無題(ひより)2
「おじゃましまーす」「どぞどぞ、散らかった部屋っスけど。 あ、お茶淹れてくるのでそこの椅子にでも座っててくださいっス。PCも使ってていいっスよ」「……マジ?」「……メールとお気に入りとマイドキュメントは勘弁っス」「ん。じゃあ昨日教えてもらった動画サイトでも見てるよ」ドアの閉じる音がする。次いで廊下を歩く音。今、俺は幾多の苦難を乗り越えてひよりちゃんの部屋に来ていた。「長かった。何度言っても全力で見逃せとか言われたり 気付いたら俺の部屋に行ってたりしたし」特に後者、突然決まったせいで部屋がロクに掃除できてなくて……「あ、あの時は片付けてなかった本が……! 本が! 窓に! 窓に! らりるれろ! らりるれろ! あqwせdrftgyふじこlp」落ち着け、落ち着け俺! ひよりちゃんは寛容だったじゃないか!……ただ、視線が微妙だったのは間違いないけど!
「自分は書いてるくせに……彼氏のエロ本はダメですかそうですか。 その同人誌も全然見せてくれないし」軽く男泣きしてみた所で、心になにやら暗い感情が沸き起こってきた。復讐。そんな単語が脳裏にちらつく。「よし、ここから数分間俺はフリーダム! そして行いは全てジャスティスかつディスティニー! まさしく俺のエンペラータイムの始まりだ!」……と大暴れするつもりもなく、大人しく動画サイトに繋いでみる。付き合っているとはいえプライバシーは重要です。携帯を見るとかメールを確認するとかそういった行為はダメ、ゼッタイ。「そもそも、報復なんて不毛だし」復讐は復讐を生む。そして泥沼の戦争になる。世界史で学んだ数少ない事の一つだ。なんて言ったら黒井先生に殴られそうだけど。「それに、俺の部屋にはあれよりもっと見られたくないものが一つや二つは……三つや四つ?」ともかくあの本ぐらいなら許容範囲。なので大人しくしておくというのが気遣いというものだ。素直に動画サイトを見てニコニコするのが円満の秘訣だろう
正直ここのネタがやりたかった、反省していない「――にしても、この動画変な中毒性あるなぁ」読み込みが完了し、流れはじめた動画を見る。動画自体もさることながら、曲がヤバい。「……やば。何か変なの閃いた」とあるフレーズが頭に浮かぶ。「……ひよひよーひよりーひよりひよひよー」口ずさんでみた。ヤバい、止まらなくなる。「かっわいっいよ! かっわいっいよ! ひっよりんりん!」「ちょ、先輩何歌ってるっスかー!?」「え、あ……」み、見られたーっ!? っていうか聞かれたーっ!?「永遠のとかじゃなくて現役、しかもまだ16っスよ!?」「突っ込みどころそっちー!?」「いや、他にも色々あるっスけどまずはそこかなーと」「……まあうん、なんていうかこう。 ムシャクシャしてやった、今では反省している」「……先輩、すっかりオタに染まったっスね」
「どぞ、ストレートで大丈夫でした?」「うん、ありがとう」ひとまず色々と落ち着かせ、二人で紅茶を飲む。「それにしてもさ、ひよりちゃんの部屋凄いね」「やー、色気も何も無い部屋でお恥ずかしいっス」「そんな事無いよ? 彼女の部屋ってだけでも結構緊張するし」「ちょっ!」何か急にひよりちゃんの顔が赤くなった。きっと照れているのだと、それはわかるものの、その理由がさっぱりわからない。「…………不意打ちは反則っスよ」「……どういう事?」「あー、いえ、こっちの話っス。 そ、それより! さっきの動画なんでスけど」「ああ、アレ? 今日学校でこなたさんにオススメされたんだよね」「へぇー。で、先輩的にどうっスか?」「どういう意味?」「萌えとか萌えとかそういう意味っスよ!」「……うーん、萌えは無いかなぁ。ネタの方が強いし」「元のキャラはいい感じっスよ? あ、ゲーム持ってるんで貸しましょうか?」「うん、でも萌えはあんま期待しないでね」「へ、どういう事っスか?」「なんていうかさ……こう、萌えとかそういうのがピンと来ないんだよね。 好きなキャラとかは居るんだけど……まあ、なんていうか」「……ま、まさかー」「多分予想通り。ひよりちゃんの顔が浮かんでくるんだよね」「……あ、えっと、どもっス」今度の赤面ははっきりと理由がわかった。俺はひよりちゃんの方へと身を寄せる。「ひよりちゃんは? 俺の事、浮かんだりしない?」「……ま、まさか。 先輩ドSスイッチが入っちゃいました?」「多分? で、どうなの?」「え、えーっと……顔は、そんなに。 女の子に萌える方が多いでスし」と言いつつ視線を逸らすあたり、あからさまに怪しい。がしっと掴んで見つめてみた。「……それっスよ」「んんー?」「ドSキャラに萌えられなくなったんスよね。 なんていうか、先輩が……アレなせいで」
「先輩が私限定で苛めてくるから……こう、物足りなくなったというか。 頭の中で先輩の声がオート再生されるようになったというか」「……へぇ?」「っ!」意識して低い声を出してみた。こうかはばつぐんだ!「なるほど……こういうのに弱いんだ?」「……先輩の意地悪。 責任、取ってくださいね?」「……ひより」目を閉じるひより。そして俺はゆっくりと彼女を横たえさせて――省略されました。続きを見るにはワッフルワッフルと(ry
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