無題(みなみ)2
陵桜を卒業してもう何年経つだろう・・・俺、秋山ゆうきは大学の卒業式を終えたところ講堂では、後輩との別れを惜しんで泣いてる奴もいる・・・友人との別れを惜しみながら、俺は大学を出る。そして、呼び止められる。「・・・先輩・・・」俺の大好きな人、岩崎みなみ。世界でいちばん愛しい、俺の恋人。「卒業・・・おめでとうございます・・・」「ありがとうみなみ。ごめんな、長い時間、待たせて」「いえ、じゃあ・・・行きましょうか・・・」「ねぇ・・・本当に今日じゃなきゃダメ?」「ダメです。今日逃したら・・・また、いつになるか分からない・・・」車を走らせる事30分。ついに着いてしまった・・・「やばい・・・緊張してきた・・・」「先輩・・・落ち着いてください・・・」「んなこと言われても・・・」いま俺がいるのは、みなみの家。
実は今日は、みなみの両親へのあいさつに来たのだ。そう、ドラマでよく見るあれだ。さっきから左の胸の鼓動がうるさい。それほど緊張していた。「劇の本番より緊張してきた・・・・・・」庭に入ると、勢いよく走ってきた犬に押し倒された。チェリーだ。押し倒されたあと、顔中を舐められた。「ちょっ、やめろって。ハハww」「フフ・・・先輩、やっと笑いましたね・・・」そこにはいつもの優しく、温かい笑顔があった。気付くと、もう胸の鼓動は収まっていた。それほど緊張もしていないようだ。「チェリーのおかげかな。ありがとう」お礼を言うと、どういたしましてと言っているのかな?「ワン」と返事をしてくれた。覚悟を決めて、俺はみなみの両親の待つ居間へ向かう・・・。
「お父さん、お母さん・・・連れてきたよ・・・・・」そう言って、みなみが居間のドアを開ける。そこには椅子に腰掛けるみなみのお母さん。そして腕を組んで目をつむっているお父さん。実はみなみのお父さんに会うのは、今日が初めてだった・・・。「いらっしゃい、ゆうき君。どうぞ腰掛けて」みなみのお母さんが、柔らかい言葉で言う。言葉の通り、俺とみなみは椅子に腰掛ける。もうどれくらい時間が経っただろう。時計を見ると、まだ5分しか経ってない。我慢できず、俺は沈黙を破る・・・「お父さん!!」みなみのお父さんはゆっくりと目を開き、俺を見つめる。「初めまして。みなみさんとお付き合いさせていただいてます、秋山ゆうきと言います。 今日は時間を作っていただき、ありがとうございます。単刀直入に申し上げます。 みなみさんを・・・みなみさんを僕に下さい!必ず、必ず幸せにしてみせます!!」自分の思いを、飾らず、率直に伝える・・・。
「二つ、聞きたいことがある」少しハスキーな声で、みなみのお父さんが質問をしてくる。重みのある、一家の主を思わせる声だった・・・。「この娘のどこが好きなんだ?」「正直、分かりません。でも、今のみなみさんからなにが欠けても、好きなんです」分かったと、お父さんは頷く。「最後の質問だ」緊張して次の言葉を待つ。「君の好きな動物は?」あまりにも普通な質問に、呆気にとられてしまった。「あ、はい。動物ならなんでも。強いて言えば・・・犬が好きです」そうかそうか、と頷くお父さん。そして、みなみのお母さんとお父さんが見合って頷く。そして、お父さんが口を開く。「うん、合格!」
みなみが口を開く。「・・・お父さん・・・ありがとう・・・」「みなみ、いい男性(ひと)を見つけたな。もうなにも言わない、すきにしなさい」ポロポロと、みなみの瞳から涙が溢れていた。自然にハンカチを渡した。「気が利くねぇ君は」笑顔のお義父さんが、俺に言う。「いまから孫が楽しみね、お父さん」「そうだな、母さん」この言葉に俺とみなみは顔を紅くして、お互いを見合う。そして笑い合う。それからはチェリーも加わり、みなみの家で夕飯をご馳走になった。時折チェリーがテーブルにあごをのせて、俺にご飯をおねだりしてきたりもした。食事中、急にお義父さんが思い切ったように俺に言う。「ゆうき君。これはわたしのお願いなんだが・・・」その内容に、お義母さん、みなみ、俺は驚愕した。「「「え――――――――――――!!!!」」」「お父さん、なに言ってるの・・・」「そうよ、いくらなんでもそれは」「だよな。いや、悪い。忘れてくれ、ゆうき君」しかし、俺は決めた。「分かりました」岩崎家そろって・・・「「「え―――――――――――――――!!!!」」」
2年後、俺とみなみは結婚した。結婚式には小早川さんを始め、たくさんの人たちが参加してくれた。小さな教会で、俺とみなみは永遠の愛を誓う。そして披露宴。こなたさん、かがみさん、つかささん、みゆきさん、黒井先生、田村さん、小早川さん、日下部さん、峰岸さん。みんなが俺とみなみに祝福の言葉をかけてくれる。小早川さんに至っては、もう泣いてばかりだ。不意にこなたさんが言う。「みなみちゃんはこれから、秋山みなみになるわけか」「まぁ、そうね。普通はそうなるわね」「私も、峰岸から日下部になったしね。慣れるまで大変よ、みなみちゃん」「あ!その心配はないよ。いままで通り、岩崎みなみだよ」つかささんが「?」という顔をしている。そしてかがみさんと、みゆきさんが気付く。「もしかして・・・・・・」「名字が変わるのは、俺」「どういうこと?」田村さんと、小早川さん、日下部さんが聞いてくる。だから俺は答えた。「こういうこと。改めて、岩崎ゆうきです」
そう、2年前にお義父さんから提示された事とは、俺が婿養子に来る!という事だった。これにはお義父さんが多忙で家に居ない為、男がいなくなってしまう。女性2人では心配だ。そういう訳で、俺が居れば心配ない!という訳だ。さらに2年後。俺とみなみには、念願の赤ちゃんが生まれた。俺たち以上に喜んでいたのは、お義父さんとお義母さんだった。元気な男の子。どっちかといえば・・・みなみ似だ。さぁて守るものが増えて、大変だぞこれから。「あなた、もう寝ないと・・・」「うん、分かってるよ・・・なぁ、みなみ」「・・・・・・なに?」「愛してるよ」「・・・・ハイ」
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