小姑編
「えっ、うそっ、集合って1時じゃないんですか?」「俺は、2時って聞いたけど」「…そうだったかもしれない」「八坂さんにしては早いと思ったら、そういうことね」「そんなぁ。走って損した」「まあ、結果オーライじゃない?1時集合のつもりなら、15分遅刻だけど」「…むむ」「結局、いつも通りってことか」「…それを言わないでください。てゆーか、先輩もずいぶん早く来たんですね」「いまひとつ土地勘がないからさ。遅れたら嫌だからって、余裕持ちすぎちゃったよ」「なるへそ。でも主賓なんだから、ちょっとくらい遅れてもそれはそれでアリですよ?」主賓、などと言われると、やはり照れる。まことにとって、彼女らがこんな風に祝ってくれるなど、考えもしないことだった。合否が発表されたのは、ほんの二日前だ。駄目だろう、という気持ちが大きかったが、結果としては受かっていた。あれでどうして、と思うほどに感触が悪く、自己採点などもする気が起きなかったほどだが、結果は結果だった。親の次に合格を報せたのは、やまとにだった。もっとも助けられたのは誰か、と考えたとき、教師よりも先に、彼女の顔が浮かんできた。限度はあるが、勉強なら自分でも出来る。やまとから貰った安心のようなものは、ひとりでは作れないものだ。そのやまとの口から、漏れ伝わったのだろう。次の日には、すでに祝賀会が企画されていた。こうが中心になり、その後輩たちも来るらしい。当然のように、やまとも参加するようだった。
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