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「どうしよう…。あぁ~、どうしたらいいの~」

 

ひよりんこと田村ひよりは、自室のベッドで頭を抱えて悩んでいた。
明日はパティとこうちゃん先輩に加え、○○先輩も一緒に買い物ついでに遊びに行く約束をしている日なのだ。

「せっかく○○先輩と(二人きりではないにしても)デートなのに…」
「何で今日に限って可愛い服が全部ナフタレン臭いッスか~!」

普段から同人活動まっしぐらなひよりは、部屋ではどてらやジャージを愛用している。
平日はもっぱら制服なので、余所行き用の服は長い間タンスにしまわれていたのだ。
そしてつい先日、なかなか着ないタンスの服に虫が付かないよう、母が防虫剤を入れ替えたばかりなのである。

「なんてタイミングの悪さ…orz」

このままでは制服で行くしかなくなる。

(せめて休みの日ぐらい、○○先輩の前では可愛くいたかったのに…)

ひよりは美人ではないかも知れないが、決して不細工と言われる程でもない。
が、パティやみゆきといった、所謂トップクラスに囲まれているせいで、自分に対して自信が持てなくなっていたのだ。

「仕方ないか…。制服で行こう…」

諦めを込めた溜め息を吐き、メガネを机に置いてそのままベッドに俯せになる。

(…先輩…)

桜藤祭が終わってから、ひよりは○○の事を意識するようになっていた。

(…何でだろ…? 何でずっと気になっちゃってるんだろ…?)

当然ながら、ひよりは時間のループを知らない。
そのループの中で○○は、一度ひよりに想いを告げている。
だが、例のごとく時間がループした為に、ひよりの中に淡い想いだけが残ったのだ。

(確かにいろいろお世話になってるけど…)
(好きになる要素がなかった訳じゃないけど…)

○○の事を思い返しながら、ひよりは毛布をかぶる。

(…ううん、違う。何で好きになったかで戸惑ってるんじゃない…)
(先輩を…、人を好きになる事が、こんなに切ないなんて知らなかったんだ…、私…)

寝返りをうち、まどろんでいく事を自覚しながら、○○の顔を頭に描いていく。

(…先輩は私の事をどう思ってるのかな…)

明日に一抹の不安と期待を抱えつつ、ひよりは深い眠りへと落ちていった。

翌日の駅前。そこにはラフな格好をしたパティ、こうと○○がいた。

「いや~、先輩すみません! 今ちょうど個人と漫研とで締切被っちゃいまして」
「分かってるよ。それもう100回くらい聞いた」
「あはは~、そうでしたっけ?」
「その続きは『修羅場なもんですから、ひよりんは当分貸せません! 漫研のが終われば貸すんですけどね~』…だろ?」
「オー! 流石○○! 記憶力バツグンネ!」

パトリシアさんが親指をグッと立てて笑う。

「だから100回も聞けば覚えるって。…それよりも、田村さんには言ってないよね?」
「先輩がひよりんにぞっこ…」
「わぁ! こんなとこで大声で言うなよ!」
「あちゃ、すいません。でも大丈夫ですよ。私達は言ってないですし、ひよりんも気付いてないみたいですから」
「オージョーギワガワルイネ!」
「それ用途違う。まぁバレてないなら良いけどね」
「大丈夫ですって! 先輩がこうして居るのも、漫研の手伝いでかたが付きますから」
「ホントハひよりんト早ク遊ビタイカラ手伝ッテルンデスネ?」
「うぐっ…」

言葉に詰まる俺をパティさんと八坂さんがからかっていると、田村さんが制服姿でやって来た。

「すいません、お待たせしたっす…」
「ひよりん遅いよ! …って、何で制服なのさ?」
「こうちゃん先輩…、乙女にはいろいろあるっすよ…」
「腐ッテマスケドネー」
「パティうっさい。っつかここに居る4人は皆腐ってるじゃん」
「俺を数に入れるんじゃない」
「先輩冷たい~。一緒に腐りましょうよ~」
「何だ腐るって…。ほら田村さんも来たし、買い物に行こうよ」
「そうですね。では近くの画材屋さんに行きましょうか」

画材屋に行く道中、ひよりは物思いに耽っていた。

(皆オシャレだな~…)
(こうちゃん先輩は白を基調にして赤をあしらった服か…。先輩スタイル良いから赤が良く映えて似合うなぁ…)
(パティもオシャレにしてるし、少し胸元とか大胆過ぎない? って感じ…)
(○○先輩もカッコいい~。私服だと凄い大人びて見えるんだ…)
(それなのに私は制服って…。何だか一人浮いてる感じ…)
(…来なきゃ…良かったかな…)

