―――週末、泉邸。
ズキューン、バキューン、ティウンティウン
「あっ、くそっ、またやられたっ!」
こなた「ふふーん、精進が足らんよキミ~」
「もう一回!今度こそ勝つ!」
こなた「ふははは、何度でもかかってきたまへ~」
かがみ「・・・飽きないわねーあんたら・・・」
みゆき「ふふっ、いいですよねこういうの」
つかさ「どんだけ~★」
かがみ「・・・つかさも飽きないわね・・・」
ガチャッ
ゆたか「・・・みなさん、おやつにしませんか~」
こなた「おぉっゆーちゃんナイス!とゆーわけで一旦休憩~」
「くそー。負けっぱなしで休んでなんかられるか、修行だ修行!」
ゆたか「ダメですー。休憩しましょう先輩っ」
ギュッ
「こ、小早川さん!?」
ゆたか「えへへっ///、こっちこっち」
「え、あの、ちょっ」
ゆたか「はい座って下さいっ。」
「あの・・・」
ゆたか「ぷぅ。早く座って下さいっ」
「は、はい・・・」
ゆたか「先輩は、飲み物何がいいですかぁ?」
「あ、あの、小早川さん」
ゆたか「コーラも、紅茶もオレンジジュースも有りますよ。」
「いやだから小早川さ・・・」
ゆたか「あ、先輩はコーヒー派ですか?だったらすぐに入れてきて・・・」
みなみ「・・・・・・ゆたか」
ゆたか「ぎくッ!!!」
みなみ「・・・近すぎ、離れて」
ゆたか「み、みなみちゃーん」
みなみ「ゆたか?」
ゆたか「は、はい~」
そう。
私は今日、母の用事をキャンセルして、泉先輩の家にいる。
母は悲しんではいたが。
でも『好きな人と一緒にいるため』と言ったら目を輝かせていたから、気にしなくていいと思う。
そんなわけで、私は先輩の隣に腰を下ろす。
自然と、何の違和感もなく、先輩とくっついて、座る。
周りの人たちも、もう何も言わない、今朝からの風景。
ゆたか「う~、みなみちゃ~ん」
みなみ「・・・聞こえない」
ゆたか「ふえ~ん」
みなみ「泣いても許さない」
ゆたか「ぷぅ。みなみちゃんばっかりズルい」
みなみ「恋人だもの」
ゆたか「・・・うぅっ、告白はさせてくれたのにっ」
みなみ「好きになるのは自由。でも先輩の恋人は私。」
・・・そう。
あの後、泣き疲れて二人眠ってしまった後。
実は、なんと、呼び出して、告白したのだ。
ゆたかが。先輩に。
私は、行かなかった。
先輩を信じていたから。
ゆたかを、信じていたから。
結果は、聞いていない。
聞く必要もない。
こなた「いーねー。ラヴラヴだねぇ。両手に花だねぇ。」
「あのね・・・こなたさん・・・」
こなた「ついでに私たちも攻略してみる?ハーレムフラグは立ってると思うよん?」
「やめて・・・」
こなた「特にかがみんとk」
ゴツッ
かがみ「・・・殴るぞ」
こなた「だから殴ってから言わないでってばっ(泣」
かがみ「くだらないこと言ってるからよ。ほら、みなみちゃん怒ってるじゃない」
みなみ「いえ・・・私は・・・」
想像してみる。
ソファに座っている先輩。
ゆたかをひざにのせて。
右側に私。
左側にかがみ先輩。
背中からみゆきさんがしなだれかかって。
足元に泉先輩。
つかさ先輩がお茶を入れて。
・・・すごく、頭に来た。
「い、岩崎さん?なんかオーラが・・・」
みなみ「駄目です」
「はぃ?あの、何を・・・」
みなみ「絶対駄目です」
「いや、だから」
みなみ「満足させますから」
「は!?いわ、岩崎さんっ!?」
みなみ「は、恥ずかしいですが、先輩が望むなら、何でもしますから」
「はい!?」
みなみ「だから、私だけを見て下さい」
「お~~~い!岩崎さんっ!!何を言っちゃってくれますか!?」
慌てる先輩。珍しく、私が主導権を握った瞬間。
・・・だけど。
みなみ「・・・先輩は、こんな私は、キライですか?」
「えっ???」
空気が止まる。
ただのふざけあいだったはずが、私も先輩も、真剣な顔になる。
みなみ「私は、こんな嫉妬深い女です」
みなみ「先輩が、私を好きだって言ってくれた頃の私なんて、消えて無くなってしまうくらい」
みなみ「きっと、もっと嫉妬深くなります」
みなみ「先輩を、困らせます」
みなみ「先輩が、好きです」
みなみ「たとえ嫌われても、好きです」
みなみ「嫌いになんて、なりません」
みなみ「・・・先輩は、こんな女、キライですか?」
「岩崎さん。」
―――抱き締められた。
強く、強く。
そして、優しい、声。
みなみ「・・・先輩」
「俺は、岩崎さんが好きだ。」
みなみ「・・・はい。」
「これから、たぶん、もっと好きになるよ。」
みなみ「・・・はいっ」
「だから、俺のことも、もっと好きになって欲しいな。」
みなみ「・・・はいっ!」
少しだけお互いの体を離す。
見つめ合う、私と先輩。
だんだんと、顔が、近付いて。
そして・・・
みなみ「・・・んっ・・・」
こなた「・・・あー、ゴホン。お二人さんお二人さん?」
「・・・はっ!!!」
みなみ「!・・・あっ」
驚いて、飛び退く。
振り返ると、周りは皆食い入るように私たちを見つめていた。
皆、顔は赤い。
当たり前だ。目の前で、いわゆる『ラブシーン』を演じられたのだから。
こなた「いやーアハハ///、滅多に見られないもの見せてくれたトコ、悪いんだけどねぇ」
つかさ「///こ、こなちゃん、凄く良い雰囲気だったのにぃ///」
かがみ「い、いや///・・・あれで正解でしょう、さすがに。」
みゆき「・・・は、はぅ////・・・素敵でした」
ゆたか「・・・うぅ~」
「あ、アハハハハハハ、ハ」
みなみ「//////」
私は、先輩が好き。
ゆたかも、先輩が好き。
きっと、他にも、先輩を好きな人が、できる。
・・・選ぶのは、先輩。
そして、先輩を選んだのは、私。
私は、今まで通り先輩を好きでいればいい。
先輩に、好きでいてもらえるように、努力すればいい。