいよ、気にしてないから』

と笑顔で言われてしまうのがオチだ。

・・・やはり本音に任せて

『デートに行かない?』

とでも言ってみようかな?

・・・そうしてみようかな?

よく考えてみれば、俺達は付き合ってから一週間が過ぎてるのだが、一回もデートをしていない。

・・・よし!今日は短縮だから昼で終わるはず!

ならば取るべき道はただ一つだ!

今日はつかささんをデートに誘う!!

決定だ!

こなた「という様な事を物語ってるような表情だね。これは・・・」

龍次「!?!?!?!?!?」

かがみ「どう見ても図星って顔よね、これは・・・・」

俺の目の前には、からかう様な笑みで俺を見ているこなたさんとかがみさん。

苦笑しているみゆきさん。

顔を真っ赤にしているつかささんがいた。
龍次「な、何を言ってるのかな?き、君達は?」

みゆき「声が裏返ってますよ?」

頼むから状況を悪くするようなことを言わないでくださいよ。

ていうか、クラスメイトの10割(つまり全員)

こなた「もう、声に出してるのと大して変わらないぐらいだったよ」

かがみ「しかも、見てるこっちが恥ずかしいぐらいだし」

こなた「これはもう、つかさに返答を聞くしかないんじゃないのかな?」

かがみ「つかさ、答えなさい。あんたに黙秘権は皆無よ」

神様・・この二人は鬼です。

そして、他人事のようにこの状況を笑いながら見ている眼鏡の女性は魔王です。
つかさ「・・・・うん・・いいよ」

こなた「・・・・・・・・・・・」

かがみ「・・・・・・・・・・・・・」

みゆき「・・・・・・・・・・・・」

クラスメイト「・・・・・・・・・・・・・・・」


こなた「うわぁ・・・本当に言っちゃったよ・・・この公衆の面前で」

かがみ「・・・まさか本当に言うとは思わなかった」

みゆき「そうですね・・せめて人目の無いところで返答するかと思いました」

こなた「・・・こうなっちゃったら私達の取るべき行動は一つしか無いよね・・・」

かがみ「そうね・・・」

みゆき「そうですね・・・」

こなた「というわけで昼御飯は二人っきりでゆっくり楽しみたまえ!!」

こなたさんが良く分からないポーズと言葉遣いを残して教室を去ってった。

残りの二人も・・・・
龍次「・・・・・」

つかさ「・・・・・」

気まずい空気が流れている。

だが、クラスメイトも空気を読んでくれたのか、自分達の行動を再開しはじめていた。

実にありがたい。

しかし・・・無茶苦茶恥ずかしい。

例え周りが見て無くても。

・・・ええい!!ここは男の見せ所!!(でもない)

ちゃんと言うんだ!!

龍次「つ、つかささん」

つかさ「は、はい!」

何故に敬語?

龍次「昼飯食べに行かない?・・・・校庭の木の下で・・・」

つかさ「う、うん・・」

俺達はお互い顔を赤くしながら教室を後にした。
という訳で俺達は木の下で昼飯を食べる事になった。
ここは俺達にとって秘密の場所だ。
校庭の隅っこにあるだけなので、実際は秘密でもなんでも無いが・・・
だが、俺達にとっては思い出の場所である。
そう、俺達はここで告白し付き合い始めたのだ。
だから、二人っきりで昼御飯を食べる時はいつもここで食べている。

龍次「もぐもぐ・・」
昼飯はもちろん、つかささんの手作り弁当だった。
かがみさんが言うにはつかささんは早起きが苦手らしい。
それなのに、いつも俺のために弁当を作って来てくれる。
これ以上嬉しい事があるだろうか?

否!!あるはずがない!!

