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 一旦家に寄って、みさちゃんちへ向かう。
いっしょに帰ろうかと思っていたけれど、とぼとぼと帰る背中に、声をかけ辛かった。
…友達失格かな、私。

出迎えてくれたおばさんに挨拶して、みさちゃんの自室へ。
軽くノックしても、反応はなし。入るわね、と声をかけて、ドアを開ける。
「…………」
制服も着替えずに、みさちゃんがベッドに寝転がっていた。
「…もぅ、制服シワになっちゃうわよ」
ベッドに腰掛けて、みさちゃんの頭をなでる。みさちゃんとの付き合いは長いけれど、ここまで落ち込んだ姿を見るのは殆ど無かったと思う。
…それだけ、つらかったのかな。
「―――なぁ、あやのぉ」
「なぁに?」
みさちゃんが口を開く。
「私…ヤな女だよな」
落ち込んだ声で、自らを蔑むように。
そう、呟く。
「あいつがウソついてないってのはわかってる。でも、一緒にいたヤツ、すげー可愛いコでさ。……私なんかより、もっと、ずっと可愛くてさ」
語尾に、涙が混じる。
「ひょっとしたら、あいつは私じゃなくてあのコと一緒の方が楽しいんじゃないかって思って。そー思ったら、なんかヤな気持ちになっちゃって…」
それで、彼女の悪口言っちゃって。
ゆうきくんを、怒らせてしまった。
次第にしゃっくりあげながら、私にそう告げるみさちゃん。
「もーダメだ。私、ぜってーあいつに嫌われたっ。ヤだ…嫌われたく…ないのに……っ」

決壊。
次の瞬間、みさちゃんは私にしがみつき―――
泣いた。





「……落ち着いた?」
まだ僅かに残る嗚咽を引きずりながらも、小さく頷いて応える。
「さっきのことだけど」
みさちゃんの背中を撫でながら、言い聞かせるように声をかける。
「ゆうきくんがみさちゃんのこと嫌うなんて、無いと思うわよ」
「…そう、かな」
「うん」
羨ましいって思ってしまうくらい、仲のいい二人の関係が、こんな些細なことで崩れるとは思わない。
「でも、仲直りはちゃんとしないと、だけどね」
「う、うん。…でも、聞いてくれるかな」
「大丈夫よ」
柊ちゃんもフォローしてくれてるだろうし、何より、彼自身も仲直りしたいはずだ。
推測でしかないけれど、そう感じた。
「んー、ちょっと自信ねーかも…」
珍しく弱気なみさちゃん。そんな彼女に、私は家から用意して来たものを手渡す。
「それじゃ、これ使って練習してみて」
「…これって…ゆうき?」
フェルトで自作したゆうきくんの姿を象ったマスコット人形だ。
本当はクリスマスプレゼント用に作ってたものだけど、きっと今、必要なもののはずだから。
「……ありがと、あやの。私、がんばってみる」
「うん。しっかり、ね」
マスコットをぎゅっと抱きしめて、みさちゃんがやっと笑顔を見せてくれた。



帰り道で、見慣れた姿をみつけた。
「ゆうきくん」
「あ、峰岸さん」
バツの悪そうな顔で、頬をかく。
「みさちゃんと仲直りしに来たの?」
「…うん」
頷くゆうきくん。嬉しさがこみ上げる。
「…でも、今日はやめておいた方がいいかも」
「え?」
「みさちゃん、思いっきり泣いてて、目、真っ赤なの」
多分恥ずかしがるだろうから、また明日、ね。
私の提案に、ゆうきくんはわかった、と頷いた。
「あ、その代わりって言ったらなんだけど」
鞄からマスコット人形を取り出し、渡す。これはみさちゃんを模したものだ。
「お守り代わりに。仲直り、うまくいくようにね」
もっとも、必要ないだろうけれど。絶対に、うまくいくだろうから。
「ありがと。じゃ、また明日」
「うん。またね」

零れる白い息が、随分陽の翳った空に舞った。