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俺と岩崎さんが付き合うようになって既に1年が経っている。
困難も多くあったが雨が降って地固まるだろうか、付き合いだした頃より仲が良いと思う。
それはきっと向こうも同じように感じているはずだ。
これからもきっとうまくやっていける。
自惚れなどではなくそう思っていた。
だから岩崎さんから告げられた言葉に俺は耳を疑った。

「親の転勤で引越し・・・?」


  ~決意~


「明日会えますか?」

そう聞いてきたのは岩崎さんだった。
特に用事もなく、俺は会えると即答した。
考えてみれば向こうから会えるか聞いてくるのは珍しい。
だが、たまにはそんな日もあるだろう、そう思い今日を迎えた。
そして告げられた言葉が『引越し』だった。

「ちょっと待ってよ!今までお父さんは単身赴任だったんでしょ?何で今更・・・」
「・・・・・・」

状況を整理できない。
今までだって父親とは離れて暮らしてるのに何故今更?

 

「すみません・・・。海外なんです・・・、転勤先が・・・」
「海外?」
「お父さんは私とお母さんの2人を日本に残していくのが心配だって・・・」
「そんな勝手な・・・!」
「今までは国内だったから一ヶ月に一回は様子を見に帰ってきてました。
 けど、これからはそうはいかない。なら、一緒に行けばいいと・・・」

言葉を失った。
これからもずっと一緒にいれる。
そう考えていたのに・・・。

「でも学校はどうするの!?小早川さんだって、田村さんだって・・・」
「あの2人には言いました・・・。ゆたかは泣いてました・・・。
 でも、お父さんについて行ってあげなくちゃお父さんが寂しいだろうって。
 離れてもずっと友達だよって・・・」
「そう・・・」
「学校は向こうに日本人学校があるみたいです・・・」
「・・・・・・」

胸にもやもやとしたものがある。
お父さんがそう言ってるんならしょうがないじゃないか!
岩崎さんだって納得しているんだ!
誰だって家族と一緒にいたいんだから!

「なら、しょうがないよ。小早川さんの言うとおりだ・・・」

でも、俺は行かせたくないんだろ?
はっきりとそう言えよ・・・俺。

「まぁ、10年も向こうにいるわけじゃないんだしさ」
「・・・・・・・・・」
「今は海外とだってメールできるし・・・」
「・・・・・・」
「正直、俺もサークルにバイトに忙しくなってきたし」

どうしてこんな言葉が出てくるんだろう。

「1年間もよくもった方だよ、俺たち」
「・・・え?」
「まぁ、岩崎さんも海外に行くの、嫌そうじゃないし」
「・・・どうして」
「私は納得してます、何て顔してさ!」
「・・・」
「行きたくないならもっと親に言えばよかったじゃないか!」

止まらない。
俺はこんなことを言うためにここにいるんじゃないだろ?
なのに・・・やめろよ・・・俺・・・。

「知るかよ!そんな話があったんならもっと早く俺たちにいうべきだったろ!」

これ以上はここにいられなかった。
もっとひどい言葉を言ってしまう。
席を立ち、出口へ向かう。
後ろは振り返れなかった。

「くそっ」

家に帰るなり、先ほど自分がしたことに後悔の念が沸く。
嫌われただろうな・・・きっと。
あんなひどい言葉を言った挙句、逃げ出してしまった。
俺だってあそこまでひどいことを言う気はなかったんだ。
自分自身に言い訳する様が見苦しい。

「くそっ!」
『~~♪♪』

またも毒づいている時に不快なほど軽快な音楽が鳴り響く。

「誰だよっ・・・・・・こなたさん?」

意外な人物だった。
ここ半年は連絡はとってなかっただろうか?

「・・・もしもし?」

とは言え、いきなりこの気分を切り替えられることもなく不機嫌なまま電話に出る。

「もしもし?じゃないよ!みなみちゃん引越しするんでしょ?なのに、ともや君!君は何してんのさ!」
「はぁ?」
「さっきまでみなみちゃんと話してたんでしょ?」

何故話していたのを知っているのか、はこの際気にしない。
でも、こなたさんのこの態度はさっきの会話の結果を知っているものだ。


「どうしたの?聞いてたの?」

できるだけ低いトーンで嫌味に言う。

「君はもうちょっといい人だと思ってたのにさ、さっきのあれは何さ!」
「知らないよ・・・」
「みなみちゃんがどれだけ頑張って涙を堪えて君に伝えたと思ってるのさ!
 君に引き止めてほしくて・・・。もしかしたらこっちに残れる最後の賭けかもしれないのに・・・」
「賭け・・・?でも、俺が行くなって言ったらせっかく決めた決心が鈍っちゃうだろ?」
「どうして君は格好をつけたがるの!君だってあの娘の本心を知らないわけじゃないでしょ?」
「じゃあ、どうすればいいんだよ!?もう決めちゃってるのに!」
「君がみなみちゃんのお父さんに直接言う。こっちに残るように」
「は・・・?」