つかさ「どうかな?・・・失敗してない?」
龍次「失敗所か、作る度に美味しくなっているよ」
俺がそう言うと、つかささんは満面の笑みになった。
つかさ「えへへ・・・そう言ってもらえると作った甲斐があるよ」
龍次「でも、毎朝大変でしょ?早起きしないとこんなに沢山作れないし」
つかさ「大丈夫、毎晩早く寝てるから」
つかささんは屈託の無い笑顔でそう言ってくれた。
だけど、俺は少し罪悪感を感じた。
龍次「・・・ごめん、つかささん」

つかさ「え?」
龍次「俺なんかのために毎晩早く寝て、早起きして弁当を作ってくれるなんて・・・」
龍次「つかささんの自由時間を奪っている気がするよ・・・」
つかさ「そ、そんなことないよ?」
つかさ「私はね・・・りゅ、龍次君が喜んでくれるだけでとても嬉しいの・・・」
つかさ「大好きな人の笑顔を見るだけで・・・満足だから・・・」
顔を赤くしながらの上目遣いは反則だ。
俺の心臓が激しく鳴り始めた。
今までに感じたことの無い感情が俺を襲う。
気がついたら、俺はつかさんを抱きしめてた。

つかさ「!!・・・」
つかさんも最初はびっくりしたが、次第にこちらに寄り掛かるように体を丸めた。
・・・温かい。
この時期は冬なので寒いはずだが、今はとても温かかった。

龍次「・・・つかささん」
つかさ「何?・・・」
龍次「今日の午後暇?・・・だったらデートしよう」
つかさ「・・・うん」
つかささんは俺の腕の中で頷いた。
俺達は時間も忘れてそのまま会話を続けた・・・
気がついたら15分が経っていた。
龍次「・・・そろそろ行こう、人が来るし」
つかさ「うん、そうだね」
俺達が同時に立ち上がった時だった。
龍次「!!」
急に足がぐらついた。
いや、視界そのものをコントロール出来なかった。
まるで、壊れかけたTVの様に何が映っているのか分からない。
俺はバランスが取れなくなり、尻餅をついた。
つかさ「だ、大丈夫!?」
とても心配するような顔で問いかけてくれた。
龍次「・・・ああ・・・なんとか」
さっきまでの異常な状態が嘘のように回復した。
目は・・・大丈夫。
足は・・・・大丈夫。
うん、異常はない。
つかさ「で、でも・・・か、顔色が悪いよ?」
少しパニックになっているのか、舌がうまく回らないようだ。
龍次「大丈夫!もう何とも無いよ」
つかさ「で、でも・・・」
気遣ってくれるのは非常に嬉しい。
だけど、俺の体はもう元通りだった。
それでも心配なのだろう・・・・・
よし!・・・少し恥ずかしいけどあれをやろうかな?

龍次「よ~し、そんなに心配するなら元気って所を見せてやろう!」
そう言って、俺はつかささんの肩と膝の内側に手を添えて持ち上げた。
・・・・俗に言う『お姫様抱っこだ』
つかさ「ふ・・ふぇ!?」
龍次「行くぞー!!このまま校門まで突っ走るからな!!」
つかさ「ええええええええええええ!?」
もう、半分ヤケクソだった。
俺は校門まで全力疾走した。
ああ、恥ずかしかったさ・・・・
色んな生徒に見られたさ・・・
でもこれでつかささんも心配しないでくれるだろう・・・・多分。

一方、陵桜学園の屋上・・・・・
こなた「ふう~、何か取り残された気分だね」
こなた達は昼御飯を食べている時はもちろん、食べ終えてからも龍次たちの行動を屋上から観察していた。
かがみ「そうね・・・しかもお姫様抱っこ?・・初めて生で見た」
みゆき「見ていた人は放心してましたね・・・」
三人とも校門を直視しながら会話を続けていた。
とっくに二人は居なくなっているのも関わらず、その場に居た全ての者が金縛りに合ったように呆然としている。
こなた「ん~、今年はストーブ必要なさそうだね」
かがみ「あんなの夏にやられたら焼け死ぬわよ・・・」
みゆき「・・・・泉さん、かがみさん。そろそろ私達も帰りませんか?」
みゆきはこの気まずい空気に気がついたのか、会話を逸らすように話題を変えていた。
この機転はこなたとかがみにとっても助け舟だった。

