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時間の抵抗に耐え、無事に桜藤祭を終え、ループも解決した。
 今日から、ようやく桜藤祭より先に進むことができる。
 永森さんは元の高校に戻り、もう知り合いでもなくなってしまった。
 ループ時の記憶も、いずれ色褪せてしまうだろう。
 けれど、これで良かったのだ。在るべき形に戻ったのだから……。

 教室に入ると、珍しくこなたさんが早く来ている。
「こなたさん、おはよ……う」
 物凄い違和感に戸惑う。
 こなたさんが眼鏡をかけているのだ。しかも、それだけではない。髪が黒いのだ。
 イメチェンだろうか? 黒髪は凄く似合っているのだけれど、不思議といつもより気弱そうに見える。
「あ……、おはよう、伊藤君」
 えーと、……別人?
「ど、どうしたのさ! こなたさん!!」
「え? ど、どうもしないけど……」
 マズイ、あまりに過剰な反応だったからか、見てわかるほど怯えている。肩掴んで大声出せば、そりゃ怯えるよな。
 って、こなたさんが? 怯える? いつもなら俺の反応を見て、おもしろがりそうなのに。
「ごめん、こなたさん。驚かせるつもりはなかったんだ」
「大丈夫だよ、ちょっと驚いただけだから……」
 嘘つけ、どう見ても怯えてたぞ。一体こなたさんに何が起こったというのだろう?

「まこと君、おはよー」
「おはよう、まこと君」
「おはようございます、まことさん」
「あ! みんな、おはよう。なんかこなたさんが変なんだけど……」
「うん、私たちも気になって、黒井先生に聞きに行ったんだ」
「それで、黒井先生はなんて?」
「それが、こなちゃんは前から、内向的で友達がいなかったって……」
「冗談……だよね?」
「残念ですが、冗談ではありません。黒井先生以外の方も、……同じことを言っていました」
「そ、そんな……、一体何で? 昨日は普通に、いつものこなたさんだったじゃないか!」
「それがわかったら、苦労しないわよ!」
「二人とも、落ち着いて」
「そうです、何も手がかりが無いわけではありません」
「え? みゆき、それどういうこと?」
「重要なことは、いつもの泉さんを覚えているのが、私たちだけのようだということです」
「つまり、俺たちが関係してるってこと?」
「でも、私たちが関係してて、こなたにも関係があることって?」
「桜藤祭の前の日の、永森さんのことは? もうよくは覚えてないんだけど、あのときは本当に私たちだけだったよ」
「恐らくは、それです」
「ちょっと待ってよ、みゆきさん。桜藤祭当日は、いつものこなたさんだったよ」
「もしかして、あのときの永森さんとの会話に、手がかりがあるってこと?」
「その通りです、かがみさん」
「何て言ってたっけ? もう私覚えてないよ~」
「時間の悪あがきで、ループしてるときの記憶が無くなるってことくらいしか覚えてないよ」
「えーと、みゆき? まさか、時間の悪あがきで、こなたがああなったて言うんじゃないでしょうね」
「そのまさかです」
「ゆきちゃん、どういうこと?」
「私の覚えていることに、過去や起こりえるかもしれない未来に、繋がっていた空間があります」
「それがどう関係するの?」
「すでに現在がある以上、あのとき見た過去は私たちの過去ではなく、平行世界の過去ということになります」
「平行世界っていうと、違う可能性の世界だっけ?」
「お恥ずかしながら、私も詳しくはわからないのですが、その解釈で間違ってはいないはずです」
「そういえば、みんなは覚えてないだろうけど、桜藤祭での出し物が、変わってたことがあったんだ。これもその平行世
界ってやつなのかな?」
「それは、恐らく時間が既に決まっている未来に干渉し、現実を書き換えたということではないでしょうか」
「うう、頭痛くなってきた」
「つまり、そのことと同じ原理で、こなたの人格が書き換えられたってこと?」
「仮説でしかありませんが、私はそう思います」
「ええと……、まったくわからないよぅ」
「つかささん、あの泉さんは、違う可能性の世界では存在している泉さんなんです。泉さんご本人なんですよ」
「つまり、こなちゃんはこなちゃんてこと?」
「それでいいと思うわよ」
「でも、なんでこなたさんなんだろう?」
「ご都合主義ってやつでしょ、説明もわかりにくいし」
「かがみさん、突っ込んじゃだめだって、作者の力量じゃこれが限界なんだよ」
「それで、結局どうすれば、いつものこなたに戻るのかしらね」
「一番大切なことがわからず終いですね、すみません……」
「こなちゃんはこなちゃんなんだから、私たちが仲良くすればいいと思うんだけど、いつもみたいに」
「つかさ、それは接し方。今私たちが話してるのは解決法よ」
「かがみさん、俺はつかささんに賛成だよ」
 さすがに考えてもわからないことだし、何よりも、戻そうと必死になるということは、今のこなたさんを否定すること
だと思う。
 俺も、いつものこなたさんに戻るのなら、それがいいとは思うけれど、今のこなたさんは、なんか放っておけない。
「ちょ、まこと君まで! こなたが元に戻らなくていいの?」
「そうは思ってないよ。けどさ、それじゃまるで、今のこなたさんはいらないみたいだろ?」
「それは……」
「もしかしたら、みんなと接してく内に、いつものこなたさんを思い出すかもよ? こなたさんはこなたさんなんだから」
「うっ……、微妙に説得力があるような……」
「フフッ、どうやら決まったようですね」
「はぁ、まさか、まこと君に言いくるめられるとは」
「失礼な」
「そろそろ席に戻ろうよ、ホームルーム始まっちゃうよ」
 席に戻る途中、こなたさんと目が合ったけれど、慌てて視線を外されてしまった。
 もしかして、俺避けられてる?

