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ドタバタドタバタ……………
ドタバタドタバタ……………
ピピピピッ!ピ…
カチッ
「……もうとっくに起きてるよ」

今日は休日。いつもなら、目覚ましなんかかけずに1日中ダラダラ過ごしたりする憩いの日。
だけど今日は違う……。だって、今日は先輩との初デートなんだからっ!

今日の私は、普段とは比べものにならない程気合いが入っていた。
なんてったって、目覚ましが鳴る2時間前には既に目を覚まして準備に勤しんでいる位なんだから。こんなのはコミケ以外じゃ初めてかもしれない。って、コミケと一緒にしたら先輩に失礼かな。
と、そんな事を考えてたら突然携帯が鳴りだした。誰かと思い見てみるとこうちゃん先輩からのメールだった。

「頑張れよ、恋する乙女(b^-゜)」

こうちゃん先輩……乙女はやっぱ恥ずかしいっス……。
でも、ホントに感謝してます。今度ちゃんとお礼言わなきゃ…

おっと、こんな風にしてる場合じゃないよ。支度が途中だった私は、急いで身支度を続けた。

「財布よし…携帯よし……あ、化粧道具忘れてたっ!」

一通りを鞄の中に入れた後、私は1本のリップに祈るように呟いた。

「今日はお願いね」

玄関を開ける。暖かい朝日が私を祝うように出迎えてくれた。

「よっし!田村ひより、初デート行っきま~すっ!」

「はぁ…。」
待ち合わせ場所に着いてから既に30分、先輩はまだ来ない。それもそのはずで……

「待ち合わせ時間まで後30分かぁ~…」
と、いうわけだ。初デートに浮かれまくっていた私は、待ち合わせ場所に1時間のフライングで到着してしまっていたのだ。まだ先輩が来てないのも当然だと思う。

「あ~…。それにしても緊張するよ~っ」

今まで学校帰りに本屋とかに一緒に行った時は全然平気だったのに、先輩を待ってるだけなのにすごい緊張しちゃってる。やっぱりデート…だからかな。「デート」って単語にはとんでもない力があるんだな~って実感する。
ふと思い立った様にガラス越しに映る姿をチェック 。

「うーん…やっぱりスカート短かったかなぁ」

ちなみに、この行動は既に7回目だ。
今日の服のチョイスは、結局昨日こうちゃん先輩に任せることになった。確かに可愛いんだけど私にしてはちょっと短めのスカートが恥ずかしい。私は昨日の事を思いだしていた。

「ひよりん、この組み合わせなんてどうかな?」
「あ、それすごい可愛いっスね!でもちょっとスカート短めじゃないっスか?」
「ひよりん的には、でしょ?これくらい普通だと思うよ。」
「ん~。けどなぁ…」
「真堂先輩も一発で虜だと思うんだけどなー」
「とっ!虜っスか!?」
「彼女のこんな可愛いカッコみたら当然だよ」

今思うと、こうちゃん先輩にのせられてた気がしてきた。けど…先輩喜んでくれたらいいなー。
ふと、先輩の嬉しそうな顔が頭に浮かんだ。その瞬間、顔が一気に熱くなった。ガラス越しに自分を見ると顔が真っ赤になっている。
それと同時に、忘れかけていた緊張がぶり返してきた。時間を見ると、待ち合わせ時間まで後20分。そういえば、会ったときになんて言うかも考えてないよーっ!
元気ですかーっ。…これじゃい○きさんだし、
本日はお日柄もよくー…ってなんの挨拶なんだか。

「この私を待たせるなんていい度胸っスねーっ」

って、どんな人よ私っ!ってか、普通にこんにちわとかにしよ……
「えっとー……そんなに待たせちゃったかな?…ゴメンね」
えっ!?
聞き慣れた声。まさかと思い、後ろを振り返ると……

「こんにちわ、田村さん」

先輩がいた…。
あまりのことで頭がフリーズしてしまう。

「あれ、田村さん?おーい、聞こえてるー?」

ハッと我に返る。

「あっ!あああの、あのですねっ!今のは先輩に言ったわけではなくてですねっ!なんと言いますかそのーーー」

もう自分でも何言ってるか分からないくらいの大パニック状態。そんな中、先輩は笑顔で私の頭にポンと手のひらを乗せ、

「落ち着きなって」

と、言ってくれた。それだけで、あれだけパニック状態だったのがスッと落ち着きだした。

「もう平気?」
「は、はい…」
「それじゃ改めて。こんにちわ、田村さん」
「はい。こんにちわっス先輩」
「それじゃこれからどうしま……先輩?どうかしたッスか?」
「ん?いや、化粧してるんだなーって」
「あ、はい。すごく薄くですけど。もしかして似合ってませんか…?」
「ううん、そんなことないよ。へー、薄い色だけど口紅も付けてるんだ」
「あ、これは色付きのリップっスよ」
「そんなのもあるんだ」

実はこのリップ。昨日こうちゃん先輩に渡されたこのデートの最重要アイテムなのだ。

「さてと…ひよりん。化粧の仕方は大体覚えた?」
「なんとか、って感じっスね」
「これからもちょくちょく使うことになるんだろうから、完璧にマスターするように。それじゃ、ひよりんに最後に渡すもんがある」
「渡すもんって…なんスか?」
「えーっと……お、あったあった。はいよ」

先輩に渡されたのは1本のリップだった。

「リップ……っスよね」
「ただのリップじゃあないぞ。最近流行りだした祝福のリップって言われてるもんだよ」
「はぁ……。なんか装備品みたいなネーミングっスね」
「なんとっ!このリップをつけた子と彼氏がキスをすればいつまでもラブラブになれるって噂の一品だよ。
今の乙女チック☆ひよりんにはぴったりだと思ってね」
「乙女チック☆ひよりんって…。っていうかさっき…キ、『キス』って言ってましたよね」
「うん。言ったよ」
「いや、その……まだファーストキスも済ませてないっスけど……」
「丁度いいじゃん。明日のデートでそれ付けていって、ファーストキス卒業もずっとラブラブもゲットしてきなよ」
「えぇーっっ!?」

「田村さん?田村さ~ん?」
「は、はい。何でスか先輩」
「いや、なんかボーっとしてたからさ。大丈夫?」
「あっ、全然大丈夫っスよ」

キスの事考えてました、なんて言えるわけないよね。

「そっか。それじゃ行こっか」
「はいっス」
「あ、そだ。」
「?どうしました?」
「言いそびれちゃったけどさ。化粧……似合ってるよ。」
「っ!?」
「服もよく似合ってるし、スッゴい可愛いって思う…///」
「………ありがとうございます///」
「……さ、さてと、そろそろ行こうか。時間も惜しいしね」

そういって、先輩は少し照れながら私に手を差し出してきた。

「…はい!」

私も顔を赤くしながらその手をとり、先輩と歩き出した。
何はともあれ、こうして私と先輩の初デートは始まったのだった。
私は先輩の手の暖かさを感じながら、このデートが終わるその時には世界で1番幸せでいますようにと、心の中で呟いた。