※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

満開の星桜の樹。
そういえば、こうやってこの樹を眺めるのも久々だ。


「桜藤祭以来だな…」


ふと呟く。
振り返ると俺の陵桜学園生活はたったの半年だ。


「けど…なんだろ。すげぇ充実してたな」


今日は俺にとって区切りとなる日。
陵桜学園を卒業する日…。


 ~卒業~


「…先輩…ここにいたんですね」
「岩崎さん…」
「少し探しました…。泉先輩たちに聞くとたぶんここだって…」
「それなら携帯に入れてくれればよかったのに」


笑いながら俺は答える。


「…しましたよ…ですが先輩出られないので…」


ありゃ、ほんとだマナーモードのままだ。
見ると着信履歴9件も…。
こなたさんに小早川さん、なんと母親からも連絡が。
岩崎さんからの着信・・・・・・5件…。
とりあえずマナーモードを解除っと。


「ごめん!…全然気づかなかったよ…」
「…大丈夫。慣れてます…」


苦笑いで岩崎さんが答える
以前もこうだった。
あの時の俺は寝てたんだっけ。

「…先輩…ご卒業おめでとうございます…」
「うん、ありがとう…」


周りから見るとぎこちない会話に聞こえるかもしれない。
けど、これが普段からの俺たちのやり取り。


「「…」」


お互いに沈黙が流れる。
初めはこな沈黙があまり得意ではなかった。
だが今では心が落ち着く。
心地いいくらいだ。


「立ち話もなんだし座ろうか」


樹の下に腰をおろす。
付き合い始めた頃は離れていた二人の肩も今ではぴったり付いている。


「振り返るとさぁ…」
「はい…」
「初めて俺が出会ったのも岩崎さんと小早川さんだったなって」
「えぇ…」
「うずくまってる小早川さんを見た時はびっくりしたなぁ」

「それからこなたさんの攻略作戦が始まって…あの時も驚いたよ。
 起きたら目の前で小早川さんが倒れてるんだもん」
「私も驚きました…
 部屋に戻ると起きている人と寝ている人が逆になってましたから…」
「…小早川さん…本当に体弱いんだよね…」


振り返るとまず小早川さんの体の弱さを思い出す…。
でも…おかげでこうして2人でいれるのかもしれない…。
こんなこと口に出して言えるわけないけど。


「覚えてる?俺がこなたさんと喧嘩したとき」
「はい…」
「俺が理由を言ったときの岩崎さんの顔、まだ忘れれないよ」
「…せ、先輩・・・・・・」


あのキス事件(俺の中の通称)は今でも色濃く覚えている。
我ながら情けなかったが、こうして今は笑い話になっている。
未だにこなたさんにいじられることはあるけど・・・。
その時の岩崎さんの顔。
普段の彼女からは想像できないくらいの慌てっぷりだ。


「あの顔、結構俺は好きだったけどなぁ」
「・・・・・・」


顔を真っ赤にして伏せている。
彼女はクールでかっこいい、とかみんな言ってる。
だが、実際は不器用なだけなのだ。
感情を表現するのが苦手な普通の女の子。
そのことに俺が気づいたから彼女も俺に心を開いてくれたのかもしれない。


「・・・・・・」


そういえば、小早川さんが言っていた。
クラスの男子は岩崎さんを避けている風があると。
きっと彼らは彼女を完璧超人とでも考えてるのだろう。
確かに勉強もできて運動もできる、と非の打ち所がない。
それにこの雰囲気だから近寄りがたいのだろう。
俺だって桜藤祭の事がなければ彼女を誤解していたかもしれない。


「・・・・・・」


にしてもさっきから岩崎さんはずっと俯いたままだ。
もしかしてからかったから怒ったのか!?


