※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

陵桜を卒業して、俺は彼女と結婚した。相手の名前は、柊かがみ。
俺の愛した、ただ一人の女性。これから彼女と、幸せな生活が送れると思っていた。
いつまでも笑いあって、いつしか子供も出来て・・・そんな生活を想像していた。
あの日までは・・・

「・・・どうだった、かがみ?」
「ううん、またダメだった・・・」
不思議と二人の間には、子供に恵まれなかった。医者が言うには、原因はかがみの体にあるらしい。
「・・・ごめんね」
「いや、かがみが悪いんじゃないんだからさ」

昔から言われているが、俺は人が良すぎるらしい。優しい過ぎることもあるらしい。
昔の話になるが、かがみが風邪を引いたとき、俺はかがみの体調が良くなるまで会社を休んだことがある。

「そのくせ自分の体調が悪い時は、無理してるのよねぇ・・・」
「まぁ、そこに惚れたんでしょ・・・かがみんや」
「う・・・うん///」

ある日、今までにないくらいの体調の悪さに病院へ行った。
診察すると医者と看護士がザワザワしだし、その後は大学病院で精密検査。

診断結果は・・・急性心膜炎。
すぐに手術が必要との事だ。

家に帰ると俺は、かがみに長期の出張に出かけると伝えた。もちろん、出張なんかではない。
次の日、俺はかがみにいってきます!と言って、家を出る。行き先は・・・病院。
再び精密検査を受ける。数日が経ち、明日がいよいよ手術の日。
「本当に・・・いいんですか?言いにくいですが、成功する確率は低いです」
「はい」
「奥さんに・・・告げなくてもよかったんですか?」
「えぇ・・・」

次の日。全身麻酔が効いてきたらしい。頭がボーっとする・・・。
闇に落ちる瞬間、かがみの顔が脳裏を過ぎる・・・。

気が付くと、病室のベッドの上だった。
外を見てみると、雨。しかもどしゃ降りだ。気が滅入る。
「どうですか、体調は?」
俺の執刀医の先生と内科の先生が、手術の報告をしてくる。結果は・・・失敗。
「もって・・・・・半年です」

「先生、電話・・・してもいいですか?」
そう言って俺は、かがみに電話で病院に来るように言う。30分後、かがみが病院に着く。そして、病室に入ってくる。
かがみはただ、呆然としていた。そして病室は、俺とかがみだけになった・・・。

「俺のこと忘れていい男みつけろよ」
この言葉を言った瞬間、左のほほに痛みが走る。
瞳に涙を浮かべながら、俺にビンタをするかがみ。

「なんでいつもそうなのよ!あたしの事を第一にして、自分の事は二の次にして!あげく俺の事わすれろ?
忘れられるわけ無いじゃない!あんなに楽しい思い出たくさん作っておいて・・・こっちも気持ちは無視?
あんたは・・・あんたって奴は!」
その瞬間、かがみの左手が振りかぶった。が、ビンタは来なかった。
我慢できなくなったかがみが、泣きながら俺に抱きつく。

「あんたみたいなお人好しで優しい人に、また出会えるわけないでしょ?・・・嫌だよ・・・
あたしは・・・あんたじゃなきゃ嫌なの!あんた以上に、好きになる男なんて居ないんだから!」

まるで子供のように泣くかがみを抱きしめながら、俺は一言しか言葉をかけれなかった・・・。
「・・・・・・ごめん」


「・・・・・ってわけよ」
「そうですか・・・あのゆうきさんが・・・」
「じゃあかがみん、あの事は?」
「言える訳ないじゃない」
「お姉ちゃん・・・どうするの?」
「こんなときに、子供が出来たなんて・・・言えないわよ」

翌日、かがみは俺に子供が出来た!と伝えた。
「まじかよ・・・やったーーーーー!元気な子だといいな!」
嬉しさのあまり、俺はいつもより強く抱きしめた。
不意にかがみが言う。

「なんで・・・この子が生まれる頃には、あんた居ないかもしれないのよ?」
「んな事、わかんねぇだろ?半年より永く生きてみせるさ。子供の顔、見ないで死ねるか!」

俺は病院で自慢しまくった。さらに姓名判断の本で、名前も考えた。
かがみがお見舞いにくる時は、なるべく早く帰すようにしている。もう一人の体じゃないと言って帰している。

4ヵ月過ぎても、体には何の変化もなかった。いつもの夜。明日はどんな朝を迎えるかな?
でも、それは突然きた・・・。
・・・胸が・・・・・苦しい・・・熱い・・・意識が・・・か・・が・み・・・
・・・・・・・・・・・・・・・

気が付くと、病室のベッドの上。かすかに聞こえる、医者の声。
「残念ですが・・・もう永くはありません」
そうか俺、もうすぐ死ぬんだ・・・子供の顔、見たかったなぁ・・。
「ゆうき!!」

かがみの声。もう返事が出来ない俺は、返事の代わりに手を握る。
よく見るとこなたさん、つかささん、みゆきさん、日下部さん、峰岸さんもいる。
ただ、みんな泣いている。俺が・・・死ぬから?みんな・・・優しいなぁ。

「か・・が・・み・・・」
振り絞って出した声は、弱弱しくて、自分でもおかしかった。
何と言って、俺の手を強く握る。

「俺・・みたいな奴と・・・一緒になって・・くれて・・・ありがとな」
意識が遠のく。かがみの手、暖かいな。ありがとう、かがみ。俺、幸せだった・・・。
ピ――――――――――――

「ご臨終です・・・」

しばらくの沈黙が続くが、かがみが沈黙を破る・・・。

「・・・みんな見てよ。死に顔まで笑ってる・・・。・・・起きてよ。いつもみたいに起きて、笑ってよ!
生まれてくる子供を抱いてよ!顔見るまで死なないんでしょ?起きてよ!子供に微笑みかけてよ!まだ一緒に居たいよ!
もっと、三人で楽しい思い出つくりたいよ!ねぇ・・・起きてよ―――――!!!」


5ヶ月後・・・
「ゆうき、子供生まれたよ。元気な男の子。どっちかというと、ゆうき似ね。目なんか特に。
ねぇゆうき、天国から、見守ってるよね・・・」

季節の移り変わりを感じさせる風が、吹いていた・・・。