女の人
冬の雨は、冷たいものです。予報を見て、にわか雨がある事を知って、傘を置いてくる。私は、なにをしているんでしょう。やはり、浮ついていたのでしょうか。彼は、はじめから天気のことなど気にしていなかったようです。とりあえず、雨宿り。憂鬱でないのは、この人のおかげ。手を繋いでいます。腕を、絡めてもいいでしょうか。少し、どきどきしますね。あたたかい。でも、寄り添っていると、どうしても胸を押し付けてしまいます。この胸は、あまり好きではありません。動き回る時は、疎ましいものです。こんなときも、彼はつい、私の胸を意識してしまうようです。嫌ではありません。でも、もっと見て欲しいものが、あるんです。言ってしまいましょうか。小さな声で、彼の名前を呼んで。胸ばかりではなく、顔を。もっと、見つめ合いたい。ああ、恥ずかしい。彼の眼を見られません。自分で、言っておいて。はい。なんでしょう。そんな、謝らないで下さい。え…そんな突然。私も、好きです。あ、あ、そんなに、見つめないで下さい。待ってください。周りに人が。でも、このまま。ああ、いけません。顔が、近づいて、口が。あ…んん…ん…む…ぁふ……ああ……なんだか、不思議。この人を好きということしか、浮かびません。彼を愛しているだけの私。なんて、素敵。はむ…ん…んっ……はぁっ…甘くて、長いキス。ずっと、このまま。…離れてしまうんですか?心が、寒くなります。あ、でも、今度は背中が。後ろから、抱きしめられて。これなら、胸も関係ありませんね。でも、少し考え直したんですよ。もう、胸を嫌いだとは思いません。体中でこの人を愛する、私。この胸も、私の一部だから。手を当てると、あたたかい。いつか、彼からも。はしたない想いでしょうか。でも、いいんです。この人の温もりの中で、私は女の人になっていくんですから。 了
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