こなた「そ、そうだね、もうすぐ完全下校時刻だし・・・」
そう言って屋上を出ようとした時だった。
ドン!!
こなた「痛っ!!」
扉を開けたと同時に制服を着た少年とぶつかった。
???「・・・すまない・・・怪我してないか?」
こなた「うん・・・何とかね」
かがみ「全く・・・しっかり前見て歩かないからよ」
こなた「うう~、私はちゃんと前見てたもん」
かがみ「嘘いいなさいよ、下見ながら歩いてたじゃない。みゆきも見てたでしょ?」
みゆき「・・・・・・・」
かがみ「みゆき?」
みゆき「こんな事を聞いて失礼ですが・・・貴方はB組の方ですよね?」

みゆきがそう言うと、少年は呆れたようにため息をついた。
???「・・・変な質問をするな、分かってるから俺がB組の人間だって知ってるんだろ?」
みゆき「そ、そうですけど・・・見覚えがあるようでないのですが」
こなた「むっ!!・・・確かに私もそう思う。B組の気がするけど何か違うような・・・」
かがみ「・・・・確かにそんな気もするかも・・・」
???「・・・・冗談はよせ」
そう言って少年は横を通り過ぎた。
みゆき「・・・・・・・・・・・・・」
かがみ「・・・・・・・・・・・・・」
こなた「・・・・・・・・まあ、いいや」
かがみ「あんた・・・相変わらず軽い性格してるわね」
こなた「まあまあ、別に気にすることでもないし。
今日は男っ気の無い者同士、何処かで楽しもうよ」
かがみ「そうね・・・考えててもしょうがないわ」
みゆき「では、何処にいきましょうか?」
こなた「秋葉原!!」
かがみ「一人で行ってなさいよ・・・」
いつのまにか三人は会話をいつも通りに戻していた・・・・

少年の術に掛かったとも知らずに。
???「・・・済まないな・・・出来れば記憶を操作する事はしたくなかったんだが・・・」
少年は手に持ってる本を眺めた。
???「・・・やはり、壊れかけている」
少年は空を見ながら、そう呟いた。
???「・・・・遠回しだけどヒントになると思ったが・・・・失敗だったか」
少年は自分の手にある本を眺めた。
その表情はとても切なく悲しい物だ。
???「・・・この世界のホストがいつまで保つか・・・それまでにもっとあの二人には親しくなって欲しいものだ」
そう言って、少年は『パラレルワールド』と書いてある本を床に捨てて、屋上から立ち去った。
屋上に残った本は、風に吹かれてパラパラと捲れていた・・・・・
待ち合わせは午後二時に駅前で、そう約束したのだったが・・・・
龍次「やばい!!、5分遅刻だ!!」
俺はダッシュで駅まで走った。
まさか時計が壊れていたとは・・・
世の中何があるか分かったものじゃないな。

今夜にでも修理をしなくては・・・・
などと考えてる内に既に7分遅刻している。
・・・さすがに怒っているだろうなあ。

初デートで遅刻したら、いくらつかささんでも怒るかもしれない。
言い訳せず素直に謝っておこう・・・・

1分後、駅に到着した。

今日は平日であり、陵桜以外はまだ授業があるので人が少ない。なので簡単につかささんを発見できた。
龍次「つかささん!」
10メートルぐらい離れた所からつかささんの名前を呼んだ。
それに気づいてこちらを振り向いたのだが、不思議な事に全く怒っている感じがしなかった。
だが、俺はつかささんの付近に近づいてすぐに謝った。

