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ここは、新郎新婦の控え室。式までまだ時間があるので、二人で休んでいる。
 今日は、俺とゆたかの新しい始まりの日だ。
 当然、ゆたかはウェディングドレスを着ている。
 普段、ゆたかは可愛いと表現するのが、最も適している。けれど、今日は違う。
 ――とても、綺麗だ。
 似合うとは思っていたけれど、ここまで白のドレスが似合うとは……。

「う~ん、さすがに緊張するな」
「そうだよね。……私、ドレスの裾踏んづけて、転んじゃったりしそう……」
 ゆたかも緊張気味だ。
「それはあるかもね、ゆたかはうっかりさんだから」
「あうー、まー君ひどいよー!」
 膨れるゆたか。少しは緊張が和らいだかな?
「大丈夫だって、もし転びそうになったら、俺がちゃんと支えるから」
「それなら安心だね」
 お互いに笑い合う。緊張も大分和らいだ。
 すると、部屋の外から話し声が聞こえてきた。どうやらお客さんが来たようだ。

「ヤフー、お祝いに来たよ~」
「ゆーちゃん、まこと君、おめでと~」
「二人とも、おめでとう。お祝いに来たわよ」
「お二人とも、ご結婚おめでとうございます」

 これはまた、いきなり大人数だ。というか、このメンツだとお祝いと言うより、冷かしになるのでは?
 唯一の救いは、このメンツに日下部さんがいないことだろう。安堵の息を漏らす。
「みんな、ありがとう」
「ありがとうございます」
「わあ! ゆーちゃん、すごく綺麗だよ」
「うんうん、純粋なゆーちゃんには、白がよく似合うね」
「ありがとう、つかさお姉ちゃん、こなたお姉ちゃん」
「お二人とも、とてもよく似合っていますよ」
「ありがとう、みゆきさん」
「本当に綺麗ね、ゆたかちゃん。こんなに綺麗な人がお嫁さんだなんて、まこと君は幸せ者ねー」
 ニヤニヤしながら、俺を見るかがみさん。やっぱりそうくるか。
 けれど、期待通りの反応をしては、冷かされるだけだ。
「ホントだよ。俺は、世界一の果報者だ」
「まこと君、つまんなーい! もっと初々しいリアクションをおくれよ~」
「こなたさん、無茶言わないでくれよ」
「ま、いーけどね。――それにしても、言ってる事が……」
 少し似てる。そんな事を、こなたさんは呟いた。
「こなたさん、何に似てるの?」
「ん? 別に何でもないよ、気にしないでくれたまへ~」
「そっか、何でもないなら、それでいいんだけど」

「いや~、それにしても、まこと君がプロポーズの相談になんて来るから、どうなることかと思ったよ。うまくいって良かったね~」
「ちょっ! こなたさん、それは言わないで……」
「そうだったんだ。だから、あの日はいつもより、帰ってくるのが遅かったんだね」
「まこと君、ゆたかちゃんに、心配かけさせちゃダメじゃない」
「かがみさん、不安なものは不安なんだよ……」
「でも、うまくいって良かったね。私の応援の効果も、あったのかな?」
「うん、あったと思うよ。あれには励まされたし。でも、できれば、ゆたかに見えないようにしてほしかったかな」
「ご、ごめんね」
「でも、つかさお姉ちゃんすごいよ。私、あの日にプロポーズされるなんて、わからなかったよ」
「なんとなく、そう思っただけなんだけど」
「いわゆる、女の直感、というものでしょうか?」
「あ~、あるよね。普段天然なのに、大事な時には鋭いって設定」
「姉としては、いつもしっかりしてくれてると、安心なんだけどね」
「またまた~、ちょっとしたドジとかが、可愛いとか思ってるんでしょ、かがみ~?」
「なっ!?」
「お姉ちゃん、そうなの? 私、お姉ちゃんのこと大好きだから、そうだったら嬉しいよ」
「え!? わ、私はただ、その……心配なだけなんだから!」
 なんというか、相変わらず、かがみさんはわかりやすい反応だ。
「素直じゃないね、かがみさん」
「いやいや、そこがかがみの魅力でもあるのだよ、まこと君」
「そこ、うるさい!」
「フフッ、かがみさんは、いいお姉さんなんですね」
「かがみ先輩は、優しいんですね。ゆいお姉ちゃんみたい」
「みゆきにゆたかちゃんまで……」
 恥ずかしそうにするかがみさん。彼氏ができて、冷かされたら、もっと恥ずかしがるんだろうな……。
 ゆたかの事で、散々冷かされたから、かがみさんに彼氏ができたら、仕返しをしよう。
 きっと、それくらいは許してくれるだろう、恐らくは。

「それでは、私たちはそろそろ戻りますね」
「二人とも、緊張しすぎないようにね」
「二人とも、また後でね~」
「緊張するだろうけど、しっかり楽しみたまへ~」
 四者四様に部屋から去っていく。なんというか、賑やかだった。
 けれど、あんな賑やかな状況が、かつて当たり前だったことを思い出す。一年に満たない時間だったけれど、とても大切な時間だった……。
 ……つい、感傷にひたってしまうのは、歳をとったからだろうか?

