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そろそろ学校が終わったころのはずだ。
腕時計を確認しながら陵桜学園に向かう。
岩崎さんのあの留守電からもう1週間経っている。
何度も迷ったけど俺はもう一度彼女と話したかった。

「よし・・・。行こう!」

自分を鼓舞するように口に出して俺は家を出た。


 ~星桜~


正直、岩崎さんに振られたことに関して心当たりが多すぎた。
俺からの連絡が極端に少なかったこと。
会える時間がなかったこと。
自分の用件を常に優先してしまっていたこと。
彼女からの誘いを断ってしまったこと。

「愛想尽かされて当然だよな・・・」

歩きながら思わず呟く。
学園が近づくにつれ足取りが重くなる。
今更俺は何て言えばいいのだろう。
ごめん?
もう一度付き合って?
別れた理由を聞かせて?

「あ・・・」

いつの間にか校門が見えてきた。
そういえば、ここの道も懐かしい。
この道に小早川さんがいて・・・。
そして、岩崎さんに出会って・・・。
・・・ん?
道の先に誰かがしゃがみこんでいる。

「小早川さん!?」

俺は彼女の元に走った。

「大丈夫!?」
「え?岡崎先輩?」

驚かれるのは当然だった。
だが、今そんなの関係ない。
彼女を抱き起こして、休める場所を考える。

「保健室に行こう」
「すぐに良くなりますよ。大丈夫です・・・」

そうは言っているが相当辛そうだ。
彼女に負担をかけないようにゆっくり保健室に向かう。
俺は現在この学園の生徒ではないが・・・まぁ大丈夫だろう。
帰宅途中の生徒の視線が少し痛いが気にせず校舎の中に入った。

「すみません・・・先輩・・・」
「いや、気にしないで」
「ありがとうございます。岡崎君」

小早川さんと天原先生と保健室で話していた。
少し休んだだけで小早川さんの顔色も良くなった。
こんな場所で見知った顔を前にすると自分の学園生活を思い出す。
懐かしい・・・。
まだ卒業して2ヶ月も経っていないのにそんな風に思う。

「そういえば岡崎君?どうしてここに来られてたんですか?」
「・・・」
「先輩、もしかしてみなみちゃんですか?」
「あらあら、そうなんですか?」
「・・・うん」

ずばり言い当てられてドキッとする。
けど、天原先生の前で言わなくても・・・。

「岩崎さんでしたらもう少ししたらここに来ますよ?」
「「!!」」

俺と小早川さんが同時に驚く。
・・・って何で小早川さんが?

「先ほど職員室で岩崎さんに会いまして小早川さんの事を言っておきましたから」

ニコニコと笑いながら天原先生は言う。
内心気が気ではない俺と俯きがちの小早川さん。

「小早川さん?何か岩崎さんに聞いてる」
「いえ・・・。でも何となく分かります。最近みなみちゃん元気なかったから」
「そう・・・」

少し気まずい雰囲気が流れる。

「小早川さんも気分が良さそうなので、少し仕事を済ましてきますね」
「「え?」」

立ち上がって保健室を出て行く。
空気を読んだのか?
って保健の先生が保健室以外で行う仕事って何なんだ?
とにかく小早川さんの方に向き直る。

「先輩・・・。みなみちゃんと何があったか、深くは聞きません」
「・・・うん」
「でも・・・これだけは答えてください」
「・・・うん」
「先輩はみなみちゃんをどう思っているんですか?」
「・・・・・・」

まっすぐと俺を見つめる目。
嘘をつけない。
いや、嘘をつく必要もない。

「好きだよ」

今まで俺は言い訳しか考えてなかった。
謝るとか、別れた理由を聞くとか。
そんなのは言い訳だった。
俺の本当の気持ち。

「きっとみなみちゃんも同じ気持ちですよ、先輩に伝えたいことがあるはずです」
「ありがとう・・・。小早川さん」
「だから・・・先輩がみなみちゃんを支えてあげてくださいね」
「あぁ・・・」

だが、1つ気になることが・・・。

「岩崎さん来ないね?」
「あっ!」
「どうしたの?」

天原先生が言ってから結構な時間が経ったけど来る気配がしない。
何かを思い出したように小早川さんが声をあげているが・・・。

「先輩!すぐに星桜の樹に行ってください!」
「いや、話がいまいち読めないんだけど・・・」
「とにかくすぐに行ってください!だいぶ待たせちゃって・・・あっ」
「・・・・・・」

