かがみ☆好き。…あんたが、大好き。
遠くで…声が聞こえる…「……さん、…みさんっ」 私…あ…そうだ… 学園祭で…劇やって… それから、星桜の下であいつのこと待ってて…「かがみさんってば!」 ―――えっ!?「…あ…れ…?」 私…寝てた…? 気が付くと、目の前にあいつの顔。 …って、近い近い!「ご、ごめんっ…」 あ、強引に目そらしちゃった… 傷ついてないかな? 彼、ああみえて結構繊細だから。「…疲れてたんだね。まぁ、しょうがないか。ずっと動きっぱなしだったし」 …そう。 “あの時”とは違って、捻挫しなかった私は、予定通り凛役をこなした。 それはつまり、士郎役の彼を見ることは、かなわなかったってことで。「ねぇ、どうだった? 私の…演技」 でも、それはそれでよかったって気もする。 演技で、そしてホントはやらなかったとはいえ…こなたとのキスシーンは…見たくなかったし。 それに、ずっと練習してきた、私の凛を見せる事も…できたから。「うん。練習のときも良かったけど…やっぱすごいよ。迫力があったっていうかさ」 彼が…ゆうきくんが…照れたように、笑う。「もし…もし俺が士郎なら…きっと凛に惚れてたくらいに」 ―――なっ「は、恥ずかしいこと…言わないでよ」 大体、あのお話は…士郎とセイバーが結ばれる話じゃない…「そうでもないよ。士郎の想い次第で、凛と結ばれる未来だってある」 手を差し伸べてくれる。その手に掴まって、立ち上がる。 私より背が高い彼の視線と、私のそれが重なる。「そう、俺が…かがみさんといる“未来”を、選んだように」 胸が、高鳴る。 次の言葉を…期待してしまう。「―――好きだ」 顔が、一気に熱くなる。 真っ赤になってるって言うのが、感覚的に解る。「…いいの? 私で…いいの?」「かがみさん、それ愚問」 繋いだままの手をひょいと引っ張られて、私の身体が、ゆうきくんの腕の中に納まる。「俺は、かがみさんが好きなの。それ以上でも、それ以下でもない」 彼の心臓の音が、聞こえる。 ドキドキいってる。 平静を装ってるくせに、破裂しそうなくらいに。 そう思うと、すごく心が温かくなって…「うん…私も好き。あんたが…ゆうきくんが…大好き」 のどの奥に引っかかってた言葉が、さらりと出て来た。 大切な、想いを伝えるための、言葉。「かがみさん…」 ゆうきくんの手が、私の頬に触れる。ひんやりとした指先が、ほてった私の顔を優しく冷やしてくれる。 手の冷たい人は、情熱的って、昔本で読んだっけ。 そんなことを、思い出す。「んっ……」 少し乾いたあいつの唇は…… とても…優しかった。 らき☆すた~陵桜学園 桜藤祭~ After Episode 想い出のつづき 柊かがみの場合~らんちたいむ☆らぷそでぃ~「…ね、お母さん」「あら、珍しいわね。あなたがこんな時間に台所にくるなんて」 時刻は6時ちょっと前。 わりと早起きの私でも、普段はまだ寝てる。「ん…あのね。お弁当…作ろうと思って」 いつか、約束したから。 自信なくて「学園祭が終わってから」って言ったのを、まだ憶えている。「へぇ、どういう風の吹き回しかしら…?」 ニヤニヤと母さんが笑う。…う、顔が熱くなって来た。「…あ、彼氏でも出来た?」「そっ…そんな事ッ…………ある、けど」 さすがと言うか、やっぱ母さんか。鋭いわ。「ふふ。それにしても一番乗りがかがみとはね。いのりやまつりが知ったら卒倒しそう」 …それはありそう。 想像して、ちょっと笑う。「ところで、お弁当作るならつかさに手伝ってもらった方がいいんじゃないの? お母さんが言うのもなんだけど、あの子のほうが得意だし」「いや、つかさに手伝ってもらうといつのまにか全部あのコがしそうなのよね。せっかく作るんだし、教えてもらいながらでも、自分で最後までやりたいの」 私がそう言うと、母さんはなるほどと頷いた。「…それじゃ、しっかり憶えてもらいましょうかね。お母さん直伝、柊家の味を♪」「お、お手柔らかに……」 * ―――それから、昼休み。 ゆうきくんと一緒に、屋上で。「…ど、どう?」 弁当箱の蓋を開けて、彼がまじまじと中を見る。「これ、全部かがみさんが?」「う、うん。…母さんに、教えてもらって」 …正確には、一部手伝ってもらったけど。「すごい…すごいよかがみ。…えと、じゃあ、食べていいかな?」「あ、当たり前でしょ? あんたの為に作ったんだもん」「そ、そーだよね。…うん。じゃ、いただきますっ」 祈るように手を合わせてから、ゆうきくんが箸を動かす。 あ…玉子焼きだ。 ちょっとコゲちゃったけど、母さんも太鼓判を押してくれた自信作。 どうかな…おいしいって、言ってくれるかな? ドキドキしながら、彼を見守る。「…おいしい」 ……あ。「すごいおいしいよ、これ。ふわってしてて、甘くてさ」 満面の笑みで、褒めてくれる。 私が、作ったお弁当を。 おいしそうに…本当においしそうに、食べてくれてる。 ドキドキはいつしか、収まっていた。 胸は…ただ暖かかった。 ・ ・ ・「……ごちそうさま」「お、おそまつさまでした…」 気がつくと、お弁当箱は空っぽだった。 うーん、今度からはもうちょっと大きいのがいいかな。男の子だもんね。いっぱい食べるよね。 …って、私、また作ってあげること考えてる?「ありがと、かがみ」「…え?」「約束、憶えててくれたんでしょ?」「……うん」 ちょっと照れくさくなって、私はそれをごまかすように、水筒のお茶をさしだす。「とっても、おいしかった」 改めて、褒められる。「料理もそうなんだけどさ。…かがみが俺のために作ってくれたってのが、すごく嬉しくて。なんていうかさ……すごく、幸せ」 真っ赤になって、それでも笑顔を見せてくれる。 もう……こっちまで、恥ずかしくなっちゃうじゃない。「……じゃあ」「?」「じゃあ、また、作ってきてあげる」 胸に思っていたことを、口に出す。 もう一度。…ううん、何度でも。 彼の、この笑顔が見たいから。「……うん。待ってる」 つかさが料理好きな理由、少し解った気がするよ。 喜んでくれる人の、笑顔。 あの子もきっと、それが好きだからなんだ。「……あ」「なに?」「ご飯粒付いてる、ほっぺに」「え、どこ?」 慌ててゆうきくんが頬を探る。「そっちじゃなくて、反対。あ、もうちょっと下…あー、いきすぎいきすぎ」 …もう、しょうがないわね。「……ここ、よ」 ―――ちゅ ご飯粒めがけて、口付け。「…か、かがみ!?」 案の定、ゆうきくん耳まで真っ赤。「…ふふっ」 その慌てぶりが可愛くて、思わず笑みがこぼれる。「……大好きよ、ゆうきくん」 腕を捕まえて、そう囁いた。
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