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自室の窓から星降る空を見上げ、高良みゆきは物思いに耽っていた。

(今日も星が綺麗ですね…)

ホットミルクティーを飲みながら、ひんやりとした空気の中、瞬く星空を眺めいる。
最近は夜空を眺める事が、みゆきのささやかな楽しみとなっていたのだ。

(流れ星は流れないでしょうか…)

星空を見上げた日は、いつも流れ星を探して眠りにつく。叶えて欲しい願いを伝えるために。
夜空を眺めながら、いつ流れ星が来ても良い様に、両手を合わせて目を閉じる。

(…○○さんが幸せでありますように…)

いつから抱いていたか、みゆきにも分からない。
ただ、いつも一生懸命に頑張ってくれた○○を、いつしかみゆきは想いを寄せるようになっていた。

(桜藤祭から…でしょうか? いつも頑張ってくれてましたから…。劇も、ミスコンも、ステージを支えていた時も…)

みゆきはその時々に見た○○の顔を想い、頬を赤らめる。
ほてった頬に手を当て、ゆっくり目を開ける。
その目には僅かな哀しみも含まれていた。
ふと空を見上げると、星が流れていくのが見えた。 
(あっ…)

慌ててみゆきは両手を合わせて願いを祈る。

(…○○さんが幸せでありますように…)

一つ願いを祈って、ためらいがちにもう一つ祈る。

(それと…願わくば、私の想いが伝わりませんように…)

願いを祈り終えたみゆきは、悲しげな表情で目尻に涙を溜めながら、窓を閉めて眠りについていった。



翌日。
授業も終わり生徒達が思い思いの活動の場へ散って行く中、
こなた達4人は○○の机の周りで話していた。

「今日も疲れた…。これからバイトだよぉ~」
「こなたさん今日はずっと熱心にノートとってたもんね。あれだけ集中してれば疲れるよな」
「こなたが!? 有り得ないわよ」

かがみが一瞬大きく目を見開いて、即座に否定する。

「むぅ、失礼な。私もやる時はやるのだよ!」

薄い胸を叩きながら、誇らしげにこなたが言う。

「こなちゃんホントに頑張ってたもんね。たくさん英語書いてたよ」
「…英語?」
「うん、全部の教科で一生懸命書いてたの見たよ。こなちゃん頑張ってるな~って」
「ちょ! つかさ見てたの?」 
「全部の教科で…、ですか? 泉さん海外へ留学なされるんですか?」
「え? あ~、いやまぁね…」

バツが悪そうにこなたが視線を逸らして猫口になる。

「…アンタ…。もしかして一日中ネトゲのパーティ編成考えてたんじゃ…」
「…はっはっは…。かがみんや、そんな馬鹿な」
「こっちを見て否定しなさいよ…。まったく…、そんな事だろうと思ったわよ」
「ちぇ…。つかさに見られていたとは…。せっかく○○くんの好感度アップしそうだったのに…」
「いやぁ…、しないと思うけどな…」
「普段勉強しない娘が、一生懸命机に向かう! そのギャップに萌えないの?」
「そう力説されてもな…。ってか勉強じゃないじゃないか」

こなたに詰め寄られて○○が困っていると、みゆきが横から助け船を出す。

「まぁまぁ…。皆さんそろそろいい時間ですから。泉さんもバイトのお時間大丈夫ですか?」

ケータイの時計を見てこなたが焦りの声を上げる。

「うぉっ!? ヤバ、遅刻しちゃうよ! じゃあ私先に帰るね! ○○くんいつか私のバイト先においでよ! じゃね!」

そう捲し立てながら、こなたは疾風の如く駆けて行った。 
(…しっかりアピールしてったわね…)
(流石こなちゃんだね~)

走り去るこなたを眺めながら、かがみとつかさが小声で喋る。

「うん? 二人共何か言った?」
「な、何でもないわよ。ほら、私達も帰るわよ!」
「暗くなっちゃうから早く帰ろう?」

二人に背中を押され、○○は教室をあとにする。

「おっと! 分かってるよ。分かってるから押すなって」

教室を出ようとする3人に、みゆきが申し訳なさそうに声を掛ける。

「すいません。委員会の仕事があるので、私はもう少し残りますね」

少し困ったような笑顔をしたまま、みゆきが控え目に言った。

「そうなんだ? 良かったら俺も手伝おうか?」
「いえ、書類をまとめたら提出するだけですから。お気になさらずに」

みゆきがそう言うと、○○は一瞬怪訝そうな顔をする。

「…そう? じゃあお先に失礼するね」
「みゆきあんまり無理しちゃダメよ?」
「ゆきちゃんまたね~」

○○達はみゆきに言葉をかけて、そのまま教室をあとにした。 
3人を見送り、みゆきは「ふぅ…」と溜め息をはく。

「…○○さん…」

普段○○が座っている机を眺めながら、ポツリと呟く。

(皆さん…、○○さんがお好きなんですね…)
(…そうですよね…。だって、あんなに素敵な方ですから…)