俺は鈍いと言われるがこの展開はさすがに読めます・・・。
天原先生と小早川さんにしてやられた感じがありますが。

「えーと・・・小早川さん。体調は大丈夫?」
「早く行ってください!」

半ば追い出されるように保健室を後にする。
私服の俺が走る・・・すれ違う生徒の視線を浴びながら・・・。
冗談を考えれるのはそこまでだった。
星桜の樹の下に立つ一人の女性の後姿。

「岩崎さん・・・」

何度目だろう・・・。
こうやって岩崎さんと星桜の樹の下で会うのは・・・。

「え・・・?岡崎先輩?」

驚いたように振り返る。
どうやら岩崎さんは俺が来るとは聞かされてなかったようだ。

「「・・・・・・」」

2人に沈黙が流れる。
こうやった時間も久しぶりな気がする。

「あのさ・・・」

沈黙を切り裂く
俺は伝えなければならないことがある。

「これからはもっと時間を作る、1日1回は必ずメールする、可能な限り電話をする」
「・・・・・・え?」
「俺は岩崎さんが好きなんだ!」
「・・・あ、あのっ・・・」

そこまで言って岩崎さんが言葉を遮る。

「・・・なぜですか?どうしてですか!?」
「え?」

いつにない岩崎さんの強い言葉に驚く。

「先輩を見ました・・・。先週の日曜に・・・駅で・・・」
「先週の日曜・・・駅?」
「・・・女性と親しそうにしてたのを見たんです」
「う・・・。あれは先輩だ・・・」
「え・・・?」

事情を説明する。
その日はサークルのみんなで舞台を見に行ったこと。
その後の飲み会のこと。
その先輩が泥酔していたこと。
複雑ではないから時間はかからなかった。

「ごめん・・・。あんな姿を見られたら疑われても仕方ないと思う・・・」
「あ・・・。え・・・」

岩崎さんが泣いてるのが分かる。

「ごめん。あそこまで酔っててほっとく訳にはいかなくて・・・」
「先輩が・・・謝らないでください・・・私はまた・・・先輩に迷惑を・・・」
「ごめん・・・。本当にごめん・・・」
「謝らないでください・・・。悪いのは・・・私なんです!」

どうして彼女はこうも自分が悪いと言ってしまうのだろう・・・。
もっと互いが迷惑をかけないと分からないこともあるのに・・・。

「ねぇ、岩崎さん。もっと俺に迷惑をかけてくれなくちゃあさ・・・。
 俺たち、付き合う時に言ったじゃん。互いが分かるまでって。
 お互い迷惑をかけあわなきゃ本当に理解できないよ・・・。
 自分だけが悪いって決め付けないで。俺も一緒に悩ませてよ。
 楽しいことも苦しいことも・・・2人で一緒に乗り越えていこうよ。
 俺たちさ・・・」

一気に話して、深く深呼吸する。

「恋人同士なんだからさ」

俺の素直な気持ちを伝えた。
別に恥ずかしくはない。

「俺は岩崎さんが分かるようになるまで別れたくないんだ。
 分かる時が来るまで俺と一緒にいて欲しいんだ」

静かに、岩崎さんを優しく包み込むように、俺は彼女の肩を抱いた。
そして・・・彼女に優しく口付けをした・・・。


―――――――――――――――――――――――――――――

「・・・・・・」
「・・・・・・」

何とも言えない雰囲気。
2人が心配でここまで見に来たけど・・・。

「小早川さん?」
「何ですか?先生・・・」
「どうしましょう?もう少し見ていきましょうか?」

天原先生・・・。
笑顔でそう言われると私も断れないよ・・・。

でも、先生に相談してて良かった。
みなみちゃんの事と先輩の事。 
今日、先輩と会うとは思わなかったけど・・・。
こんなに上手く行くとは思ってなかった。
けど、天原先生ってすごいなぁ。
何でもお見通しなんだもん。
仲直りできて良かった!
2人がこうやって仲直りできたのも先生のおかげなんだし・・・。

「も、もう少しならいいですよ・・・ね・・・?」

ごめんね、みなみちゃん・・・。
ちょっと刺激強いけど・・・もう少し見てるね・・・。