 ホームルームが終わった後、俺はこなたさんに話しかけることにした。俺は避けられていないと信じたい。
「やあ、こなたさん」
 話のかけ方が、すでにぎこちない俺。いつもなら、もっと自然に話しかけられるのに……。
「え……、えっと、何?」
 距離を感じるのはなぜだろう。俺は一瞬にして苦手な人……か?
 いや、ここであきらめたらだめだ。こなたさんなら、きっと見てるはずだ!
「え~と、昨日のアニメの話なんだけどさ」
「え? 私はアニメ見てないよ……」
 な、なんだってー! こなたさんがアニメを見ていないなんて、そんなバカな!! それじゃまるで、こなたさんとは真逆じゃないか!
 ……いや、待てよ。真逆?
「えっとさ、それじゃあラノベとか読んだりしてる?」
「うん、基本は小説だけど、ラノベも読むよ」
 ま、真逆だ……。いつものこなたさんとは、色々なことが逆になっているのだろうか?
 とりあえず、今のこなたさんは読書家ということを教えたら、かがみさんがすっごく喜びそうだ。
「その……、伊藤君もラノベとか読むの?」
「俺も読むけど、こなたさんやかがみさんには、遠く及ばないと思うよ」
「そ、そんなことないよ。私なんて……」
「いやいや、こなたさんなら、かがみさんよりも多くの作品読んでるかもよ?」
 こなたさんの熱意が、読書に回ったらと考えると、ありえるかもしれない。
「ちょっと、何か聞き捨てならないことを聞いた気がするんだけど」
 かがみさんが自分のクラスからやってきた。これはいいタイミングだ。
「実はね、こなたさんが結構な数の小説を読んでるらしくて」
「ええ!? こなたが!?」
 気持ちはわかるけれど、驚きすぎだよかがみさん。ほら、こなたさんがびっくりてるじゃないか。
「えーと、それじゃ好きな作家とか作品とか教えてくれない?」
「う、うん……。一番好きなのは――」
 どんどん深い内容になっていってるようだ。俺にはまったくついていけない。
 けれど、俺はこなたさんに嫌われたわけじゃなさそうだし、何より、こなたさんもかがみさんも楽しそうに話しているのだから、それでいいか。
 まだ、違和感は消えないけれど、少しずつ親しくなっていけば、いつか消えるだろう。

 昼になった、俺たちはいつものように、みんなで昼食をとる。ただ、今のこなたさんは慣れていないのか、ひどく不安そうにチョココロネをかじっている。
「フフッ、やはりチョココロネなんですね」
「う、うん……」
「料理は一応できるんだし、たまには弁当にしてみるとか考えないの?」
「え? 私は、その……料理全然だめだよ」
「あれ? そうだっけ? 料理できたような気がするんだけど」
 桜藤祭では、弁当を作ってもらったことがあったような。というか、もしかしてこれも逆になってる?
「お、お弁当なんて、私には無理だよ……」
「こなちゃんなら、きっとできるよ」
「そ、そんなこと言われても……」
「じゃあ、今度一緒にお料理しようよ」
「え? ……でも、私は料理が下手……」
「私は楽しくお料理ができれば、それが一番だと思うよ。こなちゃんとなら、楽しくお料理できると思うし」
「そうだよ、こなたさん。まず、何事もやってみなきゃ」
「そういうまこと君は、料理できるの?」
「俺? 俺はカップ麺にお湯を注ぐことが得意……ってかがみさん、俺をオチにしないでくれよ」
「私はただ、まこと君が料理できるか聞いただけよ」
「うっ……、それもそうか」
「大学で一人暮らしになるかもしれませんし、料理はできて損はないかと思いますよ」
「それじゃあ、まこと君も一緒にお料理しようよ」
「お、俺も!?」
「この際だから、少しくらいできるようにした方がいいんじゃない?」
 確かに、一人暮らしになったとき、料理ができれば何かと便利だろう。
 それに、受験勉強ばかりでは疲れてしまうから、息抜きが必要だ。
「そうだね、俺も一緒に勉強させてもらおうかな」
「それでは、私もご一緒させていただいてよろしいですか? 今のままだと、心許ないので……」
「うん、みんなでお料理しよう!」
 なんだか、結局いつもと変わらない雰囲気になりそうだ。
 けれど、それが一番楽しいということに変わりはない。こなたさんも楽しそうだし、これでいいのだ。