岩崎みなみの憂鬱1
自分が、駄目な人間だということは知っていた。家族以外とは、マトモに会話が出来なくて。いつも孤立して、独りでいて、いつしか、そんな自分にも慣れてしまって。・・・それでも、少しは変われたと思う。友達ができたから。守りたいと思える、大事な友達が。ゆたかが、いてくれたから。ゆたかのおかげで、私は少しだけ前に進めた気がする。何人か、友達も増えた。優しい先輩たちとも知り合えた。そして、・・・恥ずかしいのだけれど、その・・・好きな・・・人も、できた。自分の世界が、瞬く間に広がって・・・まるで自分の体じゃなくなってしまったみたい。だから、知ってしまった。自分が知らなかった自分を。知らなかった。こんなにも、自分は、弱くて、・・・醜い人間なのだと言うことを。
そうして、先輩は私の隣に立って歩き出した。近すぎず、遠すぎず。今の私と先輩を現しているかのような、曖昧な距離。今はまだ、これでいい、とも思う。また、もう少し近づきたいな、とも思う。どうしたいのかはよくわからないけど、不快ではない、恥ずかしいけど、心地よい悩み。それが、ちくりと刺すような痛みに変わったのは、最近の話。変わったのは私でもなければ、先輩でもなく。ただ、ゆたかの居場所が変わっただけ。今、ゆたかは・・・先輩の隣に。私の、反対側にいる。
会話も、先輩の周りが、大半を占めるようになった。並びが変わった事に戸惑っているわけでも、中心から外れた事を寂しがっているわけでもない。ただ、見えてしまっただけ。今までは左右に見ていた二人を、同時に視界に入れた時に。その中で、ゆたかが先輩を見ている眼を。・・・私と、同じ眼で・・・先輩を見つめるゆたかを。
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