委員会の仕事というのは、半分嘘だった。
確かにやらなければならない事はあったが、別に今日中に取り決めなければならないものではなかった。
ただ、あのまま○○の側にいては、自分の気持ちが表に出てしまいそうで怖かった。

(…やはり…私は○○さんが…)

そこまで考えて、いくつかの顔がフラッシュバックする。

――積極的に○○にアピールするこなた――
――強がりながらも頬を赤らめるかがみ――
――少し恥ずかしがりながら○○と楽しそうに話すつかさ――

その一つ一つを思い返しながら、みゆきはゆっくりと呟く。

「皆さん…、私の大切なお友達ですから…」

自分に言い聞かせるように、みゆきは言葉を繋ぐ。

「だから…、私の想いは気付かれてはいけないんです…」 
みゆきは、いつしか自分が読んだ小説の内容を思い出す。
それは好きな男性を巡って、友達同士が仲違いするというものだった。
ただの小説の内容だが、それでもみゆきは不安になる。それだけこなた達の事が大切という事の表れなのだ。

(…もし小説のような事になったら…)

こなた達が自分を見る目に敵意が宿ったとしたら、きっと自分は耐えられないだろう。
『想いを伝えて友達との仲が壊れるくらいなら、自分を押し殺していた方が良い』
みゆきはそう考えてしまったのだ。

「だから…」

誰にともなくみゆきは呟く。

「――だから…っ」

振り払おうとすればするほど、瞼の裏で鮮明に甦る。
――思い出したくない顔――
――見たくないはずの姿――
――だけど、誰よりも愛しく大切な、その笑顔――

「……だ、から……」

呟きながらみゆきは泣いていた。
どんなに頭で理解しても心まで簡単に理解出来るものでは無かったのだ。
○○への押さえられない気持ちが涙になって溢れ出す。
眼鏡が涙で濡れるのも構わず、出てくる声を押し殺し、自分自身を抱える様に、みゆきはただ一人泣き続けた。 
どれだけ泣いていたのか、辺りはすっかり暗くなっていた。
みゆきは泣き腫らした目を軽く洗い、書類を片付けて昇降口へと向かった。

(遅くなってしまいました…)

人の気配が微塵もない昇降口をくぐり、校門へ向かって行くと、門に寄り掛かるように立っている一つの影が見えた。

(…どなたでしょう?)

そう思いながら歩いていくと、よく見えなかった顔がだんだんハッキリしてくる。
随分と見慣れた顔がそこにあった。
その影は安心したような笑顔を携えて、みゆきの横へやってきた。

「みゆきさんお疲れ様。遅いから心配したよ」
「…○○さん? どうしてここに…?」

みゆきがそう言うと、ほんの少し困った顔をしながら○○が呟く。

「あ~、うん、なんだかみゆきさんの様子がおかしかったからさ。その…、心配で待ってたんだ」

そう呟く○○の顔は、暗くてよく分からなかったが、言葉の端々から照れているようにみえた。

「様子…、ですか?」
「うん、なんだか思い詰めてる気がしたんだ」 
みゆきは驚いた。想いを押殺している雰囲気が僅かに出ていたのだろう。
何より驚いたのは、その僅かな変化を、○○が感じ取っていた事だった。

「ホントに大丈夫? 俺で良かったらまた力になるよ? …もう一回ミスコン出るとか?」
「ち、違います! もうあんな恥ずかしいのはイヤです…」
「そう? みゆきさん綺麗だったよ」

事も無げにそう言う○○を、みゆきは頬を赤くして抗議する。
暗くて互いの顔がよく見えないのが救いだった。

「そんな…! 私なんて、…綺麗じゃないです…」

どこか哀しみを帯びた否定の言葉に、○○は首をかしげる。

「…大丈夫ですよ。大した事ではありませんから…」
「う~ん、なら良いんだけどね。じゃあこれ以上遅くならない内に帰ろうか? 送っていくよ」
「え? だ、大丈夫ですよ。そんな送って頂かなくても…」
「いいから。ほら、早く帰ろう?」

