「・・・あのさ、今日の発表のことだけど。」
かがみ「あー・・・。降参、負けたわー。やっぱみゆきがいると違うわよねぇ。
というわけで、約束通りチケット、あたしがおごるわよ。」
「いや、その必要はないよ。」
かがみ「え?なんでよ。あたしが負けたんだから、おごるわよ。」
「実はさ、俺、今回勝っても負けてもチケット俺が買ってあげるって決めててさ。」
かがみ「はぁっ?それじゃ賭けの意味ないじゃない!」
意外に折れないかがみ。さて、どうやったら俺に払わせてくれたものか。
「その通り!でも何か賭けたほうがお互い発表を頑張るかなと思ってさ。」
かがみ「確かにそうだけど・・・だーめ。約束したでしょ?あたしが払います。」
「いや、それは困る!俺が払うって。」
かがみ「あたしが払うってば。」
「俺が払います。」
かがみ「いやあたしが。」
「いや俺が。」
かがみ「あーっもう!これじゃあいつまでたっても変わらないじゃない!あたしに払わせなかったら、あんたのこと嫌いになっちゃうからね!」
そう来るか・・・。もちろん冗談のつもりなのだろうが、ここはあえてこう答えてみる。
「それは困る。
でも、俺に払わせなかったら、かがみのこともっと好きになるからな!」
かがみ「・・・本当に?」
「本当さ。時間がループしちゃうくらい本当さ。これが嘘つく眼に見えるか?」
かがみに眼を近づける。が、かがみの態度が急変したおかげで
自分のやっていることが一気に恥ずかしくなって眼を逸らす俺。
かがみ「・・・本当に本当?」
もはや両者赤面状態。これはいいさくらんぼ。
かがみ「それじゃぁ、あんたに払ってもらおうかな・・・。
そしたらあたしのこと・・・・その・・もっと好きになるんでしょ?」
この反応には意表をつかれた。くぅ、なんだこいつは。可愛すぎて死にそうだ。
もはや反射的に
「かがみ、大好きだ!」
といってかがみを抱きしめる。
かがみ「ちょ・・・ちょっと!抱きつくなら抱きつく前に言いなさいよ!びっくりするでしょ・・・。」
学校の帰り道、抱き合う二人を夕日が照らす。それもドラマのワンシーンさながら。
まわりには人影もないし、ここでしばらく抱き合ってても大丈夫だろう。多分。
かがみ「・・・暖かい。」
「しばらく・・こうしててもいいかな。」
かがみ「・・・うん。」
しばらく俺たちはこのままでいた。会話はなかったが、何故か不思議と安心できた。
「かがみ。」
かがみ「なに?」
「今さ・・・・・この時期限定のポッキーが売ってるの知ってる?」
かがみ「ちょっと・・・なんでいきなりポッキーが出てくるのよ。
・・はぁ、雰囲気台無しじゃない。・・・で、それがどうしたの?
練乳イチゴムースのこと?」
と言ってかがみは俺から離れた。
「違いますよかがみさん、それは前回のね。夕張メロンムースのこと。」
かがみ「えっ、知らない。いつ出たの?」
「知らないのも当たり前。今日からコンビニに並ぶ新商品だからね。
・・・食べたいでしょ。」
かがみ「もちろん。・・・あ、どうせこなたみたい『かがみんはこれだから太るんだよ~』
なんて言ってからかうつもりじゃないでしょうね!?」
「ちがいます~。いくら太ろうが痩せようが、かがみはかがみだろ?俺が愛する対象としてなんら変わらないよ。」
なんて言ってみる。
かがみ「え・・あ・・ありがと。
えっと、あたしも・・その、あの・・・あんたと同じ気持ちだから。」
意外な反応だったのには驚いたが、俺は嘘を言うつもりはさらさらない。
そしてこう言われちゃうと・・・正直、たまりません。
「ほんとに?俺って幸せ者ですね、かがみ様!」
かがみ「はいはい、こなたみたいに呼ばない。」
・・・そうだ、今日はとっておきがあるんだった。
俺は自分のバッグに手を突っ込み、あるものを探す。
「はい、ところでこれなーんだ?」
かがみ「あ、ポッキー。『夕張メロンムース』・・・?
あーっ!これって!」
「そう、今日発売の夕張メロンムースポッキー。
実は今日の朝学校行く前に買っておいたんだよね。・・・はい、かがみにあげるよ。」
俺はかがみの手にポッキーを持たせてやる。
かがみ「え、いいの?」
さすがにびっくりしたようだ。しかし、かがみのポッキーを見つめる眼は輝いて見える。
・・・よほど好きなんだな。
「うん、かがみのために買ったんだし。」
かがみ「なんか・・・本当にありがとう。・・・あのさ、・・・お礼ってほどじゃないけど、・・・明日、お弁当作ってこよっか・・・?」
「おっ、いつぞや話してた手作り弁当!実はけっこう前から待ってたんだ。」
かがみ「そ、そうだったの?そうなら早く言ってくれれば作ってきたのに・・。」
「お願いしていいかな?」
そうきくと、かがみは髪をいじりながら恥ずかしそうな表情を浮かべた。
かがみ「いいけど・・・味は期待しないでよね。」
「最高だー!」
かがみ「・・・なんか、あたしが幸せ者かも。」
「ん、なに?」
かがみ「ん、あぁなんでもない!独り言よ独り言。」
「んじゃまぁ、家まで送ってくよ。少し寒くなってきたから・・・ほいっと。」
俺はかがみの腕を俺の腕に組ませた。恥ずかしそうに笑うかがみがなんともかわいい。
「普通に歩くより、こっちのほうが暖かいだろ?」
かがみ「・・・うん。」
そんなこんなで俺たちは柊家に着き・・・
「それじゃ、また―。風邪ひかないようにな。」
かがみ「○○こそ。・・・今日はいろいろありがとう。それじゃね。」
「おう、遊園地でのデート詳細はあとでメールするから!じゃーな~。」
こうして俺たちは別れて、俺は自宅へと向かった。
もう日も落ちかけて暗くなりはじめた空、いつもと何一つ変わらない帰り道、一人家に
向かう俺の頬を少し冷たい風が打つ。
それでも、俺はいつもより何倍も暖かかい気持ちだった。