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「うぅ~…、緊張するよぉ…」

ここは柊つかさの自室。その主であるつかさは、布団に潜りながらモゾモゾしていた。

「○○くん明日の大学受験の面接大丈夫かな…。はぅぅ~、考えると緊張してきちゃうよ~」

なぜつかさが緊張するのか少しおかしい気もするが、つかさは強張った顔をして布団の中にいる。

「メール送ってあげた方がいいかな…。でもでも、桜藤祭の時みたいに、
それで失敗しちゃったら可哀相だし…。うぅ~…」

つかさは自分が送ったメールで、○○がキスシーンを意識してしまった事
(それが直接の原因という訳ではないが)を思い出した。

「……あれ? でも劇はちゃんとお姉ちゃんがやってたよね?」
「?????」

つかさは桜藤祭時の記憶が混同してしまっていた。時間が繰り返した事によるものだろう。

「…うん、やっぱりメールしよう! …何もしてあげられないのは嫌だもん…」

そう決意すると、つかさは携帯を取り出し文字を入力していく。

(私の時も○○くんが応援してくれたし…、今度は私の番だよね)

つかさは既に料理師の専門学校への入学が決まっている。
その面接の日、○○から「落ち着いていこう」といった内容のメールを貰い、不思議と気持ちが落ち着いたのだ。
「送信っと…。出来た~!」

小一時間かかってメールを作成し、ようやく送信した。
携帯を机に置き、やり遂げた顔をしながら改めて布団に入る。

(これで○○くんの支えになれたら嬉しいなぁ…)

寝返りをうち、頭の奥がぼやけていくのを感じる。
眠りに落ちていく感覚を自覚しながら、つかさは○○の顔を思い返した。

桜藤祭から、5人はほぼ毎日一緒にいた。
そして桜藤祭のループの中で、つかさは○○に対してほのかな想いを抱いていた。
それが桜藤祭以後、ほぼ毎日一緒に居た事で、○○がかけがえのない存在になっていたのだ。

(…だけど…)

○○への想いを自覚しながら、つかさはそれを封じてきた。

(…きっと…、こなちゃんも…ゆきちゃんも…お姉ちゃんも…、○○くんが好きなんだよね…)

○○以上に一緒の時間を過ごしてきた皆の事だ。いくらつかさでも、3人の想いには気付いていた。

(私なんかより、3人の方がずっと幸せになれるよ…)
(こなちゃんはゲーム上手だし、料理も出来るし…)
(ゆきちゃんはスタイル良いし、綺麗だし…)
(お姉ちゃんは頭も良いし…、ツンデレだし…)
正直、つかさは「ツンデレ」という事が良く分かっていなかったが、
何となく魅力の一つなんだろうと思っていた。
それに比べ、自分には何もない。そう結論付けてしまっていた。

(…受験も…、恋愛も…、私は○○くんの応援が出来れば良い…。
○○くんが幸せになってくれればそれで良いよ…)

寝返りをうつ。それと同時に、涙が一筋流れた。

(泣いちゃダメだよ…。明日○○くんを応援しに行くのに…)
(泣いたら目が腫れちゃうよ…)
(泣いちゃダメ…。泣いちゃ…)

そう思えば思うほど、涙は止まらなかった。

(……好きだよ……、やっぱり私…○○くんが大好きだよぅ……)

つかさは布団の中で小さく身体を丸め、涙を流しながら眠りについていった。
一方、○○も眠りにつけずにいた。

(明日は面接だもんな…。相対するのが紙とペンの筆記試験より、何倍も緊張するよ…)

眠らないと、間違なく明日へ影響する。だが、そう思えば思うほど眼は覚めてしまう。

(…ヤバいぞ…)

何度か寝返りをうっていると、携帯が鳴り出した。

♪ハァ~! すっぽんすっぽんすっぽん! すっぽんすっぽんすっぽん! すっぽ…♪

「白石やかましいっ!」

携帯を乱暴に取り、着信を確認してメールを開く。

「…つかささん?」

送り主はつかささんだった。


『落ち着いていこうよ』
『明日は面接だね。きっと○○くんなら大丈夫だよ。だって私信じてるもん。
面接の人も○○くんの良さが分かってくれるって。だから大丈夫。

明日は皆で応援に行くから。頑張って!