そう言いながら、○○はみゆきの手を引き歩き出す。
その握られた手から伝わる温もりと優しさに、みゆきの心は辛く締め付けられた。 
(…ダメです。このままでは私…)

想いに気付かれてはいけないと押し殺していた感情が、○○の温もりで引き出されそうになる。
そのまましばらく歩いていると、おもむろに○○が話し掛けてきた。

「見て、みゆきさん。凄い星空だよ」

そう言われて見上げると、とてつもない星空が煌めいていた。心なしかいつもより多く、綺麗に見えた。

「あ! 流れ星!」

○○が指す方を見ると、確かに一筋の光の尾が消えていくのが見えた。
ふと○○を見ると、何かを懸命に祈っている。

「お願い事ですか?」
「うん、ちょっとね。叶うと良いんだけどな」

そう言いながら、○○は照れくさそうに笑う。

「何をお願いしたのですか?」
「え? あ、う~んとね…」
「?」
「…『みゆきさんの悩みが解決しますように』…って。その…、何に悩んでるか分からないけど…。
自分に出来るのはこれくらいかなって…」

照れ笑いする○○の言葉を聞いて、みゆきは心がさらに締め付けられる。

――いつもこの人は優しくて――
――だけど、その優しさが私を苦しめている――
――だったら、いっそ―― 
「…○○さん」
「どうしたの?」
「お願いが…あります」

みゆきの強い口調に、○○は改めてみゆきに向かい合う。

「…私の事を『嫌いだ』と言って下さい」
「……何だって…?」
「私を、嫌って下さい。…そうすれば、私の悩みは無くなりますから…」

そう言うみゆきの目は真剣そのものだった。



○○は、みゆきからの言葉に呆然としていた。

(『嫌いだ』なんて…、嘘でも言えないよ…)
(…好きな娘に、そんな事…)

そう、○○もみゆきに想いを抱いていたのだ。
時間のループが見せたみゆきの様々な顔が、いつしか○○の心を埋め尽くしていた。

しばらく考えて、○○は決意する。

「…分かった。それで、みゆきさんの悩みは無くなるんだね?」
「…はい…」
「…じゃあ…言うよ。俺は…みゆきさんが――」 
 
みゆきはギュッと目を瞑り、○○から伝えられる言葉を待っていた。
だが、○○からの言葉がこない。どうしたのかと思っていると、自分を暖い何かが包んでいるのを感じた。
早い鼓動、すぐ側に感じる○○の息遣い。
みゆきは○○に抱き締めていると気付くのに、しばらくの時間を要した。

「…え? ○○さん…!?」
「…よく聞いてね。俺は…、みゆきさんが好きだ。一人の女性として、大好きだ」
「…だから、嘘であっても、『嫌いだ』なんて言えないよ…」

○○から感じる鼓動が、その言葉が嘘ではない事を物語っていた。

「…ダメです…、そんな事…。○○さんにはもっと相応しい方が…」
「自分が好きな人以上に相応しい相手なんかいないよ。…みゆきさんは、俺が…嫌い?」

みゆきは言葉に詰まる。このまま○○の腕の中で想いを伝えたかった。
だが、浮かぶ親友の顔が、それをさせてはくれなかった。
答えのないみゆきの雰囲気を感じ取り、○○はゆっくりと話し掛ける。

「俺はね…、こう思うんだ。『他人の知っている自分と、他人の知らない自分が自分自身の中に居ても良い』って」
「今までのみゆきさんは、きっと『こなたさん達が知っているみゆきさん』だったと思うんだ」
「だから…、俺にだけ教えて欲しい。こなたさん達の知らない…、誰も知らないようなみゆきさんを」
「そのみゆきさんが出した答えなら、例え何であっても、俺はそれを受け入れるから」 
自分の胸で俯いているみゆきをまっすぐに見つめながら○○は告げる。
やがてみゆきは、○○の腕の中で、心から絞り出すように呟く。

「…ご存じですか…? 泉さん達も○○さんが好きなんですよ…。つかささんも…、かがみさんも…。
……私は、泉さん達が大好きなんです……! 大切なお友達なんです…。もし、皆さんといがみ合うような事になったら――」
「そんな事ならないよ」

○○は、微かに震えながら消え入りそうに呟くみゆきを、優しく撫でながら否定する。

「みゆきさんは3人がみゆきさんを嫌うと思う? お互いこんなに大切に思ってるんだよ?」

そう言って○○は自分の携帯からメールの画面を呼び出し、みゆきへ渡した。 
『みゆきさん何だか様子が変だったから、○○くんみゆきさんを支えてあげなよ。みゆきさんきっと喜ぶから。
フラグゲットでイベントCGゲットのチャンスだよ!