龍次「ごめん!!こっちから誘ったのに遅刻しちゃって」
そう言うと、つかさんは困った様な顔をした
つかさ「い、いいよ・・・実は私も遅刻してたし(汗)」

龍次「え?・・・つかささんも遅刻してたの?」
つかさ「う、うん・・・服を選ぶのに時間が掛かっちゃって」

・・・確かにいつもの私服とは違った。
清楚な感じがする服装だ。

はっきり言って凄く似合ってる。
俺はそれに見とれてマジマジと見つめてしまった。

龍次「凄く似合ってる」

つかさ「本当!?」
つかささんはとても嬉しそうな声色になった。
龍次「うん、とっても可愛くなったよ」

つかさ「えへへ♪」

つかささんが恥ずかしそうに笑った。
龍次「・・・あっ!!やばい!!そろそろ電車が来る!」
何となく視線を時計の方にやったのだが、既に約束の時間を10分を過ぎているのだ。
もう、電車が来てしまう。
つかさ「あっ!!本当だ」
龍次「急ごう!!」
つかさ「うん!!」

俺達は急いで切符を購入し、電車に乗った。
中は意外と空いていて座席も対面席であったため、少しぐらいはイチャついても大丈夫かな・・・と思ったが
空いてても電車は電車。ここは自粛するようにしよう。

目的である街に着いたのは電車に乗ってから30分後の事だった。

わざわざこんな遠い所に来たのはちゃんと理由がある。
だが、それをまだつかささんに言うわけにはいかない。

つかさ「うわ~、大きい街だね」

龍次「俺はもう見慣れたけどね」

つかさ「この街には何回ぐらい行った事があるの?」

龍次「・・・つかささんに前言わなかったっけ?・・・この街が俺の住んでいた街だってこと」

つかさ「そ、そうだったよね・・あはは」
・・・・絶対に忘れてたな。

まあ、つかささんらしいけど。
龍次「じゃあ、まずは映画でも見る?今、話題の『OOOって奴』

つかさ「それ知ってる!凄く面白そうだよね!」

龍次「じゃあ、行こうか」
つかさ「うん、行こう!」

俺は手を繋いで歩こうとしたのだが、つかささんは俺の左腕と胴体の間に自分の右腕を通して、俺の左腕にしがみ付いてきた。
龍次「!!つ、つかささん!?」
こ、これは・・よく恋人同士がやるやつだ。

正式名称は知らないがとても見慣れていて、彼女が出来る前はとても憧れていた。
それをつかささんがやってくれるとは・・・・・・嬉しくて泣きたくなった。

つかさ「・・・・・・・・」
つかささんは、見てもはっきり分かるぐらい真っ赤になっていた。
龍次「・・・・・・・・・」

人気の無い校庭では抱き合ってても恥ずかしくなかったが、人前でこれをやるのは少し恥ずかしい。
だが、男女問わずこの状況に憧れる者は少なくない筈だ。
つかささんがやりたがるのも無理は無いかも・・・
・・・少し遠回りして行くか。

一方 こなた達は・・・・・


こなた「やっぱり、映画を見に行くのが良いと思うよ」
かがみ「映画ねえ・・・まあ、確かに最近は見てないけど・・・今、何かおもしろいの上映してるの?」
みゆき「確か・・・・昨日上映したOOOという映画がおもしろいらしいですよ?」
こなた「あれは・・・ちょっとやめた方が良いと思うよ・・・・」
かがみ「なんで?」
こなた「実はあの映画はね・・・・・」


その頃、龍次達は・・・・・・


俺達が今見ているOOOという映画は、どうやら恋愛物の話らしい。
クライマックスシーンに到着して、ようやくそれが分かった。
スクリーンには今にもキスしそうな、少年と少女の映像が映っていた。
周りの客の中には、感動して泣いてる人もいた。
もちろん、つかささんもその一人だった。
つかさ「うう・・・良かったよ・・・二人が幸せになれて」
うっかり、写メールで取っちゃいたいぐらい可愛らしく泣いている。
・・・・やめておこう、他の人に迷惑だ。
そんな俺の考えをよそに、映画はどんどん進んでいた。
少年「成子・・・俺は・・・君の事が・・好きだった」
少女「・・・私も・・・賢君の事が・・・」
二人は、夕日をバックにしながらキスをしようとした・・・・
最近の俳優は演技力があるな・・・・
そう思いながら、俺も画面をしっかり見ていた。
客の中には食い付く様に見ている人もいる。
二人は顔を近づけて口を・・
ザシュ!!
・・・変な音がした・・・・スクリーンから・・・

