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星桜に着く。
 どうやら、待ち人は未だ来たらずってやつのようだ。

「…まだ、か…」
 呟きながら、ゆっくりと後ずさる。
 そのまま星桜にもたれるつもりで…

  どんっ

「きゃっ」
 ―――えっ?

 背後で軽い衝撃とともに小さな悲鳴。振り返るとそこには…
「っ危ない!」
 倒れる寸前の小早川さん。
 咄嗟に彼女の手をとり…引き寄せる。
「だ…大丈夫?」
 というかこの体勢は…抱き寄せてる、の方が正解だ。

「あ…は、はい…」
 俺の腕の中で、小早川さんが頷く。
「…どうかした? 顔、赤いよ?」
「それは、そのぉ…………」
 言葉を濁しながら、俯いて。
「も、もぅ…ずるいです。わかってるくせに…」
 と、頬をふくらませて抗議。

 …ばれたか。

「…まぁ、ね。でも、できれば…改めて聞きたいなって」
 ちょっとおどけて言ってみる。
 …なんか意地悪かな、俺。


「……大好きな人が、います」
 ささやくように、小早川さんが言葉を紡ぐ。

「多分私は、その人が今、私のことをどう想ってるか知ってます。…知ってる、はずなんです」
 そう。
 俺たちは、繰り返される時間の中で、幾度と無く…想い合ってきたのだから。
「でも…それはすごくぼんやりしてて…あやふやで。好きっていうことだけが、漠然とあって」
 不安げに、目を伏せる。
「だから…もう一度、聞きたいんです。…先輩の声で。先輩の、言葉で」

 俺は、ゆっくりと頷いて……彼女の頭を撫でる。
 不安を、取り除くように。

「…大好きだよ」
 そう、告げる。
 言葉にのせきれない想いを、優しく抱きしめることで補いながら。
 それでも、できる限りの思いを、俺の声に、預ける。

「うれしい…とっても、うれしいです…」
 小早川さんの表情と声が、咲く。

「先輩……ううん、お兄ちゃん…」
 彼女の腕が、俺の背中に伸びて…ぎゅっと抱きしめる。
「大好き……大好き、です」

 ひとしきり思いを伝えあって。
 どちらからともなく、瞼を閉じる。

「なんか…ドキドキしちゃいますね」
 そんなコト言うもんだから、俺もドキドキしてくる。
 お互いの心音が、ユニゾンする。

「ずっと、いっしょですよ…?」
 可愛らしいお願いに。

 俺は、唇で応えた。



    らき☆すた~陵桜学園 桜藤祭~ After Episode
    想い出のつづき
    小早川ゆたかの場合~てりぶる☆しすたー~



「あ! おはよう、お兄ちゃんっ」
「おはよっ」
 互いに挨拶を交わして、手を繋ぐ。
 付き合い始めてまだ2週間もたたないが、随分と自然な動作だなって、自分でも思う。
「いやー、朝から見せ付けちゃってくれますなぁ」
 こなたさんのからかいの言葉にも慣れて来たしね。
「も、もぅ…お姉ちゃんってばぁ」
 …ゆたかちゃんはまだ慣れてないみたいだけど。

 やがて、みゆきさんとつかささん、かがみさんが。田村さん、パティさん、そして岩崎さんが合流して、一気に賑やかになる。
 こんな大所帯での登校も、俺たちが付き合い出してからだ。
「傍からみると、ハーレムみたいっスよねぇ。赤津ラバーズ、みたいな?」
 お願いだからそーゆー怖いこと言わないで田村さん。岩崎さんが思いっきり睨んでるから。

「…ふと思ったんだけどさ」
「なに、こなたさん?」
 こーいうこなたさんの思いつきは、大抵ロクなもんじゃないのだが。

「ゆーちゃんでしょ?」と、ゆたかちゃんを指して。
「で、こっちもゆうきくんだからゆーくんだ」と、俺を指して。

「…で?」
「二人合わせてだぶるy」
「OKこなたさんわかったからそれ以上ゆーな」

 …つーか一緒にしないでくれ。


  *


「それでね、その時田村さんが…」
 放課後はうってかわって二人きりで下校。
 最初の頃こそ岩崎さんも一緒だったのだが、最近は何かと理由を付けて一人で帰っている。
 俺のことを認めてくれたのは嬉しいけど、なんか気を遣われ過ぎている様な気がするな…

  ブロロロロ…

「?」
 と、背後から車の音。妙に近い。
「なんだ?」
 って、パトカー?!
 おいおい、俺って警察のご厄介になるようなことした憶えは無いぞ!?
 そりゃ傍から見れば小さな女の子連れまわしてるように見えるかもしれないけどもさっ!