つかさ』
(つかささん…)

終始根拠のない内容だったが、それでも○○は嬉しかった。

(そうだよな…。自分を信じてやるしかないよな)

携帯を閉じると、さっきまでごちゃごちゃしていた心が、嘘のように静まっていた。

(…ありがとう、つかささん…)

夜も遅いので、返信はせずに心の中でお礼を言った。

(…眠ろう…、全ては明日頑張るしかないんだからな)

布団に入り目を閉じる。応援してくれたつかさの優しい笑顔を想いながら、○○は眠りへと落ちていった。
翌日、○○が受験する大学の面接会場前に5人の姿があった。

「○○くんよく眠れた?」
「うん、昨日は早めにベッドに入ったから、寝起きもスッキリだよ」
「えぇ!? じゃあ昨日の深夜アニメ観てないの?」
「観る訳ないだろ…」
「○○くんをアンタと一緒にするな!」
「むぅ~、昨日はあんなに萌える展開だったのに…」
「でも、面接前日に夜更かしはよろしくないですし…。深夜アニメなら録画しておけますから…」

みゆきさんが控え目に正論をぶつける。

「旬なアニメはリアルタイムで観ないとダメなんだよ」
「アンタはそんなに○○くんを落としたいの?」
「うぐっ…」

かがみさんに突っ込まれ、返す言葉もなくこなたさんが押し黙る。

「あはは、大丈夫だよ。アニメ自体は録画してるからさ。面接後の楽しみにしとくよ」

3人の掛け合いを眺めていると、一人静かな人がいる事に気付いた。
(…つかささん…?)

一人俯いて何も喋っていない。どうしたのかと声を掛けようとしたが、いつの間にか面接の時間が押し迫っていた。

「あ、もうこんな時間! ほら、○○くん早く行って!」
「遅刻はマズいよ! 早く行きたまへ~!」
「落ち着いて下さいね!」

皆が思い思いに声を掛けてくれる。
つかささんはまだ押し黙ったままだった。時間が時間なので、急いで会場へ入ろうとした時。

「…○○くん!」
「つかささん?」
「…私…、ゆきちゃんやお姉ちゃんみたいに頭良くないから…、何言えばいいか分かんないけど…」
「―――頑張って!」

まっすぐに俺を見つめながら応援してくれる。

「…うん! ありがとう!」

皆の応援を背に、○○は会場へと入って行った。
「行ったわね」
「そうだね、後は彼次第だよ」
「はい、そうですね。…では、私達は行きましょうか」
「そうね。つかさ、行くわよ」

かがみが声を掛けるが、つかさは動こうとしない。

「つかさ? 行くわよ?」
「…ううん、ここで待ってる」
「つかささん、流石にこの季節長時間外に居ると、風邪をひいてしまいますよ? せめてどこか屋内に…」
「大丈夫だよ。カイロを20個持ってきたから」
「アンタ家中のカイロを持ってきたの?」

つかさは会場をじっと見つめて、梃子でも動く気配はない。

「…行こう、皆」
「そうね…。まったく…、つかさは乙女なんだから…」
「…少し…羨ましいですけどね…」

3人はつかさをそのままに、それぞれの帰路に着いた。
○○は会場の控え室で座っていた。ついさっき自分の前の人が呼ばれ、次はいよいよ自分だ。

(大丈夫…、大丈夫…)

上着を脱ぎ身体をほぐす。軽くストレッチして再び上着を着ると、ポケットに何か入っているのが分かった。

(…?)

取り出して見てみると、ポケットに入れたままの携帯だった。

(やばっ。電源切らないと)

慌てて切ろうとするが、その前にメールを開く。

(つかささん…)

昨日の夜に来たつかささんからのメールを見る。

(他にも応援のメールは貰ったけど…)
(何でつかささんのメールが一番嬉しかったんだろう…)

そこまで考えて頭を振る。
(…分かりきった事だろ…)
(俺は…、つかささんが好きなんだ)
(つかささんの優しさが…、つかささんの笑顔が…)
(いや、どこが好きかなんて事じゃない…)
(つかささんだから好きなんだ…)
(同じ笑顔でも…、同じくらい優しくても…)
(…きっと俺は、他の誰でもない、つかささんを選ぶから…)

携帯を閉じ、電源を切って前を見る。

(ありがとう…、つかささん。俺を応援してくれて…)

控え室のドアが開き、○○の名前が呼ばれる。

「はいっ」

上着を片手に立ち上がる。

(よし、行くか!)