こなた』
『みゆき様子が変だったから、一緒に帰ってあげなさいよ。
アンタみゆきが好きなんでしょ? 男を見せなさいよ!

かがみ』
『ゆきちゃんと一緒に帰ってあげて? なでなでしてあげると元気出ると思うから。
…ゆきちゃんをお願いね。

つかさ』


それは自分を心配してくれる3人からのメールだった。
メール画面を見ながら、みゆきは口に手を当てて涙を流していた。
親友からの思いに、その優しさに、涙が止めどなく溢れてくる。
そんなみゆきに、○○は優しく語りかける。


「俺はこなたさん達の気持ちには応えられない。だって、俺はみゆきさんが好きなんだから。
いつも優しくて…、笑顔が素敵で、…怒るとちょっと怖くて。そんなみゆきさんが好きなんだ」
「こなたさん達には俺がちゃんと伝えるよ、『ゴメン』って。だから、みゆきさんも、みゆきさんの心のままを応えて欲しい」 
○○の言葉を聞き、震えるみゆきの手が○○の背中に回される。

「好きです…。大好きです…! ずっと、ずっと前から――!」

そう言いながら、みゆきは○○の胸に顔を埋めた。
『ありがとう』と『ごめんなさい』がみゆきの心を駆け巡る。
こんなに好きでいてくれる○○に『ありがとう』を。
心配してくれた親友達に『ありがとう』を。
こなた達の想いを知りながら、自分の想いを伝えてしまった事に『ごめんなさい』を。
喜びと罪悪感を感じながら、みゆきは涙を止める事が出来なかった。

「そんなに泣かないで。…お願いだから…」
「す、すいません…。すぐに…、泣き止みます…か、ら…」

そう言いながら、一向に泣き止む気配のないみゆきに、○○は思い切った行動に出る。

「眼鏡…、外すね」

そう言って眼鏡を取ると、不思議そうに顔を上げるみゆきの唇に、自分の唇をあてがった。

「んぅっ!? んむ~…」

目を白黒させながら、突然の感触にみゆきは慌てた。

「…っぷは! …はぁ…はぁ…」

みゆきには永遠とも感じられる時間が、唇から温もりが離れる事で終わりを告げる。 
「…泣き止んだ?」
「…は…い…」

ポ~ッっと頬を赤らめ、涙とは違う意味で目を潤ませてみゆきがうなずく。

「ゴメンね…。どうすれば泣き止んでくれるか分からなくて…。ビックリしたら泣き止むかな~? …って」
「あの…、しゃっくりではないので…」

控え目なみゆきのツッコミに、二人は柔らかく微笑む。

「みゆきさん…、愛してるよ…」
「…『みゆき』が良いです…。そう、呼んで下さい…」
「みゆき…」

優しく名前を呼びながら、二人の距離は再びゼロになる。
突然ではないキス。伝えたい想いを温もりに込めて、心の全てが伝わるように唇を重ねる。

「…叶わなくて…、良かったです…」
「ん? どういう事?」
「うふふ、何でもありませんよ」

そう言いながら、みゆきは空を見上げた。
二人を祝福するように、星達がより一層輝いている。

「綺麗ですね…」
「そうだね。…あ! また流れ星だ」

星の煌めきの間を縫って、一筋の光が流れていく。

「「……」」

二人は目を閉じて願いを唱える。 
「みゆきは何をお願いしたの?」
「え? ひ、秘密です!」
「教えて欲しいなぁ。ダメ…かな?」
「そ、そんな哀しそうな顔で聞かないで下さい…」
「あはは、ゴメンゴメン」
「…もう…、いじわる」
そう言うと、みゆきは顔をそっぽを向いてしまった。

(――○○さんとずっとずっと一緒に居られますように――なんて、恥ずかしくて言えません…)