ハァッ…。と溜め息をもらしながら歩いていると、突然○○に声を掛けられた。

「どうしたの? 何か元気ないみたいだけど」
「うひゃあ! せ、先輩? ど、どうしたんですか?」
「うん? いや、どうしたって聞かれたら…、田村さんが元気無さそうだなーと思った、かな?」
「え? あ、いや、何でも無いッスよ! ネタを考えてただけっす」
「そう? でも歩きながら考えると危ないよ」
「そうなんですよね。この前も歩きながら考えてたら、電柱におでこぶつけちゃいましたから」
「うわ…、痛そう…。おでこにぶつけたって、この辺り?」

そう言いながら、○○はひよりのおでこを優しく触る。

瞬間、ひよりは自分の顔が真っ赤になるのを感じた。

(はひゃ!? せ、せせせ先輩の手が!)

○○としては、特に凄い事をしている認識は無いが、
免疫のないひよりには赤面するのに充分だった。

「ん? もしかして熱があるんじゃない? 顔赤いし、おでこも熱いよ?」
「そ、そうですか? じ、じゃあ私、今日はお先に失礼しますね! こうちゃん先輩、パティごめんなさい! 私帰るっす~!」

そう言いながらひよりは全力で来た道を逆走していった。
恥ずかしかった。地味な自分があの中にいる事が。
何より○○の隣りにいる事が恥ずかしかった。

(あんなにカッコいい人の隣りに私がいちゃダメっ! こんな地味な私が…)

確実に恋愛フィルターがかかっているが、ひよりにはどんな男性よりも素敵に見えていた。

全力で走ったせいか、部屋に辿り着くと、その場にへたりこんでしまった。

少し落ち着いてくると、どうしようもなく胸が切なくなってきた。

どうして自分は地味なんだろう
どうしてもっと綺麗じゃないんだろう
どうしてスタイルが良くないんだろう

気付くとひよりは泣いていた。嗚咽を噛み殺しながら、ひよりは一人で泣いていた。

(○○先輩…、…先輩ぃ…)

胸の奥から込み上げて来る切なさを抱え、ひよりは一人で泣き続けた。







一方その頃の○○達は、喫茶店に3人でいた。ただし、○○は椅子の上に正座させられている。

「○○先輩…」

恐ろしくドスの効いた声で八坂こうが呟く。

「ひよりんに一体何をしたんですか!」
「オージョーギワガワルイネ!」
「だから用途が違う。…俺は何もしてないよ! おでこをぶつけたって言ってたから、その…、ちょっとおでこ撫でたけど…」
「…本当ですか…?」
「ホントだよ! …やっぱりイヤだったのかな…」

○○から話を聞いたこうは考えた。

(これが本当だとしたら、イヤと言うより恥ずかしかった可能性が高いか…)
(ひよりんは自分を過小評価するところがあるから…)
(普段と変らない自分と、普段と違うあたし達を比べたのかも…)
(……知らない間に気合い入っちゃってたかな…)

こうは自分とパティの格好を見る。決して派手では無いが、自分達の魅力を引き出す格好をしている。

(…諦めたつもりだったんだけどね…。ゴメンよひよりん)

心の中で謝りつつ、こうは口を開く。

「こうなったら取るべき方法は一つです! 先輩は今からひよりんの家へダッシュです!」
「え! いや、しかし女の子の家に突然押しかけるのは…」
「先輩!!」

テーブルを叩き、こうはいつもより真剣なまなざしで○○を見る。

「今行かないと、ひよりんを失う事になりますよ! 良いんですか!?」

脅しでも何でもなかった。こうはひよりの性格上、今日がこのまま過ぎてしまったら○○を避ける可能性がある事を知っていた。

「……っ!」

言葉を無くす○○に、こうは続けて言う。

「ひよりんが好きなんじゃないですか? 大切なんじゃないですか!?」
「大切だ! 誰よりも大切だよ!」

弾かれたように立ち上がり、こうの問い掛けに答える。その眼は、迷いも曇りもなかった。

「…行ってあげて下さい。きっと待ってますから」
「分かった。ありがとう、二人とも」

伝票を掴み、颯爽と喫茶店を後にする○○を、こうとパティは黙って見つめていた。

どれくらい泣いただろうか。気が付けば部屋は暗くなっていた。

(…随分泣いてたっすね…)

涙が枯れ果てるかと思う程泣いていたが、○○の顔を思い浮かべると、また一筋の雫が流れた。

(誰かを好きになるのって、こんなに辛かったんだ…)
(こんな想いなら…、いっそ無い方が…)

♪ずっと探してたんだ~♪運命の人ってやつを~♪

携帯の着うたが鳴り始める。○○用に設定した曲「かおりんのテーマ」だ。

(…○○先輩…?)