心で気合いを入れて、○○は控え室を出て行った。
(…………)

会場の外にいるつかさは手の平を合わせてじっとしていた。

「つかささん?」

名前を呼ばれハッと顔を上げると、自分の前に○○が立っていた。

「○○くん! 面接はどうしたの? 何でここにいるの?」
「いや、今終わったんだよ。つかささんこそどうしてここに?」

そう聞かれたつかさは、鼻の頭を赤くしながら笑う。

「え? …えへへ、ここで○○くんを応援してたの。『頑張って~』って」
「ここで? …ずっと!?」
「…うん、…だって私…、これくらいしか…してあげられないから…」

そう言いながら、つかさは鼻と手先を赤くして震えていた。

「それより、面接はどうだったの?大丈夫だった?」
「もちろんバッチリだったよ! それより、この寒空の中ずっとここに居たの? 風邪ひいちゃうじゃないか!」
「大丈夫だよ~。カイロ20個持って来たし」

得意そうに言いながら、ポケットからカイロを取り出す。

「一個しか開けてないの? 他も開けないとダメじゃないか!?」
「あれ? …そっか、応援するのに夢中だったんだ。…どうりで寒いんだね」
えへへ…、と頬を掻きながら笑うつかさを見ていると、○○は胸が苦しくなってくる。

「ゴメンよ、つかささん…。ほら、手を貸して」
「? …背中でも痒いの?」

○○は困ったような笑顔をして、つかさの両手を包む様にギュッと握る。

「え? えぇ?」
「手が凄く冷たくなってるよ…、こんなになるまでゴメンね…」
「う…ううん、大丈夫だよ。それに…、私が出来るのは、やっぱりこれくらいだから…」
「そんな事ないよ。だって、つかささんからのメールのおかげで落ち着いて面接出来たんだからさ」
「本当…? えへへ、私でも支えになれたんだ…。嬉しいな…」
「……違うよ」
「え?」
「つかささん『でも』支えになれたんじゃない」
「つかささん『だから』支えになれたんだよ」
「つかささんからのメールが無かったら…、きっと面接は失敗してたと思うから」

○○がそう言うと、つかささんは不思議そうな顔をしている。

「そんなに良い文章だった? 私あんまり現国の成績良くないよ」
つかさの言葉を聞いて○○は苦笑いする。

(やっぱりつかささんだな…。あの時と同じく、鈍いと言うか何というか…)

ハッキリ言わないと伝わらない事が分かると、○○は覚悟を決める。

「つかささん。聞いてくれるかな? 今から大切な事を言うから」

そう○○が言うと、つかさの顔に緊張が走る。

「何? どうしたの?」
「俺さ、好きな人がいるんだ」

握っていた手から、緊張が伝わる。だが、つかささんの顔を見ると笑顔のまま俺を見ていた。

「受験も…、まぁ合格した訳じゃないけど一段落したし、想いを伝えようと思うんだ」
「そ、そうなんだー。私応援するよ!」
「ホントに? 告白して上手くいくかな?」
「…も、もちろん…だよ。だって…」

(…だって私なら…)

だが、つかさはそう言えなかった。

(…きっと3人の内の誰かかなんだよね…)
(じゃあ、やっぱり応援しなきゃ)
(…だって、皆私の大切な友達だもん…)

「きっと上手くいくよ! だって○○くんこんなに素敵なんだもん…」

語尾が震えそうになりながら、つかさは笑顔で答える。
「そう…かな。じゃあ告白するよ。…つかささん、俺は…、貴女が好きです」
「…え? …つかさんって? 周りに誰もいないよ?」

(…わざとか…? わざとなのか?? …くそっ…こうなれば…っ!)



グイッ

つかさは突然前に引かれ、つんのめりながら○○の胸に鼻をぶつける。

「い、痛いよ…。どうしたの? ……あれ? 私抱き締められてる…」

慌てた様につかさは○○の顔を見る。

「はわわわわ! 私抱き締められてるよ!? ゴメンね、すぐ離れるから」
「イヤだ、離さないよ。ってか俺が抱き締めてるからね。つかささんが謝る事じゃないよ」
「だ、だって、○○くんの好きな『つかさん』に悪いよ…」

○○は抱き締める手を緩めずに、つかさの耳元に口を寄せる。

「よく聞いてね? …俺は、柊つかささんが好きなんだよ」
「他の誰でもない、今俺の腕の中にいる人が、大好きなんだ」




耳元で囁かれる言葉を、つかさはパニックになりながら聞いていた。
(あれ? あれ?? え~っと、○○くんはこなちゃん達に好かれてて、
その○○くんは『つかさん』が好きで、今は『つかささん』が好きで…)
(……私が好き…?)