唖然とした。
まさか賭けってこのことなのか?
俺だって岩崎さんに残ってもらいたい。
でも、家族の決定に俺が口を出すなんて・・・。

「ともやー、お客さんよ」

母親の声で我に返る。
客ってまさか・・・。

「やっほー。岡崎へたれ君」
「何こなたに怒鳴り散らしてるのよ」
「さっきのともや君恐かったよー」

電話の相手のこなたさん、それにかがみさんにつかささん・・・?
全く状況が読めない。

「何でみんなそろってるの・・・?」
「いやぁー、久しぶりに4人で集まってたらさぁ、ねぇ?」
「大声が聞こえて、それがあんたとみなみちゃんってわけよ」
「ひどいよぉーみなみちゃんにあんなに怒っちゃうなんて・・・」
「4人て、みゆきさんは?」
「みゆきさんならさっきの店でまだみなみちゃんといるよ。君がもう一度話せるように時間稼ぎ」

声も出ない・・・。
まさかその場にいたなんて。

「でも・・・俺はあんなにひどいこと言っちゃたし、行っても岩崎さんにまたひどいこと言っちゃうよ」
「君っていつからそんなにへたれになったの?海外に行ったほうがいいとかただの奇麗事じゃん」
「あんたが意気地のないことは知ってたけど、せめてあの時の劇ぐらいの根性は見せてほしかったわ」
「ねぇ・・・ともや君は本当にみなみちゃんと離れ離れになっていいの?」
「俺は・・・」

離れ離れなんて考えたくもなかった。
答えは1つしかないのに俺は別れ話まで示唆した。

「行かせたくないなら、本気でみなみちゃんを引き止めなよ」
「そうだよ!みなみちゃんに伝えなよ!本当のともや君の気持ちを」
「まっ、いいんじゃない?このまま負け組みで終わっても。
 そりゃ、ほんとのこと言ったほうが絶対良いと私は思うけど」
「みんな・・・」
「んで、みなみちゃんと一緒にお父さんに直談判。いいねぇ、ドラマのワンシーンみたいで」
「こなたさん・・・」

こんないい友達に囲まれてたんだな、俺は・・・。
それになんで悩む必要があったんだろう。
ただ俺の気持ちを言えばいいんだよ、こんなに簡単なことを迷ってたなんて。


「ありがとう!こなたさん、かがみさん、つかささん!」

とにかく戻ろう!
そして、岩崎さんに言おう。

『行かないで欲しい。ずっと一緒にいたいんだ』

無我夢中で走った。

―――――――――――――――――――――――――――――

「あっ!ちゃんとみゆきさんにもお礼言うんだよー、って聞こえてるかな?」
「そこはちゃんと言うでしょ・・・」
「うまくいくといいね、ともや君」

ともや君が走って出て行った部屋に残される私たち。
部屋の主がいないのに他人の部屋にいるってのは何とも複雑な気分。


「ところでさぁ・・・」
「どうした?こなた」
「程よくへたれで、私たちに励まされて奮起して、彼の周りは女の子ばっか、ってさ」
「うんうん」
「ともや君ってギャルゲーの主人公みたいだよね!」
「「・・・」」

声を失う柊姉妹。

「あと・・・」
「今度は何?」
「かがみってやっぱりツンデレだよね?」
「はぁ!?なんで私がツンデレなのよ!」
「だってさっきの台詞は絶対そうとしか・・・あいたっ!」
「まぁまぁ、お姉ちゃん・・・」
「ごめんなさいね。こんなにお友達に来てもらったのにともやったら急に出て行ってしまって・・・。
 たいした物は出せないけど下におりてお茶でもいかが?」
「「「・・・!!!」」」

がんばれ!ともや君!