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 目を、耳を疑った。

「もーしらねー! おまえなんか、勝手にしてろよっ!」
「ああ、勝手にするよ。じゃあな!」

目の前で、親友ふたりが声を荒げ…
互いに、背を向けた。

「ゆうきく…」
つかつかと足早に教室を出て行く彼を止める術を…
私は、持ち合わせていなかった。



あふたー あ すとーむ ☆ かむず あ かーむ



昼休みが終わり、教室に戻って来た柊ちゃんは、ふくれっ面のままのみさちゃんを見遣ってから、私のほうに視線を向けた。
僅かに頷いて、それに応える。ひとまずは、目の前の授業を終えてから、だ。



「…で、何があったの?」
A組の教室を出る前、すれ違ったゆうきの様子を簡単に伝えてから、柊ちゃんが問いかける。
いまどき温厚すぎるくらいに温厚な彼が、不機嫌に顔を歪ませ、泉ちゃんたちとも一切会話を交わすことなく席に座ったのだそうだ。
「…みさちゃんと、ちょっとね」
これは二人の問題だろう。友達とはいえ、迂闊に首を突っ込んでいい領域とも思いにくい。
でも……
私の大切な二人がケンカしたままなのは、イヤだから。
「二人の会話から推測した範囲で、だから…詳しくはみさちゃんかゆうきくんに聞かないとだけどね」
そう前置きして、事情を説明した。

発端は、昨日の事。
「一緒に帰ろう」と誘ったみさちゃんを、珍しくゆうきくんは断っていた。
一人で帰路についていたみさちゃんは、通りがかった商店街で、ゆうきくんを見かけた。
……他校であろう、見慣れない制服を着た女の子と一緒にいたらしい。

傍目から見て、恋人っぽくも見えた(あくまでみさちゃんの主観だけれど)その姿に、ショックを受けたみさちゃんは、事の真相を問いただそうと遊びに来ていたゆうきくんに詰め寄った。
ゆうきくんは最初、前の学校の友人であることを説明し、みさちゃんが心配しているようなことはない、と言っていた。
ところが、みさちゃんは聞く耳を持とうともしない。やがて、その女の子に対する根拠の無い悪口を言うようになって…
「で、ゆうきくんがキレちゃったと」
柊ちゃんが溜息混じりに呟いた。
「なんていうか、日下部もわりと独占欲強いわよね。浮気厳禁って言われたことある、って前にゆうきくんが言ってたけどさ」
「それだけ、彼のことが大事なんだと思うけど…」
「それでケンカしてりゃ本末転倒よねぇ」
ま、しょうがないか。と柊ちゃん。
「ゆうきくんは、私のほうからそれとなくフォローしてみるわ。峰岸は、日下部のほうお願いね」
「うん」
机に突っ伏したみさちゃんを見る。小柄な身体が、ひときわ小さく見えた。


「……まったく、贅沢なのよ」
柊ちゃんの呟きには、聴こえないふりをしておいた。