※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

待ち合わせの時間まで15分。
しかし、岩崎さんと遊びに行くなんて久しぶりだ。
まぁ、それもこれもいけないのは俺だったんだけど・・・。
とにかく今日は思い切り楽しみたい。
・・・と、あそこに見えるのは。

「おはよう。岩崎さん」
「すみません・・・。待たせてしまって」


  ~休日~


「いや、まだ約束の時間じゃないんだし。俺も今来たとこだよ」
「そうですか。・・・それなら良かったです」

べたべたな台詞を吐いて俺たちは歩き出す。
ちなみに今から2時間前にすでにここに俺がいたことは内緒だ。
そういえば今日の岩崎さんの雰囲気、何か違う。

「・・・・・・あ!岩崎さん、化粧してる?」
「え!?・・・あ、少しだけですが・・・」

どことなく大人っぽい雰囲気。
今更ながら胸が高鳴ってしまう。

「母が・・・大事な人と会うならしていきなさいと・・・」
「へぇー、お母さんが」

お母さん、面識ないけどGJです!

「・・・どうですか?」
「すごく綺麗だよ、うん」
「・・・・・・!!」

好きな女の子が自分のために化粧。
それだけでこの上なく嬉しい。
なんかさっきから岩崎さん顔を伏せたままだけど。

「そういえば映画だったよね?」
「はい、勧められたのなんですが・・・」

そう言われてパンフレットを渡される。

「転校して来た男の子が様々な困難に見舞われながらも文化祭を成功させて
 好きな女の子と結ばれるどたばた恋愛アクション映画の超大作・・・ねぇ・・・」

アクションの要素が今の説明文の中にあったのだろうか?
それ以前に既視感のような感じもするんだけど・・・。

「どうしましたか?先輩・・・?」
「え?いや、何でもないよ。じゃあ、行こうか」

映画館へ向かう。
休日ということもあって男女のペアの数も多い。
みんな手、繋いでるなぁ・・・。
ふと岩崎さんを見る。

「「!!」」

ばっちり目が合ってしまった。
そして、どちらからというわけでもなく手を握る。
俺の手が汗ばんでたけど、もしかしたらそれは岩崎さんも同じなのかもしれない。

「着いた!」
「はい」

別に宣言するほどのものでもないけど手を繋いでいたのが恥ずかしかったのか高らかに宣言。
というわけで中に入る。
席について気づいたけど俺たちはずっと手を握ったままだった。

『―――』

なかなか考えさせられる映画だった。
それは哲学的な何かではない。
何者かの陰謀を感じる、なんて考えてしまう俺は自意識過剰?
主人公の境遇が似すぎている!

「楽しかったですか・・・?」
「う、うん。大きく疑問が残る映画だったけど・・・」
「最後良かったですね。2人が結ばれて・・・」
「う、うん。ソウデスネ」
「・・・・・・?」

もう気にしないことにしよう・・・。
この映画が俺の一生の課題になりそうだ。

「も、もうお昼も過ぎちゃったけどお昼にしようか!」
「・・・?そ、そうですね。そうしましょう・・・」
「ねぇ、どこかで見たことがある展開というか、何か疑問に残るとことかない?」
「・・・いえ。もしかして先輩見たことあったんですか・・・?」
「いやいや、初めてだよ!ならたぶん俺の勘違いだ、うん」

駅前の店に入る。
岩崎さんはまだ俺の言葉を考えてるみたい・・・。
うん、ごめんよ・・・、気のせいなんだ。
そういうことにしといて・・・。

「そういえばさ、あれから小早川さんと先生はどう?」
「・・・え?2人ともいつも通りですよ」
「そう・・・」

何故だ・・・。
会話が続かねぇ。

「あれ?」

あそこにいる人、後姿が岩崎さんそっくりだ。

「・・・どうかしましたか?先輩・・・?」
「あそこに座ってる人、岩崎さんに似てるなぁ・・・って」
「あそこにいる人・・・?」

岩崎さんが振り返る。

「・・・・・・ぶっ!!」

漫画みたいに噴出す岩崎さん。
あーあ、お茶がもったいない・・・って突っ込むとこそこじゃないだろ、俺。


「大丈夫!?はい、ハンカチ」
「す、すみません・・・」
「どうしたの?」
「いえ・・・、すみませんお手洗いに・・・」

何故か動揺しながら席を立つ。
って、トイレは逆方向ッス。
あれ?さっき言った人と話して・・・。
その人とトイレに行っちゃったよ。

「なんか雰囲気は違うけど、本当岩崎さんに似てたなぁ」

待つこと数分。

「すみません。お待たせしました・・・」
「いやいや・・・って・・・え?」

さっきの女性も一緒なんですが。
ちょい待て。
俺もそこまでは鈍くないぞ!
ただ現実を受け止めにくいだけだ!

「どうも、こんにちは。岡崎君でしたっけ?」
「ほら、お母さん。まずは謝って・・・」
「あのー」

何か謝るようなことでも・・・?
って、お母さん!?

「すみません・・・。駅前で私たちを見つけてそれでここまで付いて来たみたいで・・・」
「ごめんなさいね。みなみったら家に連れてきてって言っても聞いてくれなくて」
「はぁ」

若い、若すぎるぜ。
てっきりお姉さんぐらいかと。
でも、家族構成にお姉さんいなかったか。
何だろう、俺の母親を思い出すと急に切なく・・・。

「だって、もし連れて来てもからかうだけでしょ・・・?」
「そんなことないわよ、ちょっと興味があるだけで」
「・・・はぁ」

女性2人のパワーに押されまくりなんですが。
でも、岩崎さんって家だったらこんなに口数が多いのかな?
いつか俺の前でもこんなに話してくれるようになればいいけどな。

「でも、良かったわ。いい人そうで。みなみ、岡崎君のお話をする時はいつも嬉しそうに話すから」
「・・・ちょっとお母さん」
「家で僕の話ですか・・・」
「えぇ、それは毎日のように・・・」
「ちょ・・・ちょっと・・・」

家での俺の話・・・。
考えるだけでものすごく怖いんですが。
お父さんとかお父さんとかお父さんとか。
けど、岩崎さんのこの慌てっぷりは滅多に見れたもんじゃないな。

「大丈夫。今、夫は単身赴任だから」
「あ、良かったぁ・・・って」
「しかも、かっこよくておもしろい人よね、みなみ」
「・・・もうやめて・・・」
「はぁ・・・ありがとうございます」

ダメだ。
見えない力が俺を阻んでいる。
このままじゃ岩崎さんのキャラ崩壊が・・・。
それはそれでかわいいしアリだな、うん。
恐るべし、岩崎母。
結局、1時間ほど話して後は若い2人の時間って帰ってしまった。
その間、常に顔真っ赤だった岩崎さん。
話のペースを握られっぱなしの俺だった。

「何かすごいお母さんだね・・・」
「いえ・・・普段はここまででは・・・。こんなに楽しそうに話すお母さんは久しぶりに見ました・・・」
「でも、岩崎さんのあの慌てっぷり」
「せ、先輩まで・・・」
「いつもかっこいい岩崎さんだから。お母さんの話でかわいい岩崎さんが聞けて良かったよ」
「・・・・・・」

顔を真っ赤にして俯く岩崎さん。
今日は本当に楽しい1日だった。
新しい岩崎さんをたくさん見ることができたし。

「じゃ、俺たちもそろそろ出ようか」

立ち上がってふと疑問が・・・。
いや、そんなことは・・・。
でも腹をくくって。

「すみません・・・。本当にすみません」
「・・・いや、大丈夫・・・」

予想通り、全額俺が払う目にあうのであった。