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ゆたか「先輩は、週末どうするんですか?」
「うーん、まだ決めてないんだよ。岩崎さんは用事があるって言うし」

用事。本当はそんなもの投げ出して先輩といたいけれども、母に頼まれたら仕様がない。
それに・・・『一緒にいたい』なんて・・・言えない。顔から火が出そう。

ゆたか「そうなんですかー。それじゃあ、ウチにきませんか?
お姉ちゃんが、新しいゲームを買ったんです」
「それって、もしかして今話題の?」
ゆたか「はい!」
「うーん・・・」
ゆたか「・・・で・・・」

二人の会話に、私は入らない。
いや、入れない。私とは流れる時間がまるで違うから。

以前は、私を中心に並んで歩いていた。
会話も、私とゆたかの日常が主だったと思う。

いつだったか、お互いに用事ができて、三人ではなく二人組交互で帰ることが増えた時があって。
それが終わった頃には、この並びだった。

「・・・さん、岩崎さん?」
みなみ「・・・えっ!?」

気がつくと、私は立ち止まっていた。
先輩と、ゆたかが・・・怪訝そうな顔で私を見つめている。

ゆたか「みなみちゃん、どうしたの?気分でも悪いの?」
みなみ「・・・ううん、ちょっと、ボーっとしてただけ。大丈夫。」
ゆたか「そう?」
「岩崎さん、ごめんな。ほったらかしにしてたから怒っちゃった?」
みなみ「い、いえ、そんなことないです。二人の話聴いてるの、楽しいですから。」

少なくともそれは真実だ。
先輩と出会ってから、大抵は、私は二人の話を聴くだけの立場の人間だった。



本当は、先輩も、ゆたかと話している時の方が楽しいに違いない。
私には、楽しい話題なんて、何もないから。


・・・そしてきっと、ゆたかも。

みなみ「・・・本当に大丈夫ですよ。行きましょう。」
そう言って先に立って歩き出す。
先輩たちも、急いで隣に駆け寄ってくる。


こんな訳のわからない行動をしても、ただ苦笑するだけで済ましてくれる二人に、安心する。
ちょっと前なら、「すましてて、コワい奴」なんて言われて、皆離れて行ったから。

こんな自分が嫌で、変わったはずだったのに。

「週末、残念だなぁ。岩崎さんも来れれば良かったのに」
みなみ「すみません・・・」
ゆたか「残念ー。
・・・でも先輩、ホントは、みなみちゃんと二人きりがいいんじゃないですか?」
「はははっ、まーね」
みなみ「・・・っ!!」


ちくり、と胸が痛む。
今度は、先輩のセリフが恥ずかしいからじゃない。

見てしまったから。
知っているから。ゆたかの、想いを。

ゆたか「ぷう、やけちゃいますね。いーなー。」
「小早川さんだって、作ろうと思えば彼氏の1人や2人すぐさ。
クラスでモテたりしないの?」
ゆたか「そ、そんな、そんなの全然ないですよ///私こんなちびだしっ」
「そんなことないよ。スゴく優しいし、かわいいし。狙ってる奴多いと思うよー」
ゆたか「エ、エヘヘ///そうかな///」
「ねえ岩崎さんもそう思うよね?」

みなみ「・・・ハイ」


実際、どうなのかはわからない。
男子とはあまり話さないし、クラスの男子の話題に出るのはモデルや女優の、大人の女性だ。
泉先輩は「需要」と言うけれど、それもなんのことなのかはよくわからない。

ただ、女の私から見ても、ゆたかは可愛い、とは思う。
気も効くし、笑顔も多い。

私のようなつまらない女よりは、ずっと男性に受けは良いはずだ。







・・・でも、先輩は――――

みなみ「―――――!!」

ビクン、とカラダが跳ね、硬直する。
「い、岩崎さん!?どうしたの?」
ゆたか「み、みなみちゃん?」



今、何を思った?



今、何を考えた?



みなみ「あ・・・あ・・・」
「岩崎さん?」
ゆたか「みなみちゃん?」

動悸が激しい。
自分のカラダが、岩になったように言うことを聞かない。
みなみ「・・・あ・・・か・・・ふ・・・!」
「岩崎さん、岩崎さん!」
ゆたか「みなみちゃん!?みなみちゃん!」

視界がぼやける中、二人の声だけが、やけにクリアに聴こえる。

みなみ「だ・・・だい・・・じょうぶ・・・」
「大丈夫なもんか!ほら、そこのベンチで休もう。
小早川さん、ジュースか何か買ってきて!」
ゆたか「は、ハイ!」



先輩に引きずられるように、ベンチに腰掛ける。
「岩崎さん、大丈夫?呼吸はできてる?過呼吸とかじゃない?」
みなみ「・・・・・・」
答える余裕はないが、辛うじて首を縦に振る。

「今、小早川さんが何か冷たいモノを持ってくるから。今はゆっくり深呼吸して。」

そう言って、先輩は私の手を握りしめていてくれる。
それだけで、少し楽になれている自分が、今は逆にツラい。

あの時考えたことは、決して考えてはいけないこと。


考えたく、ないこと。


考える自分が、イヤになること。


醜い、自分。




――――でも、先輩は・・・

先輩は、私を選んでくれた。



『ゆたかなんかじゃなくて』、私を。