慌てて携帯を取るが、泣き続けていた為、喉を2、3回鳴らしてから電話に出た。

「…もしもし…?」
『あ、田村さん。俺だよ、○○です』
「はい、先輩どうしたんですか?」
『いや、田村さん、様子はどうかなって思ってさ。今大丈夫?』
「…はい、心配をおかけしましたっす」
『そう、良かった。それでね、少し話したい事があるんだけど、良いかな?』
「へ…? 別に大丈夫ですけど…。何ですか?」
『うん、じゃあちょっと失礼して…』

(ピンポ~ン)

(…まさか…)

ドタドタドタドタ! …カチャッ

「やあ」
「…え?」

片手を上げてにこやかに挨拶する○○がそこにいた。

「…何してるっすか?」
「田村さんに会いに来たんだよ」

俺がそう言うと、田村さんは嬉しそうな、悲しそうな、どちらともつかない顔をした。

「…立ち話もなんですから…、どうぞ」

最初より幾分沈んだ感じがした。

「? …うん、じゃあお邪魔するね」

部屋に通された後、田村さんはお茶を入れて来ると言って部屋から出て行った。

(何だか元気無かったな…)

そう考えて、頭を振る。

(俺まで沈んでどうする!)

気持ちを切替え部屋を見渡す。割りと和風な感じの部屋だ。

(…同人誌が山程入れてある棚があるな…)
(自分の書いたのと、他のサークルのやつかな?)

さすがに物色するわけにはいかず、大人しく座っていると、田村さんがお茶を2つ持って戻ってきた。

「あ、ありがとうね。熱は大丈夫?」
「はい、ご心配をおかけしましたっす」

どこかよそよそしい。

(さっきから目線も合わせてくれない…。八坂さん達に言われて来たけど…)
(…どうすりゃ良いんだ? あれか? 玉砕してこいって事なのか?)

八坂さんに言われた事を思い返す。

『今行かないと、ひよりんを失う事になりますよ! 良いんですか!?』

(…失うなんて絶対にイヤだ。…だけど、どうしすればいいのか全然分かんないよ…)

「先輩…、何かお話があったんじゃないんですか?」
「あ~、うん。そうなんだけど…。ほら、熱があったみたいだから心配で…」

そう言った途端、田村さんの顔が更に曇った。

「あ~、うん。そうなんだけど…。ほら、熱があったみたいだから心配で…」

ひよりは複雑だった。

(先輩が来てくれたのは嬉しいッスけど…)
(先輩はどうゆうつもりで来たんだろう…)

自分の好きな人が心配してくれる。それだけで嬉しいはずだが、ひよりが喜べない理由はそこにあった。
『自分に好意を抱いてくれているから』という発想は、マイナス全開の自信の無さから、最初から選択肢になかった。

(後輩に対する優しさだったら…、私…)

「…田村さん? もしかして…泣いてたの?」

声にハッとして顔を上げると、すぐ目の前に○○の顔があった。

(……っ!)

何でこんなに簡単に踏み込んでくるのか。ある意味無神経とも言えるこの行動に、ひよりの胸の奥にあったものが溢れ出してしまう。

「…何で…、何でなんですか?」
「後輩だから気に掛けてるんですか?」
「知り合いだから優しいんですか?」
「…私は…、私はそんな優しさならいらないです!」
「だって…! だって私は…! 先輩が好きなんですから!」

「だって…! だって私は…! 先輩が好きなんですから!」

一気に捲し立てる田村さんの言葉を聞いて、○○は愕然とした。
同時に自分の鈍さと無神経さを呪った。
何で自分は気付けなかったのか。
どうして田村さんをここまで傷つけてしまったのか。

