帰還編
大学を無事卒業し、俺は陵桜に帰ってきた。こんなに早く帰ってこれるとは思ってなかったけれど、黒井先生の助力のお蔭で一応は採用が決まったのだ。そして、四月。俺は教壇に立つ。「初めまして、俺は伊藤まことです。今年度から、非常勤で現国を担当することになりました。まだ色々と至らないことも多いとは思いますが、よろしくお願いします」「それで、初めての授業はどうだったの?」電話越しからでも、ゆたかの心配が伝わってくる。以前、桜藤祭の演劇の本番前日に不安だ、自信がないなどと言って、情けないところを見せてしまったからだろうか。けれど、今回は桜藤祭の時より自信がある。何より、いつまでも情けないままではいられない。 少し先の事を考えたら、情けないままではゆたかを不安にさせてしまうかもしれないのだから。
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。