よく見ると、少女は少年の首筋に噛み付いていた。
少年「せ、成子?・・・・」
少女「ごめんね・・・もう手遅れなの・・・何もかも」
は?
客も皆そんな顔をしている。
少年「まさか!?・・・君は・・・」
少女「そう・・・私は、貴方の父親と母親を殺したヴァンパイ一族の末裔よ」
は???
少年「嘘だ・・・そんなの嘘だ!!」
少女「もう、騒いでも手遅れなの・・・人間はあと、三時間で滅びる・・・」
少女そう言うと同時に、空の色が血のように真っ赤に染まり始めた。
そして、吸血鬼のような物が人々を襲い始めた。
・・・・・えーと・・・これって・・・恋愛映画だよな?・・・・・
・・・何か自信無くなってきた・・・・


その頃のこなた達。

かがみ「えええ!?・・・凄い映画ねそれ」
こなた「そうなんだよ・・・残りの10分までは恋愛物の話なのに、急にホラー展開になって
鬱になる人が多いみたい」
みゆき「それに、ヒロインがヴァンパイアの末裔で主人公を襲うというのもトラウマになりそうですね」
こなた「うん、もう掲示板でも大騒ぎだよ・・・『恐い映画のBEST3に入る!』ってさ」
かがみ「なら、違う映画を見たほうが良いわね」
こなた「そうだね」

一方、龍次達は

女性客「きゃああああああああああ!!」
男性客「ぎゃあああああああああああああ!!」
女性客は全員、男性客は7割がスクリーンの映像で絶叫していた。
ヴァンパイ族が人を襲うだけの映像であるが、
言葉で説明出来ないほど恐い!!
俺は、何とか叫ばないで済んでいるが・・・・・
キシャーーーーー!!
女性客「キャー!!!」
つかさ「きゃあああ!!」
つかささんもやはり恐がっていた。
いや、他の人より明らかに恐がっている。

そういえば、つかささんって人一倍恐がりだった気がする。

ズブシュ!!

あ!また一人襲われた。
つかさ「あ・・・あ・・あわわ!」
あまりの恐怖で声が上手く出ないらしい。
・・・ていうか、さっきからつかささんがしがみ付いて来るんだけど。
それのお陰で映画に集中出来なくて恐くない。

むしろ嬉しさで顔がニヤケてしまいそうだ。

監督・・・・・グッジョブだ・・・

そんな感じで人類が消滅。
KYなアナウンスと共に幕が閉じてゆく。

結果・・・・・
電車の中でも、駅に着いてからでもつかささんは半泣き状態だった。
仕方なく、俺はつかささんを家まで送ってあげる事にした。


つかさ「うう~、恐かったよ~」
龍次「ごめん・・・俺のリサーチ不足だった」
つかさ「龍次君は悪くないの・・・ただあまりにも恐くて・・・」

つかささんは今も泣いている。
俺が泣かしたのに等しいのかもしれない・・・・・


龍次「・・・俺って最低な奴だ・・」
つかさ「え?」

龍次「遅刻した上に・・・つかささんを泣かせちゃって・・・彼氏失格だな・・俺」
つかさ「そんな事無いよ!」

つかささんは涙を拭って、珍しく真剣な顔になる。
つかさ「今日はとても楽しかったし、また行きたいと思っているの。
また、恐い映画でも良いの。だって龍次君と一緒に居るだけで嬉しいから」
龍次「つかささん・・・・・」
つかさ「それに・・・・・恐く無かったよ?」
龍次「え、でも叫んでたし」
つかささんはそれは違うよ?と言う様に首を横に振った。
つかさ「確かに見た時は恐かったよ?・・だけどね・・・龍次君に抱きつくと・・・恐くなかった。
全然・・・恐くなかったの」
 