「…ゴメンよ…」

自然と口から出たのは謝罪の言葉だった。心の底から出た言葉、大切な相手を傷付けた事に対する言葉だった。

「…分かってるッス…」

その言葉を聞いたひよりは、拒絶の言葉だと勘違いしてしまう。

「え? いや、違うんだよ!田村さんが嫌いとかじゃなくて、むしろ…」
「…いいッス…。私なんか地味ですし…、胸なんかペチャンコだし…、おでこ広いし…」
「好かれる訳がないのは分かってるッス…」

慌てて○○が否定するが、ひよりはただ「いいッス…」を繰り返すだけである。




「ひよりっ!」

自分が何をされたか理解するのに幾らかの時間を必要とした。
とてもテンポの早い何かが聞こえる。
自分の顔が、何かに押しつけられている。
暫くして、自分が○○の腕に抱き締めている事に初めて気付いた。

「…せ、先輩…?」
「…しっ。静かに…」
「…………」
「聞こえる? 俺の鼓動…」
「…はい」
「凄いドキドキしてるでしょ?」
「緊張してるんだよ。…大切な人を抱き締めてるから」
「…え…?」
顔を動かし○○を見上げる。
「田村さんがちゃんと言ってくれたのに、俺が言わない訳にはいかないよね」
「よく聞いててくれよ? …俺は、田村さんが好きだ」

あまりにも衝撃的な事が続いたため、ひよりは半ば放心して○○の顔を見ていた。
「…田村さん…?」
「ぅひゃい! な、何ですか?」
慌てるひよりを○○は優しい目で見つめ、抱き締めていた手をさらに大きく、優しい手つきで包む。
「もう一度言うよ。好きだ…、大好きだよ…田村さん…」
ひよりは夢を見ているのではないかと疑った。
(なんだかボ~ッとするし…、夢なんだ…)
抱き締められている感覚を夢だと勘違いし、夢ならば何でも聞いてしまえ、と口を開く。

「でも…、先輩さっき『ゴメン』って…」
「それは、自分が意図して無いとは言え、大切な人を傷付けてたんだよ? 謝らないとダメだろ?」
「だけど…、私なんか地味だし…。パティやこうちゃん先輩に比べてスタイルだって…」
「俺には、どんな女の子より可愛いく見える」
「それに覚えてる? 劇の代役をやる時、沢山資料を用意してくれたでしょ?」
(…あれ? でも代役って、かがみ先輩足挫いてなかったような…。…でも確かにそんな事もあったような…?)
「あれが嬉しかったんだよ。不安で不安で仕方の無かった時に、誰より親身になって応援してくれたから」

「…な、何だか恥ずかしいッスね…。今の格好も充分恥ずかしいッスけど…」
「あはは、ゴメンね? でも、もう少しこのままでもいいかな?」
「…別に構わないッスけど…」

ひよりはまだ○○の気持ちに半信半疑のようだった。少し考えた○○は、ひよりのおでこを撫でながら声を掛ける。

「じゃあ一つ証拠をあげるよ」
「…証拠…?」

そう呟いた時、ひよりはあごを持たれ、唇を○○の唇で塞がれていた。

「むぅ…っ!?」

少し長めに唇を吸われ、その後何度か啄むようなキスを終えて、二人の顔が離れる。

「……はぁっ……」
「これが証拠じゃ…、ダメかな…?」
「…い、いきなり過ぎるっすよ…。…先輩…、ドSっすね…」
「そうかな…? こんな俺はイヤ?」
「…好きッス。Sなところも含めて、全部…」
「そう、良かった」

にっこりと優しく微笑む○○の顔をひよりは見つめる。
この時初めて『夢にしては長い』と思った。

「あれ…?」
「どうしたの? 田村さん」「…先輩、ちょっと私の頬をつねって欲しいッス」
「え? いくら俺がSっぽいからって、田村さんがMにならなくても…」
「ち、違うッスよ! ちょっとで良いんでお願いです」
「う~ん、じゃあ抓るよ?」

優しく、軽い痛みを覚えるくらいで、頬を抓られる。

「…痛い…」

もちろん、のたうち回る程では無いにしろ、痛みを感じたのは確かである。

「じゃあ…これ、夢じゃない…?」
「当たり前だよ。ファーストキスを夢オチにされたくないな」





「えぇぇぇ!」
「ど、どうしたの?」
「夢じゃないッスか? だ、だってさっき先輩、私の事好きって…」
「? そうだよ?」

さらりと肯定する○○を驚きの目で見る。よくよく自分の体勢を確認すると、夢だと思っていた『抱き締められている』体勢になっている。

「じゃ、じゃあさっきの告白も…、き、きき、キスも…」
「夢なんかじゃない。ちゃんとした現実だよ。…田村さんは、夢の方が…、よかったかな…?」
「……そんな事…ないっす…」

