岩崎みなみの憂鬱3
「・・・落ち着いた?」みなみ「・・・ハイ」あれから数分。ようやく呼吸も落ち着き、冷静に考えられるようになった。それでも、さっきの醜い自分を思い起こすとまた苦しくなるが、これ以上迷惑はかけられない。無理やり思考を外に追いやり、精神を安定させる。ゆたか「みなみちゃん、大丈夫?いったいどうしたの?」ゆたかが、まるで自分のことのように私を心配してくれる。これではいつもの逆だと苦笑したところで、またしても自分の醜さに気付く。いつもの逆。いつも。いつも、私はゆたかを助けて『あげてた』。そんな傲慢。・・・違う。
みなみ「ゆたか。」ゆたか「えっ?」少し、詰め寄るような言い方で。みなみ「・・・話が、あるの。ゆたかの家に、行っていい?」ゆたか「え、え、あ、うん。いいけど・・・」そう言ってゆたかは先輩を見る。先輩は、いったい何事か、といったようなまなざしで私たちを見ている。みなみ「先輩、すみませんが、ゆたかと二人で話がしたいんです。失礼していいですか?」「は、はい??・・・あ、あぁ、うん。わかった。じゃあ、俺は一人で先に帰るよ」二人とも、流れについて来れないようだが、なんとか私の意図は理解してくれたらしい。「えっと・・・先に帰るけど・・・岩崎さん、体は本当に大丈夫?」みなみ「はい」原因はわかっているのだから。何も心配はいらない。それを伝えることはできないけど。ただ一言大丈夫だと伝えると、先輩は安心して荷物を抱えた。「じゃあ、二人とも、また明日。小早川さん、もし岩崎さんに何かあったらすぐ連絡してね」ゆたか「はい、わかりました。お疲れさまでしたー」去り行く先輩の後ろ姿を、二人で見つめる。横目で見たゆたかは、やっぱりどこか淋しそうで。それを見た私は、また、胸が痛んで。
みなみ「ゆたか」ゆたか「えっ、あ、うん。何?みなみちゃん」二人、向き合う。ゆたかの眼は、もう普段通り。私の錯覚なら良かった。光の加減とか、角度とか。でも、その眼は。先輩を見つめる時と、それ以外とでは、こんなにもちがうから。だから私は、聞かなくてはならない。みなみ「・・・ゆたか。」ゆたか「・・・う、うん。」何を言われるのか、困惑しているゆたか。
いや、もしかしたら、何を言われるか分かっていて、ただそれを恐れていたのかもしれない。でも私は言わなくてはならない。自分の醜さと向き合うために。みなみ「ゆたか。先輩のこと・・・好き?」ゆたか「!!!」ゆたかと、そして、私自身と、闘わなくてはならないのだ。
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