プロローグ~時の狭間で誓う~
遠くで、花火の音が聞こえる… それと同時に、さっきまで胸元にあった暖かさが遠ざかっていく。 ―――ああ、“また”なのか。 もう何度目になるだろう。 幾度となく、繰り返した数日間。 俺が陵桜学園に転校して、学園祭にいたるまでの数日間。 様々な事件に巻き込まれて、どうにかこうにかで解決して。 時に想って、時に想われて。 そんな、追い続けた日々のなかで、もっとも鮮明に残っている記憶。 ―――彼女との、記憶。 きっかけはきっと、些細なこと。 でも、今この胸に抱いている想いは、揺ぎ無いもの。 そしてそれは、“彼女”も…一緒なハズ。 だけど、時が巡る。 次の瞬間、俺はまた最初の日に戻り――― 彼女も今までの想いを、想い出を無くして、何事もなかったかのようにまた、“出会う”。 …でも、そんなのもうゴメンだ。 だから、俺は呼びかける。「…いつか必ず、この時の輪を壊して、君を迎えに行く!」「…もし、もしその時!」「君が少しでも、ほんの少しでもいい。俺のことを、俺への想いを憶えていてくれたら…」 俺の言葉に、彼女は首を振る。 口を大きく開けて、俺と同じように叫ぶ。 けど、その声はもう俺には届かない。 …お・ぼ・え・て・る… …ぜ・っ・た・い… お・ぼ・え・て・る・か・ら… 唇が、そう動いて見えた。「…そう、だよね」 自分の胸に僅かに残った彼女のぬくもりを、そっと握り締める。「憶えていて。そして桜藤祭の日、星桜の下で逢おう」 彼女が、頷く。「それから…もう一度、想いを伝え合おう。さっきみたく、抱きしめあってさ」 もう一度、頷く。「それから…それから!」「―――キスしよう。もう一度」 彼女は照れながら、でも、しっかりと頷いた。 …やがて時の抵抗が強まる。 花火の音が遠ざかり、彼女の姿も、表情がぼやけ、輪郭がぼやけ… 胸に残っていたぬくもりすら、希薄になっていく。 俺は、最後の力を振り絞る。 全身全霊を込めて…彼女の名前を、呼んだ。 「―――――!!!」 らき☆すた~陵桜学園 桜藤祭~ After Episode 想い出のつづき
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