恥ずかしそうに、背中に回していた手を解いて身体を離す。

「帰りましょうか? 遅くなってしまいますから」

そう言ってみゆきは○○の手をとり歩き出す。 
 
「っと、待ってよみゆき!」



叶う願いと叶わない願い。
それは星が選んでくれているかもしれない。
そうならば――と、みゆきは願う。

(この言葉だけは…、いつも○○さんに伝わりますように…)

「○○さん――」

願いと想いを言葉にのせ、星の輝きに負けない笑顔で振り返りながら、みゆきは告げた。





「大好きです!」

FIN


おまけ 通常ver

「大好きです!」



二人の想いが通じた翌日、○○はみゆきと屋上でお昼を食べていた。

「はい、○○さんどうぞ」
「あ、あ~ん」
「うふふ、美味しいですか?」
「美味しい! みゆき料理も上手なんだね!」
「いえ、これは知り合いのシェフの方に昨日教わったので…」
「シェフに? 凄いな」
「いえ…、○○さんに食べてもらうのですから…。美味しくないと…イヤじゃないですか」
「…みゆき…、ありがとう」
「○○さん…」

周りに誰もいない事を確認し、二人の間がだんだん近付いていき、いざゼロになろうとした瞬間。

「先輩~! こなたお姉ちゃんが呼んでま――」
「!!」

突然屋上入口からゆたかがやってきた。やろうとしていた事が事だけに、
ビックリした勢いでお互いの唇を思いっ切りぶつけてしまう。

「――せんでしたぁ…。ど、どどどどうぞごゆっくり!」

ゼンマイ仕掛けの人形のように、角張った動きでゆたかはUターンしていった。 
「…見られちゃいましたね」
「…うん、おまけにビックリしてキスしたから、かなりディープな感じに見えたかも…」
「…どうしましょう…」
「それはもう一回キスしたいって事?」
「え!? …は、はい…」

○○はみゆきの眼鏡を優しく外し、髪を梳しながら再び距離を縮めていく。
お互いの吐息を肌で感じる距離になった瞬間。

「みゆきー。委員会の書類は――」
「!!!!」

計ったかのように入口からかがみが入って来る。
2回目は無いと油断していたせいか、突然の訪問者に驚いた○○はバランスを崩しみゆきを押し倒してしまう。

「――用意しとくわ。…ほどほどにしときなさいよ…」

落ち着いているように振る舞いながら、顔を真っ赤にしたかがみは、
足取りもおぼつかないまま屋上から出ていった。

「…厄日なのかな、今日は」
「……」
「ん? みゆきどうしたの?」
「いえ…、この状況が…」
「…あ! ゴ、ゴメン! すぐに退くよ!」

身体を起こそうとした○○を、みゆきは手を掴んで止める。

「みゆき?」
「…その前に、ちゃんとキス、して…下さい…」 
頬を赤らめながら、横になったままみゆきは目を閉じる。
その姿に○○は胸が高鳴った。

(…綺麗だ…。みゆきを好きになって、良かった…)

眠れる森の美女にキスするかのように、○○はみゆきの唇へ近付いていく。
二人の影が一つになろうとした瞬間。

「みゆきさ~ん! チチくりあって――」
「○○くん、エッチはダ――」
「ウチより先に結婚は許さへ――」
「!!!!!!」

かがみ達から話を聞いたのか、こなたとつかさと黒井先生が続々と屋上へやってきた。
3回目を警戒する前に、みゆきに見とれてしまった○○は、突然の乱入に驚きバランスを崩して手をつく。

――ムニュ――

――その瞬間――世界が凍った――

「きゃああぁぁぁぁぁぁ!」
「ゴ、ゴメンみゆき!」
「え、あ、いえ、いきなり過ぎてビックリしただけなので…。その…、イヤではないです…」
「え…、…うん…ゴメンね」

恥ずかしながら見つめ合う二人を、こなた達は凍り付いたまま眺めていた。 
「しょせんは巨乳が勝ち組か…」
「こなちゃん、貧乳はステータスじゃなかったの?」
「勝負に負けちゃ意味がないんだよ。…まぁ、素直に祝福してあげようか」
「そだね。あの二人とってもお似合いだもん…」
「ま、説教は私達からのプレゼントって事で。では、黒井先生よろしく~」

その後、桃色空間を作り上げ続ける二人は、黒井先生による涙と嫉妬の説教を3時間程くらったのはまた別のお話。


FIN


おまけ 別ver

黒井先生から血涙付きの説教をくらった翌日。
相変わらず屋上で桃色空間を展開し続ける二人に、入口から複数の視線を送る影があった。

(二人が上手くいったのは良いんだけどさ~)
(こうもあからさまに桃色空間作られるとね…)
(…どんだけ~)