 こなたさんたちが去った後、またお客さんがきた。
「おーっす! 祝いにきたぜ」
「二人とも、おめでとう」
 日下部さんと峰岸さんだ。
 峰岸さんは久しぶりだけれど、日下部さんとはよく会う。けれど、今日は驚くべきことがあった。
「うわ! 日下部さんがスカートだ!」
「驚く事じゃねーだろッ!」
「痛っ!」
 おめでたい日であっても、日下部さんの突っ込みは厳しい。
「みさちゃん、普段スカートはかないから、まこと君が驚いても仕方ないんじゃないかな」
「峰岸さんの言うとおりだよ、日下部さん」
「……まこと、あやのはもう峰岸じゃねーぞ」
「あっ! そうか、じゃあ……、日下部さんの言うとおりだよ、日下部さん」
「な、なんだそれ! わざわざ紛らわしい呼び方すんな!」
「い、痛い! 痛いって、日下部さん」
「み、みさちゃん。あんまり乱暴はダメよ、おめでたい日なんだから」
「そーは言うけどな、あやの。こいつ絶対わざとやってたぞ」
「わざとですよ、日下部先輩の反応を見て、少し笑ってましたから」
「わわっ! ゆたか!?」
「さっすが、嫁はちゃんと見てるな♪」
「よくいじわるしたりするから、そのお返しだよ、まー君」
「観念しろ、まこと」
 怖い笑顔の日下部さん、苦笑いのあやのさん、ゆたかの逆襲、フォローはもう望めないな……。

「しっかし、まことがこんなに可愛い娘と結婚とはなー」
「俺もびっくりだよ。考えてもみれば、まずきっかけから偶然だったなぁ」
 偶然、岩崎さんがゆたかの傍にいなくて、偶然、その時にゆたかの体調が悪くなって、偶然、俺が通りかかった。
 俺がゆたかを気にし始めたきっかけは、かなり偶然が重なり合っていたのだ。
「言われてみると、確かにあの時は、珍しい状況だったかも」
「すごくドラマチックなきっかけだったのね」
「うん、偶然が偶然を呼ぶ、みたいな感じかな」
「はぁー、偶然かー。私にも、男の幼馴染がいりゃーなー。偶然の一つや二つ」
「み、みさちゃん……」
 顔を赤らめるあやのさん。そういえば、あやのさんのお相手は、幼馴染である日下部さんのお兄さんだったか。
「日下部さん、そうは言っても、誰もがあやのさんみたいに、うまくいくとは限らないよ」
「わかってるよ。……ちくしょー! 売れ残りのケーキになんか絶対なんねーぞ!」
「その意気ですよ! 日下部先輩!」
「あんがとな、それじゃ私は、柊と第二次作戦会議に行ってくる!」
 第一次はダメだったようだ。
 日下部さんは、部屋から走り去っていった。
「二人とも、ごめんね。騒がしかったでしょう?」
「そんなことありませんよ」
「そうだよ、あやのさん。騒がしいのなんて、日常茶飯事だったじゃないか」
「そうね、今日は懐かしいやりとりが見れそう……」
「だね、楽しい雰囲気になりそうで、何よりだ」
 日下部さんは、案外こなたさんと絡んでそうだ。あの二人は、意外に仲がいい。

「それじゃあ、私はみさちゃんのところに行くわね」
「うん、わざわざありがとう」
 あやのさんが部屋を去る。
 みんなと会ったからか、陵桜での日々を思い出してしまう。
 今も充実している。けれど、陵桜での濃い時間には適わないだろう。
 だって、あんなに個性的な人達に囲まれていたんだ。毎日が楽しいに決まってる。ただし、かなり疲れるけど……。
「先輩たちは、みんな元気みたいだね」
「元気すぎるよ。いや、むしろ変わってなさすぎる」
「そんな事言ってるけど、まー君、ずっと嬉しそうな顔してたよ」
「うっ……、さすがにバレてるか」
「うん、あんなに嬉しそうな顔してたら、誰でもわかっちゃうよ」
「そ、そんなに嬉しそうだったのか」
 懐かしさからか、嬉しさが完全に顔に出ていたようだ。