龍次「でも・・・・!!」
俺がそう言うと、つかささんは自分から俺と唇を重ねた。
そして30秒程キスを続けていたら、つかささんは顔を赤くしながら離れた。
つかさ「ご、ごめんね。でもこれしかなくて・・・・」
そう言ってから、つかささんは優しい表情になって次の言葉を喋り始める。
つかさ「私が・・・龍次君の事を変わらずに大好きだって事を伝えるためには」
龍次「つかささん・・・・・」
つかさ「私ね、時々思うの・・・恋人というのは恐い事や悲しい事を共有するものなんだなって」
俺は黙ってその言葉を聞く。
つかさ「だから・・・龍次君は彼氏失格なんかじゃないよ?・・・むしろ立派な彼氏だと思うよ?」
龍次「・・・ありがとう」
つかさ「・・・どういたしまして」
そう言って、俺達は最大限まで体を寄せ合って家へ向かった。
到着したのは10分後の事だった。
龍次「またね、つかささん」
つかささん「うん、おやすみなさい」
俺達は最後に短くキスをしてから、軽く挨拶をした。
つかささんが家に中に到着するまでしっかりと見送ってから、俺も自分の家に向かい始めた。

俺はさっきの言葉が嬉しくて、何度も脳内でリフレインさせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・あっ!!
やばい・・・・・すっかり忘れてた。
自分の服のポケットからペンダントを取り出した。

映画の待ち時間の間に、つかささんにプレゼントしようとしたものだった。

・・・・これじゃ何のためにあの街に行ったか分からないな。

俺は内心苦笑しながら、自分の家に向かった。

 

ピピピ・・・・
目覚ましが鳴ったのだが眠くてしょうがない・・・・
そりゃそうだろう。
昨日の事が頭から離れなかったにだから。
龍次「やばい・・マジで眠い」
桜藤際の時にも同じ事があったのだが、俺は興奮すると眠れなくなるらしい。
・・・・・・俺って危険人物?
そんなくだらない事を考えていると目も覚めてくる。
この眠気を完全に消し去るために、俺は顔を洗い服を変えた。
龍次「・・・・何しようかな?」
いざ起きてもやる事が無い、せいぜいTVゲームをやるぐらいだ。
龍次「つかささんの家にでも行こうかな?」
そういえば、今日は神社の掃除をするって言ってたっけ?
いつも弁当を作ってもらっているわけだし、手伝いに行くとしよう。
そうと決まれば、さっさと着替えて家を出ることにした。

昼につかささんの家を訪れたのは初めてだ。
昨日の夜にここを見たのだが、結構でかい神社だった。
神社の中に入ったら、巫女服姿のかがみさんが掃除をしている所が見える。

龍次「おはよう、かがみさん」
俺がかがみさんに挨拶をしたら、こちらに気がついた。
かがみ「おはよう、龍次くん。今日は結構早起きね」
龍次「かがみさんも起きるの早いね、いつもこれぐらいなの?」
かがみ「まあ、今日はいつもより早起きかもね。家族は皆出かけてるし」
龍次「ふ~ん・・・ところでさ、何か手伝う事無い?」
かがみ「手伝う事?何でまたそんな急に・・・」
龍次「まあ、細かい事は置いといてさ。何か無い?」
かがみ「今は特に無いわね。まあ、強いて言うならばつかさを起こして欲しいんだけど」
龍次「分かった。じゃあ起こしに行くから」