こなた、つかさ、かがみの3人は、入口から息を潜めて二人を観察していた。

(…確かに○○くんには、ハッキリとフラれちゃったけどさ)
(諦められる訳ないじゃない! いくらみゆきでも、これは譲れないわよ!)
(お、お姉ちゃん声が大きいよぉ…)

目に力を入れて燃え上がるかがみに、こなたは提案する。

(かがみんも諦めてないんだね? じゃあ話は簡単だ)
(? こなちゃんどうするの?)
(…決闘だよ! ○○くんを賭けて勝負を申込むのだよ!)
(血糖?)

――ズンッ!

つかさはかがみの当て身をくらい、その場に崩れ落ちる。 
(その手のネタ2回目よ)
(何でかがみが知ってんのさ)
(気にすると危険よ。それよりも早くも一人脱落ね)
(でも、みゆきさんにはこんな力づくは通用しないよ)
(じゃあどうするのよ? 何か手はあるの?)

そう聞かれてこなたはポケットからトランプを取り出す。

(前回のリベンジを兼ねて、ポーカーで勝負しようと思ってね)
(アンタ前回ボロ負けしたじゃない。結果は同じじゃないの?)

かがみがそう言うと、こなたは口の前で指を振る。

(チッチッチ。私が2度も失敗する訳ないじゃん。はい、かがみ)
(何よ、この伊達眼鏡は?)
(これを付けると、カードの裏から絵柄が見えるんだよ)
(…イカサマかよ…)
(○○くんを奪う為には手段なんか選んでられないんだよ!)
(まぁ…いいけどね。じゃあ…、行くわよ! 『○○くん奪還作戦』開始!」

『恋は盲目』とはよく言ったものである。奪還も何も○○は望んでみゆきの隣りに居る訳だが、
もはやこなた達には、そんな事も見えなくなっていた。 
入口を勢いよく開けて、二人は桃色空間の中へ突入する。

「「みゆき!(さん!)」」

突然の訪問者に、若干驚きながら○○達はこなたとかがみを見る。

「どうかなさいましたか?」
「みゆきさんに勝負を申込みに来たんだよ。…○○くんを賭けてね!」
「お、俺?」
「今からこのトランプでポーカーをやって、勝った人が○○くんの彼女になるんだよ」
「いや、待ってくれよ。俺の意志は――」
「ないわよ。諦めなさい」

かがみにピシャリと言われて、○○はスゴスゴと押し黙る。

「――どう? みゆきさん。この決闘受ける気はある? …それとも逃げるのかな?」

不敵な猫口笑みを浮かべながら、こなたが挑発する。
そんな様子を見ながら、みゆきは怖じ気付く様子も無く、微笑んだままうなずく。

「えぇ、やりましょう」
「みゆき!?」
「ご安心を。このゲームは得意ですから」
「…でも――」
「私を信じて下さい。…大丈夫、必ず貴方の元へ戻りますから…」
「…みゆき…」
「あぁもう! 桃色空間展開しないでよ! ほら、さっさとやるわよ」 
そう言いながらカードを配ろうとするかがみとこなたに、みゆきが声をかける。

「ところで――」

その瞬間、○○は時間の流れに『違和感』を感じた。

「何故こんな伊達眼鏡をかけているんですか?」

そう聞くみゆきの手には、さっきまでかけていたはずの、イカサマ眼鏡が握られていた。

「…そんなバカな!?」
「何がですか? 泉さん。…これがないと、何か『不都合』でもあるのでしょうか?」

顔は笑っているが、みゆきの目は一切笑っていなかった。

「一体いつの間に? まさかみゆきさん『ザ・ワールド』を――」
「何の事でしょう? うふふ…」

不敵に笑うみゆきに、二人はたじろぐ。

「どうされました? …やはり決闘は止めますか?」

みゆきからのお返しと言わんばかりの挑発に、二人は引き下がれなかった。 
「今度こそ絶対私が勝つんだよ!」
「止めないんだから!」

二人の返事に、眼鏡と目の奥を光らせてみゆきが笑う。

「――よろしい、ならば戦争だ」

その後、こなたとは『7カードポーカー』で、かがみとは『テキサスホールデム』で対決し、
どちらもみゆきのロイヤルストレートフラッシュで叩き潰したのは、また別のお話。


FIN