考える内に落ち着いてきた思考が、結論に至る事で再び沸騰した。

「えぇ!? 私ぃ~!?」

つかささんは目を見開きながら、驚きの声を上げる。

「ダ、ダメだよ! 私なんか。…だって、きっと他に○○くんを好きな娘が…」
「…もしかして…、みゆきさんとか…?」

見開いていた目がさらに見開く。

「知ってたの!?」
「…うん、あとこなたさんとかがみさんも…ね」
「何で知ってるの? ○○くん心が読めるの?」
「そんな訳ないよ…。しばらく前に告白されたんだ」

○○の話を聞くと、みゆき→こなた→かがみの順で告白されたようだ。

「何で○○くんは…付き合わなかったの? 皆○○くんの事が大好きなんだよ!」
「…うん、告白された時に感じたよ。こんなに好かれてるんだ…って」
「でもね、俺にはもう好きな人がいたから。それなのに告白を受け入れるなんて出来ないよ」
「それが私なの…? だけど、私なんか何もないんだよ?」
「胸だって小さいし、運動神経だって鈍いし…、ツンデレでもないんだよ?」
「最後のが何で必要なのか分からないけど…、そんなのは人を好きになる理由にならないよ」
「今のつかささんより、胸が大きかったり小さかったりしても、俺は何も変らない」
「柊つかさって『人』が、…俺は好きなんだ」
「…つかささんは、俺って『人』は嫌いかな…?」




つかさは自分の心が満たされていくのを感じ、気がつくとボロボロと大粒の涙をこぼしていた。

「…大好き…、大好きだよぉ…」

そう言いながら、つかさは○○にしがみつくように、手を背中に回す。

「で、でもぉ…、わ…私でいいのぉ…? 私…、私ぃ…」

泣きながら○○の顔を見つめる。○○は優しく涙を拭きながら、つかさに声を掛ける。

「つかささんが良いんだよ。他の誰よりも、つかささんが大好きなんだ」
「…うん…、うん…。私も大好き…! 誰よりも…大好きだよ…」
凍えた身体を温めるように、優しく、優しく抱き締める。

「うっ…、うぅ…」
「つかささん…、もう泣かないで…?」
「うん…、分かってるんだけど…。止まらないよぉ…」

頭を撫でていた○○は、そっとつかさの頬に手を添える。

「じゃあ、涙が止まるおまじないしてあげるよ。…目を閉じて…?」
「…う…、うん…」

止まらない涙を拭いながら、つかささんは目を閉じる。




…チュッ…

唇に柔らかい何かを感じた。それが何か分からずに、つかさはゆっくり目を開ける。

「…? 今のは何? ちょっと気持ち良かったけど…」
「おまじないだよ。恥ずかしいから見られたくないおまじないだけどね」
「気になるよぉ~。ちゃんと見せて。…私には見せるの嫌なの…?」

(…そんな目で見られたら…、ダメなんて言えないよ…)

「じゃあ、見せてあげるね…?」
「うん、何?」
目に力を入れて、しっかりと○○を見る。
○○は深呼吸を一つすると、突然彼の顔がドアップになる。
暫くして、自分がキスされていると初めて分かった。

「ぅん…、ん…」

少し長めにキスをし、お互いの顔が離れる。
二人の吐息が、白く混ざり合いながら消えていく。

「…キス…しちゃった…の?」
「涙の止まるおまじないだよ。…止まったよね?」
「う…、うん…。だけど…、嬉しくてまた泣きそうだよぅ…」
「じゃあ…、もう一回する?」
「えぇ!? …うん…、して欲しいな…」

目を閉じて○○に顔を向ける。想いが通じてから3回目のキス。
初めてお互いが意識して望んだキスをした。

…チュッ…

唇から○○の想いが全身に広がる。

(こんなに愛してくれるんだ…。…○○くんを好きになって良かった…)

「…ねぇ、○○くん…」
「うん?」
「お願いがあるんだけどね…」
「何かな?」
「…つかさって、呼んで欲しいの…。『つかささん』だと…、他人行儀で嫌だから…」
「うん、良いよ…。つかさ、…愛してるよ」