そう言って、俺は柊家の家に上がらせてもらった。
つかささんの部屋の場所は確か、ここで合ってる筈だ。
俺はドアノブに手を掛けた時、ある考えが脳内を通り過ぎた。
龍次(・・・・・入っても良いのだろうか?)
俺も一応、男なんだし、女の子の部屋に勝手に入るのはどうかと思う。
うっかり手を出したらどうするのだろう?
しかし、かがみさんはそれを止めなかった。
・・・・・・・・信頼されてるのかな?
だとしたら、そんな事をしちゃいけないな。
俺は考えをまとめてから、つかささんの部屋の扉を開けた。
そこには、無垢な顔そのもので寝ているつかささんの姿があった。
・・・・・可愛い。起こすのが勿体無いぐらいだ。
俺はそっと、写メールでその寝顔を撮影してから、つかささんを起こす作業に取り掛かる。
つかさ「・・・・龍次・・・くん」
・・・・寝言だ。
寝言から俺の名前が出た・・・・・どんな夢を見ているのだろうか?
気になったので、作業を一時中断。
つかさ「・・・好き・・・大好き」
なんて嬉しい事を言ってくれるんだ、MYハニー。
うっかりキスしたくなるじゃないか。
つかさ「・・・・・・・・ああ!!・・だ、だめだよ!」
????・・・どんな夢を見てるんだ?
つかさ「い、いくら・・・りゅ・・・龍次君でもそんな事しちゃだめだよ・・・」
・・・・・まさか!!・・・・そういう夢を見ているのか!!・・・・・
・・・・録音しなくちゃな、今夜の重要アイテムになりそうだし。
龍次「って、何やってるんだ俺はあああああ!!」
俺は頭を抱え、体を反らしながら奇声を上げた。

さすがにつかささんも目を覚ました、それもバッチリと。
龍次「お、おはよう。つかささん」
とりあえず落ち着き、つかささんに挨拶する。
つかさ「龍次君!?な、なんでここに!?」
龍二「かくかくじかじかというわけでさ・・・つかささんを起こしに来たんだよ」
つかさ「そ、そうなんだ。びっくりしちゃったよ、目の前に龍次君がいたんだもん」
龍次「嫌だった?」
つかさ「そんな事ないよ。むしろ嬉しいの」
龍次「なら、良かった」
つかさ「そういえば、私を起こすの大変じゃなかった?いつもお姉ちゃんに起こしてもらうように頼んでるんだけど
全然起きないらしいから・・・・」
龍次「・・・大丈夫、一発で目を覚ましてたから」
つかさ「本当!?凄いね龍次くん。人を起こす才能があるのかもね!」
龍次「・・・・・・・」
嫌な才能だ。
ていうか、今回起こせたのはどう考えても偶然だと思う。
もう一回やれって言われても出来っこ無いだろう。

龍次「そ、それよりさ。早く神社の掃除をした方が良いと思うよ?かがみさんを待たせちゃ悪いし」
つかさ「ああ!!そうだった!悪いんだけど龍次くんは先にお姉ちゃんの所に行ってて。すぐにそっちに行くから」
そう言われた以上、ここの部屋に居るわけにはいかなくなる。

龍次「わかった」

それから、つかささんが来たのは俺がかがみさんに報告してから15分後の事だった。
いつもより圧倒的に早く来たため、かがみさんが驚いていた。
起こし方を聞かれたのだが、それを話すわけにはいかない。
龍次「企業秘密さ!」
とカッコよく言ってその場を切り抜けた。
それからは掃除をさっさと終わらせた。
最初にかがみさんがいくらか終わらせていたため、やる事は少なかった。
かがみ「ふう、こんなもんかしらね」
つかさ「じゃあ、休憩しよう?今、クッキー持ってくるから」

それから俺達は隅っこにあるベンチに座り、休憩をし始める。
つかささんの持って来たクッキーはおいしかった。
市販のお菓子とは比べ物にならないぐらいだ。
龍次「ふう、ご馳走様」
つかさ「お粗末さま。おいしかった?」
龍次「うん、もう最高」
つかさ「本当!?良かった~」
かがみ「それじゃあ、私は掃除用具を仕舞ってくるわね」
かがみさんはそう言って神社の裏側に行ったが、その行動から俺達に気を遣ってくれてるのが分かった。
感謝しなくちゃな。