「…む、今失礼なこと考えなかったですかお兄ちゃん?」
「イ、イヤソンナコトハナイデスヨ?」
 ゆたかちゃんに詰め寄られているうちに、パトカーが俺たちの傍に停まった。

 な、なんだろう…
 なんか周囲に書き文字で「ドドドド…」みたいな雰囲気が…

 ガチャ、とドアが開く。姿を現したのは婦人警官さんのようだ。
 あ、目が合った。

「お…」
 お?

「おーまーえーかぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「うわっ、ごめんなさーい!!!」
 反射的に謝ってしまう。
 いや、だってそうだろ?

「…お姉ちゃん?」
 …………はい?
「お、お姉ちゃん?」
 …って、こなたさんじゃなくて?

  *

「紹介するね。私のお姉ちゃんの、ゆいお姉ちゃん」
「はじめまして、だよね? 私は成美ゆい。よろしく」
 さっきの恐ろしい雰囲気はどこへやら、懐っこい笑顔で握手を求める。
 ちなみに、こなたさんはイトコで、こっちが本当のお姉さんだとか。
 名字が違うのは結婚してるからだそうな。
「いやー、こなたからゆたかに彼氏が出来たって聞いたときはホントにビックリしたよ。お姉さんとして是非会っとかなきゃって思ってねー」

 それであのゴゴゴだかドドドだかですか。

「あはは…まぁ、どこの馬の骨がゆたかをたぶらかしたんだ! ってな風に思ってたからさ~。ゴメン

ゴメン♪」
 か、軽い…

「でも、悪い人じゃ無さそうだし、安心したよっ。ゆたかが男の人にここまでくっついてるの、お父さん以外に見た事ないし。…本当に好きなんだね、彼のこと」
「うん…えへへ」
 真っ赤になりながら照れ笑いを浮かべるゆたかちゃん。
「むぅ…なんかフクザツだなぁ。ゆたか取られたみたいで」
「ひ、人聞き悪いこと言わんで下さい」
「あはは~。冗談だよっ」
 からからと笑う。あけすけっていうか、さっぱりしてる人だな。
「…ところでお姉ちゃん、いつまでもパトカー停めたままでいいの?」
 と、ゆたかちゃんの一言。
「おおっとぉ! 危うくパトカーで駐禁くらうとこだったよっ。お姉さんうっかりだ!」
 …えと、ゆいさん交通課でしたよね?
「それじゃ、お姉さんまだパトロールの途中だからもう行くね~」
「うん、がんばってねお姉ちゃん」
 パトカーの運転席に滑り込み、すばやく運転体制を整える。…さすがプロ。
「あ、そうそう。…ゆうきくん?」
「はい?」
 ゆいさんが俺を手招きする。
「ゆたかのこと、大事にしてあげてね。…もし泣かしたりなんかしたら……ジャッジメントもほっぽって即デリートしちゃうからそのつもりでねっ!!!」
 人差し指を突きつけて、ゆいさんはそう言い切った。

「…もちろんですよ。ゆたかちゃんは、俺が絶ッ対に幸せにします」
 彼女の涙は、もう二度と見たくないから。

「はい、よくできました! んじゃ、ゆたか。彼とのくわしーい馴れ初めは、また遊びに来たときにでも聞かせとくれよっ!」
「も、もうお姉ちゃんってば!」
 ニヤニヤ笑いながら、ゆいさんはアクセルを吹かせ、あっと言う間に走り去っていった。



「いいお姉さんだね」
「はい。…今の私があるのは、お姉ちゃんのおかげなんです。世界一の、お姉ちゃんです」
 うん、そんな感じだ。ゆたかちゃんの笑顔、ゆいさんの笑顔に似てる。

「なんというか、愛されてるなぁ」
「はい?」
「こなたさんに、岩崎さんに…ゆいさんに。ゆたかちゃんは、すごく幸せ者だよ」
 俺がそう言うと、ゆたかちゃんははにかんだ笑顔を見せる。
「それから…お兄ちゃんも。…愛してくれてますよね? 私のこと」
「そりゃあもう」
 そっと、繋いだ手に少しだけ力を込める。
 触れた先から、俺の想いが伝わるように。
「ゆいさんたちに負けないくらい…ゆたかちゃんが、大好きだ」
「うん…私も、大好きだよ…お兄ちゃん」
 寄り添って、甘い声で囁いてくれる。



 木枯らしが吹く帰り道も、キミといれば、温かい。

 俺も…幸せ者だよ。