その言葉を聞き、つかさは嬉しそうに○○の胸にギュッと顔を埋める。
それに合わせて、○○はつかさを強く抱き締める。
小柄なつかさが、○○の腕の中にスッポリ入った。

「…私…、こうやってギュッてされるの好き…」
「これからも…、たくさんギュッてしてね」
「うん、もちろんだよ。…ずっと、いつでも抱き締めてあげる」

○○は言葉でないと伝わらない事を、つかさは温もりで想いが伝わる事を知り、二人は改めて想いを伝える大切さを感じる。

「つかさ…、ずっと…一緒にいてくれよ?」

それに答えるように、つかさは精一杯想いを込めて抱き締める。



この温もりは途絶える事はないだろう。つかさは○○に、○○はつかさに想いを抱いている限り。
そして二人は離れる事はないだろう。二人が共に紡ぐ想いがある限り。

「○○くん…」

温もりで○○に想いを告げながら、顔を上げてつかさは言葉を告げる。今を繋げる想いを、未来へと紡ぐ想いを。




「大好きだよ!」

FIN

おまけ

「大好きだよ!」


一つの影となっている○○とつかさを、遠くから見つめる影があった。

「ネタキターーーーー(゚∀゚)ーーーーーーー! キタコレ! キタコレ!」
「ひより落ち着くネ!」

学校帰りのパティとひよりだった。

「まさかネタ探しに彷徨っていたら、生告白シーンを見られるなんて…!」
「遠出したカイがアリマシタネ!」
「さっそく帰ってプロットを書くよ!」

そう言いながら振り向くと、異様な空気がそこにあった。

「…ご機嫌ね…、お二人とも…」
「ホントにね~。…良いネタでもあった? …ひよりん…?」
「うふふ…」

そこには、髪が自然では有り得ない揺らめき方をして、仁王立ちしたこなたとかがみとみゆきが立っていた。

「人の妹の…、それも告白シーンをネタにしようとは…ね」
「ひよりん…、これはシャレにならないよ~?」
「うふふ…、うふふふふ…」

3人は口調こそ軽い(かがみはマジだが)が、目がカケラも笑っていなかった。

「お、お三方! 居られたッスか…?」
「ひ…、ひよりんマズいネ…」 
 
闘気とも殺気とも思えるオーラを放ちながら、3人はひより達を取り囲む。

「今メモったの…、渡しなさい?」
「…な、何の事ッスか…?」
「…遺書を書く方が宜しいですか?」
「ひぃっ…。こ、これッス!」

渡されたメモをこなたは粉々に裂く。

「勘違いしないでよ!? ○○くんが書かれるのが嫌なんじゃないからね? つかさを書かれるのがイヤなんだから!」

聞いてもいない事を、かがみが弁解する。

「ツンデレ全開だねかがみん。だけど、本当にそうだからね」
「はい、私達フラれちゃいましたからね」
「そ…、そうなんッスか?」
「…まぁ…、ね。○○くんが他の女の子を好きってなら諦めないけど…」
「つかささんを好き…、という事なら仕方ありません」
「そうそう。だって、二人とも大切な友達だからね」
「たまにはアンタもまともな思考をするのね」 
 
「愛人の座は諦めてないけどね」
「オイ!」
「い~じゃんかがみん~。私達ならつかさも許してくれるって」
「いずれ正妻の座を奪い取るって訳ですね…」
「みゆき、鬼気を出さない! 絶対ダメだからね! つかさが悲しむでしょ!」
「分かってるって。冗談だよかがみん」

チッチッチ…、と口の前で指を振る。
「…チッ…」

メガネの方から舌打ちが聞こえたが、全員スルーした。触れる勇気がない。

「だから、アンタ達も絶対同人誌なんか書いちゃダメよ! …もしどこかで見掛けたら…」


「「「覚悟はいいでしょうね!?」」」


「…はい…」
「ワカリマシタ…」


「さあ、帰るわよ」
「あの二人はあのままにしておきましょう。…お邪魔したら悪いですから」

帰る道中で、3人はひよりの目が妖しく光ったのを知らなかった。

数日後、ひよりとパティが記憶を頼りに『Tの純愛』という18禁同人誌を創り、
それを知った3人が即売会に乗り込んで全ての本を燃やしたのは、また別のお話。

FIN