つかさ「そういえば龍次くん、何で急に手伝いをしに来たの?」
龍次「言わなきゃダメ?」
つかさ「出来れば・・・」
龍次「・・・・つかささんと一緒に居たかったから」
俺はそのままつかささんを右手で引き寄せた。
つかさ「!!・・・・」
また赤くなり黙ってしまった・・・・何回見てもこの反応は可愛い。
見ていると何か幸せになるような感じだ。
俺はそのまま・・・・
龍次「!!???」
急に激しい頭痛と眩暈が俺を襲い始める。
それは、昨日起こったものより激しかった。
俺はそのまま意識を失い、その場に倒れてしまう。
その時に、つかささんの声が俺の耳に入ったが、それを聞く事が出来なかった。

その頃、かがみは掃除用具の片付けを行っていた。
しかし、そのスピードは少し遅めだ。
二人に気を遣っているのだ。
かがみ「あの二人、本当に仲が良いわね」
誰か居る訳でも無いが、つい、そう言ってしまう。
あの二人はそのつもりでは無いだろうが、かなりのバカップルだ。
しかしそれは見ていても腹が立たなく、むしろ見ていて和む。
???「それは何よりだ。なんせこの世界の兄弟には基点同士の恋人は居ないからな」

かがみ「!!誰!?」
かがみが振り向いた先には、昨日の放課後の少年が居た。
???「そんな恐い顔をしないでくれよ。君に重要な事を教えに来たんだから」
かがみ「・・・あんた!!確か昨日の!!」
???「ほう、君みたいな可愛い子に覚えてもらえるとは光栄だな」
かがみ「・・・で、何か用?」
すると、少年はさっきまでと打って変わった真剣な表情になる。
???「明日、君の姉二人は死ぬ」
ぴしゃりと言い切る。
かがみ「・・・あんた馬鹿じゃないの?冗談はいいから他に用が無かったらさっさと帰って」
そう言ってかがみは中断していた、掃除用具の片付けを再開した。
???「いのりさんと・・・まつりさんだっけ?」
少年は軽い口調でそう言い始める。
かがみ「!!!」
かがみはその言葉に反応したように少年の方に振り返った。
???「いのりさんはかがみくんに似て、ツリ目だよね。
まつりさんの顔はつかさくんにそっくりだったかな?」
かがみ「何でそんな事知ってんのよ!」
???「さて、どうしてかな?」
少年はあくまで軽い口調を使って喋る。
かがみ「ていうか、何でそんな事を言う必要があるのよ!!」
その時だった。
???「知ってどうする」
かがみ「っ!!!」
突然、真剣な表情になる少年。

そしてその少年の瞳を見た瞬間、かがみは身動きが取れなくなった。
なるで金縛りのようだ。
少年はかがみに一歩近づく、しかしかがみは身動きが取れない。
???「残念ながら今行った事は現実になる。だが、それを君達はすぐに忘れてしまうだろう」
かがみ「?」
???「いや、初めから彼女達の存在なんて無かった事になってるかもしれないな」
かがみ「!!!」
???「まあ、安心しな。あの二人次第ではこの世界もこの世界のホストも兄弟も復活する」
そう言って一歩近づく。
???「だから、安心しろ。あと、今聞いた事は全部忘れてもらうよ」
そう言って少年は人差し指をかがみの額に当てた。
かがみはまるで人形の様に棒立ちになった。
???「大丈夫、数十秒で元に戻るから」
そう言って少年は人外な跳躍力で神社の屋根に飛び乗った。
少年の視線の先には倒れている龍次と混乱しているつかさの姿があった。
???「・・・頑張ってくれよ・・・二人とも」
少年はポツリとそう言って、神社から姿を消した・・・・・・・・