恥ずかしそうに顔を伏せながら、抱き締められていた体勢から、ひよりが腕を○○の背中に回し、『抱き合う』体勢になる。

「だって…私も…、先輩が好きッスから…」

ようやく通じた淡い想い。一時はこの想いのせいで、胸が引き裂かれそうな程切なくなった。
『こんな想いをするくらいなら…』と思ってしまう事もあった。
だけど、今は違う。この想いのお陰で、こんなにも満ち足りた気持ちになれた。
この想いがあるから、今、愛される幸せを感じられた。
○○からの想いを温もりと共に感じ、ひよりは知らず涙を流していた。

(嬉しい涙って、こんなに気持ち良いんだ…。ありがとう、先輩…。私を選んでくれて…)

「先輩…」
「何?」
「これは夢じゃないッスよね?」
「まだ言ってるの? そんなに俺が信じられないかな?」
「いえ! 違うッス! ただ、夢じゃないなら一つお願いが…」
「ん?」
「ひより…って呼んで欲しいっす。さっき…、呼んでくれましたよね…?」
「ん? あぁ、勢いでつい…ね」
「呼んで欲しいっす」
「いやしかし、いきなりって何か恥ずかしいだろ?」
「呼ぶっす」
「いや…、だからね…?」

「呼ばないなら、次の同人誌は○○先輩と白石先輩の18禁を…」
「愛してるよ、ひより」
「……はい、私も…愛してます…」
「…まったく…。まさか無理矢理呼ばせるとはね…。こうなったらいつでも名前で呼ぶからな!」
「の…、望むところっす!」

とても恋人の会話に聞こえず、二人は同時に笑い出す。

「あはははっ! これから先も、こうして一緒に笑えたらいいね」
「もちろんッス! …でも、浮気はしないで下さいッスね…」
「あぁ、もちろんだよ。じゃあ…、誓いのキスをしようか?」
「あぅ…、またキスっすか? …嬉しいからいいっすけど…」

目を閉じ○○に顔を向ける。少し待っていると、おでこに軟らかい感触が感じられた。

「…おでこ?」
「うん、あんまり可愛かったからつい…」
「でこが可愛いって…。何か複雑っす」

お互い顔を見合わせクスッと笑い合う。
きっとこれから先もずっとこうだろう。何気ない会話でお互い笑い合える。
そんな素敵な二人でいられるよう、ひよりは想いを込めて告げた。

「○○さん…」



「大好きッス!」

FIN
 

 

おまけ

 

カランカランカラン…
パティとこうは、○○が出て行った扉を眺めていた。
「あとは先輩が上手くやるだけね」
「…………」
「…? パティ?」
「オージョーギワガワルイネ…」
「だからそれは用途が…」
そこまで言って、こうは口をつむぐ。パティの目から大粒の涙が溢れていたからだ。
「…パティ…」
「…ひよりんハワタシノベストフレンドデス…」
「ダカラ…ひよりん二ハ笑ッテイテ欲シカッタンデス…」
「○○ナラキットひよりヲ幸セニスルッテワカッテル…」
「ダケド…、ソウ想エバ想ウ程、胸ガ苦シクナッテ…」
こうには何となく分かっていた。パティも○○に好意を寄せていた事。
そして、ひよりんの為に一生懸命その想いを押さえていた事も。
嗚咽を堪えるパティの頭を優しく抱え、落ち着かせるように頭をなでる。
「うん…、辛かったね…、パティ…」
その一言で押さえていたものが決壊したのか、一気に声を上げて泣き出した。
「今は泣いちゃいなよ。無理しないで、全部出しな、ね?」
「ウッ…ウゥ…、ウゥァァァァァァン!」
(○○先輩…、可愛い後輩二人の苦悩と涙の分は、きっちりお返ししてもらいますからね!)
(…ついでにアタシの分もね)
こうは泣きじゃくるパティをなだめつつ、妖しく目を光らせるのだった。
後日、こうとパティは顔面にシューズとビンタの跡をつけた○○に、ケーキバイキング5万円分奢ってもらう事になるのだが、それはまた別のお話。

FIN