「・・・せ、先輩・・・すみません・・・」




「岩崎さん・・・」


俺は彼女を胸に抱き寄せ、頭を撫でていた。
どうしてこんな行動をとったのか自分でも分からない。
ただ俺は今、自分の胸で泣いている女の子に気持ちを伝えたかった。
それは言葉では言い表せない。
そして、言葉にしなくてもきっと通じるはずだ。
俺たちは互いの気持ちを確かめ合っていた。


こんなに長い沈黙は初めてだ。
なのに不安など微塵も感じない。


どれくらいの時間が経ったのだろう。


「落ち着いた・・・?」
「はい・・・ありがとうございます」
「大丈夫。何も不安になることはないんだよ」
「・・・・・・ですが」
「約束したでしょ?お互いの事が分かるまで付き合うって」
「・・・けど・・・!」
「・・・そんなに俺って信頼されてないの?」
「い、いえ・・・そんなことは・・・」
「じゃあ、信じてよ。まだ俺は岩崎さんを全然知らないんだからさ」
「・・・先輩・・・・・・」
「約束するよ。俺はこれから先ずっと君と一緒にいるって」
「・・・・・・!」


なんか・・・今さらっとすごい言葉を言ってしまったような・・・。
いや、俺の嘘偽りない本音っすよ?
けど、今の台詞聞きようによってはプロポーz(ry


「・・・先輩・・・嬉しいです・・・」
「岩崎さん・・・」


『~~♪♪』


「「!!??」」


なんて絶妙なタイミングで鳴る携帯なんだ。
なるべく時に鳴らず、ならざるべき時に鳴るとは・・・。
雰囲気ぶち壊しです、母上。
屋上とかで見張ってるんじゃ?
思わず周囲を見渡してしまう。

「ご、ごめん・・・」
「・・・い、いえ、それより早く出ないと・・・」


『・・・やっと出た!何してるのよ、ともや!』
「いや、ごめんよ母さん。どうしたの?」
『忘れたの?今日あんたの彼女さんを紹介してくれるって・・・』
「・・・・・・あ」


忘れてた。
大学の合格が決まってから俺は付き合っている子がいると両親に伝えた。
別にそれまで隠してきたわけではない。
受験シーズンの中で伝えても心配をかけるだけと思ったからだ。
両親は驚きながらも色々聞いてくる。
なぜそれまでに言わなかったのか、どんな子なのか・・・など。
あーそういえば・・・。
彼女が現在1年生ということを付け加える。
あそこまでうちが騒がしかったのは久々かもしれない。
父親は「お前もそんな趣味が・・・」とか言うし。
・・・親父・・・「も」って何だよ。
別に俺は・・・いや、まぁいい。
母親は・・・一度連れて来い、そればっか。
会ったことがあると伝えたがどうやら覚えてないようだ。
引っ越してきたばっかりだったし、しょうがないのかも。


父親はとにかく母親があまりにうるさかったので、
「そんなに会いたいなら学校に来い」
と冗談で言ってやった。
卒業式の事を忘れてて・・・。
そんなこんなで今に至る、というわけだ。
回想終了。


「え、あぁ・・・やっぱ今日じゃないとだめ・・・かな?」
『何言ってるのよ!ここまで待たせといて!
 校門の所にいるからすぐ来なさいよ。どうせ一緒にいるんでしょ・・・・・・っ』


切れちゃったよ・・・。
それに一緒にいることまで当ててるし。
やっぱりどこかから見ていたに違いない、うん。
冗談はさて置き・・・問題は彼女なわけでして・・・。
俺はこの事を一切岩崎さんに伝えていない。


「ごめんね・・・母親からだったよ・・・」
「えぇ・・・聞こえてました」


さて一体どうやって伝えればいいものか・・・。


「・・・先輩・・・」
「どうしたの?」
「早くお義母様のところに行きましょう」
「・・・へ?」
「・・・校門で待ってるんですよね?」


しっかり聞こえてたわけだ。
でも、岩崎さん、キャラ違います・・・。
それにお義母様って・・・。
けど・・・今の岩崎さんはとてもいい顔してる。
それに・・・。


「い、岩崎さん・・・そんなに焦らなくても・・・」


俺は今さっき言ったばかりじゃないか。


「・・・先輩・・・。あまりお義母様を待たせては・・・」


俺はこれから先ずっと君と一緒にいるって。


「そうだね。行こうか」


手を握って、岩崎さんを見つめる。


「・・・・・・どうかしましたか?」
「でもその前に・・・」
「・・・・・・!!」


満開の星桜の樹の下で俺たちは二度目の愛を誓った。